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ぬいぐるみと……ってやつ
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ぬいぐるみと歩んだ2度めの人生
蜘蛛の子供で、蜘蛛子。
イメージは小さい男の子なんだけど、呼びやすいから蜘蛛子にした。
黒がメインの毛色。
胴は毛先が紫で、6本腕は黒い足先を除いて紫色の体毛。
淡いグリーンと穏やかなオレンジのオッドアイ。
どこにいても見てくる、黒くて大きな瞳が特徴。
可愛らしいぬいぐるみの蜘蛛子は、ふとした瞬間に生きた中型タラテクトになる。
この世界に来たとき、なんで飾ってるだけのぬいぐるみが一緒に転生したんだろうと思ったけど。
危ないとき、助けてくれたんだ。
きっと蜘蛛子は、僕のヒーローなんだ。
蜘蛛子とは、大きな駅ビルの二階出口(歩道橋みたいに二階で駅と行き来出来るとこだった)前のぬいぐるみの出店で出会った。
僕は当時忍者亀にハマったばかりで、そのキャラのぬいぐるみ(人形?とりあえず、著作権は確認したよ)を見つけてお母さんに買ってもらおうと思った。
そしたら、その隣に蜘蛛子がいたんだ。
ハロウィンが近かったから、いっぱい可愛い子達がいる中で、蜘蛛。
可愛いんだけど、それより柔らかで手のひらからはみ出る程度の大きさの方が大事。
触り心地を気に入って二体とも親に強請ったら、じゃあクリスマスプレゼントねって買ってくれた。
消費税をなくして3600円で買わせてくれた。
お姉さん優しかったな。
蜘蛛子は特別に忍者亀のフィギュアコーナーに飾ってあげた。
丸みを帯びた脚がかわいくて、買ったばかりの数日はにこにこ蜘蛛子を眺めてた気がする。
「クゥ~ン、クゥンクゥンクゥ~ン」
銀狼の甘え声が聞こえてくる。
お腹が空いたのかな?
おすわりして僕の頭に顎を乗せて、グルグル喉を鳴らしてる。
もう、銀狼ってば。
お腹空いたの?気持ちよくなりたいの?
この子は蜘蛛子が従わせたこの森の北区のヌシで、シルバーウルフっていう種族らしい。
僕のこと食べようとしてたから、ただでさえ大きい銀狼の、2倍以上に大きくなった蜘蛛子がふたつの目(ぬいぐるみだから目は8個ないんだ)で見つめたら、降伏するみたいにお腹を見せて地面に倒れ込んだんだ。
たぶん怖かったんだろうなぁ。
僕だって蜘蛛子がこんなに可愛いんだって知らなかったら、あまりの怖さでお漏らししてたと思うし。
蛍光色の黄緑と黄色の目で、ギョロッと見てくるんだもの。
目の色変えるのは反則だよね。
助けてくれたからめいっぱい甘やかして宥めて、銀狼って名前つけてシルバーウルフも飼うことにしたんだ。
事が終わってから、銀狼が蜘蛛子が僕の肩の上でぬいぐるみになってるの見て「ワフゥ?!!」って驚いてたのは、人間みたいな反応でけっこうおもしろかったよ。
「はい、ドラゴン肉。焼く?生で平気?」
言葉を理解出来るみたいだから、なるべく話しかけるようにしてる。
いつか人間の言葉が話せるようになったら面白いなーっていうのがひとつと、単に僕の独り言が多いっていうのがひとつ。
あとは、飼い犬みたいにある程度理解してくれたら指示通り動かせるかなって思って。
右とか左を覚えさせたら背中に乗せてもらって移動できそうじゃない?
いつかやってみたいな。
「……クゥン」
「焼くの?ミディアム?レア?ウェルダン?」
タシッ
「ミディアムね、ちょっと待ってて」
順番変えても焼き具合は理解してるんだよねー。
人形を買ったんだ。
人形を買ったんだ。
教室にそれはいた。
じっとこっちを見てくる。
その瞳は泳ぐ。
カラーの液体が入った。
プラスチックの目の中で。
黒いビーズだから。
見つめられている気がする。
どこにいても。
気になる。
何を見られているのか。
瞳の向かう先。
俺の視線を捉えようとする。
俺が気になるもの。
それに気になっている。
頭を撫でた。
初めて動いた。
頭に手を当てた。
初めて目を逸らした。
俯いた。
でもまた見てくる。
俯かせたんだ。
人形の頭を押して。
凹んだ頭は。
元に戻って。
俺を見る。
また見てる。
悪い気分じゃない。
構って欲しい。
俺の心を。
写してる。
こっち見て。
かまって。
そんな声が。
聞こえてくる。
わたしはくもこ。
おにんぎょう。
じゃなくて。
ぬいぐるみ。
くもの。
くろいあたま。
くろくて。
むらさきのけの。
ちがう。
けさきがむらさきの。
どうたい。
むらさきのうで。
あし。
てはくろ。
あしさきはくろ。
みどりのめ。
くろめ。
おれんじのめ。
くろめ。
みるの。
かれを。
すきよ。
かれを。
なでられた。
やった。
うれしいな。
だいすき。
またみた。
めがあう。
うれしい。
やった。
すきよ。
だいすき。
しゃべりかた。
とくちょうてき。
どくとく。
ものしずか。
じゃなくて。
さわがしい。
ひとりで。
かわいそう。
かわいい。
かっこいい。
えがおが。
あしながい。
うでもながい。
きんにくしつ。
すごいの。
ばすけじょうず。
みてるの。
すごいとこ。
みてるの。
なかないで。
みてるよ。
かまって。
かまったげる。
さわって。
もっと。
あたまなでて。
もっと。
すきよ。
あたたかい。
たいおんたかい。
あたたかい。
ぬくもり。
これが。
すきよ。
あいしてる。
転生したらシルバーウルフっていう剣と魔法の世界によくいる魔物になっていた。
最初の敵がくっそ怖い化けグモだったんだけど、何故か種族も何もかも不明で。
その飼い主らしい青年に手なづけられた。
いや、その、本能が甘やかされることに喜んじゃって。
ていうか、この蜘蛛メスじゃね?って思うんだよね。
夜起きたら、飼い主を撫でて微笑む女の人と、見当たらない蜘蛛。
いや、そうだろ。
本人?だろ。
蜘蛛の子供で、蜘蛛子。
イメージは小さい男の子なんだけど、呼びやすいから蜘蛛子にした。
黒がメインの毛色。
胴は毛先が紫で、6本腕は黒い足先を除いて紫色の体毛。
淡いグリーンと穏やかなオレンジのオッドアイ。
どこにいても見てくる、黒くて大きな瞳が特徴。
可愛らしいぬいぐるみの蜘蛛子は、ふとした瞬間に生きた中型タラテクトになる。
この世界に来たとき、なんで飾ってるだけのぬいぐるみが一緒に転生したんだろうと思ったけど。
危ないとき、助けてくれたんだ。
きっと蜘蛛子は、僕のヒーローなんだ。
蜘蛛子とは、大きな駅ビルの二階出口(歩道橋みたいに二階で駅と行き来出来るとこだった)前のぬいぐるみの出店で出会った。
僕は当時忍者亀にハマったばかりで、そのキャラのぬいぐるみ(人形?とりあえず、著作権は確認したよ)を見つけてお母さんに買ってもらおうと思った。
そしたら、その隣に蜘蛛子がいたんだ。
ハロウィンが近かったから、いっぱい可愛い子達がいる中で、蜘蛛。
可愛いんだけど、それより柔らかで手のひらからはみ出る程度の大きさの方が大事。
触り心地を気に入って二体とも親に強請ったら、じゃあクリスマスプレゼントねって買ってくれた。
消費税をなくして3600円で買わせてくれた。
お姉さん優しかったな。
蜘蛛子は特別に忍者亀のフィギュアコーナーに飾ってあげた。
丸みを帯びた脚がかわいくて、買ったばかりの数日はにこにこ蜘蛛子を眺めてた気がする。
「クゥ~ン、クゥンクゥンクゥ~ン」
銀狼の甘え声が聞こえてくる。
お腹が空いたのかな?
おすわりして僕の頭に顎を乗せて、グルグル喉を鳴らしてる。
もう、銀狼ってば。
お腹空いたの?気持ちよくなりたいの?
この子は蜘蛛子が従わせたこの森の北区のヌシで、シルバーウルフっていう種族らしい。
僕のこと食べようとしてたから、ただでさえ大きい銀狼の、2倍以上に大きくなった蜘蛛子がふたつの目(ぬいぐるみだから目は8個ないんだ)で見つめたら、降伏するみたいにお腹を見せて地面に倒れ込んだんだ。
たぶん怖かったんだろうなぁ。
僕だって蜘蛛子がこんなに可愛いんだって知らなかったら、あまりの怖さでお漏らししてたと思うし。
蛍光色の黄緑と黄色の目で、ギョロッと見てくるんだもの。
目の色変えるのは反則だよね。
助けてくれたからめいっぱい甘やかして宥めて、銀狼って名前つけてシルバーウルフも飼うことにしたんだ。
事が終わってから、銀狼が蜘蛛子が僕の肩の上でぬいぐるみになってるの見て「ワフゥ?!!」って驚いてたのは、人間みたいな反応でけっこうおもしろかったよ。
「はい、ドラゴン肉。焼く?生で平気?」
言葉を理解出来るみたいだから、なるべく話しかけるようにしてる。
いつか人間の言葉が話せるようになったら面白いなーっていうのがひとつと、単に僕の独り言が多いっていうのがひとつ。
あとは、飼い犬みたいにある程度理解してくれたら指示通り動かせるかなって思って。
右とか左を覚えさせたら背中に乗せてもらって移動できそうじゃない?
いつかやってみたいな。
「……クゥン」
「焼くの?ミディアム?レア?ウェルダン?」
タシッ
「ミディアムね、ちょっと待ってて」
順番変えても焼き具合は理解してるんだよねー。
人形を買ったんだ。
人形を買ったんだ。
教室にそれはいた。
じっとこっちを見てくる。
その瞳は泳ぐ。
カラーの液体が入った。
プラスチックの目の中で。
黒いビーズだから。
見つめられている気がする。
どこにいても。
気になる。
何を見られているのか。
瞳の向かう先。
俺の視線を捉えようとする。
俺が気になるもの。
それに気になっている。
頭を撫でた。
初めて動いた。
頭に手を当てた。
初めて目を逸らした。
俯いた。
でもまた見てくる。
俯かせたんだ。
人形の頭を押して。
凹んだ頭は。
元に戻って。
俺を見る。
また見てる。
悪い気分じゃない。
構って欲しい。
俺の心を。
写してる。
こっち見て。
かまって。
そんな声が。
聞こえてくる。
わたしはくもこ。
おにんぎょう。
じゃなくて。
ぬいぐるみ。
くもの。
くろいあたま。
くろくて。
むらさきのけの。
ちがう。
けさきがむらさきの。
どうたい。
むらさきのうで。
あし。
てはくろ。
あしさきはくろ。
みどりのめ。
くろめ。
おれんじのめ。
くろめ。
みるの。
かれを。
すきよ。
かれを。
なでられた。
やった。
うれしいな。
だいすき。
またみた。
めがあう。
うれしい。
やった。
すきよ。
だいすき。
しゃべりかた。
とくちょうてき。
どくとく。
ものしずか。
じゃなくて。
さわがしい。
ひとりで。
かわいそう。
かわいい。
かっこいい。
えがおが。
あしながい。
うでもながい。
きんにくしつ。
すごいの。
ばすけじょうず。
みてるの。
すごいとこ。
みてるの。
なかないで。
みてるよ。
かまって。
かまったげる。
さわって。
もっと。
あたまなでて。
もっと。
すきよ。
あたたかい。
たいおんたかい。
あたたかい。
ぬくもり。
これが。
すきよ。
あいしてる。
転生したらシルバーウルフっていう剣と魔法の世界によくいる魔物になっていた。
最初の敵がくっそ怖い化けグモだったんだけど、何故か種族も何もかも不明で。
その飼い主らしい青年に手なづけられた。
いや、その、本能が甘やかされることに喜んじゃって。
ていうか、この蜘蛛メスじゃね?って思うんだよね。
夜起きたら、飼い主を撫でて微笑む女の人と、見当たらない蜘蛛。
いや、そうだろ。
本人?だろ。
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