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59話

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「ということは、逆にもしも神崎さんがもう少し早く生まれたり、武田さんが遅かったら二人は同級生じゃなく先輩後輩になっていたんだな」
「そうですね。そう思うとこのタイミングで生まれてきて良かったと思います。同級生の方がたくさんいられますし、先輩後輩だと絶対教室が同じにならないじゃないですか。早苗もそう思うでしょ」
「……」
「早苗?」
「えっ、あ、うん。そうだね。私もギリギリ三月に生まれて良かったよ。だって茜ちゃんと同級生になれたんだから」

 茜は早苗と同級生で嬉しかったらしく、言葉を弾ませながら密樹に話す。
 ずっと密樹と茜が話していることにモヤモヤしていた早苗は茜の振りに気づかずに無視してしまう。

「大丈夫早苗? もしかして具合が悪いの」
「ううん、大丈夫。元気だよ」
「無理はするなよ。無理をすると後でくるから」
「あはは、ありがとうございます」
「早苗が大丈夫ならそれで良いけど」

 いつもより元気がなかった早苗を茜は心配をする。
 いつもより元気がなかったのは、茜と密樹を見ていたらモヤモヤしていたせいで体は元気である。
 密樹も早苗のことを心配しているらしく、早苗のことを気遣ってくれる。
 朝会った時の恐怖はなく、そこには優しい生徒会長がいた。
 早苗は心配してくれた密樹にお礼を言い、その隣では茜が心配そうに見つめていた。

「もっと話していたがそろそろホームルームが始まる時間だ。そろそろ教室に行かないと遅刻するな。もし良かったら今日のお昼一緒に食べないか。もちろん武田さんも誘って」
「そうですね。あたしは良いですよ。飯島先輩と話しているとあたしも楽しいので。早苗も一緒に食べる?」
「う、うん。私も飯島先輩と仲良くなりたいし」
「決まりだね。昼休みは屋上に集合。今日は曇りだから多分雨は降らないだろう」

 ずいぶん密樹と校門前で話していたようで、もうホームルームが始まる時間だ。
 密樹はもっと茜と話したいらしく、お昼を一緒に食べる約束をかわす。
 茜ももっと密樹と仲良くなって密樹のことを知りたいらしく、快く引き受ける。
 密樹に気を使われた早苗も、とりあえず条件反射で頷いたが、本心はあまり行きたくなかった。
 なぜ行きたくなかったのか分からないが、今の二人を見ているのがなぜか嫌だったからだ。
 その後、途中まで一緒に歩き階段のところで別れる。
 確かに密樹は悪い先輩ではない。
 それなのに、密樹のことが好きになれないのはなぜだろうか。
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