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6話

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「これで残り一人ね」
「そうね。でも意外だったわ。まさか私と柊さんがこんな形で関わるなんて」
「そうね。確かに意外だったわ。別に私は誰とも関わるつもりはなかったから」
「それを目の前で聞く私はどんな反応をすれば良いのかしら」

 撫子は肩をすくめながら、瑞希をからかう口調で言ってくる。
 人のストレスを大半は人間関係だ。
 だから、瑞希は極力クラスの人とも関わりたくないと思っていた。
 面倒だし。

「こういう時、つくづく思うわ。どうして部活は強制なのだろう。確かに好きで部活をしている人は良いかもしれない。けど私たちのように部活をやりたくない人だっているのに。それなに『入らない』という選択ができないなんて不合理よ」

 撫子は憂いた表情を浮かべながら廊下の窓側に近づき校庭を眺める。
 校庭からは吹奏楽部の練習の音色が響いており、遠くてどこかの運動部の掛け声が聞こえてくる。
 部活に精を出して頑張る高校生。
 これを人は青春の輝きと呼ぶのだろう。

「それには同感だな。それに、部活を入ってないと内申点が低くなるのもおかしいと思うけどな」

 瑞希も撫子が見てる校庭の方を見ながら悪態をたれる。
 部活動強制もおかしいが、なぜ部活を入っていないだけで内申点が下がるのか分からない。
 そんなに高校生活において部活は大事なのだろうか。
 瑞希はそうとは思わない。
 そもそも大事なものなんて、人によって違うし、他人の価値観を押し付けないでほしい。

「それは私も思ったわ。部活をやっている人とやっていない人の間で、そこまで人間の優劣が決まるものなのかしら。私はそうは思わないけど」

 窓の外で部活に励んでいる生徒を見ながら、この世の不合理を嘆く撫子。
 もし、部活をやっている人の方が部活をやってない人よりも優秀なら、ほとんどの中学校や高校は部活強制だから日本はとても優秀な国となっているだろう。
 でも現に日本でも多かれ少なかれ犯罪が起こっている。
 結論、部活をやっているからと言ってその人が必ず優秀だとは限らない。

「とりあえず私たちの目下の目標は残り一人の部員を集めて部活を作り、先生たちに文句を言われないようにする」
「そうね。私たち二人だけでは部活を作ることはできない。顧問は黒川先生になってもらうとして幽霊部員でも良いからもう一人部員が必要ね」

 今、瑞希たちがやらなければならないことはとにかく部活を作り、その部活に入部することである。
 撫子の言う通り、入部する生徒は幽霊部員でも良い。
 つまりただ名前を借りるだけで良いのだ。
 むしろ、名前だけ借りる方が瑞希にとって楽だった。
 だって、部活したくないし。
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