94 / 99
94話
しおりを挟む
茜が密樹とデートしているその頃、早苗はずっと自分の部屋に閉じこもっていた。
「今頃、茜ちゃんは飯島先輩と二人っきりでお出かけしてるんだよな~」
茜と密樹が二人っきりでお出かけをしていることを想像するだけで胸が苦しくなり、嫌な気持ちになる。
こんな気持ちになるなら、もっと早く茜に告白しておけば良かったと嘆く早苗だったが後の祭りである。
早苗と茜はあまりにも距離が近すぎた。
いつも二人でいることが当たり前で、それが当たり前だと思っていた。
でも茜が密樹に告白され茜を取られると思った時、その当たり前が当たり前ではないことに気づいた。
今まで茜のことは幼馴染として好きだと思っていた。
でも違った。
本当はとっくの昔から茜のことは恋愛的な意味で好きだったのだ。
だが、早苗はあまりにも茜の近くにいたせいで、その気持ちになかなか気づくことができなかった。
「……私は馬鹿だ。どうしてもっと早くに気づかなかったのだろう」
早苗は自分を責めるものの、過去のことを後悔しても時すでに遅し。
そんなことを一日中考えていたら、いつの間にか夕方になっていた。
「……もう夕方なんだ……今日はなにもしてないな……」
窓の外を見て、夕方になったことを知る早苗。
もう茜と密樹のお出かけは終わったのだろうか。
昨日の茜の様子を見る限り、結構楽しみにしているようだった。
だからきっと、楽しいお出かけになったと早苗は推測する。
どんどん早苗が知らない茜が増えていく。
それがもどかしかった。
その時、誰かが玄関を開け家の中に入って来た。
まだ夕方だ。
親は毎日夜遅いため、こんな時間に帰ってくることなんてない。
それに鍵はいつもかかっているため、鍵を解除しないと家に入ることはできない。
親以外で早苗の家の鍵を持ち、インターホンを鳴らさずに入ってくる人は一人しかいない。
「早苗っ」
「……茜ちゃん」
よっぽど急いでいたらしく、茜はノックもせずに早苗の部屋を開ける。
息を切らして部屋に入って来た茜に早苗は驚きをかくせなかった。
「あたし、早苗に聞いてほしいことがあるの」
入口前で茜が真剣な表情で早苗に伝える。
あまりにも真剣な茜に早苗はベッドから体を起こし、ベッドの縁に座る。
「……私に聞いてほしいことって」
早苗は恐る恐る茜に尋ねる。
もし、密樹とお付き合いをする報告だったら上手くお祝いする自信がなかった。
「あたし、早苗のことが好き。幼馴染としてではなく、恋愛的な意味で」
「えっ……」
予想もしていなかった告白に、早苗は脳の処理が間に合わず呆気にとられる。
「今頃、茜ちゃんは飯島先輩と二人っきりでお出かけしてるんだよな~」
茜と密樹が二人っきりでお出かけをしていることを想像するだけで胸が苦しくなり、嫌な気持ちになる。
こんな気持ちになるなら、もっと早く茜に告白しておけば良かったと嘆く早苗だったが後の祭りである。
早苗と茜はあまりにも距離が近すぎた。
いつも二人でいることが当たり前で、それが当たり前だと思っていた。
でも茜が密樹に告白され茜を取られると思った時、その当たり前が当たり前ではないことに気づいた。
今まで茜のことは幼馴染として好きだと思っていた。
でも違った。
本当はとっくの昔から茜のことは恋愛的な意味で好きだったのだ。
だが、早苗はあまりにも茜の近くにいたせいで、その気持ちになかなか気づくことができなかった。
「……私は馬鹿だ。どうしてもっと早くに気づかなかったのだろう」
早苗は自分を責めるものの、過去のことを後悔しても時すでに遅し。
そんなことを一日中考えていたら、いつの間にか夕方になっていた。
「……もう夕方なんだ……今日はなにもしてないな……」
窓の外を見て、夕方になったことを知る早苗。
もう茜と密樹のお出かけは終わったのだろうか。
昨日の茜の様子を見る限り、結構楽しみにしているようだった。
だからきっと、楽しいお出かけになったと早苗は推測する。
どんどん早苗が知らない茜が増えていく。
それがもどかしかった。
その時、誰かが玄関を開け家の中に入って来た。
まだ夕方だ。
親は毎日夜遅いため、こんな時間に帰ってくることなんてない。
それに鍵はいつもかかっているため、鍵を解除しないと家に入ることはできない。
親以外で早苗の家の鍵を持ち、インターホンを鳴らさずに入ってくる人は一人しかいない。
「早苗っ」
「……茜ちゃん」
よっぽど急いでいたらしく、茜はノックもせずに早苗の部屋を開ける。
息を切らして部屋に入って来た茜に早苗は驚きをかくせなかった。
「あたし、早苗に聞いてほしいことがあるの」
入口前で茜が真剣な表情で早苗に伝える。
あまりにも真剣な茜に早苗はベッドから体を起こし、ベッドの縁に座る。
「……私に聞いてほしいことって」
早苗は恐る恐る茜に尋ねる。
もし、密樹とお付き合いをする報告だったら上手くお祝いする自信がなかった。
「あたし、早苗のことが好き。幼馴染としてではなく、恋愛的な意味で」
「えっ……」
予想もしていなかった告白に、早苗は脳の処理が間に合わず呆気にとられる。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
ウザい先輩と可愛げのない後輩
黒姫百合
恋愛
「本当に君は可愛げのない後輩だな」
高校一年生の春、北野真希(きたのまき)は高校三年生の鈴木紗那(すずきさな)に絡まれる。
紗那は真希と仲良くなりたいと思うものの、他人に興味がない真希は紗那をウザがる。
でも何度も話しかけられるたびに真希の方も無視するよりも適当に相手にする方が、時間を浪費しなくて済むことに気づき、少しずつ紗那との交流が増えていく。
そんなある日、紗那とキスをしてしまい……。
ウザイ先輩と可愛げのない後輩が紡ぐ、ラブコメが今、始まる。
柊瑞希は青春コンプレックス
黒姫百合
恋愛
「何度も言うが私は青春が嫌いだ」
高校一年生の男の娘、柊瑞希は青春が大嫌いだ。
理由はそんな安っぽい言葉で自分の人生や苦悩を語ってほしくないからである、
青春なんていらない。
瑞希はそう思っていた。
部活も時間の無駄だと思った瑞希は帰宅部にしようとするものの、この学校には帰宅部はなく瑞希はどこかの部活に入るように先生に言われる。
それと同じタイミングで瑞希と同様部活は時間の無駄だと考える少女が先生と言い争っていた。
その後、瑞希は部活をしない部活を創立し、二人の女子と交流を持つようになり……。
ひねくれ男の娘が少しずつ大切なものを知っていく物語が今、始まる。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
楠葵先輩は頼られたい
黒姫百合
恋愛
「これからはもっとたくさん楠先輩と思い出を作っていきたいです」
教室に友達がいなかった高校一年生の男の娘、中村優(なかむらゆう)は居心地が悪くなり当てもなく廊下を歩いていると一人の少女にぶつかる。その少女は高校三年生の女の子でもあり生徒会長でもある楠葵(くすのきあおい)だった。
葵と出会った放課後、優は葵に助けられたお礼をするためにシュガーラクスを持っていく。葵は優の作ったシュガーラクスを気に入り、また作って来てほしいとお願いする。
それをきっかけに優は葵とどんどん交流を重ね、しまいにはお泊り会も?
後輩に頼られたい女の子と友達作りが苦手な男の娘のラブコメが今、始まる。
冴えない俺と美少女な彼女たちとの関係、複雑につき――― ~助けた小学生の姉たちはどうやらシスコンで、いつの間にかハーレム形成してました~
メディカルト
恋愛
「え……あの小学生のお姉さん……たち?」
俺、九十九恋は特筆して何か言えることもない普通の男子高校生だ。
学校からの帰り道、俺はスーパーの近くで泣く小学生の女の子を見つける。
その女の子は転んでしまったのか、怪我していた様子だったのですぐに応急処置を施したが、実は学校で有名な初風姉妹の末っ子とは知らずに―――。
少女への親切心がきっかけで始まる、コメディ系ハーレムストーリー。
……どうやら彼は鈍感なようです。
――――――――――――――――――――――――――――――
【作者より】
九十九恋の『恋』が、恋愛の『恋』と間違える可能性があるので、彼のことを指すときは『レン』と表記しています。
また、R15は保険です。
毎朝20時投稿!
【3月14日 更新再開 詳細は近況ボードで】
僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた
楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。
この作品はハーメルン様でも掲載しています。
女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』
コバひろ
大衆娯楽
前作 “雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ”
(全20話)の続編。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/329235482/129667563/episode/6150211
男子キックボクサーを倒したNOZOMIのその後は?
そんな女子格闘家NOZOMIに敗れ命まで落とした父の仇を討つべく、兄と娘の青春、家族愛。
格闘技を通して、ジェンダーフリー、ジェンダーレスとは?を描きたいと思います。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる