上 下
12 / 71

2回戦

しおりを挟む
 ここは代々木の体育館。渋谷区高校剣道大会女子団体戦が行われている。
「渋谷高校剣道部! 次の試合も勝つぞ!」
「おお!」
「私たちは強い!」
「できる! できる! できる!」
「勝てる! 勝てる! 勝てる!」
「ドキ! ドキ! ドキ!」
「どうして私まで?」
「愛ある限り戦いましょう!」
「おお!」
 渋谷高校剣道部員たちは気合入れをする。
「円陣、やり直し!」
「ええー!?」
「渋谷高校らしい掛け声にするわよ!」
「おお!」
 いまいち渋谷高校らしい円陣の掛け声ができていない。
「渋谷高校剣道部! いくぞ!」
「109!」
「モヤイ像!」
「ハチ公像!」
「スクランブル交差点! ドキ。」
「NHK!」
「渋谷高校剣道部! ファイト!」
「おお!」
 だいぶん渋谷高校剣道部らしくなってきたとしておこう。
「渋谷高校と円山高校の試合を始めます。」
次の対戦相手は、円山高校である。
「みんな! 私が主将として、バッチリ決めてきてあげる!」
「がんばれ! 楽子!」
 渋谷高校の先鋒は楽子である。
「あ、もしもし鉢山高校ですか? おたくの生徒のポッターが女教師とイチャイチャしていますよ。不純異性交遊は退学ですよね。早く学校から追い出さないとマスコミの餌食になりますよ。そうなったら校長先生の天下り先も無くなりますよ。」
 代官山男はフラれた腹いせにチクりの電話をしていた。SNS時代、スマホで他人の悪口ばかり投稿している人は共感するだろう。
「先鋒! 前へ!」
「おお! 私に任せなさい!」
「楽子ちゃん、がんばって!」
 渋谷高校の先鋒は毎度おなじみ楽子である。
「はじめ!」
「だああああー!」
 楽子が竹刀を高々と振りかぶり突撃する。
「一本! それまで。」
 円山高校剣道部員Aの胴が楽子に決まる。
「あはは、負けちゃった。」
「ドンマイ!」
 お約束である。
「次鋒、前へ!」
「ドキ子に任せなさい! ドキ。」
 渋谷高校の次鋒は土器ドキ子である。
「はじめ!」
「ドキドキー!」
 ドキ子が竹刀を振り回しながら突撃する。
「一本! それまで。」
 円山高校剣道部員Bの突きがドキ子の胴に命中した。
「惜しかった。もう少しで勝てたのに。ドキ。」
「ド、ドンマイ。」
 これもお約束。
「中堅、前へ!」
「やっと私の出番ね。」
 座っていた栞が立ち上がる。
「栞お姉ちゃん、がんばって!」
「カワイイ怪獣ちゃんのために買ってくるわ!」
 微笑ましい渋井姉妹の姉妹愛である。
「まだ1000字終わっていない!? 今回は長く出番があるかも!? 基地に電話して、クラスター爆弾を実装しなくっちゃ!? 忙しくなるぞ!」
「私の場合、逆に出番があると、ゆっくり朝食が楽しめない。おみっちゃんに任せられないと、自分で戦わないといけなくなるから。」
 泪と結の言い分であった。確かに、この二人が剣道の試合をまともにしている機会は少ない。そうか! 3対3の剣道タッグマッチにすればいいのか。恵比寿高校剣道部戦まで、取っておこう。
「それでは、はじめ!」
 遂に栞の戦いが始まった。
「ドリャアアアアアー!」
 円山高校剣道部員Cが果敢に栞に攻め込んでくる。
「私の剣道着よ! 宇宙を描け! そして全てを呑み込め! 必殺! ブラックホール! エル・エル・エルメス!」
 栞の剣道着にブラックホールが描かれる。
「ギャアアア!?」
 円山高校剣道部員Cはブラックホールに吸い込まれて消えてしまう。
「それまで。試合放棄とみなし、渋谷高校の勝ち。」
「お姉ちゃんスゴイ!」
「これでも銀河系最強ですから。」
 銀河系最強の魔法少女の栞は余裕で勝った。
「こらー! 私はクラスター爆弾を準備していたんだぞ! どうしてくれる!?」
「コンコン、朝食後の運動に散歩しましょう。」
「コン。」
 残りの2試合も泪と結が簡単に勝った。

つづく。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【短編】悪役令嬢と蔑まれた私は史上最高の遺書を書く

とによ
恋愛
婚約破棄され、悪役令嬢と呼ばれ、いじめを受け。 まさに不幸の役満を食らった私――ハンナ・オスカリウスは、自殺することを決意する。 しかし、このままただで死ぬのは嫌だ。なにか私が生きていたという爪痕を残したい。 なら、史上最高に素晴らしい出来の遺書を書いて、自殺してやろう! そう思った私は全身全霊で遺書を書いて、私の通っている魔法学園へと自殺しに向かった。 しかし、そこで謎の美男子に見つかってしまい、しまいには遺書すら読まれてしまう。 すると彼に 「こんな遺書じゃダメだね」 「こんなものじゃ、誰の記憶にも残らないよ」 と思いっきりダメ出しをされてしまった。 それにショックを受けていると、彼はこう提案してくる。 「君の遺書を最高のものにしてみせる。その代わり、僕の研究を手伝ってほしいんだ」 これは頭のネジが飛んでいる彼について行った結果、彼と共に歴史に名を残してしまう。 そんなお話。

形だけの妻ですので

hana
恋愛
結婚半年で夫のワルツは堂々と不倫をした。 相手は伯爵令嬢のアリアナ。 栗色の長い髪が印象的な、しかし狡猾そうな女性だった。 形だけの妻である私は黙認を強制されるが……

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った

五色ひわ
恋愛
 辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。真実を確かめるため、アメリアは3年ぶりに王都へと旅立った。 ※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話

夫の裏切りの果てに

恋愛
 セイディは、ルーベス王国の第1王女として生まれ、政略結婚で隣国エレット王国に嫁いで来た。  夫となった王太子レオポルドは背が高く涼やかな碧眼をもつ美丈夫。文武両道で人当たりの良い性格から、彼は国民にとても人気が高かった。  王宮の奥で大切に育てられ男性に免疫の無かったセイディは、レオポルドに一目惚れ。二人は仲睦まじい夫婦となった。  結婚してすぐにセイディは女の子を授かり、今は二人目を妊娠中。  お腹の中の赤ちゃんと会えるのを楽しみに待つ日々。  美しい夫は、惜しみない甘い言葉で毎日愛情を伝えてくれる。臣下や国民からも慕われるレオポルドは理想的な夫。    けれど、レオポルドには秘密の愛妾がいるらしくて……? ※ハッピーエンドではありません。どちらかというとバッドエンド?? ※浮気男にざまぁ!ってタイプのお話ではありません。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

【完結】「心に決めた人がいる」と旦那様は言った

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
「俺にはずっと心に決めた人がいる。俺が貴方を愛することはない。貴女はその人を迎え入れることさえ許してくれればそれで良いのです。」 そう言われて愛のない結婚をしたスーザン。 彼女にはかつて愛した人との思い出があった・・・ 産業革命後のイギリスをモデルにした架空の国が舞台です。貴族制度など独自の設定があります。 ---- 初めて書いた小説で初めての投稿で沢山の方に読んでいただき驚いています。 終わり方が納得できない!という方が多かったのでエピローグを追加します。 お読みいただきありがとうございます。

【完】あの、……どなたでしょうか?

桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー  爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」 見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は……… 「あの、……どなたのことでしょうか?」 まさかの意味不明発言!! 今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!! 結末やいかに!! ******************* 執筆終了済みです。

処理中です...