75 / 92
75
しおりを挟む
「ここが将門の首塚か?」
将門の首塚にやって来た蛍は周囲を警戒しながら歩くが、どうやら敵は目の前の平将門しかいないようだ。
「少しはやるようになったな。蛍。」
「平将門。」
「だが、私の蘇生はほぼ完成している。あとは・・・楓の命を絶つだけだ。」
「なに!?」
イスに座らされた楓はぐったりとしていて意識はない。かなりの生命エネルギーを平将門に吸われてしまったのだろう。
「楓!? 貴様!? 楓に何をした!?」
「少し生命エネルギーを分けてもらっただけだ。」
「なんと酷いことを!?」
「安心しろ。まだ生きている。私が完全に復活するまでな。」
「誰が完全体なんかにさせるかよ! おまえを倒して、俺は楓を助ける!」
「できるかな? 虫のおまえに。」
「今までだって幾多の死闘を超えてここまでやって来たんだ! やってやる! 俺は平将門を倒す!」
「おもしろい。虫がどれくらい成長したのか見せてもらおうか? 蛍になれたのかどうか!」
平将門は、まだ完全体ではなかった。それでも威厳や風格はまま絵よりもまましている。蛍は見た目こそ以前よりも傷が増え着物もボロボロだが、目つきが鋭くなった。殺意に満ちた目というのではなく、世の中が腐りきっていて苦労や困難ばかりだけど、自分が果たすべきこと、自分が何をしたいのかを知っている目である。
「こい! 虫! 悔しかったら、私の前で蛍のように輝いてみせろ!」
「望むところだ! 蛍の光でおまえを呑み込んでやる!」
遂に蛍と新皇平将門の戦いが始まる。
「光れ! 蛍光刀!」
蛍は蛍光刀を抜き、暗闇を照らすような青い光で周囲を照らし明るくする。
「おまえの光を黒く覆いつくしてやろう。」
平将門も平家の愛刀、小鳥丸を抜く。平将門の周囲は、まるでカラスが羽を広げ光を遮っているように黒く染められている。
「俺は暗闇を照らす光になる! 夏の夜の光!」
蛍の蛍光刀から放たれた光の斬撃は平将門の黒い闇を切り裂く。
「ほお。成長したな。もう昔の虫ではないということか。」
「どうだ!? 蛍の光は?」
「認めよう。おまえは虫ではない。立派な蛍になったのだとな。」
さすがの平将門も蛍を認めざるを得なかった。蛍は自分の予想をはるかに超えて成長していたからだ。
「だが、これはどうかな?」
「なに!?」
「大ガラス連射!」
「カアー!」
「カアー!」
「カアー!」
数羽の大ガラスが平将門の小鳥丸から放たれる。そのまま蛍に向けて突撃していく。
「光れ! ゲンジボタル!」
蛍の体が光り輝く。蛍の体は無数の蛍の集合体である。その蛍の中に源氏の者たちから託されたゲンジボタルも混ざっている。憎っき平家を倒せと、いつも以上に光り輝き、蛍の力を増大していく。
「あれは!? 源頼朝たち!? 源氏の者か!?」
平将門には蛍の姿に源頼朝、源頼家、源実朝の姿が見えた。間違いなく源氏は、平家を倒すために、蛍に力を貸してくれている。
「夏の世の無数の光! 幻想蛍!」
蛍の蛍光刀から無数の光が放たれ大ガラスの闇を光でかき消していく。平将門の大ガラスは光の前に消え、周囲は潔く明るい蛍の光でいっぱいになる。
「どうだ! 見たか! 俺の蛍の光を消すことはできない!」
蛍は自分が平将門と対等に、いや、それ以上に戦えていると感じている高揚感に包まれていた。
「まさか、これ程とは・・・。私も本気を出すしかあるまい。」
蛍の攻撃が平将門を怒らせて目覚めさせてしまう。
つづく。
将門の首塚にやって来た蛍は周囲を警戒しながら歩くが、どうやら敵は目の前の平将門しかいないようだ。
「少しはやるようになったな。蛍。」
「平将門。」
「だが、私の蘇生はほぼ完成している。あとは・・・楓の命を絶つだけだ。」
「なに!?」
イスに座らされた楓はぐったりとしていて意識はない。かなりの生命エネルギーを平将門に吸われてしまったのだろう。
「楓!? 貴様!? 楓に何をした!?」
「少し生命エネルギーを分けてもらっただけだ。」
「なんと酷いことを!?」
「安心しろ。まだ生きている。私が完全に復活するまでな。」
「誰が完全体なんかにさせるかよ! おまえを倒して、俺は楓を助ける!」
「できるかな? 虫のおまえに。」
「今までだって幾多の死闘を超えてここまでやって来たんだ! やってやる! 俺は平将門を倒す!」
「おもしろい。虫がどれくらい成長したのか見せてもらおうか? 蛍になれたのかどうか!」
平将門は、まだ完全体ではなかった。それでも威厳や風格はまま絵よりもまましている。蛍は見た目こそ以前よりも傷が増え着物もボロボロだが、目つきが鋭くなった。殺意に満ちた目というのではなく、世の中が腐りきっていて苦労や困難ばかりだけど、自分が果たすべきこと、自分が何をしたいのかを知っている目である。
「こい! 虫! 悔しかったら、私の前で蛍のように輝いてみせろ!」
「望むところだ! 蛍の光でおまえを呑み込んでやる!」
遂に蛍と新皇平将門の戦いが始まる。
「光れ! 蛍光刀!」
蛍は蛍光刀を抜き、暗闇を照らすような青い光で周囲を照らし明るくする。
「おまえの光を黒く覆いつくしてやろう。」
平将門も平家の愛刀、小鳥丸を抜く。平将門の周囲は、まるでカラスが羽を広げ光を遮っているように黒く染められている。
「俺は暗闇を照らす光になる! 夏の夜の光!」
蛍の蛍光刀から放たれた光の斬撃は平将門の黒い闇を切り裂く。
「ほお。成長したな。もう昔の虫ではないということか。」
「どうだ!? 蛍の光は?」
「認めよう。おまえは虫ではない。立派な蛍になったのだとな。」
さすがの平将門も蛍を認めざるを得なかった。蛍は自分の予想をはるかに超えて成長していたからだ。
「だが、これはどうかな?」
「なに!?」
「大ガラス連射!」
「カアー!」
「カアー!」
「カアー!」
数羽の大ガラスが平将門の小鳥丸から放たれる。そのまま蛍に向けて突撃していく。
「光れ! ゲンジボタル!」
蛍の体が光り輝く。蛍の体は無数の蛍の集合体である。その蛍の中に源氏の者たちから託されたゲンジボタルも混ざっている。憎っき平家を倒せと、いつも以上に光り輝き、蛍の力を増大していく。
「あれは!? 源頼朝たち!? 源氏の者か!?」
平将門には蛍の姿に源頼朝、源頼家、源実朝の姿が見えた。間違いなく源氏は、平家を倒すために、蛍に力を貸してくれている。
「夏の世の無数の光! 幻想蛍!」
蛍の蛍光刀から無数の光が放たれ大ガラスの闇を光でかき消していく。平将門の大ガラスは光の前に消え、周囲は潔く明るい蛍の光でいっぱいになる。
「どうだ! 見たか! 俺の蛍の光を消すことはできない!」
蛍は自分が平将門と対等に、いや、それ以上に戦えていると感じている高揚感に包まれていた。
「まさか、これ程とは・・・。私も本気を出すしかあるまい。」
蛍の攻撃が平将門を怒らせて目覚めさせてしまう。
つづく。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
私はいけにえ
七辻ゆゆ
ファンタジー
「ねえ姉さん、どうせ生贄になって死ぬのに、どうしてご飯なんて食べるの? そんな良いものを食べたってどうせ無駄じゃない。ねえ、どうして食べてるの?」
ねっとりと息苦しくなるような声で妹が言う。
私はそうして、一緒に泣いてくれた妹がもう存在しないことを知ったのだ。
****リハビリに書いたのですがダークすぎる感じになってしまって、暗いのが好きな方いらっしゃったらどうぞ。
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
私は、忠告を致しましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私マリエスは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢ロマーヌ様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
ロマーヌ様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は常に最愛の方に護っていただいているので、貴方様には悪意があると気付けるのですよ。
ロマーヌ様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
妻のち愛人。
ひろか
恋愛
五つ下のエンリは、幼馴染から夫になった。
「ねーねー、ロナぁー」
甘えん坊なエンリは子供の頃から私の後をついてまわり、結婚してからも後をついてまわり、無いはずの尻尾をブンブン振るワンコのような夫。
そんな結婚生活が四ヶ月たった私の誕生日、目の前に突きつけられたのは離縁書だった。
【完結】「心に決めた人がいる」と旦那様は言った
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
「俺にはずっと心に決めた人がいる。俺が貴方を愛することはない。貴女はその人を迎え入れることさえ許してくれればそれで良いのです。」
そう言われて愛のない結婚をしたスーザン。
彼女にはかつて愛した人との思い出があった・・・
産業革命後のイギリスをモデルにした架空の国が舞台です。貴族制度など独自の設定があります。
----
初めて書いた小説で初めての投稿で沢山の方に読んでいただき驚いています。
終わり方が納得できない!という方が多かったのでエピローグを追加します。
お読みいただきありがとうございます。
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる