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35話

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「わぁ~、ミチルちゃんが渚ちゃんと腕組んでる~」
「良かったねミチル。渚とイチャイチャできて」

 照れながら渚と腕を抱いているミチルと見て、早苗も茜も嬉しそうに笑っている。

「うん。これも二人のおかげよ。あ、ありがとう」

 照れながらも、二人にお礼を言うミチル。
 二人がミチルの背中を押してくれなかったら、今日も渚とイチャイチャすることはできていなかっただろう。

「へぇ~なるほど。ミチルの背中を押してくれたのは早苗と茜なんだね」
「それは秘密なんだからね。早苗も茜も勝手に渚に喋ったら許さないからね」

 勘の良い渚は、三人の会話を聞いただけで、ある程度理解した。
 ミチルはそれだけは渚に知られたくなかったので、大声で早苗と茜に注意する。
 例え彼女でも知られたくないことは誰しも一つや二つはあるだろう。
 ミチルにとって、まさにこれが彼女に知られたくないことの一つだった。



「あつ~い。もうダメ~」

 放課後。
 ホームルームを終えた早苗は暑さに耐えきれず、机に突っ伏す。

「今日は真夏日だもんね。早苗の気持ちは分かるよ」

 暑さにうなだれている早苗に茜は早苗の気持ちに寄り添う。

「確かに五月にしては暑かったよね」
「急に暑くなったからね。体が全然ついていけない」

 渚もミチルも今日は暑かったらしく、うんざりしていた。
 渚の言う通り、これは五月の暑さではない。七月や八月のような夏本番の暑さだった。
 そしてさらに厄介なのは、七月や八月は毎日暑いので体が慣れているが、五月のように一気に暑くなると体もその暑さに慣れていない。
 その分、余計に暑く感じる。

「茜ちゃんや渚ちゃんは良いな~。スカートだから涼しそうで」

 早苗はスカートの茜や渚を羨ましそうな目で見る。

「しょうがないよ。そういう校則なんだから」

 制服に文句を言っている早苗を茜が優しく宥める。

「だったら早苗と茜で制服交換したら良いんじゃない? 今、高校生のカップルの間では制服交換して放課後デートを楽しむのが流行ってるし。早苗も茜も同じ体型だから大きさ的には問題ないと思う」
「それだー。ねぇー茜ちゃん、暑いから制服交換しよう。おねがーい」

 暑さでうなだれている早苗を憐れに思ったミチルが解決法を教える。
 なんで今までそんなことが思いつかなかったのだろう。
 スラックスが暑ければスカートを貸してもらえば良い。
 ミチルから解決法を聞いて納得した早苗は大声を上げ、茜の両手首を掴んで制服交換を懇願する。
 茜の母性本能をくすぐるためにわざと涙声である。
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