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63話

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「二人は今まで恋人っていたことあるの?」
「あたしはありませんね」
「私もないです」
「そうなんだ。実は私もなくてな。これが初恋なんだ」
「えぇー、意外です。飯島先輩って結構モテそうですのに」
「あはは、ありがとう神崎さん。本当にガチで告白されたこともないんだ。一度も」

 ご飯が食べ終わり、満腹になったせいか話は恋バナに向かう。
 密樹に今までの恋人の有無を聞かれた二人は素直に答える。
 早苗はもちろん、茜にも彼氏ができた噂は小学校、中学校、高校合わせても聞いたことがなかった。
 それは、今まで早苗と茜が付き合っていると思われていたからであり、早苗たちはその事実に気づいていない。
 それに凄くモテそうな密樹が誰とも付き合ったことがない事実に早苗と茜は驚いた。
 それと同時にこれが初恋だということも驚いた。
 人のことは言えないが、初恋が高校三年生というのは遅すぎではないだろうか。

「だから二人に聞きたいのだが、私ってどうしてモテないんだと思う」

 密樹が二人に真剣な表情で質問してきた。

「いや飯島先輩、普通にモテてますよ。多分、飯島先輩が魅力的過ぎて誰も告白ができないじゃないですか」
「私も飯島先輩のことが可愛いとか格好良いとか素敵だってよく聞きますよ」
「確かに武田さんの言う通りそういう言葉は聞くが、私が魅力的過ぎて誰も告白してこないのは嘘だろ」
「いや、本当ですよ。飯島先輩はもっと自分の魅力を自覚するべきです」

 告白されたことがないから自分のことを魅力がないと密樹は思っているが、それは大間違いだ。
 この学校で誰が一番魅力的な人かと質問されれば、ほとんどの生徒が密樹と答えるだろう。
 早苗のクラスにも密樹に憧れている同級生がいるし、密樹の非公認ファンクラブだってあるほどだ。
 茜の言う通り、魅力的すぎて誰も告白できないのだろう。
 密樹も最初は半信半疑で聞いていたが、茜の鋭い一言にやっと納得する。

「そうなんだ。……そう言われると嬉しいものだな」

 先輩と言えども密樹だって人間だ。
 褒められれば、誰だって嬉しいし恥ずかしがる。

「私からも質問があるんですが良いですか」
「もちろん。なんでも聞いてくれ」

 茜にも密樹の気になることがあるらしく、質問の前の質問をする。
 密樹は茜が自分に興味を持ってくれて嬉しいのか、表情が華やぐ。
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