茶店の歌姫2

渋谷かな

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エヘッ! 3

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「やって来ました! ポッタリーズ!」
 おみっちゃんたちはストーク・オン・トレント、通称、ポッタリーズに無事にたどり着いた。
「わ~い! 賑やかな街ですね!」
 ポッタリーズは人々が明るく活気に溢れていた。
「ポッタリーズは陶器産業の街として栄えているんだ。」
 シャーロットはポッタリーズが陶器の街だと教えてくれる。
「おみっちゃんは幽霊のくせに明るい所が好きだねえ。」
「よく言われます。エヘッ!」
 いつも明るく笑顔で元気に前向きなおみっちゃん。
「これから私たちはどうするんだい?」
「ポッタリーズの市長に会うわ。ここはお父様を支持してくれているの。きっと私を助けてくれるはずよ!」
 ポッタリーズはシャーロットの父親を応援してくれていた。
「おお! ウイリアム! 我が息子よ!」
 ダイアナは自分の息子のことを思い出して感激する。
「市役所に出発!」
「おお!」
 おみっちゃんたちは市役所に向かう。

「王女様!?」
 シャーロットたちは市役所にやって来た。
「ドルトンさん! お久しぶりです!」
 市長のドルトンに歓迎された。
「シャーロット王女! よくぞ御無事で!」
 ドルトンはシャーロットを見て涙ぐむ。
「どうしたのよ? そんなに感激して。」
 戸惑うシャーロット。
「実は・・・・・・イギリス王室は王女様のことを浜辺で遊んでいて波にのまれて海に流されて死んでしまったと発表したのです!」
 イギリス全土ではシャーロットはおっちょこちょいのおてんば娘で溺れて死んだことになっているというのだ。
「なんですって!?」
 自分が死んだことになっていることに衝撃を受けるシャーロット。
「私は、ちゃんと生きてるわよ! 悪の組織パパラッチに殺されかけた所を、この人たちに助けられたの。」
 シャーロットはドルトンにおみっちゃんたちを紹介する。
「この者たちは?」
「はい! 私はおみっちゃんです! 私の夢は江戸で歌姫になることです! 茶店で看板娘のアルバイトしてます! エヘッ!」
 可愛い子ぶるおみっちゃん。
「茶店の女将です。」
 女将さんはおみっちゃんの保護者的に挨拶する。
「ありがとうございます! 王女様を助けて頂いて!」
 ドルトン市長は丁寧にお礼を言う。
「二人は日本からやって来たのよ。」
「おお! 日本から! 旅行ですか?」
「え!?」
(は、恥ずかしくて漂流して来たなんて言えない!?)
 おみっちゃんの本音。
「はい。そうなんです。エヘッ!」
 笑って誤魔化すエヘ幽霊。
「だからイギリスの王位継承権争いとは無縁だから信用しても大丈夫よ。」
「分かりました。」
 更にドルトン市長はもう一人の連れの女性を見る。
「こちらの方は? 果て? どこかで会ったことがあるような? そうだ! 元プリンセス・ダイアナにそっくりだ!」
 ドルトン市長は生前のダイアナに会ったことがあるので思い出した。
「元プリンセスのダイアナに似ているって言われます。オッホッホー!」
 ダイアナも困った時は笑って誤魔化す。
(私が本物のダイアナで幽霊で化けて出たんですなんて言えない。)
 これがダイアナの本音である。
「ドルトンさん! 私に力を貸してください!」
 シャーロットはドルトン市長に助力を頼む。
「当然です。私は王女をしっかりとお守り致します。」
 ドルトン市長はシャーロットのことを守ると約束してくれる。
「ありがとう。ドルトンさん。」
 シャーロットもドルトン市長に感謝する。
「王女様はロンドンのバッキンガム宮殿に行って、生きていることを証明しなければいけません。」
「はい。」
 現在、シャーロットは海で溺れて死んでしまったことになっている。
「私たちの騎士たちが王女様を無事にロンドンまでお送りさせてもらいます。」
 ポッタリーズは自国の陶器産業を守る為、自警団の兵士をたくさん抱えている。
「お初にお目にかかります。王女様。騎士のスポードです。」
「ウエッジウッドです。」
「ミントンです。」
 市長の間にポッタリーズの将軍たちが姿を現し挨拶する。
「彼らがいれば、パパラッチやモンスターが襲い掛かって来ても大丈夫。返り討ちにしてくれるでしょう。」
 ドルトン市長もスポードたちに全幅の信頼を置いている。
「ありがとうございます。みなさん、頼りにしていますよ。」
 シャーロットは臣下にも丁寧に挨拶する。
「はい! 王女様のために命を懸けてお守りいたします!」
 スポードたちはシャーロット王女に忠誠を誓う。
「ありがとう! 私は必ず生き残りイギリスに平和をもたらせて見せるわ!」
 シャーロットは王女として王位継承権争いに勝ち残ることを誓うのであった。
「それでは出発は明日にして、今日は休みましょう。直ぐに王女様の部屋を準備させます。今宵は王女様の激励会のパーティーを開きましょう!」
 ドルトン市長はシャーロット王女が生きていることを世に知らしめるつもりである。
「やったー! パーティーだ! 美味しい物が食べられるぞ! わ~い!」
 現金なおみっちゃん。
「あんたは茶店で接客だよ。パーティーに茶店も出店するんだからね。稼ぐよー!」
 どんな時も女将さんは銭儲けで頭がいっぱいだった。
「この守銭奴め!」
 おみっちゃんは女将さんのことを金の亡者だと思っている。
「なんか言ったかい? なんなら時給を減らしてもいいんだけどね?」
 凄みを利かせる地獄耳の女将さん。
「働きます! 肩ら貸せてください! お団子にお茶を売りつけまくりますよ! エヘッ!」
 給料が減らされることには弱いエヘ幽霊。

「はあ・・・・・・。」
 シャーロットが遠くを見て黄昏ていた。
「どうしたの? 我が愛する孫娘よ。」
 そこに幽霊のおばあちゃんのダイアナがやってくる。
「ここは平和だな~って思って。」
 シャーロットはポッタリーズが平和で人々の笑顔も溢れ幸せそうに見えた。
「そうね。ここはロンドンとは違い、とても平和でいい所だね。」
 幽霊のダイアナから見てもポッタリーズは綺麗な街に見える。
「いつまで続くのだろう。王位継承権争いは。」
 シャーロットの一番の悩みであった。
「もしも私が王女でなければ、他の女の子のように普通に笑って走り回って遊んでいたはず。いいな~、羨ましい。」
 普通の女の子になりたいとシャーロットは思っていた。
「そうね。あなたの気持ちは分からなくないわ。私もイギリス皇室に嫁いでから自由はなくなったから、あなたと同じように誰にも追いかけられず、自由に大空を飛んでみたいと思っていたわ。」
 同じ境遇を経験しているダイアナはシャーロットの気持ちが痛いほど分かる。
「おばあ様のダイアナ・フィーバーって、とてもすごかったのよね?」
「そうよ。あなたが誕生した時なんかよりも、ずっとずっーと! すごいフィーバーだったんだから! イギリスどころか全世界が私に魅了されたのよ!」
 確かにプリンセス・ダイアナの人気は世界レベルで、全世界の人々に笑顔と幸せな気持ちにした。
「ワッハッハー!」
 和やかな時間がシャーロットの気持ちを楽にしてくれる。

「それではパーティーの始まりです!」
 そして賑やかなパーティーは始まった。
「いらっしゃいませ! ジャパニーズ・お茶とお団子! 美味しいよ! デリシャス! デリシャス!」
 おみっちゃんは茶店の看板娘として呼び込みをする。
「おお! ジャパニーズ・スタイル! 着物!」
 イギリス人にはおみっちゃんの着物を着た日本の服装が珍しく見えて好評だった。
「ありがとうございます! 女将さん! お茶とお団子二人前です!」
「あいよ!」
 次々と目新しいおみっちゃんのお茶とお団子の茶店は大行列を作った。
「儲かって仕方がないね!」
 女将さんは大行列にお金が儲かるので嬉しい。
「女将さん、これも看板娘の私のおかげですね! 私の時給を上げてください! エヘッ!」
 おみっちゃんは江戸への旅費を稼ぐために少しでも給料を上げたい。
「いいのか? おみっちゃん。無駄口を叩いていると給料を下げるよ。」
 女将さんは鬼であった。
「ヒイエエエエエエエー!? 真面目に働きますから、それだけはご勘弁を! いらっしゃいませ!」
 仕事に戻るおみっちゃん。
「これだけ忙しいとおみっちゃん一人じゃ無理だね。新しいバイトを雇わないと。」
 大繁盛の茶店。
「ダイアナ!」
 そこに佇んでいるダイアナを女将さんが見つけた。
「はい?」
「ダイアナ。人手が足らなくて困っているんだ。手伝ってくれないかい?」
 女将さんはダイアナを雇おうと考えた。
「いいですよ! 私、働きます! やってみたかったんですよね。アルバイト。」
 ダイアナは茶店で働くことにした。
「いらっしゃいませ。お茶とお団子です。」
 初めてのアルバイトが始めたダイアナ。
「おお! ビューティーフル!」
 ダイアナを見たイギリス人たちは、その美貌に歓声をあげた。
「お団子! 10人前下さい! お茶もお代わり!」
「こっちにも!」
 お客さんは競い合ってお茶とお団子を注文した。
「はい。ただいま。ありがとうございます。」
 ダイアナはゆっくりと接客を愛想を振りまいて行っている。
「ダイアナ効果だね! 更にお客さんが並んだよ! 儲かって仕方がないね! イヒッ!」
 女将さんの頭の中には銭しかない。
「はあ・・・・・・はあ・・・・・・忙しいのは私だけ? このままじゃあ私が成仏しちゃいますよ。」
 ダイアナが不慣れな新人なので、お運びやら片付け、荒い物は全ておみっちゃんがハイペースでこなしている。

「本日のパーティーにはイギリス皇室の方が来賓として来られております!」 
 パーティーも中盤に司会者がシャーロットを紹介しようとしている。正にイギリス皇室の政治利用である。
「それではドルトン市長、エスコートしてください!」
 ドルトンは自身の人気を上げるために、シャーロットが出てくる扉の前で待機する。
「それではご入場下さい! シャーロット王女です!」
 シャーロットが扉から出てくる。
「え?」
 次の瞬間、ドルトンの体が真っ二つになった。
「キャアアアアアアー!」
 その光景を見た人々が悲鳴をあげる。
「ドルトンさん!?」
 扉から出てきたシャーロットにもドルトンの血が飛び散り顔などに着く。
「いやー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
 事態を認識したシャーロットも悲鳴をあげる。

ガシャン! パキン!
 
 その時、パーティー会場の迎賓館の窓が割れまくる。
「ガイガイ!」
「ゴーゴー!」
 そしてガイコツやゴーストなどのモンスターたちが乱入してくる。
「キャアアアアアアー!」
 その光景に人々は悲鳴をあげる。
「ガイガイ!」
 そしてモンスターたちが人々を殺し始める。
「逃げろ! 殺される!」
 人々は恐怖で逃げだした。
「い、いったい何が起こっているの!?」
 シャーロットは目の前の悪夢を受け入れられなかった。
「おまえが悪いんだよ。」
 その時、シャーロットのみみもと耳元で声がした。
「キャアアアアアアー!」
 ゾクッとしてシャーロットは悲鳴をあげる。
「おまえは何者だ!?」
 目の前に大きな鎌を持った者が現れる。
「私は悪の組織パパラッチの幹部、死神リーパーだ!」
 現れたのは悪の組織パパラッチの幹部の死神リーパーだった。
「この魔物たちもパパラッチの仕業なのね!?」
「その通りだ! 王位継承権争いの邪魔なので王女様にはここで死んでもらう!」
 死神リーパーの狙いはシャーロットだった。
「そうはさせるか!」
「王女は我々が守る!」
 そこにポッタリーズの騎士、スポード、ウエッジウッド、ミントンが現れる。
「安心してください! シャーロット王女!」
「ありがとう。みんな。でもドルトンさんが・・・・・・。」
 シャーロットは騎士たちに感謝もするが応援してくれたドルトンに申し訳なさそうだった。
「ドルトン市長!?」
「くそ! 許さんぞ! 魔物め!」
 スポードたちと死神リーパーの戦いが始まる。
「ギャアアアアアアー!」
 次の瞬間、スポードが真っ二つに切り裂かれた。
「キャアアアアアアー!」
 悲鳴をあげるシャーロット。
「スポード!?」
「よくもスポードを!?」
 ウエッジウッドとミントンは怒りが溢れてくる。
「ギャアアアアアアー!」
 次の瞬間、ウエッジウッドの体が真っ二つに切り裂かれる。
「な、なんなんだ!? こいつわ!?」
 怒りよりも恐怖がミントンをたじろかせ戦意を失わせていく。
「おい。何をビビっているんだ。私を許さないんじゃなかったのか?」
 死神リーパーが一歩一歩ミントンに近づいていく。
「く、来るな!? 死にたくない!? 死にたくないよ!?
 怯えて命乞いするミントン。
「恨むんなら王女を恨め。王女がここにいなければ誰も傷つかないで良かったんだよ。ケッケッケー!」
 死神リーパーが大鎌のデスサイズを振り上げる。
「ギャアアアアアアー!」
 ミントンも死神リーパーの大鎌の餌食になる。
「私の性? 私の性でドルトンさんやポッタリーズの人々が殺されていくの?」
 シャーロットは死神リーパーの言葉に疑心暗鬼になってしまう。
「その通りだ。おまえの性でみんな死ぬんだ。後から来る本隊が、ここにいた者たちを皆殺しにする。」
 悪の組織パパラッチは後から本隊がやってくるという。
「口封じに殺すというの!?」
「その通りだ。おまえが生きていたと知る者は一人残さずに殺さねばならない。おまえが生きていたと知られれば王位継承権争いがややこしくなるのでな。」
 死神リーパーはシャーロットの存在を消してしまいたい。
「私が生きているために多くの人々が犠牲になるの? なら私が死ねば傷つく人はいなくなるの?」
 既にシャーロットは生きることを諦めていた。
「そうだ! おまえさえいなくなればいいのだ! 死ねー!」
 死神リーパーは大鎌を振り上げ振り下ろす。 
「・・・・・・。」
 シャーロットはもう逃げようとはしなかった。まるで死ぬ運命を受け入れるように。

「カキーン!」

 その時、おみっちゃんが現れて死神の鎌を刀で受け止める。
「おみっちゃん!?」
 シャーロットは驚く。
「それは違うよ! シャーロットは多くの人々の希望なんだ! シャーロットが生きているから多くの人々が幸せになれるんだ!」
「ウワアアアアアー!?」
 おみっちゃんは死神リーパーを薙ぎ払う。
「おみっちゃん!?」
 おみっちゃんの言葉がシャーロットの意識を取り戻させる。
「大丈夫? シャーロット。私が守り抜くって言っただろ。エヘッ!」
 決めゼリフでも笑ってしまうエヘ幽霊。
「ありがとう。おみっちゃん。」
 命を救われて感謝の言葉を口にするシャーロット。
「なんなんだ!? おまえは?」
 死神リーパーがおみっちゃんに尋ねる。
「私の名前はおみっちゃん! 夢は江戸で歌姫になることです! エヘッ!」
 颯爽と自己紹介するおみっちゃん。
「こい! シャーロットを泣かせる奴は私が許さない!」
「いいだろう! おまえから先に真っ二つにしてやる!」
 おみっちゃんと死神の戦いが始まる。
「えい!」
「死ね!」
 両者が刀と大鎌をぶつけ合い激しい火花が飛び散る。
「やるな! 英国騎士ですら真っ二つだったのに、良く受け止めた!」
 おみっちゃんを称賛する死神リーパー。
「これでも私はジャパニーズ・サムライなんでね! エヘッ!」
 そう、おみっちゃんは日本の侍であった。
「やるな! 日本の侍!」
 死神リーパーも侍の強さを認めた。
「いや~、それほどでも。エヘッ!」
 褒められると弱いエヘ幽霊。
「なら、これならどうだ!」
 死神リーパーが大鎌を大振りで攻めてくる。
「チャンス! 胴がガラ空きだ!」
 おみっちゃんは無防備な死神の銅を切り裂いた。
「なに!?」
 しかし、死神の姿は消えていく。
「まさか!? これは幻!?」
 おみっちゃんは罠にはめられたことに気づく。
「その通り! 幻影だ!」
 本当の死神リーパーがおみっちゃんの背後から鎌を振り下ろしながら現れる。
「しまった!?」
 万事休すのおみっちゃん。
「もらった!」
「ギャアアアアアアー!」
 死神リーパーの大鎌がおみっちゃんの体を真っ二つに切り裂く。
「おみっちゃん!?」
 シャーロットはおみっちゃんが無惨に切り裂かれるのを見て衝撃を受ける。
「ワッハッハー! 日本の侍も大したことがない! 次は王女! おまえの番だ!」
 死神リーパーがおみっちゃんを倒し、次の標的をシャーロットにする。
「エヘヘヘヘヘヘヘッ!」
 その時、エヘ幽霊の笑い声が木霊する。
「なに!? その気持ち悪い笑い声は!?」
 もちろん死神にもエヘ笑いは気持ち悪かったらしい。
「気持ち悪いとか言うな!」
 猛抗議する生きていたおみっちゃん。
「バカな!? おまえは真っ二つに切り裂いたはずだ!?」 
 確かに手応えのあった死神リーパー。
「薪割りご苦労様! エヘッ!」
 死神リーパーが真っ二つに切ったのは木だった。
「おみっちゃん!」
 シャーロットはおみっちゃんの姿に安堵する。
「なに!? いつの間に!?」
 体と木が入れ替わっていることに衝撃を受ける死神リーパー。
「忍法! 変わり身の術だよ! エヘッ!」
 得意げに紹介するエヘ幽霊。
「これではまるで魔法使いではないか!?」
 死神はおみっちゃんを魔法使いだと思う。
「魔法使い? 違うよ! 私はジャパニーズ・ニンジャなんだ! エヘッ!」
 おみっちゃんは忍者でもあった。
「忍者だと!?」
「そうなんだ! 私は侍と忍者の二刀流! 侍忍者! サムニンなのだ!」
 おみっちゃんはここにきて、やっと自分の正体を死神リーパーに明かす。
「侍忍者!? サムニンだと!?」
 死神リーパーは衝撃を受ける。
「そうだ! だから私は刀と忍法の両方が使えるのだ! エヘッ!」
 得意げに笑うエヘ幽霊。
「そんなのイカサマだ!」
 抗議する死神リーパー。
「チッチッチ。そんなことは私にとってはイカサマじゃないんだな。エヘッ!」
 余裕のあるおみっちゃん。
「まるで魔法騎士!? 伝説のマジック・ナイトだわ!」
 シャーロットはイギリスには伝説があり、王位継承権争いで混沌とするイギリスに漂流して魔法騎士の救世主が現れるという伝説を思い出した。
「マジック・ナイト?」
 おみっちゃんは横文字に弱かった。
「ふざけるな! こんな小娘が伝説の救世主のはずがない! 伝説の救世主など、この場で私が処刑してやる!」
 再び死神リーパーがおみっちゃんに襲い掛かる。
「私は小娘ではない! 茶店の看板娘だ!」
 迎え撃つおみっちゃん。
「くらえ! 大鎌デスサイズ斬り!」
 確実に死神リーパーがおみっちゃんの銅を真っ二つに切り裂いた。
「ギャアアアアアアー!」
 断末魔の叫び声をあげるおみっちゃん。
「やったー! 私の勝ちだ!」
 勝利を確信した死神リーパー。
「残念でした。」
 しかしおみっちゃんはまだ動いている。
「なに!? バカな!? 真っ二つに切り裂いたのに!? なぜおまえは生きている!?」
 死神リーパーの想像力を超えるおみっちゃんの生態。
「残念でした。私は幽霊なので、既に死んでるんです。エヘッ!」
 おみっちゃんは幽霊である。
「幽霊!?」
 初めておみっちゃんが幽霊だと知った死神リーパーは驚く。
「死神! 今までおまえに殺された人々の無念を晴らしてやる!」
 おみっちゃん刀を構える。
「渋い谷茶店流! 奥義! お茶とお団子!」
 必殺技の剣術で死神リーパーを斬りつけるおみっちゃん。
「ギャアアアアアアー!」
 おみっちゃんに斬られる死神リーパー。
「正義は勝つ! エヘッ!」
 刀を鞘に納める笑顔のおみっちゃん。
「おみっちゃん! スゴイ! 勝ったんだよ!」
 大喜びのシャーロット。
「もっと褒めて! 私、頑張りました! エヘッ!」
 勝利をシャーロットと喜び合うおみっちゃん。
「すごいね! おみっちゃんはイギリスを救う伝説の救世主! マジック・ナイト・・・・・・うんうん。おみっちゃんはファントム・ナイトだ!」
 シャーロットはおみっちゃんを完全に伝説の救世主と思い込む。
「ファントム・ナイト?」
 しかしおみっちゃんは横文字に弱い。
「幽霊騎士ってことよ。」
「おお! 幽霊騎士! カッコイイ! エヘッ!」
 おみっちゃんはカッコイイものが大好きである。
「ク・・・・・・クソ・・・・・・。」
 まだ死神リーパーは生きていた。
「王女も殺せず、伝説の救世主も現れたことをパパラッチ本部に伝えなければ・・・・・・。」
 そして何とかして知りえた情報を悪の組織パパラッチに伝えようとしていた。
「シャーロット! 無事だったかい?」
 そこに女将さんがやって来た。
「女将さん! 大丈夫ですよ!」
 シャーロットは笑顔で女将さんを迎える。
「あの、私もいるんですが?」
 おみっちゃんは自分の存在をアピールする。
「おみっちゃん、茶店の片づけをダイアナさん一人にやらせたからお給料を減らすからね!」
 女将さんは仕事に平等を訴える。
「ええー!? そんな!? 私は死神と戦ってシャーロットを守ったのに!?」
 おみっちゃんは大活躍。 
「戦闘と茶店の仕事は別物だよ!」
 シビアな女将さん。
「ここから・・・・・・逃げ出さねば・・・・・・。」
 辛うじて生きている死神リーパーは匍匐前進で迎賓館から抜け出そうとしている。
「誰かにシャーロット王女様が生きてるって外に漏らされたら、また命を狙われるね。」
 女将さんは次の危機を考えていた。
「シャーロットは茶店にいるおばあさんの所まで先に逃げて。」
「はい。」
 シャーロットはダイアナの元に走って逃げる。
「いいんだ、いいんだ。私なんか。」
 減給でいじけているエヘ幽霊。
「おみっちゃん、この立派な迎賓館で歌を歌ってみたいと思わないかい?」
 女将さんは恐怖の提案をする。
「ええー!? いいんですか!」
 意外な女将さんの提案に食いつくおみっちゃん。
「江戸で歌姫になるあんたには立派なステージで歌うことは良い経験になると思うよ。」
 女将さんは言葉巧みにおみっちゃんを唆す。
「はい! 私! 歌います! 女将さん! やっぱり私のことを思っていてくれたんですね!」
 大喜びのおみっちゃん。
「当たり前じゃないか! あんたは私の大切な看板娘なんだからね! おみっちゃんの夢は私の夢だよ!」
 悪魔な女将さん。
「女将さん! 私、どこまでも女将さんについていきます!」
 感動するエヘ幽霊。
「1番! おみっちゃん! 歌います! 曲は世界平和!」
 遂におみっちゃんが夢に向かって歌い出す。
「ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガー! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガー! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガー!」
 おみっちゃんは極度の音痴でデスボイスの持ち主であった。
「な!? なんだ!? この殺人音波は!?」
「キャアアアアアアー! 頭が割れそう!?」
 迎賓館にいた生き残りの人間たちがおみっちゃんの素敵な歌声に苦しみだした。
「ガイガイ!?」
「ゴーゴー!?」 
 同じく迎賓館にいたガイコツやゴーストたちもおみっちゃんの綺麗な歌声に苦しみだした。
「い、一体何が起こっているんだ!?」
 死神リーパーも正体不明の攻撃に苦しみながらも事態の把握に徹する。
「ギャアアアアアアー!」
 人間が体内から破裂を始めた。
「ギャアアアアアアー!」
 モンスターたちも体内から破裂し始めた。
「ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ!」
 おみっちゃんは軽快に歌を気持ちよさそうに歌い続ける。
「まさか!? まさか!?」
 その時、死神リーパーは何かに気がついた。
「これはあの小娘の歌声だというのか!?」
 生き生きと歌を歌っているおみっちゃんだ。
「その通りだよ。」
 そこに女将さんがやってくる。
「あの子の歌声は死神やアンデットにも効くんだよ。」
 恐るべし! おみっちゃんの歌声!
「なら、なぜおまえは平気なんだ!?」
 死神リーパーは女将さんに尋ねる。
「私は耳栓をしているからね。」
 得意げに耳を見せる女将さん。
「そんなバカなー!? ギャアアアアアアー!」
 死神リーパーは体内から爆発して粉々になって飛び散った。
「安らかに眠れ。」
 女将さんは死んでいった者たちのあの世での幸せを手を合わせて祈る。
「ご清聴ありがとうございました!」
 おみっちゃんは歌を歌い終えた。 
「ああ~! 気持ち良かった! エヘッ!」
 満足なエヘ幽霊。
「あれ? 誰もいない? みんな、帰っちゃったのかな?」
 迎賓館委は誰もいなくなった。
「おみっちゃん、気持ち良かったかい?」
 そこに女将さんがやってきた。
「はい! 私、絶対に歌姫になってみせます! 私の歌声で人々を幸せにしたいんです!」
 おみっちゃんの夢は歌姫になって人々を笑顔にすることだった。
「その前にみんな死んじゃうよ。」
 女将さんは小さな声で呟いた。
「女将さん、何か言いましたか?」
「いいや。何も言ってないよ。おみっちゃん、ダイアナやシャーロットが茶店を片付けているから手伝ってきておくれ。」
「は~い!」
 おみっちゃんは茶店の片づけに向かった。
「さあ、戦利品をいただくかね。これだけ今日は大量だね。正におみっちゃん様様だよ。イヒッ!」
 女将さんはおみっちゃんの犠牲になった人々やモンスターたちが所持していたお金やお宝を拾ってガッチリ儲けている。
「こんな大鎌は邪魔だね? オークションにでも出して売るか。きっと死神マニアに高く売れるぞ。イヒッ!」
 女将さんは悪い笑い顔になる。

「女将さん、いつでも移動できますよ。」
 おみっちゃんたちは茶店の片づけを終えた。
「ここは危ないから、とりあえず離れるよ!」
「おお!」
 こうしておみっちゃんたちはポッタリーズを後にした。
「ああ~! 歌って素晴らしい! エヘッ!」
 ちなみにおみっちゃんが歌った後には何も残らない。生命はおみっちゃんの歌が奪い、お金やアイテムは女将さんが持ち去るからだ。
「今度は何を歌おうかな? エヘ幽霊。」
 正に怪盗おみっちゃんである。
 つづく。
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