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84話
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「別に心配なんかしてないから。帆波も勝手なこと言わないでくれる」
椿は瑞希に知られたくなかったのか、慌てた表情を浮かべながら今度は帆波に噛みつく。
「そうだね。瑞希ちゃんは良い子だけど、勝手な決めつけを相手にするのは良くないと思うよ」
舞はできるだけ瑞希が傷つかないようにオブラートに包みながら、瑞希の問題点を指摘する。
帆波と舞に指摘され、瑞希は椿に対して勝手に決めつけていたことを反省している。
椿は瑞希が嫌いだ。
それは椿自身が公言している。
だからと言って今回、椿が瑞希に話しかけてきた理由がからかい目的だとは本人は言っていないし、そう判断したのは瑞希自身の勝手な思い込みだ。
「悪い一色。不快な思いをさせてしまったな」
「別に。それぐらいなんとも思わないわよ。っていうかそんなことでいちいち傷つくほど軟じゃないから」
椿に対して勝手な決めつけをして傷つけたことを謝罪する瑞希。
椿は別に気にしていなかったらしくいつも通り生意気な口調だった。
だからこそ瑞希は椿が瑞希のことを心配していた証明でもあった。
もし瑞希のことを心配していなかったら、椿は真っ先にそこを否定している。
「もしかして白鳥に勝手な決めつけとか押し付けとかしたんじゃないのー、柊自身が。だから柊自身は避けられてる原因とか分からないんじゃないの?」
四人の話を聞いていた早織が、撫子が瑞希を避けている原因を推測し四人に話す。
もし早織の仮説が正しかったら瑞希はますます分からない。
「もし大村の言うことが正しかった場合、なにも思い出せない。きっとその言葉は私にとってなんの悪意もなかったからだ。一色のあの言葉だって別に一色に悪意があって言った言葉ではないからな。明日、昨日のあの言葉を思い出せるかというと多分思い出せない」
あの時言った椿への決めつけの言葉は、なんの悪意もなかった。
きっと一日経ったら言ったことすら忘れているぐらい、瑞希にとってなんでもない言葉だった。
でも言葉というのは発した自分ではなく受け取る相手によって意味が変わる。
自分ではそんなつもりで言ったはずではなかったのに、相手は違う解釈で受け取ることが多々ある。
「大丈夫だよ瑞希ちゃん。あたしだってそういうことよくあるもん。あたしも相手に傷つけないように慎重に言葉を選んでるつもりだけど、知らない間に傷つけていた経験とかあるもん」
落ち込んでいると勘違いした舞が瑞希を慰める。
別に落ち込んではいないのだが、慰めようとしてくれた舞からは優しさが伝わってくる。
「でも早織が言っていることもただの推測だし、そこに固執して考えるのも逆に視野が狭くなって危険だと思うよ」
いつも椿、早織のグループに所属している帆波が早織に優しい口調で異を唱える。
帆波の言う通り、早織の言っていることは推論であり違う可能性だって大いにある。
もし問題を解決しようとして、その問題がいくら考えても解決しない場合はそもそもの前提が間違っている場合が多い。
前提が間違っている時点で、正しい答えには辿り着けない。
つまりなにが言いたいかというと、なにも分からないということだけが分かっている。
椿は瑞希に知られたくなかったのか、慌てた表情を浮かべながら今度は帆波に噛みつく。
「そうだね。瑞希ちゃんは良い子だけど、勝手な決めつけを相手にするのは良くないと思うよ」
舞はできるだけ瑞希が傷つかないようにオブラートに包みながら、瑞希の問題点を指摘する。
帆波と舞に指摘され、瑞希は椿に対して勝手に決めつけていたことを反省している。
椿は瑞希が嫌いだ。
それは椿自身が公言している。
だからと言って今回、椿が瑞希に話しかけてきた理由がからかい目的だとは本人は言っていないし、そう判断したのは瑞希自身の勝手な思い込みだ。
「悪い一色。不快な思いをさせてしまったな」
「別に。それぐらいなんとも思わないわよ。っていうかそんなことでいちいち傷つくほど軟じゃないから」
椿に対して勝手な決めつけをして傷つけたことを謝罪する瑞希。
椿は別に気にしていなかったらしくいつも通り生意気な口調だった。
だからこそ瑞希は椿が瑞希のことを心配していた証明でもあった。
もし瑞希のことを心配していなかったら、椿は真っ先にそこを否定している。
「もしかして白鳥に勝手な決めつけとか押し付けとかしたんじゃないのー、柊自身が。だから柊自身は避けられてる原因とか分からないんじゃないの?」
四人の話を聞いていた早織が、撫子が瑞希を避けている原因を推測し四人に話す。
もし早織の仮説が正しかったら瑞希はますます分からない。
「もし大村の言うことが正しかった場合、なにも思い出せない。きっとその言葉は私にとってなんの悪意もなかったからだ。一色のあの言葉だって別に一色に悪意があって言った言葉ではないからな。明日、昨日のあの言葉を思い出せるかというと多分思い出せない」
あの時言った椿への決めつけの言葉は、なんの悪意もなかった。
きっと一日経ったら言ったことすら忘れているぐらい、瑞希にとってなんでもない言葉だった。
でも言葉というのは発した自分ではなく受け取る相手によって意味が変わる。
自分ではそんなつもりで言ったはずではなかったのに、相手は違う解釈で受け取ることが多々ある。
「大丈夫だよ瑞希ちゃん。あたしだってそういうことよくあるもん。あたしも相手に傷つけないように慎重に言葉を選んでるつもりだけど、知らない間に傷つけていた経験とかあるもん」
落ち込んでいると勘違いした舞が瑞希を慰める。
別に落ち込んではいないのだが、慰めようとしてくれた舞からは優しさが伝わってくる。
「でも早織が言っていることもただの推測だし、そこに固執して考えるのも逆に視野が狭くなって危険だと思うよ」
いつも椿、早織のグループに所属している帆波が早織に優しい口調で異を唱える。
帆波の言う通り、早織の言っていることは推論であり違う可能性だって大いにある。
もし問題を解決しようとして、その問題がいくら考えても解決しない場合はそもそもの前提が間違っている場合が多い。
前提が間違っている時点で、正しい答えには辿り着けない。
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しおりを挟んでくださっている皆様へ。
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