茶店の歌姫2

渋谷かな

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エヘッ! 6

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「やって来ました! プリマス!」
 おみっちゃんたちは次の街、港湾都市プリマスにやって来た。
「軍艦がいっぱいだね。」
 プリマスはイギリス海軍の基地があった。
「あそこに人だかりがありますよ?」
 看板の前に人だかりができていた。
「行ってみよう。」
 おみっちゃんたちは看板を読みに行く。
「何が書いているんですか?」
 おみっちゃんは看板の前で女の子に聞いてみた。
「メアリー海賊団に困っているイギリス海軍が、メアリー海賊団に懸賞金をかけたんだ。」
「海賊ですって!? 賞金はいくらですか?」
「1億円よ。」
「1億円!?」
 プリマス近海にはメアリー海賊団という1億円の懸賞金がかかった海賊が出るらしい。
「海賊なんてイギリス海軍が倒せばいいのに。」
「イギリス海軍はロシアとの海戦が忙しいから海賊退治をやっている暇がないんだよ。」
「へ~え。そうなんだ。」
 親切なお姉さんが教えてくれる。
「軍艦が襲ってこないんなら、真面目に働くより海賊した方が儲かりそうだね。イヒッ!」
 守銭奴の女将さんは健在。
「女将さん!? 何を悪いことを言ってるんですか!?」
 思わずおみっちゃんがツッコム。
「おお! 分かりますか! 海賊をやればお金が儲かって仕方がないですよ! ワッハッハー!」
「あんた、初対面だけど気が合うね。イヒッ!」
 女将さんと女の子は意気投合した。
「良かったら私と一緒に海賊をやりませんか?」
「え?」
 女の子はおみっちゃんたちに海賊をやらないかとスカウトしてきた。
「実は私の名前はメアリー。メアリー海賊団の船長です。ワッハッハー!」
 女の子の正体はメアリー海賊団の船長だった。
「私の名前はおみっちゃんです! 夢は江戸で歌姫になることです! エヘッ!」
 歌姫を目指すモノは自己紹介の挨拶でブレてはいけない。
「チャンス! おみっちゃん!」
「はい! 女将さん! 忍法! スパイダーマンの術!」
 おみっちゃんは忍術でメアリーを蜘蛛の糸にからめとる。
「ギャアアアアアアー! なんだ!? これは!?」
 メアリーは蜘蛛の糸で捕まえられた。
「藻掻けば藻掻くほど絡みつく蜘蛛の糸ですよ! エヘッ!」
 蜘蛛の糸を出しても可愛いエヘ幽霊。
「あんたをイギリス海軍に差し出して懸賞金の1億円をゲット。更にあんたの海賊団の財宝を奪い取って2度美味しいのだ。イヒッ!」
「さすが女将さん! どこまでもお供します!」
 女将さんが海賊の船長なら、おみっちゃんは子分である。
「これでいいのかしら? 私、イギリスの王女なんだけどな?」
「大丈夫よ。シャーロット。誰もあなたが海賊をやっているなんて思わないわ。」
「私、頑張る!」
 強く生きることを誓うシャーロットとダイアナもおみっちゃん海賊団の団員である。 

「毎度有り!」
 女将さんはメアリーを海軍に引き渡し1億円の懸賞金を手に入れた。
「覚えていろよ!」
 メアリー船長は悔しくて吠える。 
「忘れたよ。さあ! みんな! 海賊のお宝を奪いに行くよ!」
「おお!」
 女将さんの号令でおみっちゃんたちはメアリー海賊団の財宝を狙う。
「おい。あいつらをつけろ。誰が1億円をやるものか!」
 プリマスのイギリス海軍のホーキンス提督はおみっちゃんたちに1億円をやる気は最初からなかった。
「海賊を捕えたのも私の手柄! そして1億円も取り戻す! 正に一石二鳥の作戦だ! これがイギリス海軍のやり方だ! ワッハッハー!」
 ホーキンス提督の面の皮はぶ厚かった。

「でも海賊のお宝なんてどこにあるんでしょうね?」
 おみっちゃんたちは海賊の財宝を探しに行く。
「海賊のアジトに行けばあるだろうよ。イヒッ!」
 女将さんはお宝に向けてまっしぐら。
「なんせこっちにはイギリス王女のシャーロットがいるんだよ!」
「え!? 私ですか!?」
 無理なパスに驚くシャーロット。
「海賊でも海軍でも何でも来いってんだ! 私の財宝はびた一文譲らないよ!」
 女将さんのお金に対する強い執念。
「おばあ様、もう私たちはこの人達から抜け出せないのですね?」
「そうよ。私の可愛い孫娘。私たちの手は黒く汚れてしまった。」
 ダイアナとシャーロットは女将さんから逃げられない。
「あ! あそこに海賊のアジトって書いてますよ!」
 本当に海賊のアジトという看板を見つけた。
「よし! おみっちゃん! 乗り込め!」
「アイアイサー!」
 おみっちゃんは海賊の子分風に海賊のアジトに乗り込む。
「何者だ!」
 もちろん海賊に見つかる。
「控え! 控え! こちらに居られる方を誰だと思う! こちらのおられるのはイギリス王女! シャーロットだぞ! 頭が高い! 控え! 控え!」
 おみっちゃんがシャーロットを紹介する。
「え!? 私ですか!?」
 当然、シャーロットは驚く。
「1兆円の懸賞首だ! シャーロット王女を捕まえろ!」
「おお!」
 しかし、シャーロットは悪の組織パパラッチから懸賞金1兆円で指名手配されていた。
「1兆円!? 1兆円!? 1兆円!?」
 女将さんはシャーロットの懸賞金が1兆円と聞いて鼻息が荒くなってパニックを起こしていた。
「おみっちゃん! 私は命を狙われているのに、どうして私だって正体をばらすのよ?」
 クレームを入れるシャーロット。
「だって、イギリスの王女様がいると分かれば誰も歯向かわないと思ったんです。戦わないで平和に終わればいいなって思ったんです。エヘッ!」
 笑って誤魔化すエヘ幽霊。
「死ね! シャーロット王女!」
 海賊たちがシャーロットを目掛けて攻めてくる。
「こうなったら私の忍術で海賊どもを倒すしかない!」
 おみっちゃんは海賊と戦う気になった。

ドカーン!

 その時だった。大きな爆発音がした。
「なんだ!?」
 当然、パニックに陥るおみっちゃんたち。
「あれを見て! 沖にイギリスの軍艦がいっぱい!」
 海にはイギリス海軍の軍艦が無数にいて大砲を撃ちまくってくる。
「おお! 援軍ですね。やったー! 助かった! エヘッ!」
 安心するエヘ幽霊。
「バカおっしゃい! よく見るんだよ! あれは私たちも狙ってるんだよ!」
「なんですと!?」
 イギリス海軍の砲台は海賊のアジトに向けられていた。
「ふっふっふ! ふがいっぱい! 海賊のアジトにいる者どもは皆殺しだ! 口さえ封じてしまえば海賊の財宝は私のものになるのだ! そのお金を中央の偉い人に賄賂として贈り、私はもっと出世するのだ! ワッハッハー!」
 ホーキンス提督の頭の中は私利私欲ばかりで正義などなかった。
「撃て! 皆殺しだ!」
 イギリス海軍は大砲を撃ちまくる。
「ギャアアアアアアー!?」
「これじゃあ私たち死んじゃいますよ!?」
 シャーロットとダイアナは防戦一方。
「大丈夫! 私がみんなを絶対に守って見せるからね!」
「女将さん!」
 女将さんは仲間を守ると言う。
「おみっちゃん!」
「はい! 親分!」
「誰が親分だよ?」
「エヘッ!」
 どんな時も笑いを忘れないエヘ幽霊。
「海軍さんに歌を歌って差し上げなさい!」
「いいんですか?」
「いいんです! 海上のスペシャルなお客さんに聞かせてやりな! あんたの大好きな歌を!」
「はい! 私、がんばります!」
 おみっちゃんは歌を歌う体制に入る。
「全員! 耳栓用意!」
「了解!」
 女将さん、シャーロット、ダイアナは耳栓をして身を隠す。
「私の歌でみんなを幸せにしたい! いつか江戸で輝く歌姫になるんだ!」
 おみっちゃんの夢は江戸で歌姫になることです。
「1番! おみっちゃん歌います! 曲は国歌斉唱!」
 歌は国家でもポップス、ロック、演歌など何でも歌えるおみっちゃん。
「ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ!」
 おみっちゃんは極度の音痴でデスボイスの持ち主であった。

ズバババババーン!

 おみっちゃんの歌声は海を切り裂く。
「ギャアアアアアアー!? なんだ!? 海賊の新兵器か!?」
 ホーキンス提督は何が起こっているのか分からなかった。
「て、提督!? 船の装甲に亀裂が!? このままでは沈没してしまいます!?」
「なんだと!? 大砲を打ち込みまくれ!」
 
ドカーン!

 しかし大砲の弾はおみっちゃんの歌声に耐え切れずに船内の大砲の中で爆発した。
「ギャアアアアアアー!」
 軍艦は大爆発の炎上する。
「ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ!」
 大爆発はお構いなしでおみっちゃんは気持ち良く歌い続ける。
「まさか印籠の代わりがおみっちゃんのデスボイスとは!? 恐れ入った。」
 女将さんもおみっちゃんの歌声に一目を置くしかなかった。
「日本では歌は凶器っと。」
 しっかり社会勉強をするシャーロットは真面目にメモを取る。
「ろ、ロシアだ!? ロシアのバルチック艦隊が攻めてきたに違いない!? ロンドンに電信を打て! 我、沈むと! ギャアアアアアアー!」
 ホーキンス提督の軍艦はおみっちゃんの歌声の前に轟沈した。

「さあ! 海賊の財宝も手に入れたし、ズラカルよ!」
「おお!」
 おみっちゃんたちは海賊の財宝を手に入れた。
「なんだか最近自分が王女ではなく本当の怪盗のような気がしてきたわ。」
 シャーロットは社会勉強の最中である。
「まあまあ、世界は広いってことで。エヘッ!」
 笑って丸く収めるエヘ幽霊であった。
 つづく。
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