上 下
72 / 103

72話

しおりを挟む
「ただのクラスメイトよ」
「そうだな。ただのクラスメイトだ」

 椿も瑞希もそこら辺は同じ認識らしい。
 本当は他人と言いたかったが、クラスメイトということは事実なので瑞希も『クラスメイト』ということにした。

「あたしたち、同じグループになったんだから友達じゃないの」

 それでも舞は納得していないのか、首を傾げている。

「いや、あれは勝手に舞や帆波や早織が言っただけであたしは頷いてないわよ」
「私もだ。こいつと同じグループになった覚えはない」

 あの時は周りが勝手に盛り上がっていただけで、別に瑞希も椿も同じグループになることを了承していない。

「そうだっけ」

 舞は当時のことをあまり覚えていないのか、もしくは都合よく事実が改変されているのか首を捻っている。

「僕は柊や白鳥と仲良くなりたいなー。だって友達が多い方が楽しいし」
「それなー。なんか柊と白鳥が入った方が面白そうじゃん」

 陽キャの帆波と早織は二人で盛り上がっている。
 一方、撫子は一言も話さずに黙々とご飯を食べている。
 静かすぎて逆に怖い。

「あたしは帆波と早織と舞だけで十分よ」

 絶対瑞希と仲良くしたくない椿は瑞希のことを睨みつける。

「私も別に一人で良い」

 椿と意見が合うのは癪だが、そこだけは同意見だったので瑞希も椿の意見に頷く。

「……そんな悲しいこと言わないでよ」

 舞が悲しそうな表情でなにかを言っている。
 でもその声はあまりにも小さすぎて瑞希は聞き取ることができなかった。

「ちなみに柊って今まで友達っていた?」

 いきなり早織が脈絡のないことを質問してくる。

「別にいなかったし、必要もない」

 今まで瑞希には友達と呼べる友達はいなかった。
 それは瑞希が一人でいることが好きだったからであり、自ら一人でいることを望んだ結果がこれだった。
 だから無理して友達を作ろうとも思わないし、それに友達がいなくても生活することはできる。

「なるほど。それじゃー瑞希は友達といる楽しさを知らないってことじゃん」

 瑞希を馬鹿にした感じではなく、早織はただ事実を指摘した。
 確かに早織の言う通り、友達がいなかった瑞希は友達といる楽しさを知らない。

「確かに」

 それに頷いたのは瑞希ではなく舞だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

好感度MAXから始まるラブコメ

黒姫百合
恋愛
「……キスしちゃったね」 男の娘の武田早苗と女の子の神崎茜は家が隣同士の幼馴染だ。 二人はお互いのことが好きだったがその好き幼馴染の『好き』だと思い、恋愛の意味の『好き』とは自覚していなかった。 あまりにも近くにいすぎたからこそすれ違う二人。 これは甘すぎるほど甘い二人の恋物語。

ウザい先輩と可愛げのない後輩

黒姫百合
恋愛
「本当に君は可愛げのない後輩だな」 高校一年生の春、北野真希(きたのまき)は高校三年生の鈴木紗那(すずきさな)に絡まれる。 紗那は真希と仲良くなりたいと思うものの、他人に興味がない真希は紗那をウザがる。 でも何度も話しかけられるたびに真希の方も無視するよりも適当に相手にする方が、時間を浪費しなくて済むことに気づき、少しずつ紗那との交流が増えていく。 そんなある日、紗那とキスをしてしまい……。 ウザイ先輩と可愛げのない後輩が紡ぐ、ラブコメが今、始まる。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた

楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。 この作品はハーメルン様でも掲載しています。

冴えない俺と美少女な彼女たちとの関係、複雑につき――― ~助けた小学生の姉たちはどうやらシスコンで、いつの間にかハーレム形成してました~

メディカルト
恋愛
「え……あの小学生のお姉さん……たち?」 俺、九十九恋は特筆して何か言えることもない普通の男子高校生だ。 学校からの帰り道、俺はスーパーの近くで泣く小学生の女の子を見つける。 その女の子は転んでしまったのか、怪我していた様子だったのですぐに応急処置を施したが、実は学校で有名な初風姉妹の末っ子とは知らずに―――。 少女への親切心がきっかけで始まる、コメディ系ハーレムストーリー。 ……どうやら彼は鈍感なようです。 ―――――――――――――――――――――――――――――― 【作者より】 九十九恋の『恋』が、恋愛の『恋』と間違える可能性があるので、彼のことを指すときは『レン』と表記しています。 また、R15は保険です。 毎朝20時投稿! 【3月14日 更新再開 詳細は近況ボードで】

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

楠葵先輩は頼られたい

黒姫百合
恋愛
「これからはもっとたくさん楠先輩と思い出を作っていきたいです」  教室に友達がいなかった高校一年生の男の娘、中村優(なかむらゆう)は居心地が悪くなり当てもなく廊下を歩いていると一人の少女にぶつかる。その少女は高校三年生の女の子でもあり生徒会長でもある楠葵(くすのきあおい)だった。  葵と出会った放課後、優は葵に助けられたお礼をするためにシュガーラクスを持っていく。葵は優の作ったシュガーラクスを気に入り、また作って来てほしいとお願いする。 それをきっかけに優は葵とどんどん交流を重ね、しまいにはお泊り会も? 後輩に頼られたい女の子と友達作りが苦手な男の娘のラブコメが今、始まる。

処理中です...