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10話
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「はい、鈴木先輩の気持ちは伝わりました。つまり私と仲良くなりたいということですよね」
「そうそう、あたしはただ北野後輩と仲良くなりたいだけなんだよ。同じ通学路だし、同じ高校の生徒だし」
しっかりと真希に自分の気持ちが伝わったことを確認できた紗那は嬉しそうに頷いている。
「でも私は一人でいるのが好きなので、別に鈴木先輩と仲良くなりたいとは思っていません。これが私の気持ちです。それに鈴木先輩、ウザいですし」
紗那の真希と仲良くなりたいという気持ちは伝わったが、それで真希も紗那と仲良くなりたいかと言われればそれはまた別問題である。
昔からみんなでいるよりも一人でいる方が好きな真希は友達が欲しいと思ったことすらない。
だから紗那も含め誰とも仲良くなるつもりはない。
「ホントに北野後輩は凄いよ……よく本人の前で『仲良くなりたいと思ってません』なんて言えるよね」
「だって仲良くなりたいと思ってませんから」
紗那はまるで未知の生物を見ているかのように呆気に取られている。
真希からすればなにが凄いのか分からないが、そもそも誰かと仲良くなりたいと思っていないので、他人からどう思われているかなんてどうでも良かった。
「だから私と仲良くなることは諦めてください」
「いや、ますます仲良くなりたいと思ったよ北野後輩。先輩に対しても素直に『仲良くなりたくない』と言える度胸。ますます気に入った」
面倒だから本当に仲良くなりたくないと真希は思っているのに、なぜかその気持ちだけは紗那に伝わらないようだ。
もう意味が分からない。
紗那も紗那でどこかおかしい人なのかもしれない。
変な人に目を付けられてしまったものである。
「……どうしてそれで私を気に入るんですか。全然意味が分かりません。私ならこんな後輩、絶対に関わりたくありません」
紗那の言っていることが意味不明すぎて、真希は頭を抱える。
まるで話の通じない地球外生命体と話している気分だ。
「それは君が可愛い後輩だからだ、北野後輩」
「……」
サラっとキザなセリフを吐く紗那。
そのセリフに恥ずかしさやウザさや意味不明さが混ざり合い、言葉では表現できない気持ちになる。
「別に私は可愛くはありません」
「あはは、その反応が可愛いぞ北野後輩」
「あぁー、ウザいウザい。本当にウザいですよ鈴木先輩」
「素直に甘えても良いんだぞ、北野後輩」
さすがにここまで馬鹿にされると真希も不快で、暴言を吐くものの紗那に笑いをこらえながら一蹴される。
年上の余裕を見せられてますます不機嫌になる。
「拗ねた顔も可愛いぞ北野後輩」
「もー、ウザいので話しかけないでください」
「……さすがに怒らせすぎてしまったか。反省反省、後輩が可愛くてついやりすぎてしまった。これ以上怒らせるとさすがに可哀そうだな。少しは黙るか」
何度も茶化されて堪忍袋の緒が切れた真希は紗那を拒絶する。
朝からストレスが溜まる。
紗那は小声でブツブツ言っているが、声が小さすぎてなにを言っているのか聞き取ることができなかった。
その後、空気を読んだのか電車を降りるまで紗那は真希に話しかけることはしなかった。
「そうそう、あたしはただ北野後輩と仲良くなりたいだけなんだよ。同じ通学路だし、同じ高校の生徒だし」
しっかりと真希に自分の気持ちが伝わったことを確認できた紗那は嬉しそうに頷いている。
「でも私は一人でいるのが好きなので、別に鈴木先輩と仲良くなりたいとは思っていません。これが私の気持ちです。それに鈴木先輩、ウザいですし」
紗那の真希と仲良くなりたいという気持ちは伝わったが、それで真希も紗那と仲良くなりたいかと言われればそれはまた別問題である。
昔からみんなでいるよりも一人でいる方が好きな真希は友達が欲しいと思ったことすらない。
だから紗那も含め誰とも仲良くなるつもりはない。
「ホントに北野後輩は凄いよ……よく本人の前で『仲良くなりたいと思ってません』なんて言えるよね」
「だって仲良くなりたいと思ってませんから」
紗那はまるで未知の生物を見ているかのように呆気に取られている。
真希からすればなにが凄いのか分からないが、そもそも誰かと仲良くなりたいと思っていないので、他人からどう思われているかなんてどうでも良かった。
「だから私と仲良くなることは諦めてください」
「いや、ますます仲良くなりたいと思ったよ北野後輩。先輩に対しても素直に『仲良くなりたくない』と言える度胸。ますます気に入った」
面倒だから本当に仲良くなりたくないと真希は思っているのに、なぜかその気持ちだけは紗那に伝わらないようだ。
もう意味が分からない。
紗那も紗那でどこかおかしい人なのかもしれない。
変な人に目を付けられてしまったものである。
「……どうしてそれで私を気に入るんですか。全然意味が分かりません。私ならこんな後輩、絶対に関わりたくありません」
紗那の言っていることが意味不明すぎて、真希は頭を抱える。
まるで話の通じない地球外生命体と話している気分だ。
「それは君が可愛い後輩だからだ、北野後輩」
「……」
サラっとキザなセリフを吐く紗那。
そのセリフに恥ずかしさやウザさや意味不明さが混ざり合い、言葉では表現できない気持ちになる。
「別に私は可愛くはありません」
「あはは、その反応が可愛いぞ北野後輩」
「あぁー、ウザいウザい。本当にウザいですよ鈴木先輩」
「素直に甘えても良いんだぞ、北野後輩」
さすがにここまで馬鹿にされると真希も不快で、暴言を吐くものの紗那に笑いをこらえながら一蹴される。
年上の余裕を見せられてますます不機嫌になる。
「拗ねた顔も可愛いぞ北野後輩」
「もー、ウザいので話しかけないでください」
「……さすがに怒らせすぎてしまったか。反省反省、後輩が可愛くてついやりすぎてしまった。これ以上怒らせるとさすがに可哀そうだな。少しは黙るか」
何度も茶化されて堪忍袋の緒が切れた真希は紗那を拒絶する。
朝からストレスが溜まる。
紗那は小声でブツブツ言っているが、声が小さすぎてなにを言っているのか聞き取ることができなかった。
その後、空気を読んだのか電車を降りるまで紗那は真希に話しかけることはしなかった。
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