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53話

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「私だけか。納得してないのわ」
「大丈夫よ。あたしも不満だらけだから。でもあの笑顔を見たら今更水を差すわけにもいかないじゃない」

 瑞希も椿も納得していなかったが、あの三人の笑顔を見たら水を差すことはできなかった。
 だから、渋々それを受け入れるしかなかった。
 そしてタイミングが良いのか悪いのか、ここで予鈴のチャイムが鳴る。

「もう戻らないと遅刻するわね。舞、帆波、早織。戻るわよ」
「うん」
「えへへ、また椿ちゃんと一緒に話せるね」
「陰キャと陽キャの混合グループ。逆に面白いかも」
「早織、それ、全然面白くないから」

 予鈴が鳴り、リア充四人組は仲睦まじく教室に戻っていく。
 今まであんなに言い争っていたのがまるで嘘のようだった。

「……」

 屋上に取り残される瑞希と撫子。
 撫子はなぜか不安そうな目で瑞希のことを見ていた。

「どうしたんだ白鳥」
「……いえ、別に。仲直りできて良かったわね」
「いや、私はあまり納得してないんだけど」
「そう言う割には嫌そうな顔をしてないように見えるけど」

 無言で瑞希のことを見ていた撫子に尋ねると、撫子は曖昧に誤魔化した。
 椿と一緒のグループになることは全く納得していないのだが、撫子にそれを愚痴ると予想外な言葉が返って来た。
 残念ながらここには鏡がないので確認のしようがないのがもどかしい。
 その後、このまま突っ立っていると次の授業に遅刻するので、瑞希たちも教室へと戻る。
 屋上は春の爽やかな風が吹き、清々しいほどの晴天だった。



 放課後になり、椿たちは部活へと行った。
 つい昼休みまで、喧嘩していたグループとは思えないほど仲が良さそうに教室を出て行った。
 そんな三人を瑞希は恨めしそうな目で睨みつける。
 あいつらのせいで余計な仕事をさせられたのだ。
 恨み言の一つぐらい言ってやりたい。
 でも、そんなことをするとまた椿と喧嘩することになり余計な時間を浪費することになるので止めた。

「ねぇーねぇー瑞希ちゃん、撫子ちゃん。椿ちゃんが言っていた『あたしと椿ちゃんが棲む世界が違う』ってどういう意味」

 帰ろうとカバンの中に教科書などを詰め込んで瑞希が立ち上がった時、舞に話しかけられる。
 隣には捕縛済みの撫子がおり、表情からすぐに無理矢理連行されたことは容易に想像がつく。
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