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王家の絆編
PART37 仮初めの安らぎ
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一人の戦士の身に起きた事の顛末を知る者は
誰一人としていなかった。
_____________________
この日の空は見事な秋晴れで
一本道を大城真耶が走っている
暫く真耶が一人で走っていると
後方から響竜一が追いついてきた
{ハヤテでの冷やかし防止対策}に
早朝ランニングの名目で
二人でランニングデートするのが
目下の日課だ
いつもの事ながら2人はコースを逸れて
国立公園に行く、時間はそんなになくても
一緒に居るだけで楽しかった
併しこの方法には致命的な欠陥があり
誠矢は薄々感づいていた
真耶が家に帰ると誠矢が待っていて
「此処の所タイムが落ちてるなどうしてだ?」
そう言われた真耶はトボケて
「さあどうしてかしら、ちょっと
シャワー浴びてくるわ」
その真耶に誠矢は
「響とデートしてただろ?冷やかさないから
正直に白状しろよ」と
ニヤニヤして言う兄に「バーカ」と言って
真っ赤になって「自分は二股してるくせに!」
と捨て台詞を吐きバスルームに入って行った
「二股って・・俺ってそう思われているのか?」
誠矢はガルスグレーサーとの戦争中は誰とも
付き合う気がないのだが、どうやら周りには
そう思われている様である。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
坂巻進吾が妻の景子と一緒に
近くの坂巻家所有の山林を歩いていた
進吾が神妙な顔で「こうやってると
戦争中だなんて嘘みたいだな」と言うと
隣の景子が「そうね、私最近この戦争は
もうすぐ終わる気がするわ」と答える
「その通りだ、どちらが勝つにせよ
そう長くないだろう」
そして景子の肩を抱いて
「さあ帰ろう」
景子はまだ目立たないお腹をさすって
幸せそうな笑顔で進吾にハイと答え
2人は家路についた。
進吾は心の底から願う
二人に子供が産まれた時に
こんな戦争がまだ続いていたら親として
申し訳ない気持ちで一杯だった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
勝流水が自分の家の和室で何かを書いている
そこに娘の翔子が「お父さんお客様よ」と
声をかけた、流水は筆を止めると
誰が訪ねてきたかを聞いた、それが
春吉だと聞き応接間に通す様に言う
暫くして勝流水が応接間に行くと
春吉が一礼をして
「至急艦長に御伝えしたい事がありまして」と
話を始めた{其れはハヤテの主砲}に関する
事案だった
デストロイ・カタストロフとの戦闘で
現状のハヤテ主砲の威力が不安になり
全主砲を新技術の{ストリューム・カノン}に
総入れ替えを決定したものの、実は新主砲と
魔導力との{相性が悪く}現状の
アレキサンドライトカノンの方が
性能が上だという事が解ったと言うのだ
併し完成すれば射程は2、7倍
破壊力は1、8倍にもなる
流水はその完成が何時になるのか聞くが、
少なくても後半月は調整に掛かると言う、
二人は黙り込んでしまったが
「話を小さい事に移しましょう・・どう考えても
半月は掛かることですから」
流水もそれに同意し他の問題に着手した
「実は7号の奴なのですが」
「彼奴がまた何かやったのかね?」
ヤレヤレという表情で流水が問いかけると
「どうも荷物運搬用リフトで逃げてるらしいんです」
其れを聞いて冷静な流水も驚いた
「あの200Mを3秒で行き来する奴かね?」
「はい、それで7号に出来るなら人間にも
出来ないことは無いと思うのですが」
春吉が冗談など言う筈もなく
「実用化できれば其れなりのメリットのある
移動手段だと、研究しても良いでしょうか?」
流水は怪我など無いよう念を押してから了承した
『併し7号の悪戯も案外役に立つな』
流水はそう考えながら茶を啜る。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━★付箋文★
「ハクショーイ!!」
ハヤテ最下層戦車専用デッキ
「ドウシタ7号、風邪カ?」
筋肉隆々のゴリラとしか表現の仕様がない
戦車隊隊長のジャックゴルドーが
人間みたいなクシャミをする犬に真面目に
そう聞いている
言ったゴルドーも7号を人間扱いするのに
あまり抵抗はない
『不思議ナ奴、中身ハヤハリ人間デハ?』
______________________
翌日ー
クリスタルアーマーステーション
基地・テラス
イザベル・スミスがテラスに降りると
小原正二・戦闘班副長がギターを鳴らしていた
上にはクリスタルアーマーステーション
下にはハヤテの後方部分と基地の岸壁しかない
イザベルは立ち止まり小原の奏でるギターを
暫く聞き入った。
『小原隊員にこんな(一面)があったなんて』
1曲弾き終えるとイザベルは小原に拍手を送った
「あっ!」小原は真っ赤になって
不味い物を見られたと言う顔をする
「今の曲は誰に向かって贈ったんですか?」
イザベルは全てを知った上でそう訪ねる
絶対Miss鏡子によね・・と
「意地悪言うなよ解ってるんだろ?」
イザベルも流石にそこは察して
「ご免なさい・・でも悩んでいるのよね?」
小原は「そうじゃないけど」そう言いながら
ギターを置いた
「安心してよ秘密は守るわ」
そう言って可愛く微笑みながら
「こう見えて私は心理学を専攻してるの」
ほら話してみてと肩に肩をポンとぶつけて催促
「はぁー」
諦めたように小原が悩みを打ち明け始めた
それは小声で始まる、実は悩みが二つ有り
一つは片想いしている事を
イザベルがわざと驚いた振りをして
「エッ本当に?誰を!」
小原が口に指をあてながらシーと言う、イザベルが
小声で「滝川チーフでしょ?とっくに知ってるわよ」
イザベルがまあアレでバレてないとか言ったら
{笑っちゃうけど}とか言うので
小原は『あれ?君ともあろう者が・・』
成る程~{自分の事}となると解んないのか~
小声で「その{問題}は急がないんだけど・・」
小声で「もう一つは緊急性のある大問題なんだ」
そう深刻そうな顔で言った
イザベルも緊張し聞き耳を立てる
その彼女の耳に可愛い耳だなと思いながら
小原は口を近づけボソボソと悩みを打ち明けた
(此は物理的な問題で・・)
其れを聞いたイザベルは青い瞳をまん丸にして
ハァ~と一つ大きなため息を漏らす
そして残念な人を見る目で小原を見乍
「その悩みは残念ながら私では
協力出来そうにないな~
どちらかと言えば誠矢さんか艦長にでも
相談してみたら?」と突き放した
どうも相当つまらない悩みだったらしい。
「そうする」と小原はイザベルに答え
トボトボとその場を去ったのだが、数分後
血相を変えて逃げる艦長と其れを必死に
追いかける小原の姿があった
「落ち着け小原、話せば解る」
「ですから先程から申し上げている通りです
お願いします」
「私は知らん自分で何とかしろ!」
「お願いしますお願いしますお願いします~」
「拝むな拝むなー!!」
其れを見てイザベルは
「本当にハヤテって飽きないなー」
その横に景子が現れ「一体どうしたのアレ?」
イザベルはシーと口を閉ざし
「武士の情けです話さない約束だから」
景子は{?ハテナ}と言う顔になる
向こうの方で「どうしても駄目なら艦長から
経理部に頼んで下さい」
「解った頼んでやる頼んでやるから私を拝むな!」
「本当ですね艦長」「本当だからもう拝むな」
「勝った~」小原が小躍りして喜ぶ姿に
事情を知るイザベルは頭を振り
まったく100年の恋も冷める姿ね
「・・鏡子さんに知られなくて良かったわ」と
言うが、本当に知られてはいけない相手に
相談してしまう小原は全く救いようがなかった。
______________________
★付箋文★
ある日のことハヤテ主要メンバーが
ジャックゴルドーの新築の家に招待される
Mr.ゴルドーの家は日本建築の武家屋敷で
其処に誠矢達7人が勝流水と春吉進一郎に
ついてやって来のだ。
玄関先に迎えに出たゴルドーに
家を見て誠矢が、ゴルドーらしいなと言う
併しこの余裕は家に入って直ぐ吹っ飛んだ
「足下ヤ壁ヤ天井に気をツケテ下サイ」
「?」全員が一瞬顔を見合わせて
ゴルドーが言ってる先から一番後ろを歩いていた
真耶がキャーと言う叫び声を上げて
それに続きドボーンと言う音が聞こえた
誠矢が「何だ何だ」と慌てていると
ゴルドーが「言ッテルソバカラ引ッカカル」
見ると床が二つに割れている
誠矢が恐る恐るその中を覗き込むと
真耶が濡れ鼠になって水に浸かっていた
真耶がべそを掻き「どうなってるのこの家~」
ゴルドーが「このハウスは凝ッタ仕掛ケガ
沢山アッテ、ソノ一つに引っ掛カッタノダ」
響がゴルドーに縄を借りて真耶を
救出しようとするが縄を投げ入れた時
何かカチンと音が鳴り
ゴルドーの「気をツケロ」の言葉より早く
「エ?」次の瞬間には響の足下の床が抜けた
「うわーっ!」ドボーンと言う音の後に
「此処にハ2重の罠がアルゾ」と説明する
「言うのが遅いよ!!」真耶と響は二人仲良く
濡れ鼠の姿で救出された
「この時期になって」クシュン!
「行水するなんて思わなかったわ」クシュン!
もう季節は秋も終わりの時期である
響が歯を鳴らしながらゴルドーに
「もうガチこんな・ガチ妙なガチ・仕掛けは・・」
ゴルドーが「アルゾ」と事もなさげに言う
その場に居た全員の顔がヒキツった
春吉が何故か突然用事を思い出したからと
引き返そうとする
ゴルドーは腕を組んで
「ソウデスカ・・デハ仕掛ケニ気をツケテ」
此を聞き春吉は
「急ぐ用でも無いから付き合おう」
勝艦長が春吉に小声で「どうやら逃げ損ねたね」
春吉も小声で「その様です」と答える
「それにしてもMr.ゴルドー、一体どう言った趣旨で
この屋敷を建てたんだ、そこの所を聞きたいね」
そう聞く春吉にゴルドーが言うには
大昔の日本屋敷の設計図を
ネットで落札し、その通りに作るよう
{ロボ大工}に任せたらこうなったらしい
{太陽系大戦}が原因で1度も見ないで
戦争が終わり気が付いてみたら後の祭り
この武家屋敷が建っていたそうである。
「ソノ設計図ガ{忍者屋敷}ダッタノダ」
「ノダじゃねえよ!」ガチガチ
その尊い犠牲者が真耶と響のカップルだった
クシュン!クシュン!「此処じゃタオルもないし
先に進む以外・・方法が・・クシュ!」
「叔父サーン」
声のする方を見ると8歳位の少女が
走ってきて、先程真耶と響の二人が落ちた
罠をピョンと飛び越えゴルドーに駆け寄る
「ハイ、メアリーどうして此処に来てルンダイ?」
「パパと一緒ヨ遊びに来たノ!」
「ソウカ遊ぶノハ良ガ仕掛けニハ気をツケルンダヨ」
「ウン大丈夫!」と言うと元来た様に軽やかに
罠に掛からず戻っていく、どうもメアリーは
この屋敷を遊び場にしているらしかった。
そのメアリーを見て春吉はホッとし
「何だもう仕掛けはないのか」と一安心
その春吉の顔をヒキツらせる一言
「アノ子は此処の要領を知ッテルカラネ」
「じゃあ俺達は・・」響がオイオイと言う顔で
「あんな小さな子供にも劣るのか・・・」
真耶と顔を見合わせて「惨めの極地」フエーン~(泣き)
だが屋敷の探索は此処からだった
そこから5mも歩くと壁からいきなり
一本の棒が飛び出してくる
坂巻は其れを難なく避けて壁に背中を付けた
だが併し壁が後ろに倒れたのである
「ワッ!!」と叫ぶ坂巻に今度は
水が横川から吹き出す
だが其処は流石の坂巻進吾、水を
避けてすぐさま立ち上がる「フッ他愛ない」
その時上から水が・・・ザバーっと
ゴルドーが「万有引力ノ法則」と説明を入れる
濡れ鼠になった進吾がゴルドーに
「アンタ昔、水芸でもやってたのかい?」
ゴルドーは両肩を竦めてノーノー
戦車オンリー、と言いながら
「其れヨリ其処ハヤクドイタ方ガイイゾ」
と一言足した
言い終わる前に壁が元の位置に戻って
坂巻が床にグテーと寝そべった
「ソウナルカラナ」
坂巻も濡れ鼠姿となり響に肩を叩かれて
「ナカマ」と言われる
グア~ンと坂巻が珍しく落ち込んだ
「なあ景子・・俺はあんな小さな少女にも
負ける駄目な男だ」
景子は持ってるハンカチで坂巻の髪を拭きながら
「何を言ってるのです、しっかりして下さい」
と叱咤したが
「坂巻流{次代党首}ならば如何なる時でも
冷静に事態を処理せねばならんと言うのに」
「油断しただけですよ」
「我が流派に油断という文字はない
君も心得ているだろう?」
「それはその通りですが・・」
「亡くなった先代党首の爺様も言っていた
油断は知らずに剣の山に立っている様な物だと」
勝艦長は感心した様に頷きながら
「君の祖父殿は良いことを云われたな
全くその通りだ」そう言ってるうちに
ゴルドーが
「此処の仕掛けはチョット故障シテテ
気を付けた方がイイ」と言った所に、
サイバドック7号が現れた
「何でコイツが此処に!?」
「神出鬼没かコイツ」
忍者屋敷と聞いてから現れそうな気がしてた
誠矢と坂巻それに響が、そのまま横を
通り過ぎていく7号を見ていると
いきなり前後に鉄格子が天井から落ちてきて
壁と天井から大量の水が噴き出した
進吾がゴルドーに
「やっぱりアンタ水芸やってたんだろ!?」
ゴルドーは首を振り肩を竦める
ジェスチャーで「違ウと言ウに」と答える
そうするうちに誠矢達はやっと
ゴルドー屋敷の奥の鉄扉の前まで到着した
勝が感心し「ほほ~う」と声を漏らし
誠矢も「凄いな」と感想を言う
壁と言わず天井と言わず日本刀を始め
長槍や手裏剣等の武器でギッシリと埋まっていた
一本の日本刀を手に取り流水が呻いた
「此は、昭和新刀だ」
ゴルドーが勝艦長に
「私ガ一番大切にシテイルノハ此デス」
そう言うと一つの箱を持ち上げて刀を取り出した
「何処かの大名が造らせた物ラシイノデスガ誰が
打った物か解らないノデス」
その刀は見事に羽ばたく鳥が彫り込まれている
勝艦長が「これは」と言い
「博物館が欲しがりそうな」と
言葉を続けると
「確カニ譲ッテ欲しいとシツコいです」
そう言ってもうウンザリな顔をする
だが「此は我が家宝!絶対に売リマセン」と
キッパリ言い放つ
その横から春吉が刀の柄に注目し
真珠や翡翠をはめ込んである刀なんて
始めてみますね、と感想をもらす
艦長達の好印象に気を良くしたゴルドーが
倉の奥から次から次にコレクションを持ち出し
いつのまにか品評会に成っていた。
誠矢はその中から一本の刀を持つと進吾に見せた
風呂に入りサッパリして戻ってきた着物姿の坂巻は
その刀を見て「超骨董品だな此は」
其れは胴刀だった「実物を見るのは初めてだ」
これ又坂巻同様、風呂に入りサッパリし
借りた着物に袖を通した響竜一が加わる
「ソレハこの家を建ててスグニ手に入れた物ダ」
「それならコレクション第1号ですね」
其処に着物に着替えた艶やかな真耶が風呂から
戻ってきた「お帰り真耶」と言う誠矢に
聞いて誠矢兄さん此処のお風呂・男女用に
分かれているのよと報告した
「真耶隊員と混浴ジャナクテ残念だったな響隊員」
7号が頭に手拭いを乗せて現れた
それを指さし響はもの凄い目で睨みながら言った
「おま・・ドッチの風呂に入った?」
7号は指を二本立て歯を見せる
「何が勝利のVサインだテメー!!」
_______________________
★付箋文★
その翌日の夕方
7号を始め当直の者は全員
クリスタルアーマーステーションに戻った
・ハヤテ{第一艦橋司令室}
そして夜になり「整備完了しました」
景子も一仕事を終えた
コンピューター班はコンガラクが
{予想に反して}
使えると言う事が解りその結果
イザベルは本格的に{レーダー班}に
組み込まれた。
二人は新技術のレーダーの整備がやっと終わり
席を離れハヤテ居住区の自分の部屋に向かう
その途中で一つの話題がイザベルを驚かした
「エエ!景子さんはハヤテを降りるんですか?」
景子はお腹を触りながら
「そうね・・もうそんなに長く乗ってる訳には
いかなくなるわね」と言った
イザベルは景子の様子に理由は聞くまでもなく
「あと・・どれくらいですか?」
景子は指を折りながら数字を数え
「良くて・・一ヶ月ね」と答えた
イザベルは「寂しくなりますね」と言う
でも景子の引退よりも更に衝撃的な事実が
景子の口から語られる
「それよりあなたが此から頑張らないと」
景子の言った意味が解らない「?」
「だからレーダー班の班長は貴女がやるのよ」
えええええーーっ!!?
「そんなの無理です!!」
景子はイザベルの肩に手を置き
「私だって出来たんだから優秀な貴女なら
安心して任せることが出来るわ」
イザベルは黙り込んでしまった
其れを見て景子は
「良かったら私から艦長に頼んで貴女に
補佐役を付けてくれるように手配してあげるわ」
「そんな・・私が人を使うなんて・・」
「困ったわね」
イザベルは余りに若くそして優秀過ぎた、
何でも自分でやってしまう悪い癖がある、
天才故の悩みだ
此までは景子がリーダーシップをとり
この才女を上手く活かしていた
会話が止まったその二人に床下から
顔を出した春吉が声を掛ける
「チョット其処の二人手を貸してくれないか?」
景子が前屈みで春吉にどうしたのか訪ねると
どうやら作業中に足が抜けなくなってしまった
との事だった
何やってるんですとイザベルが呆れ顔で言う
春吉は違う意味に捉え
「実は高速リフトを人間が使えないか
調べてたんだ」
別に聞きたかった訳じゃないがイザベルは
興味を引かれ「そんなの使えるんですか?」
「転移ゲートが使えるのに、わざわざそんな
危なっかしい移動手段をする意味が分からない」
「確かに此は一度に2人しか運べないが、
何でも絶対はない{違う手}は常に研究しないとね」
「そうですか・・」
春吉の意識が以前より変化したと
イザベルは感じた『やっぱり
ウルフシューター将軍の影響なのかな?』
「其れで君達はこんな時間まで何を?」
景子は前屈みをやめて姿勢を正し
「新レーダーの整備がやっと終わったので
部屋に戻って休もうと思っているんです」と
春吉には耳の痛い話しに
「そうかそうか君は身重なんだ休んだ方が良い」
じゃあと言って二人はそのままその場を離れた
暫くして「景子さん」とイザベルが話しかける
「何?」と聞き返す景子
「私達何か忘れている様な気が
するんですけど・・」
景子も指をコメカミに当て
「そう言われてみると・・そんな気が」
「何だろう?」「何でしょう?」
二人は少し考えて「気にしても始まりませんね」
「それもそうね」二人はそのまま行ってしまった
━━━━━━━━━━━━━━━━━━暫し後
『そうか景子隊員がハヤテで第1号だな
赤ん坊が生まれたら誠に目出度い事だな・・』
春吉が感慨深いと天井を見上げながら
そう思っていると
「ン・・目出度くない・・私はどうなるんだ?
忘れられてるじゃないか!!足が抜けない!
誰か助けてくれ!誰かぁああ!!」
忘れられた男、春吉進一郎であった。
______________________
★付箋文★
サイバドッグ7号がキョロキョロと当たりを
見回しながら抜き足差し足で歩いてくる
さすが元{忍犬}
やがて7号は北本医師の部屋の前に来て
中を確かめる「しめしめ御留守ですね」
そう言うと針金の束を取り出し
クイッと曲げてキーカードの穴に差し込みながら
ガチャガチャとやる、すると不思議な事に
鍵が開いたのである。
ナーハハハと笑い7号は北本医師の部屋に忍び込み
中をキョロキョロ見渡しながら物色する
『北本先生の酒倉は何処で御座るニンニン』
印を結びながら忍び足で探し始めた
やがて床のカーペットをめくり床下収納を見つけて
『ついに探り当てましたぞニンニン』
其処には日本酒の瓶が数本揃っていた
7号はそのうち1本を引っ張り出して
収納の扉を締めてからカーペットを
元に戻すとサササと部屋を出て元通り
ドアに鍵を掛けた。
同じ頃_艦長室で
勝艦長が日本酒を一杯やっていた
『酒は百薬の長とは良く言ったものだ』
その時、通風孔のカバーが外れて床に落ちた
『何だ?』
流水は通風孔をジッと睨みそこから
7号が顔を出す「バア」
艦長は慌てて酒を隠すが
「艦長、勤務中に飲酒は駄目で御座るよ」
結局のところ勝艦長は口止めに酒とおつまみを
7号にせしめられる
貰うものを貰うと7号はサササと通風孔に消えた
『ヤレヤレ狐に摘まれたみたいだな』
_______________________
★付箋文★
ハヤテ_居住区
深夜となり景子がイザベルの部屋をノックすると
中からガウンを羽織った姿でイザベル現れた
アクビをしながら「景子さん、どうしたのですか?」
景子はコメカミを押しながら「忘れてたのよ・・」
「?」忘れてた何を、イザベルは頭を掻く
景子が「春吉さんのこと!!」と言って
やっと「アッ」と思い出した
二人は駆け足で救助に向かう
「いけない!春吉さん足が抜けないって
言ってたんだった!」
「私もすっかり忘れてて」
景子もやらかしたと言う顔をしている
二人は直ぐに春吉の居た場所に戻った
すると驚いた事に
春吉は大の字になって寝てる
そんな彼を体を揺すって起こす
「5時間目にしてやっと思い出してくれたね」
二人は声を揃え{すみません!」と謝罪した
_____________________
★付箋文★
ハヤテ_テラス
テラスには何かとハヤテの主要メンバーが集まる
『誠矢兄さんの馬鹿!二股のくせに』
我ながら酷い事を言ってしまったと思い
目が冴えて眠れない真耶がテラスに来ると
サイバドック7号が仲間のサイバドッグ達と一緒に
飲めや歌えの大騒ぎをしていた
響との事で誠矢が何かとからかうのを
返り討ちにしてもまだ腹が治まらない
『妹だってもう一人居るし・・私という妹が居ながら
あの人、生来の二股気質なのよ!!』
真耶がこの宴会に加わるのに時間は掛からなかった。
サイバドッグ達が騒いでいるのを見ているうちに
やがて真耶はツカツカと7号の横に来て
そのまま正座すると7号の持っていた
コップを横取りした
7号が驚いて「あっそれ我が輩の・・」と言っても
「そんなの関係ない!」と叫ぶと
真耶はその酒を一気に飲み干し7号の前に突き出し
「お代わり頂戴!」
7号達は唖然としていたが、真耶が再び
「どうしたの、お代わり頂戴」
その迫力に気圧され
「ハ・・ハイハイ只今お注ぎ致します!」
7号は敬語を使い真耶のコップに酒を注いだ
真耶は其れを又しても一気に飲み干し
チラッと7号の持つ瓶を見ていきなりそれを
手からもぎ取り自分で注ぎ始める
「たた・・大変だ・・急いで
大城{総戦闘隊長}殿にお知らせしろ」
「もはや我等の手には負えんぞ!」
7号は誠矢を呼びに走った、酔いなどとうに
醒めている!
「総戦闘隊長!大変!大変!一大事に御座る!」
誠矢が駆けつけると真耶がもう出来上がっていた
「7号、御前等また真耶に酒を」
7号は全力で否定した
「違ゃいます!違ゃいますって!
誓って今回は真耶チーフが勝手に」
「仕方ない奴だな~ホラ帰るぞ真耶」
そう言って手を差し出すと
その手をピシャリと叩き
「何よ偉そうに~二股誠矢」
「おま・・っ」誠矢は一瞬にして
表情が凍り付く
誠矢は7号に真耶が何時から飲んでるかを聞いた
そんなのまだ7分程ですよぉおと7号が証言する
7分でこんなに酔っぱらうか?
どれほど飲んだ?と聞くと7号はコップ3杯と答える
「7分でコップ3杯って一気のみじゃないか!」
そりゃベロベロにもなる・・
誠矢はグテーとなった真耶を抱い上げ
居住区に向かう
『それにしても{二股誠矢}には参ったな
そろそろ結論を出さないと・・』
二人が去ったのを見送って7号達サイバドック達は
1カ所に固まり口々に
「真耶チーフはヤバイ」
「我が輩、悪い夢見そう」
「拙者もで御座る」
などと泣きべそを掻いた、後に彼等はこの事件を
{史上最大最悪の宴会ハルマゲドン}として
記憶に留めた。トサ
_______________________
★付箋文★
誰一人としていなかった。
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この日の空は見事な秋晴れで
一本道を大城真耶が走っている
暫く真耶が一人で走っていると
後方から響竜一が追いついてきた
{ハヤテでの冷やかし防止対策}に
早朝ランニングの名目で
二人でランニングデートするのが
目下の日課だ
いつもの事ながら2人はコースを逸れて
国立公園に行く、時間はそんなになくても
一緒に居るだけで楽しかった
併しこの方法には致命的な欠陥があり
誠矢は薄々感づいていた
真耶が家に帰ると誠矢が待っていて
「此処の所タイムが落ちてるなどうしてだ?」
そう言われた真耶はトボケて
「さあどうしてかしら、ちょっと
シャワー浴びてくるわ」
その真耶に誠矢は
「響とデートしてただろ?冷やかさないから
正直に白状しろよ」と
ニヤニヤして言う兄に「バーカ」と言って
真っ赤になって「自分は二股してるくせに!」
と捨て台詞を吐きバスルームに入って行った
「二股って・・俺ってそう思われているのか?」
誠矢はガルスグレーサーとの戦争中は誰とも
付き合う気がないのだが、どうやら周りには
そう思われている様である。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━
坂巻進吾が妻の景子と一緒に
近くの坂巻家所有の山林を歩いていた
進吾が神妙な顔で「こうやってると
戦争中だなんて嘘みたいだな」と言うと
隣の景子が「そうね、私最近この戦争は
もうすぐ終わる気がするわ」と答える
「その通りだ、どちらが勝つにせよ
そう長くないだろう」
そして景子の肩を抱いて
「さあ帰ろう」
景子はまだ目立たないお腹をさすって
幸せそうな笑顔で進吾にハイと答え
2人は家路についた。
進吾は心の底から願う
二人に子供が産まれた時に
こんな戦争がまだ続いていたら親として
申し訳ない気持ちで一杯だった。
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勝流水が自分の家の和室で何かを書いている
そこに娘の翔子が「お父さんお客様よ」と
声をかけた、流水は筆を止めると
誰が訪ねてきたかを聞いた、それが
春吉だと聞き応接間に通す様に言う
暫くして勝流水が応接間に行くと
春吉が一礼をして
「至急艦長に御伝えしたい事がありまして」と
話を始めた{其れはハヤテの主砲}に関する
事案だった
デストロイ・カタストロフとの戦闘で
現状のハヤテ主砲の威力が不安になり
全主砲を新技術の{ストリューム・カノン}に
総入れ替えを決定したものの、実は新主砲と
魔導力との{相性が悪く}現状の
アレキサンドライトカノンの方が
性能が上だという事が解ったと言うのだ
併し完成すれば射程は2、7倍
破壊力は1、8倍にもなる
流水はその完成が何時になるのか聞くが、
少なくても後半月は調整に掛かると言う、
二人は黙り込んでしまったが
「話を小さい事に移しましょう・・どう考えても
半月は掛かることですから」
流水もそれに同意し他の問題に着手した
「実は7号の奴なのですが」
「彼奴がまた何かやったのかね?」
ヤレヤレという表情で流水が問いかけると
「どうも荷物運搬用リフトで逃げてるらしいんです」
其れを聞いて冷静な流水も驚いた
「あの200Mを3秒で行き来する奴かね?」
「はい、それで7号に出来るなら人間にも
出来ないことは無いと思うのですが」
春吉が冗談など言う筈もなく
「実用化できれば其れなりのメリットのある
移動手段だと、研究しても良いでしょうか?」
流水は怪我など無いよう念を押してから了承した
『併し7号の悪戯も案外役に立つな』
流水はそう考えながら茶を啜る。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━★付箋文★
「ハクショーイ!!」
ハヤテ最下層戦車専用デッキ
「ドウシタ7号、風邪カ?」
筋肉隆々のゴリラとしか表現の仕様がない
戦車隊隊長のジャックゴルドーが
人間みたいなクシャミをする犬に真面目に
そう聞いている
言ったゴルドーも7号を人間扱いするのに
あまり抵抗はない
『不思議ナ奴、中身ハヤハリ人間デハ?』
______________________
翌日ー
クリスタルアーマーステーション
基地・テラス
イザベル・スミスがテラスに降りると
小原正二・戦闘班副長がギターを鳴らしていた
上にはクリスタルアーマーステーション
下にはハヤテの後方部分と基地の岸壁しかない
イザベルは立ち止まり小原の奏でるギターを
暫く聞き入った。
『小原隊員にこんな(一面)があったなんて』
1曲弾き終えるとイザベルは小原に拍手を送った
「あっ!」小原は真っ赤になって
不味い物を見られたと言う顔をする
「今の曲は誰に向かって贈ったんですか?」
イザベルは全てを知った上でそう訪ねる
絶対Miss鏡子によね・・と
「意地悪言うなよ解ってるんだろ?」
イザベルも流石にそこは察して
「ご免なさい・・でも悩んでいるのよね?」
小原は「そうじゃないけど」そう言いながら
ギターを置いた
「安心してよ秘密は守るわ」
そう言って可愛く微笑みながら
「こう見えて私は心理学を専攻してるの」
ほら話してみてと肩に肩をポンとぶつけて催促
「はぁー」
諦めたように小原が悩みを打ち明け始めた
それは小声で始まる、実は悩みが二つ有り
一つは片想いしている事を
イザベルがわざと驚いた振りをして
「エッ本当に?誰を!」
小原が口に指をあてながらシーと言う、イザベルが
小声で「滝川チーフでしょ?とっくに知ってるわよ」
イザベルがまあアレでバレてないとか言ったら
{笑っちゃうけど}とか言うので
小原は『あれ?君ともあろう者が・・』
成る程~{自分の事}となると解んないのか~
小声で「その{問題}は急がないんだけど・・」
小声で「もう一つは緊急性のある大問題なんだ」
そう深刻そうな顔で言った
イザベルも緊張し聞き耳を立てる
その彼女の耳に可愛い耳だなと思いながら
小原は口を近づけボソボソと悩みを打ち明けた
(此は物理的な問題で・・)
其れを聞いたイザベルは青い瞳をまん丸にして
ハァ~と一つ大きなため息を漏らす
そして残念な人を見る目で小原を見乍
「その悩みは残念ながら私では
協力出来そうにないな~
どちらかと言えば誠矢さんか艦長にでも
相談してみたら?」と突き放した
どうも相当つまらない悩みだったらしい。
「そうする」と小原はイザベルに答え
トボトボとその場を去ったのだが、数分後
血相を変えて逃げる艦長と其れを必死に
追いかける小原の姿があった
「落ち着け小原、話せば解る」
「ですから先程から申し上げている通りです
お願いします」
「私は知らん自分で何とかしろ!」
「お願いしますお願いしますお願いします~」
「拝むな拝むなー!!」
其れを見てイザベルは
「本当にハヤテって飽きないなー」
その横に景子が現れ「一体どうしたのアレ?」
イザベルはシーと口を閉ざし
「武士の情けです話さない約束だから」
景子は{?ハテナ}と言う顔になる
向こうの方で「どうしても駄目なら艦長から
経理部に頼んで下さい」
「解った頼んでやる頼んでやるから私を拝むな!」
「本当ですね艦長」「本当だからもう拝むな」
「勝った~」小原が小躍りして喜ぶ姿に
事情を知るイザベルは頭を振り
まったく100年の恋も冷める姿ね
「・・鏡子さんに知られなくて良かったわ」と
言うが、本当に知られてはいけない相手に
相談してしまう小原は全く救いようがなかった。
______________________
★付箋文★
ある日のことハヤテ主要メンバーが
ジャックゴルドーの新築の家に招待される
Mr.ゴルドーの家は日本建築の武家屋敷で
其処に誠矢達7人が勝流水と春吉進一郎に
ついてやって来のだ。
玄関先に迎えに出たゴルドーに
家を見て誠矢が、ゴルドーらしいなと言う
併しこの余裕は家に入って直ぐ吹っ飛んだ
「足下ヤ壁ヤ天井に気をツケテ下サイ」
「?」全員が一瞬顔を見合わせて
ゴルドーが言ってる先から一番後ろを歩いていた
真耶がキャーと言う叫び声を上げて
それに続きドボーンと言う音が聞こえた
誠矢が「何だ何だ」と慌てていると
ゴルドーが「言ッテルソバカラ引ッカカル」
見ると床が二つに割れている
誠矢が恐る恐るその中を覗き込むと
真耶が濡れ鼠になって水に浸かっていた
真耶がべそを掻き「どうなってるのこの家~」
ゴルドーが「このハウスは凝ッタ仕掛ケガ
沢山アッテ、ソノ一つに引っ掛カッタノダ」
響がゴルドーに縄を借りて真耶を
救出しようとするが縄を投げ入れた時
何かカチンと音が鳴り
ゴルドーの「気をツケロ」の言葉より早く
「エ?」次の瞬間には響の足下の床が抜けた
「うわーっ!」ドボーンと言う音の後に
「此処にハ2重の罠がアルゾ」と説明する
「言うのが遅いよ!!」真耶と響は二人仲良く
濡れ鼠の姿で救出された
「この時期になって」クシュン!
「行水するなんて思わなかったわ」クシュン!
もう季節は秋も終わりの時期である
響が歯を鳴らしながらゴルドーに
「もうガチこんな・ガチ妙なガチ・仕掛けは・・」
ゴルドーが「アルゾ」と事もなさげに言う
その場に居た全員の顔がヒキツった
春吉が何故か突然用事を思い出したからと
引き返そうとする
ゴルドーは腕を組んで
「ソウデスカ・・デハ仕掛ケニ気をツケテ」
此を聞き春吉は
「急ぐ用でも無いから付き合おう」
勝艦長が春吉に小声で「どうやら逃げ損ねたね」
春吉も小声で「その様です」と答える
「それにしてもMr.ゴルドー、一体どう言った趣旨で
この屋敷を建てたんだ、そこの所を聞きたいね」
そう聞く春吉にゴルドーが言うには
大昔の日本屋敷の設計図を
ネットで落札し、その通りに作るよう
{ロボ大工}に任せたらこうなったらしい
{太陽系大戦}が原因で1度も見ないで
戦争が終わり気が付いてみたら後の祭り
この武家屋敷が建っていたそうである。
「ソノ設計図ガ{忍者屋敷}ダッタノダ」
「ノダじゃねえよ!」ガチガチ
その尊い犠牲者が真耶と響のカップルだった
クシュン!クシュン!「此処じゃタオルもないし
先に進む以外・・方法が・・クシュ!」
「叔父サーン」
声のする方を見ると8歳位の少女が
走ってきて、先程真耶と響の二人が落ちた
罠をピョンと飛び越えゴルドーに駆け寄る
「ハイ、メアリーどうして此処に来てルンダイ?」
「パパと一緒ヨ遊びに来たノ!」
「ソウカ遊ぶノハ良ガ仕掛けニハ気をツケルンダヨ」
「ウン大丈夫!」と言うと元来た様に軽やかに
罠に掛からず戻っていく、どうもメアリーは
この屋敷を遊び場にしているらしかった。
そのメアリーを見て春吉はホッとし
「何だもう仕掛けはないのか」と一安心
その春吉の顔をヒキツらせる一言
「アノ子は此処の要領を知ッテルカラネ」
「じゃあ俺達は・・」響がオイオイと言う顔で
「あんな小さな子供にも劣るのか・・・」
真耶と顔を見合わせて「惨めの極地」フエーン~(泣き)
だが屋敷の探索は此処からだった
そこから5mも歩くと壁からいきなり
一本の棒が飛び出してくる
坂巻は其れを難なく避けて壁に背中を付けた
だが併し壁が後ろに倒れたのである
「ワッ!!」と叫ぶ坂巻に今度は
水が横川から吹き出す
だが其処は流石の坂巻進吾、水を
避けてすぐさま立ち上がる「フッ他愛ない」
その時上から水が・・・ザバーっと
ゴルドーが「万有引力ノ法則」と説明を入れる
濡れ鼠になった進吾がゴルドーに
「アンタ昔、水芸でもやってたのかい?」
ゴルドーは両肩を竦めてノーノー
戦車オンリー、と言いながら
「其れヨリ其処ハヤクドイタ方ガイイゾ」
と一言足した
言い終わる前に壁が元の位置に戻って
坂巻が床にグテーと寝そべった
「ソウナルカラナ」
坂巻も濡れ鼠姿となり響に肩を叩かれて
「ナカマ」と言われる
グア~ンと坂巻が珍しく落ち込んだ
「なあ景子・・俺はあんな小さな少女にも
負ける駄目な男だ」
景子は持ってるハンカチで坂巻の髪を拭きながら
「何を言ってるのです、しっかりして下さい」
と叱咤したが
「坂巻流{次代党首}ならば如何なる時でも
冷静に事態を処理せねばならんと言うのに」
「油断しただけですよ」
「我が流派に油断という文字はない
君も心得ているだろう?」
「それはその通りですが・・」
「亡くなった先代党首の爺様も言っていた
油断は知らずに剣の山に立っている様な物だと」
勝艦長は感心した様に頷きながら
「君の祖父殿は良いことを云われたな
全くその通りだ」そう言ってるうちに
ゴルドーが
「此処の仕掛けはチョット故障シテテ
気を付けた方がイイ」と言った所に、
サイバドック7号が現れた
「何でコイツが此処に!?」
「神出鬼没かコイツ」
忍者屋敷と聞いてから現れそうな気がしてた
誠矢と坂巻それに響が、そのまま横を
通り過ぎていく7号を見ていると
いきなり前後に鉄格子が天井から落ちてきて
壁と天井から大量の水が噴き出した
進吾がゴルドーに
「やっぱりアンタ水芸やってたんだろ!?」
ゴルドーは首を振り肩を竦める
ジェスチャーで「違ウと言ウに」と答える
そうするうちに誠矢達はやっと
ゴルドー屋敷の奥の鉄扉の前まで到着した
勝が感心し「ほほ~う」と声を漏らし
誠矢も「凄いな」と感想を言う
壁と言わず天井と言わず日本刀を始め
長槍や手裏剣等の武器でギッシリと埋まっていた
一本の日本刀を手に取り流水が呻いた
「此は、昭和新刀だ」
ゴルドーが勝艦長に
「私ガ一番大切にシテイルノハ此デス」
そう言うと一つの箱を持ち上げて刀を取り出した
「何処かの大名が造らせた物ラシイノデスガ誰が
打った物か解らないノデス」
その刀は見事に羽ばたく鳥が彫り込まれている
勝艦長が「これは」と言い
「博物館が欲しがりそうな」と
言葉を続けると
「確カニ譲ッテ欲しいとシツコいです」
そう言ってもうウンザリな顔をする
だが「此は我が家宝!絶対に売リマセン」と
キッパリ言い放つ
その横から春吉が刀の柄に注目し
真珠や翡翠をはめ込んである刀なんて
始めてみますね、と感想をもらす
艦長達の好印象に気を良くしたゴルドーが
倉の奥から次から次にコレクションを持ち出し
いつのまにか品評会に成っていた。
誠矢はその中から一本の刀を持つと進吾に見せた
風呂に入りサッパリして戻ってきた着物姿の坂巻は
その刀を見て「超骨董品だな此は」
其れは胴刀だった「実物を見るのは初めてだ」
これ又坂巻同様、風呂に入りサッパリし
借りた着物に袖を通した響竜一が加わる
「ソレハこの家を建ててスグニ手に入れた物ダ」
「それならコレクション第1号ですね」
其処に着物に着替えた艶やかな真耶が風呂から
戻ってきた「お帰り真耶」と言う誠矢に
聞いて誠矢兄さん此処のお風呂・男女用に
分かれているのよと報告した
「真耶隊員と混浴ジャナクテ残念だったな響隊員」
7号が頭に手拭いを乗せて現れた
それを指さし響はもの凄い目で睨みながら言った
「おま・・ドッチの風呂に入った?」
7号は指を二本立て歯を見せる
「何が勝利のVサインだテメー!!」
_______________________
★付箋文★
その翌日の夕方
7号を始め当直の者は全員
クリスタルアーマーステーションに戻った
・ハヤテ{第一艦橋司令室}
そして夜になり「整備完了しました」
景子も一仕事を終えた
コンピューター班はコンガラクが
{予想に反して}
使えると言う事が解りその結果
イザベルは本格的に{レーダー班}に
組み込まれた。
二人は新技術のレーダーの整備がやっと終わり
席を離れハヤテ居住区の自分の部屋に向かう
その途中で一つの話題がイザベルを驚かした
「エエ!景子さんはハヤテを降りるんですか?」
景子はお腹を触りながら
「そうね・・もうそんなに長く乗ってる訳には
いかなくなるわね」と言った
イザベルは景子の様子に理由は聞くまでもなく
「あと・・どれくらいですか?」
景子は指を折りながら数字を数え
「良くて・・一ヶ月ね」と答えた
イザベルは「寂しくなりますね」と言う
でも景子の引退よりも更に衝撃的な事実が
景子の口から語られる
「それよりあなたが此から頑張らないと」
景子の言った意味が解らない「?」
「だからレーダー班の班長は貴女がやるのよ」
えええええーーっ!!?
「そんなの無理です!!」
景子はイザベルの肩に手を置き
「私だって出来たんだから優秀な貴女なら
安心して任せることが出来るわ」
イザベルは黙り込んでしまった
其れを見て景子は
「良かったら私から艦長に頼んで貴女に
補佐役を付けてくれるように手配してあげるわ」
「そんな・・私が人を使うなんて・・」
「困ったわね」
イザベルは余りに若くそして優秀過ぎた、
何でも自分でやってしまう悪い癖がある、
天才故の悩みだ
此までは景子がリーダーシップをとり
この才女を上手く活かしていた
会話が止まったその二人に床下から
顔を出した春吉が声を掛ける
「チョット其処の二人手を貸してくれないか?」
景子が前屈みで春吉にどうしたのか訪ねると
どうやら作業中に足が抜けなくなってしまった
との事だった
何やってるんですとイザベルが呆れ顔で言う
春吉は違う意味に捉え
「実は高速リフトを人間が使えないか
調べてたんだ」
別に聞きたかった訳じゃないがイザベルは
興味を引かれ「そんなの使えるんですか?」
「転移ゲートが使えるのに、わざわざそんな
危なっかしい移動手段をする意味が分からない」
「確かに此は一度に2人しか運べないが、
何でも絶対はない{違う手}は常に研究しないとね」
「そうですか・・」
春吉の意識が以前より変化したと
イザベルは感じた『やっぱり
ウルフシューター将軍の影響なのかな?』
「其れで君達はこんな時間まで何を?」
景子は前屈みをやめて姿勢を正し
「新レーダーの整備がやっと終わったので
部屋に戻って休もうと思っているんです」と
春吉には耳の痛い話しに
「そうかそうか君は身重なんだ休んだ方が良い」
じゃあと言って二人はそのままその場を離れた
暫くして「景子さん」とイザベルが話しかける
「何?」と聞き返す景子
「私達何か忘れている様な気が
するんですけど・・」
景子も指をコメカミに当て
「そう言われてみると・・そんな気が」
「何だろう?」「何でしょう?」
二人は少し考えて「気にしても始まりませんね」
「それもそうね」二人はそのまま行ってしまった
━━━━━━━━━━━━━━━━━━暫し後
『そうか景子隊員がハヤテで第1号だな
赤ん坊が生まれたら誠に目出度い事だな・・』
春吉が感慨深いと天井を見上げながら
そう思っていると
「ン・・目出度くない・・私はどうなるんだ?
忘れられてるじゃないか!!足が抜けない!
誰か助けてくれ!誰かぁああ!!」
忘れられた男、春吉進一郎であった。
______________________
★付箋文★
サイバドッグ7号がキョロキョロと当たりを
見回しながら抜き足差し足で歩いてくる
さすが元{忍犬}
やがて7号は北本医師の部屋の前に来て
中を確かめる「しめしめ御留守ですね」
そう言うと針金の束を取り出し
クイッと曲げてキーカードの穴に差し込みながら
ガチャガチャとやる、すると不思議な事に
鍵が開いたのである。
ナーハハハと笑い7号は北本医師の部屋に忍び込み
中をキョロキョロ見渡しながら物色する
『北本先生の酒倉は何処で御座るニンニン』
印を結びながら忍び足で探し始めた
やがて床のカーペットをめくり床下収納を見つけて
『ついに探り当てましたぞニンニン』
其処には日本酒の瓶が数本揃っていた
7号はそのうち1本を引っ張り出して
収納の扉を締めてからカーペットを
元に戻すとサササと部屋を出て元通り
ドアに鍵を掛けた。
同じ頃_艦長室で
勝艦長が日本酒を一杯やっていた
『酒は百薬の長とは良く言ったものだ』
その時、通風孔のカバーが外れて床に落ちた
『何だ?』
流水は通風孔をジッと睨みそこから
7号が顔を出す「バア」
艦長は慌てて酒を隠すが
「艦長、勤務中に飲酒は駄目で御座るよ」
結局のところ勝艦長は口止めに酒とおつまみを
7号にせしめられる
貰うものを貰うと7号はサササと通風孔に消えた
『ヤレヤレ狐に摘まれたみたいだな』
_______________________
★付箋文★
ハヤテ_居住区
深夜となり景子がイザベルの部屋をノックすると
中からガウンを羽織った姿でイザベル現れた
アクビをしながら「景子さん、どうしたのですか?」
景子はコメカミを押しながら「忘れてたのよ・・」
「?」忘れてた何を、イザベルは頭を掻く
景子が「春吉さんのこと!!」と言って
やっと「アッ」と思い出した
二人は駆け足で救助に向かう
「いけない!春吉さん足が抜けないって
言ってたんだった!」
「私もすっかり忘れてて」
景子もやらかしたと言う顔をしている
二人は直ぐに春吉の居た場所に戻った
すると驚いた事に
春吉は大の字になって寝てる
そんな彼を体を揺すって起こす
「5時間目にしてやっと思い出してくれたね」
二人は声を揃え{すみません!」と謝罪した
_____________________
★付箋文★
ハヤテ_テラス
テラスには何かとハヤテの主要メンバーが集まる
『誠矢兄さんの馬鹿!二股のくせに』
我ながら酷い事を言ってしまったと思い
目が冴えて眠れない真耶がテラスに来ると
サイバドック7号が仲間のサイバドッグ達と一緒に
飲めや歌えの大騒ぎをしていた
響との事で誠矢が何かとからかうのを
返り討ちにしてもまだ腹が治まらない
『妹だってもう一人居るし・・私という妹が居ながら
あの人、生来の二股気質なのよ!!』
真耶がこの宴会に加わるのに時間は掛からなかった。
サイバドッグ達が騒いでいるのを見ているうちに
やがて真耶はツカツカと7号の横に来て
そのまま正座すると7号の持っていた
コップを横取りした
7号が驚いて「あっそれ我が輩の・・」と言っても
「そんなの関係ない!」と叫ぶと
真耶はその酒を一気に飲み干し7号の前に突き出し
「お代わり頂戴!」
7号達は唖然としていたが、真耶が再び
「どうしたの、お代わり頂戴」
その迫力に気圧され
「ハ・・ハイハイ只今お注ぎ致します!」
7号は敬語を使い真耶のコップに酒を注いだ
真耶は其れを又しても一気に飲み干し
チラッと7号の持つ瓶を見ていきなりそれを
手からもぎ取り自分で注ぎ始める
「たた・・大変だ・・急いで
大城{総戦闘隊長}殿にお知らせしろ」
「もはや我等の手には負えんぞ!」
7号は誠矢を呼びに走った、酔いなどとうに
醒めている!
「総戦闘隊長!大変!大変!一大事に御座る!」
誠矢が駆けつけると真耶がもう出来上がっていた
「7号、御前等また真耶に酒を」
7号は全力で否定した
「違ゃいます!違ゃいますって!
誓って今回は真耶チーフが勝手に」
「仕方ない奴だな~ホラ帰るぞ真耶」
そう言って手を差し出すと
その手をピシャリと叩き
「何よ偉そうに~二股誠矢」
「おま・・っ」誠矢は一瞬にして
表情が凍り付く
誠矢は7号に真耶が何時から飲んでるかを聞いた
そんなのまだ7分程ですよぉおと7号が証言する
7分でこんなに酔っぱらうか?
どれほど飲んだ?と聞くと7号はコップ3杯と答える
「7分でコップ3杯って一気のみじゃないか!」
そりゃベロベロにもなる・・
誠矢はグテーとなった真耶を抱い上げ
居住区に向かう
『それにしても{二股誠矢}には参ったな
そろそろ結論を出さないと・・』
二人が去ったのを見送って7号達サイバドック達は
1カ所に固まり口々に
「真耶チーフはヤバイ」
「我が輩、悪い夢見そう」
「拙者もで御座る」
などと泣きべそを掻いた、後に彼等はこの事件を
{史上最大最悪の宴会ハルマゲドン}として
記憶に留めた。トサ
_______________________
★付箋文★
0
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