19 / 133
3.やっぱり
6
しおりを挟む
親が転勤族で2週間だけいたそいつは少女漫画から出てきたようなビジュアルだった。
髪の毛が地毛で茶色かったのが記憶に残っている。
流れるようなテンポで担任も含めたクラス全員を引き込む自己紹介。
その中で『足が速い』と言ったのが始まりだった。
あいつを質問攻めにしていた奴らと、その2週間だけ即席の取り巻きになっていた比喩的にも実際にも声の大きい女子たちの発案で、当時クラスで一番足が早かった俺と休み時間にどっちが速いか勝負することになった。
クラスのみんなが集まっているところでだいたい50メートル。
結果、俺が勝った。
1回目全力でやって俺のほうがだいぶ早かった。
女子たちから『ええー!?』『ヒドーイ!』とか言われたので、2回目ちょっとだけスタートで手抜きした。いい勝負になって、俺が負けた。
そしたら今度は『手抜きかよおまえー!』『マジメにやりなさいよー!』と男女ともにブーイング。
3回目もう一回本気で走ったら、やっぱり俺のほうが早かった。
たくさんの声はおおむね『やっぱりかぁ』『あーあ…』という力のないものだった。
相手は走り終わった後両ひざに手をついてかがんで息を整え、上体を起こして真っ直ぐ俺を見ると、悔しいなぁと言いながらも握手を求めてくるというなんともフェアプレー精神に満ちたふるまいだった。
観客たちが駆け寄ってきてなんとなく二人を中心に輪ができる。
あいつは改めて『ほんとに速かったよ』と穏やかに笑いながら俺に話しかけた。
俺は上手く返事ができなくて、その間にみんなが話だした。
何を言っていいか、いつ言っていいかわからないうちに、笑いながら俺に流し目を向けるあいつを中心にして輪は俺から離れていった。
かけっこ勝負はその日1日話のタネだった。
もちろんメインは負けたのにかっこいいあいつ。
俺はさりげなく悪役側に寄せられていった。
『アイちゃん足だけはマジで速いからなぁ』
そういってあいつの肩をたたいて笑い合う奴ら。
やる前は『一発かましてやれよ』と俺を囲んではやし立てていたのに。
やっぱ流石だったわーとすれ違いざま俺に一言したやつは、その足であいつのほうに歩いていく。
あいつはわいのわいのとみんなに囲まれて陰日向なく笑みを向けていた。
そう、分かっていたから。
あいつがあんなふうに爽やかでいられたのは、分かっていたからだ。
体育のドッジボールであいつからのパス。
ゆっくりと曲線を描くあのでかいボールでさえ取りこぼす俺のどんくささ。
話しかけられてもどうしていいかわからずに沈黙を作ってしまう。
言葉と言葉を繋げられない。
相手に待ってもらわないと会話が成立しないコミュニケーション力のなさ。
授業で先生に聞かれても解からない。
解っていても上手く答えられない。
ましてあいつみたいに堂々と手を挙げるなんて。
そう。
かけっこ以外のほとんどで、あいつが余裕で勝てることが。
中心は俺じゃなく、あいつであることが。
勝ったのに。
唯一周りに自慢できると思っていた自分の良いところを、あいつにもクラスのみんなにも馬鹿にされたような気がした。
どうにもできなくて、どうにかしようという気持ちもなくて、しょうがないと思いながらも帰りの会が終わって掃除しながらずっとぐずぐずしていた。
たまらなくなって、家に着くよりだいぶ前の帰り道、同じクラスで当然見ていた安藤さんに『今日のかけっこさ、』とそれとなくを装って話しかけた。
何でもいいやと思った。
その時だった。
安藤さんの小さい口が動いて、ああ、に続けて俺の目をまっすぐ見て、さらっと出てきたのは。
『じっさいまひろくんのほうが足速いんだから』
ほめるとか、けなすとか、面白がるとか、どうでもいいとかじゃなく、励ますという感じですらなく。
真顔の安藤さんはすがすがしいほど事実ベースで言い切った。
『…そっか』
瞬きもせず安藤さんのほうを向いたままそう言ってから、目線を外してそのまま前を向いた。
俺の奥のほうにあった何かはすがすがしく別の何かになった。
うれしい? 励まされる?
違う。そういうんじゃない。
ぐずぐずしてもやもやしてだらだら溶けて崩れ落ちそうだった俺の中に『じっさいまひろくんのほうが足速いんだから』という柱が立った感じがしたのだ。
「なんかこう、時々すごく強いというか。何がって言われると…なにかが、としか」
思えば転校生が来た直後も、かけっこ勝負しようかという話で俺が持ち上げられてちょっといい気になっていた時も、ふーんくらいの反応しかしていなかった気がする。
安藤さんは話好きで、帰り道のしょうもない話もほとんどは安藤さんが話題提供して俺が返事をする形で成立していた。
クラスの輪に溶け込んでいけるほう、むしろまとめ役もできるくらいで、だからこそ今女子クラス委員だ。
あの時は、俺の問いかけもどきに対してなんか答えないとまずいかなぁという小学生安藤さん流の気遣いだったのかもしれない。
かいつまんで事の流れだけ話したら、コウダは顎に手を当ててさすりながら言った。
「そうか。ちょっと期待できそうだな」
今の話から何を読み取ったのか、コウダは肩をなでおろしている。
「多分、現実的な考え方の子なんだろう。
世界観はまだまともな方向になっていそうだ」
それはどうだろう。
俺が安藤さんのおっぱいをテスト中に凝視していたことがばれていて、今も人知れずその怒りを蓄えているかもしれない。
気になっていた。
だから安藤さんをリストに入れたのもあるのだが、やっぱり怖い。
コウダがいう現実的な世界観を想像してもだめだ。
職員室前の廊下で『テスト中に女子のおっぱい見てましたごめんなさい』の看板を首からぶら下げている俺。
ひそひそ指さしたり冷たい横目で通り過ぎたりする生徒・先生・親父・母さん・他の学生の保護者各位の前で一日強制座禅みたいな精神攻撃系反省コースが出てきてしまう。
写したA4の手引きにあったような殺すだのなんだのいうのはいまだにピンとこないが、怖いのは怖かった。
「じゃあ行くか」
コウダが捨てた黒い鞄の代わりの、黒い真新しい鞄を斜め掛けして立ち上がる。
後に続いて戸締りをして家を出た。
髪の毛が地毛で茶色かったのが記憶に残っている。
流れるようなテンポで担任も含めたクラス全員を引き込む自己紹介。
その中で『足が速い』と言ったのが始まりだった。
あいつを質問攻めにしていた奴らと、その2週間だけ即席の取り巻きになっていた比喩的にも実際にも声の大きい女子たちの発案で、当時クラスで一番足が早かった俺と休み時間にどっちが速いか勝負することになった。
クラスのみんなが集まっているところでだいたい50メートル。
結果、俺が勝った。
1回目全力でやって俺のほうがだいぶ早かった。
女子たちから『ええー!?』『ヒドーイ!』とか言われたので、2回目ちょっとだけスタートで手抜きした。いい勝負になって、俺が負けた。
そしたら今度は『手抜きかよおまえー!』『マジメにやりなさいよー!』と男女ともにブーイング。
3回目もう一回本気で走ったら、やっぱり俺のほうが早かった。
たくさんの声はおおむね『やっぱりかぁ』『あーあ…』という力のないものだった。
相手は走り終わった後両ひざに手をついてかがんで息を整え、上体を起こして真っ直ぐ俺を見ると、悔しいなぁと言いながらも握手を求めてくるというなんともフェアプレー精神に満ちたふるまいだった。
観客たちが駆け寄ってきてなんとなく二人を中心に輪ができる。
あいつは改めて『ほんとに速かったよ』と穏やかに笑いながら俺に話しかけた。
俺は上手く返事ができなくて、その間にみんなが話だした。
何を言っていいか、いつ言っていいかわからないうちに、笑いながら俺に流し目を向けるあいつを中心にして輪は俺から離れていった。
かけっこ勝負はその日1日話のタネだった。
もちろんメインは負けたのにかっこいいあいつ。
俺はさりげなく悪役側に寄せられていった。
『アイちゃん足だけはマジで速いからなぁ』
そういってあいつの肩をたたいて笑い合う奴ら。
やる前は『一発かましてやれよ』と俺を囲んではやし立てていたのに。
やっぱ流石だったわーとすれ違いざま俺に一言したやつは、その足であいつのほうに歩いていく。
あいつはわいのわいのとみんなに囲まれて陰日向なく笑みを向けていた。
そう、分かっていたから。
あいつがあんなふうに爽やかでいられたのは、分かっていたからだ。
体育のドッジボールであいつからのパス。
ゆっくりと曲線を描くあのでかいボールでさえ取りこぼす俺のどんくささ。
話しかけられてもどうしていいかわからずに沈黙を作ってしまう。
言葉と言葉を繋げられない。
相手に待ってもらわないと会話が成立しないコミュニケーション力のなさ。
授業で先生に聞かれても解からない。
解っていても上手く答えられない。
ましてあいつみたいに堂々と手を挙げるなんて。
そう。
かけっこ以外のほとんどで、あいつが余裕で勝てることが。
中心は俺じゃなく、あいつであることが。
勝ったのに。
唯一周りに自慢できると思っていた自分の良いところを、あいつにもクラスのみんなにも馬鹿にされたような気がした。
どうにもできなくて、どうにかしようという気持ちもなくて、しょうがないと思いながらも帰りの会が終わって掃除しながらずっとぐずぐずしていた。
たまらなくなって、家に着くよりだいぶ前の帰り道、同じクラスで当然見ていた安藤さんに『今日のかけっこさ、』とそれとなくを装って話しかけた。
何でもいいやと思った。
その時だった。
安藤さんの小さい口が動いて、ああ、に続けて俺の目をまっすぐ見て、さらっと出てきたのは。
『じっさいまひろくんのほうが足速いんだから』
ほめるとか、けなすとか、面白がるとか、どうでもいいとかじゃなく、励ますという感じですらなく。
真顔の安藤さんはすがすがしいほど事実ベースで言い切った。
『…そっか』
瞬きもせず安藤さんのほうを向いたままそう言ってから、目線を外してそのまま前を向いた。
俺の奥のほうにあった何かはすがすがしく別の何かになった。
うれしい? 励まされる?
違う。そういうんじゃない。
ぐずぐずしてもやもやしてだらだら溶けて崩れ落ちそうだった俺の中に『じっさいまひろくんのほうが足速いんだから』という柱が立った感じがしたのだ。
「なんかこう、時々すごく強いというか。何がって言われると…なにかが、としか」
思えば転校生が来た直後も、かけっこ勝負しようかという話で俺が持ち上げられてちょっといい気になっていた時も、ふーんくらいの反応しかしていなかった気がする。
安藤さんは話好きで、帰り道のしょうもない話もほとんどは安藤さんが話題提供して俺が返事をする形で成立していた。
クラスの輪に溶け込んでいけるほう、むしろまとめ役もできるくらいで、だからこそ今女子クラス委員だ。
あの時は、俺の問いかけもどきに対してなんか答えないとまずいかなぁという小学生安藤さん流の気遣いだったのかもしれない。
かいつまんで事の流れだけ話したら、コウダは顎に手を当ててさすりながら言った。
「そうか。ちょっと期待できそうだな」
今の話から何を読み取ったのか、コウダは肩をなでおろしている。
「多分、現実的な考え方の子なんだろう。
世界観はまだまともな方向になっていそうだ」
それはどうだろう。
俺が安藤さんのおっぱいをテスト中に凝視していたことがばれていて、今も人知れずその怒りを蓄えているかもしれない。
気になっていた。
だから安藤さんをリストに入れたのもあるのだが、やっぱり怖い。
コウダがいう現実的な世界観を想像してもだめだ。
職員室前の廊下で『テスト中に女子のおっぱい見てましたごめんなさい』の看板を首からぶら下げている俺。
ひそひそ指さしたり冷たい横目で通り過ぎたりする生徒・先生・親父・母さん・他の学生の保護者各位の前で一日強制座禅みたいな精神攻撃系反省コースが出てきてしまう。
写したA4の手引きにあったような殺すだのなんだのいうのはいまだにピンとこないが、怖いのは怖かった。
「じゃあ行くか」
コウダが捨てた黒い鞄の代わりの、黒い真新しい鞄を斜め掛けして立ち上がる。
後に続いて戸締りをして家を出た。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
辺境の最強魔導師 ~魔術大学を13歳で首席卒業した私が辺境に6年引きこもっていたら最強になってた~
日の丸
ファンタジー
ウィーラ大陸にある大国アクセリア帝国は大陸の約4割の国土を持つ大国である。
アクセリア帝国の帝都アクセリアにある魔術大学セルストーレ・・・・そこは魔術師を目指す誰もが憧れそして目指す大学・・・・その大学に13歳で首席をとるほどの天才がいた。
その天才がセレストーレを卒業する時から物語が始まる。
集団転送で異世界へ。 ~神の気まぐれによって?異世界生活~
武雅
ファンタジー
永遠の時に存在する神ネレースの気まぐれによって? その創造神ネレースが管理する異世界に日本から30000人が転送されてしまう。
異世界に転送される前になぜか神ネレースとの面談があり、提示された職業に自分の思い通りの職業が無かったので神にダメ元で希望を言ってみたら希望の職業と望みを叶えられその代償として他の転送者よりも過酷な辺境にある秘境の山奥に送られ元の世界に戻りたい以前に速攻で生命の危機にさらされてしまう!
神が面白半分で決めた事象を達成するとその順位により様々な恩恵を授けるとのこと。
「とりあえず町を目指せ!村ではなく町だ!!」とそれ以外特に神ネレースより目的も与えられず転送された人々は・・
主人公は希望の職業を要求した代償としていきなり森を彷徨いゴブリンに追われることに。
神に与えられた職業の能力を使い、チートを目指し、無事に異世界を生き抜くことを目指しつつ自分と同じ転送された人々を探し現実世界への帰還を模索をはじめる。
習慣も風俗も法律も違う異世界はトラブルだらけで息つく暇もなく、転送されたほかの人たちも暴走し・迷走し、異世界からの人々をめぐって国家単位で争奪戦勃発!?
その時、日本では謎の集団集団失踪や、令和のミステリーとして国家もマスコミも世間も大騒ぎ?
転送された人々は無事に元の世界にかえれるのか、それとも異世界の住人になって一生をおえるのか。
それを眺め娯楽とする神の本当の目的は・・・。
※本作は完結まで完成している小説になりますので毎日投降致します。
初作品の為、右も左も分からず作った作品の為、ですます調、口調のブレが激しいですが温かい目でお読み頂ければ幸いでございます。
住所不定の引きこもりダンジョン配信者はのんびりと暮らしたい〜双子の人気アイドル配信者を助けたら、目立ちまくってしまった件〜
タジリユウ
ファンタジー
外の世界で仕事やお金や家すらも奪われた主人公。
自暴自棄になり、ダンジョンへ引きこもってひたすら攻略を進めていたある日、孤独に耐えられずにリスナーとコメントで会話ができるダンジョン配信というものを始めた。
数少ないリスナー達へ向けて配信をしながら、ダンジョンに引きこもって生活をしていたのだが、双子の人気アイドル配信者やリスナーを助けることによってだんだんと…
※掲示板回は少なめで、しばらくあとになります。
神様お願い!~神様のトバッチリで異世界に転生したので心穏やかにスローライフを送りたい~
きのこのこ
ファンタジー
旧題:神様お願い!〜神様のトバッチリを受けた定年おっさんは異世界に転生して心穏やかにスローライフを送りたい〜
突然白い発光体の強い光を浴びせられ異世界転移?した俺事、石原那由多(55)は安住の地を求めて異世界を冒険する…?
え?謎の子供の体?謎の都市?魔法?剣?魔獣??何それ美味しいの??
俺は心穏やかに過ごしたいだけなんだ!
____________________________________________
突然謎の白い発光体の強い光を浴びせられ強制的に魂だけで異世界転移した石原那由多(55)は、よちよち捨て子幼児の身体に入っちゃった!
那由多は左眼に居座っている神様のカケラのツクヨミを頼りに異世界で生きていく。
しかし左眼の相棒、ツクヨミの暴走を阻止できず、チート?な棲家を得て、チート?能力を次々開花させ異世界をイージーモードで過ごす那由多。「こいつ《ツクヨミ》は勝手に俺の記憶を見るプライバシークラッシャーな奴なんだ!」
そんな異世界は優しさで満ち溢れていた(え?本当に?)
呪われてもっふもふになっちゃったママン(産みの親)と御親戚一行様(やっとこ呪いがどうにか出来そう?!)に、異世界のめくるめくグルメ(やっと片鱗が見えて作者も安心)でも突然真夜中に食べたくなっちゃう日本食も完全完備(どこに?!)!異世界日本発福利厚生は完璧(ばっちり)です!(うまい話ほど裏がある!)
謎のアイテム御朱印帳を胸に(え?)今日も平穏?無事に那由多は異世界で日々を暮らします。
※一つの目的にどんどん事を突っ込むのでスローな展開が大丈夫な方向けです。
⭐︎第16回ファンタジー小説大賞にて奨励賞受賞を頂きました!読んで投票して下さった読者様、並びに選考してくださったスタッフ様に御礼申し上げますm(_ _)m今後とも宜しくお願い致します。
田舎貴族の学園無双~普通にしてるだけなのに、次々と慕われることに~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
田舎貴族であるユウマ-バルムンクは、十五歳を迎え王都にある貴族学校に通うことになった。
最強の師匠達に鍛えられ、田舎から出てきた彼は知らない。
自分の力が、王都にいる同世代の中で抜きん出ていることを。
そして、その価値観がずれているということも。
これは自分にとって普通の行動をしているのに、いつの間にかモテモテになったり、次々と降りかかる問題を平和?的に解決していく少年の学園無双物語である。
※ 極端なざまぁや寝取られはなしてす。
基本ほのぼのやラブコメ、時に戦闘などをします。
琥珀の中の一等星
白妙スイ@書籍&電子書籍発刊!
ファンタジー
少し歳の離れた幼馴染同士のヒロイン『ライラ』とその想い人の『リゲル』。
ずっと幼馴染の関係が続いてきたのには理由があった。
じれったいすれ違いを感じつつも、距離はゆっくり近付いて……。
何気ない日常から恋が育まれていく、星と『うた』をテーマにした穏やかで優しい物語です。
この作品は『ベリーズカフェ』『エブリスタ』にも掲載しております。
桜の朽木に虫の這うこと
朽木桜斎
ファンタジー
「人間って、何だろう?」
十六歳の少年ウツロは、山奥の隠れ里でそんなことばかり考えていた。
彼は親に捨てられ、同じ境遇・年齢の少年アクタとともに、殺し屋・似嵐鏡月(にがらし きょうげつ)の手で育てられ、厳しくも楽しい日々を送っていた。
しかしある夜、謎の凶賊たちが里を襲い、似嵐鏡月とアクタは身を呈してウツロを逃がす。
だが彼は、この世とあの世の境に咲くという異界の支配者・魔王桜(まおうざくら)に出会い、「アルトラ」と呼ばれる異能力を植えつけられてしまう。
目を覚ましたウツロは、とある洋館風アパートの一室で、四人の少年少女と出会う。
心やさしい真田龍子(さなだ りょうこ)、気の強い星川雅(ほしかわ みやび)、気性の荒い南柾樹(みなみ まさき)、そして龍子の実弟で考え癖のある真田虎太郎(さなだ こたろう)。
彼らはみな「アルトラ使い」であり、ウツロはアルトラ使いを管理・監督する組織によって保護されていたのだ。
ウツロは彼らとの交流を通して、ときに救われ、ときに傷つき、自分の進むべき道を見出そうとする――
<作者から>
この小説には表現上、必要最低限の残酷描写・暴力描写・性描写・グロテスク描写などが含まれています。
細心の注意は払いますが、当該描写に拒否感を示される方は、閲覧に際し、じゅうぶんにご留意ください。
ほかのサイトにも投稿しています。
ゲームの《裏技》マスター、裏技をフル暗記したゲームの世界に転生したので裏技使って無双する
鬼来 菊
ファンタジー
飯島 小夜田(イイジマ サヨダ)は大人気VRMMORPGである、『インフィニア・ワールド』の発見されている裏技を全てフル暗記した唯一の人物である。
彼が発見した裏技は1000を優に超え、いつしか裏技(バグ)マスター、などと呼ばれていた。
ある日、飯島が目覚めるといつもなら暗い天井が視界に入るはずなのに、綺麗な青空が広がっていた。
周りを見ると、どうやら草原に寝っ転がっていたようで、髪とかを見てみると自分の使っていたアバターのものだった。
飯島は、VRを付けっぱなしで寝てしまったのだと思い、ログアウトをしようとするが……ログアウトボタンがあるはずの場所がポッカリと空いている。
まさか、バグった? と思った飯島は、急いでアイテムを使用して街に行こうとしたが、所持品が無いと出てくる。
即行ステータスなんかを見てみると、レベルが、1になっていた。
かつては裏技でレベル10000とかだったのに……と、うなだれていると、ある事に気付く。
毎日新しいプレイヤーが来るゲームなのに、人が、いないという事に。
そして飯島は瞬時に察した。
これ、『インフィニア・ワールド』の世界に転生したんじゃね?
と。
取り敢えず何か行動しなければと思い、辺りを見回すと近くに大きな石があるのに気付いた。
確かこれで出来る裏技あったなーと思ったその時、飯島に電流走る!
もしもこの世界がゲームの世界ならば、裏技も使えるんじゃね!?
そう思った飯島は即行その大きな岩に向かって走るのだった――。
※『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる