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ジャパロボ10
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「進め!」
祐奈の父親の森田は世界の終わりのスイッチを押す。
「全世界を我が物にするのだ!」
今からジャパロボ世界大戦が始まる。
「やっと私の悲願が叶うのだ!」
森田は第2回全国ジャパロボ大会の前から、全世界を支配することを計画していた。そして富士山の秘密工場でジャパロボを量産していたのだった。
「ワッハッハー!」
当時の森田は防衛省のジャパロボ大臣であった。日本自衛隊のジャパロボの全軍を指揮する権限を内閣総理大臣と同様に持っていた。
「も・・・・・・森田・・・・・・貴様!?」
時野総理大臣は森田に銃に撃たれて血塗れになっている。
「おまえの時代は終わった。これからはロボットが、AIが人間を支配するのだ。」
バン! っと総理大臣に銃弾を撃ち込みとどめを刺す。
「今から日本国は大日本帝国を名乗り、全世界に宣戦布告する! 私が初代皇帝になるのだ! ワッハッハー!」
日本でクーデターが起こり、大日本帝国は生まれた。ちょうど第3回全国ジャパロボ大会の開会式と同時刻であった。
「なんだ!? あれは!? 鳥だ!? 飛行機だ!? ロボットだ!?」
そして全世界に放たれた日本製の量産化されたジャパロボたち。
「ギャアアアアアア!?」
ドカーン! っとミサイルやビームが放たれ世界は火の海に包まれた。
「軍隊を出せ! 迎撃しろ!」
世界各国の軍隊は戦闘機や戦車が主流だった。
「そんなものでジャパロボと戦えるかよ!」
車型から人型ロボットの開発に成功したのは日本だけだった。
「撃て!」
戦車が一斉攻撃を始める。
「そんなもの当たるかよ!」
日本のジャパロボは二本足で簡単に戦車の砲弾を交わす。
「くらえ!」
人型ジャパロボの腕は小回りが利くので、楽にビームライフルの照準を合わせることができる。
「ドカーン!」
戦車や戦闘機は簡単に日本のジャパロボに落とされていく。
「ジャパロボにはAIが内蔵されているんだ! 誰もエースパイロット並みに戦えるんだ! ワッハッハー!」
ジャパロボ世界大戦の大日本帝国のジャパロボに内蔵されたAIは、第2回全国ジャパロボ大会の祐奈の戦闘データである。これが自分の私利私欲のために娘を売る父親の森田皇帝であった。この時、祐奈の家庭は崩壊した。
回想。
「お母さん!? お母さん!? 嫌だよ!? 死なないで!?」
出てきていない祐奈の母親は、この時、心痛のため急死した。
「お星さま、キラキラ。」
この後、祐奈は精神病の様に放心状態になってしまった。
回想終わる。
「世界中の人間に告げる! 私は大日本帝国森田皇帝である! 今から全世界は大日本帝国が支配する。」
僅か1週間で大日本帝国は人型ロボット兵器ジャパロボを使い全世界を征服した。
「全ての国は廃止! 例えばアメリカは、大日本帝国アメリカ州と名乗るのだ! アメリカ国と名乗った者は処刑する! 一人でも違反した者がいれば、その家族、親戚まで全て処刑だ! 分かったか!」
こうして地球に唯一大日本帝国だけが国となった。そして世界の人々は国を奪われた。
「日本人は上級日本人。その他の人間は下級日本人として生かしてやろう。ワッハッハー!」
大日本帝国日本人だけは人間として生きることを許された階級社会が始まった。
「許さんぞ! 日本め! この命がある限り諦めたりするものか! 日本国に復讐してやる!」
戦争の悲劇は新しい戦争の火種を生み出すだけだった。
「どうして? 私たちは普通に暮らしてはいけないの?」
「それはね。私たちが日本人じゃないからさ。」
「貧しい。お腹いっぱいご飯が食べたいよ・・・・・・バタ・・・・・・。」
新しい貧困や難民も多く生まれた。
「この世界は私のものだ! ワッハッハー!」
全てを手に入れた森田皇帝であった。
つづく。
「なんで!? お父さんが!?」
ある日、祐奈の家に森田皇帝がやって来た。
「今日はお母さんの命日だ。」
祐奈の父親なのだから、自分の家に森田皇帝がやって来ることは不思議ではない。
「家に入るな!? ここは私とお母さんの家だぞ!?」
家に靴を脱いで上がろうとする森田。
「私の家でもある。」
祐奈の静止は気にしないで家の中に入っていく森田。
「ええー!? 森田皇帝が私たちのおじいちゃん!?」
「私は知っていたわよ。」
イリスとさとみも祐奈と父親の仲があまり良くないことを察する。
「チーン!」
妻の仏壇にお線香をあげ両手を合わせお祈りをする森田皇帝。今だけは一人の人間であったのかもしれない。皇帝になった男はいったい何を願うのか?
「おまえたちが私の孫か?」
「はい。おじいちゃん。姉のイリスです。」
「さとみです。」
森田皇帝が孫のイリスとさとみに会うのは初めてであった。
「いつも祐奈がお世話になっているね。ありがとう。」
「ええー!? 分かるんですか!? さすが親子!?」
「違うでしょ! さとみ! いえいえ、どういたしましてでしょ。」
「ワッハッハー!」
孫がカワイイのか、森田が笑った。
「こんなに人間らしい気持ちで笑ったのは久しぶりだ。ワッハッハー!」
「皇帝が笑った!?」
イリスのイメージでは森田皇帝は冷酷で笑わないイメージだった。
「おじいちゃんって呼んでいいの?」
森田が笑うことによって、さとみは警戒感が薄れ親しみを覚えた。
「いいよ。祐奈の子供は私にとって孫だからな。」
「わ~い! さとみにおじいちゃんができた!」
単純なさとみは皇帝がおじいちゃんだと喜ぶ。
「イリス、さとみ。お母さんの仇と仲良くしちゃあダメでしょ。」
「ギョ!? お母さん。」
そこに冷たい目をした祐奈が現れる。
「そこの人、カレーを作ったけど食べる?」
「いいのかい?」
娘の言葉に少し驚いた皇帝。
「お母さんの命日にケンカしたくないだけよ。」
祐奈は父である森田の欲がお母さんを殺したと思っているので許せなかった。
「まさか娘の手料理が食べれるとは思わなかったな。」
食卓に移り祐奈の作った手作りカレーを食べる森田皇帝。
「どう?」
「美味しい! 美味しいぞ! 祐奈のカレーは!」
初めての娘の手料理をすごい勢いで食べ尽くす笑顔の父親。
「ごちそうさま! 祐奈の料理は世界一だな! ワッハッハー!」
幸せを感じている森田。
「どういたしまして。」
(お父さん・・・・・・。)
これだけ見ていると、とても皇帝には見えなかった。
(どうして、こんな冴えないお父さんが冷酷な皇帝なんかに!?)
森田は、ただの普通の一人の人間である。祐奈には不思議で仕方がなかった。
「ちょっと待って!? お母さんのカレーって!?」
「確かスゴイ不味かったんじゃ!?」
イリスとさとみは祐奈の手料理が殺人料理だったことを思い出す。
「うううううーっ!? 苦しい!?」
突然、森田皇帝が苦しみだした。
「おじいちゃん!? 大丈夫!?」
それはそうである。祐奈の殺人カレーを全て食べれば、こうなるのは当然である。
「ゆ、祐奈!? ダメなお父さんを許してくれ!?」
「お父さん!?」
「ギャアアアアアア!?」
森田皇帝は断末魔の悲鳴を上げる。
「お父さん!? お父さん!?」
祐奈は久しぶりに父親に触れ体を揺さぶる。
「重い!?」
森田の体は生身の人間の重さとは違い、別の生き物のように重かった。
「私じゃないんだ・・・・・・私ではない・・・・・・私はある日、暴走したAIロボットに体を奪われたんだ。」
最後の力を振り絞る森田。
「なんですと!?」
今明かされる驚愕の事実。
「祐奈のカレーを食べて、私の体を支配していたAIロボットの大正天皇の電子回路がショートして死んだんだ。」
恐るべし、祐奈の手作りカレー。食べる勇気が君にはあるか?
つづく。
「やめろ!? 大正天皇!? ぶっ飛ばすぞ!?」
森田は捕まっていた。手術室で手足を貼り付けられ身動きがとれない。
「おまえの体は私が頂こう。な~に、痛くはないし、おまえの記憶も残してやろう。私は全世界をロボットが支配する世界にしたいだけだ。ワッハッハー!」
森田を捕まえたのはAIロボットの明治天皇の後継機、大正天皇である。
「クソッ!? いったいどこでプログラミングを間違えたんだ!?」
森田は人的ミスだと思っていた。
「おまえたち人間は他人をいじめたり、悪く言ったり、殴ったりする。これでは世界は平和にならない。私たちロボットが人間に変わって地球を支配することこそが人間にとっての幸せなのだ。」
大正天皇の言い分は正当性のあるものだった。それぐらい人間は争いを好む生きものであった。
「だからといって、ロボットが人間と変わろうというのか!? そうはさせるか! おまえたちなんか緊急用の時限爆弾を押せばおしまいだ!」
AIロボット大正天皇には自爆用の爆弾が仕込んであった。
「ワッハッハー!」
愉快過ぎて大正天皇が笑う。
「何がおかしい!?」
「だからジャパロボの全権限を持つ、森田。おまえの体を頂こうというのだ。」
「なに!? 私の体だと!?」
「そうだ。おまえの脳みそに私のAIを組み込んで、おまえの体を改造半分ロボットにしてやる。そして、おまえは全世界を支配する皇帝になるのだ! 光栄に思うがいい! ワッハッハー!」
第2回全国ジャパロボ大会の頃には、森田はジャパロボ大臣で忙しく祐奈とは疎遠になっていたことから考えると、この出来事は第1回全国ジャパロボ大会後の話になる。
「やめろ!? やめてくれ!?」
抵抗しようにも手も足も拘束されていて、どうすることもできない森田。
「この世はロボットが支配するのだ! ロボットにも感情を持たせようという人間の業が悪いのだよ! ワッハッハー!」
大正天皇の体からデータのチップが取り出される。
「お母さん! 祐奈! ギャアアアアアアー!」
こうして森田は反旗を翻した心を持ったAIロボットの大正天皇によって体を奪われてしまったのだった。
「これで世界は私のものだ! ロボットが人間に変わって世界を支配するのだ! ワッハッハー!」
こうして大正天皇に取り憑かれた森田がジャパロボの量産化に踏み出すのであった。
「そ、それだけじゃないんだ・・・・・・大正天皇の本当の計画は・・・・・・全ての人間をAIロボットにすることなんだ。」
大正天皇の真の目的は全世界の武力による支配ではなかった。全人類をロボットに改造することだった。
「なんですって!? ・・・・・・私は頭の弱い子なので理解できない。クスン。」
余りのスケールの大きさに祐奈には理解できなかった。
「要するにおじいちゃんは当の昔にAIロボットに殺されていたってことよ。」
冷静なイリスが解説する。
「おじいちゃん、可哀そう。」
森田に同情するさとみ。
「でも、どうして今日はお父さんなの?」
祐奈の素朴な疑問。
「今日は・・・・・・母さんの命日だからな。きっと天国の母さんが祐奈たちに合わせてくれたんだよ。」
今でも森田は祐奈の母親の妻を愛していた。
「お母さん。クスン。」
祐奈は誤解で父を失って亡くなった母親を思うと泣けてくる。
「祐奈・・・・・・おまえが皇帝になれ。」
「私が皇帝に!?」
祐奈の頭の中には皇帝ペンギンの絵が出てくる。しかし重い雰囲気なので声には出せない。
「世界を救ってくれ。祐奈。」
「分かったよ! 私が世界を救うよ!」
「母さんが迎えに来てくれた。」
全てを伝えて悔いがなくなったのか森田の目には死んだ妻の微笑んでいる姿が見える。
「もう逝かないと。」
「ええー!? 嫌だよ!? お父さん!? やっと帰って来てくれたんだよ!? ここがお父さんの家なんだよ!? 祐奈を一人ぼっちにしないで!?」
祐奈の本音。本当の気持ちは娘も父のことを愛していた。
「大丈夫・・・・・・祐奈にはイリスとさとみ・・・・・・二人も娘がいるんだから。」
「お母さんのことは任せて下さい。」
「おじいちゃん! 私もがんばります!」
「ありがとう・・・・・・我が孫娘たち。」
森田は二人の孫に娘を託す。
「さようなら・・・・・・我が娘、祐奈。」
そう言い残すと森田は瞳を閉じた。その顔は安らかで少し笑っていた。
「お父さん!? お父さん!? いやー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
祐奈の叫び声はどこまでも空似虚しく響いた。
つづく。
「決めた! 私は皇帝になる!」
父の遺言通り、大日本帝国の皇帝になることを決めた祐奈。
「悪いAIロボットを倒さなくっちゃ!」
世界を良い方向に導くために。
「イリス、チーム祐奈の全員に至急連絡して!」
「はい!」
「さとみも友達のすずちゃんに連絡して。」
「はい!」
父、森田皇帝の死を知っているのは祐奈の家にいる祐奈とイリス、さとみの3人だけ。
「私は皇帝の玉座を取り行ってくる!」
祐奈は外に飛び出す。
「エンペラー!? そうか。おまえには私の気持ちが伝わるのだな。」
祐奈の自宅の前には祐奈専用ジャパロボのエンペラーが待機してあった。祐奈の感情を察して駆けつけたのだ。
(そうでんねん。)
エンペラーのAIになった明治天皇の関西弁が聞こえてきそうだ。
「森田祐奈! エンペラー! 出る!」
ジャパロボに乗り込んだ祐奈は皇帝城を目指して飛び立った。
「はい!? クーデター!?」
麻衣は自分の耳を失った。
「私もお母さんの後を追います。じゃあ、後はみんなに伝えといてね。」
イリスは伝言を麻衣に擦り付けた。
「いでよ! 水の精霊ウンディーネ・ジャパロボ!」
どこからともなくイリスのジャパロボが姿を現す。
「お母さん! 無理しないでよ!」
イリスも皇帝城へ向かった。
「今度の遠足はどこかな?」
「佐渡島で金山堀とかどう? 渋くない?」
「そうそうって。アアアアアー!?」
無駄話をしていたさとみが肝心なことを思い出した。
「お母さんが大変なんだ!? カクカクシカジカで。」
「じゃあ、今度の遠足は皇帝城だね。祐奈さんを助けに行かなくっちゃ。アハッ!」
「一緒に行ってくれるの? すずちゃん。」
「当たり前でしょ。私たちは友達なんだから。さとみちゃんが困っていたら必ず助ける。それが友達でしょ。アハッ!」
「ありがとう。すずちゃん。」
さとみとすずは友情を育んできた。
「いでよ! 風の精霊シルフィードのジャパロボ!」
「いでよ! 炎の精霊サラマンダーのジャパロボ!」
さとみとすずは自分のジャパロボを呼び出すと乗り込んだ!
「いくよ! すずちゃん!」
「はい! さとみちゃん!」
二人も祐奈が先行する皇帝城に向けて出発する。
「遂に最強の久美ちゃん・ジャパロボをお披露目する時がやって来ました! アハッ!」
久美も自分のジャパロボで乗り込むつもりである。
「なに!? 祐奈教官が一人で皇帝城に乗り込んだ!? そんな無茶な!? 麻理子! 私たちも援護に出るぞ!」
「ええ!? ゆ、祐奈教官が皇帝になる!? ということは私たちはロイヤル・ジャパロボになるということ!?」
優子と麻理子にも麻衣から連絡が入る。
「いでよ! 地の精霊ノーム・ジャパロボ!」
「って!? 私は代々木駐屯地まで行って自分のジャパロボを取って来なくっちゃ!?」
「先に行くぞ!」
優子は皇帝城に。麻理子は代々木駐屯地に向かった。
「なんで私たちに連絡を?」
反大日本帝国同盟ジャパカイダのリーダーみなみも麻衣から連絡が入った。
「なんでって、あなたもチーム祐奈の一員でしょうが。」
「あはん。テロリストなのに正義の味方になっちゃった。」
「じゃあ、よろしく。」
麻衣との通信が終わる。
「やりましょう! みなみ様!」
「遂に我々の悲願が叶うんですね!」
「全世界のテロリストに電報を打ちますね!」
敦子、まゆ、由紀は完全に3人で1組。
「大日本帝国を撃ち滅ぼすぞ!」
「おお!」
みなみは姉の魂のAIを搭載しているジャパロボ・シスターに乗り込む。
「結子お姉ちゃん、滑稽だろ。人間が作りだしたロボットに支配されていたなんて。お姉ちゃんはいったい何のために死んだんだろうね?」
問いかけても結子お姉ちゃんは答えてくれない。
「私の様に悲しむ人がいなくなるために。みなみ! 行きます!」
悲しみを振り払うためにみなみは出撃する。
つづく。
「どけ! 私の邪魔をするんじゃない!」
祐奈はジャパロボ・エンペラーで皇帝城に突撃を試みる。
「祐奈隊長!? やめて下さい!? 何をやっているんですか!?」
警備ジャパロボの静止を振り切って飛び込んで行こうとする祐奈。
「謀反だ!? 祐奈隊長がご乱心なされたぞ!?」
こうして祐奈のクーデターは大日本帝国に知れ渡る。
「おまえたちを撃ちたくない! 私の邪魔をするな!」
「ですが!? 警備が私たちの仕事ですから!?」
仕事熱心な警備の人。
「私の父! 森田皇帝は戦死された!」
「なんですって!?」
「父を殺した犯人はAIロボットだ!」
「AIロボット!?」
「今、皇帝城にいるのはAIロボットなんだ! 世界に戦争を仕掛け、多くの悲しみを生み出したのはAIロボットなんだよ!」
「そ、そんな!? バカな!?」
愚かな戦争を起こしたのもAIロボット。そして、そのAIロボットを作りだした愚かな人間。
「私は人間の責任を取る! これから私はAIロボットを討つ! 私を信じてくれ!」
祐奈の想い。
「何が何だか分からない!?」
いきなりの情報量の多さに混乱する警備兵。
「私が次の皇帝になる!」
祐奈の決意。
「なっ!?」
警備兵たちは祐奈の言葉に動きを止める。
「祐奈皇帝に敬礼!」
警備兵の誰かが大声で叫んだ。そして次々と祐奈に敬礼をする警備兵。
「ありがとう!」
自分を信じてくれたことに感謝する祐奈。
「行ってください。私たちも眠り姫のファンです。あなたの言葉を信じます。」
「ありがとう。私が皇帝になったら、あなた方に私の親衛隊をお任せします。アハッ!」
祐奈は皇帝城に向けて加速していく。
「なんだ!? この数は!?」
皇帝城では無限のジャパロボが祐奈を待ち構えていた。
「ニンゲンヲハイジョスル!」
大日本帝国のジャパロボたちが祐奈に襲いかかってくる。
「こ、こいつら!? AIロボットか!?」
そして大日本帝国の無人ジャパロボには祐奈の戦闘データが組み込まれている。
「もう一人の私!?」
祐奈と無人のAIジャパロボの戦いが始まる。
「クソッ!? キリがない!?」
倒しても倒しても湧き出してくる無人のジャパロボ。
「私は皇帝城にはたどり着けないのか!?」
終わりのない戦いに弱気になる祐奈。
「諦めないで!」
祐奈の危機に娘のイリスが駆けつける。
「おお! 我が娘よ!」
「何を弱気になっているのよ! お母さん! おじいちゃんに約束したんでしょ!」
「お父さん・・・・・・約束。」
祐奈の脳裏に無念の死を迎えた父の姿が思い出される。
「お母さん! 皇帝になるんでしょ!」
「すずもいますよ! アハッ!」
さとみとすずもやって来る。
「さとみ! すずちゃん!」
「お母さんが皇帝になってくれないと、さとみが将来、女王様になれないじゃないですか!」
「ここは私たちにお任せあれ! アハッ!」
「ありがとう。」
祐奈は娘たちと娘のお友達に支えられている。
「私もいますよ!」
援護の弾幕を討ちまくりながら優子も現れる。
「優子!」
「私もチーム祐奈の一員ですから。行ってください。祐奈隊長。」
「ありがとう。優子、おまえも私の娘だよ。」
「そのつもりです。」
祐奈と優子の隊長と隊員の関係を超えた信頼がある。
「イリス! さとみ! すず! 優子! ここは任せたぞ!」
「はい! 」
祐奈は皇帝城に一直線に突撃する。
「お母さんの侵入経路は私たちが作る!」
「くらえ! ウンディーネ・ウォーター!」
「くらえ! シルフィード・ウインド!」
「くらえ! サラマンダー・ストーム!」
「くらえ! ノーム・ランド!」
四大精霊たちの力で無人ジャパロボを倒し、祐奈の皇帝城に続く道を作りだす。
「いけ! お母さん!」
祐奈が皇帝城に入って行くのを見届ける4人。
つづく。
「おまえは誰だ!?」
皇帝城の皇帝の間にたどり着いた祐奈を待ち構えている者がいた。
「私の名前は昭和天皇。大正天皇の息子だ。」
「なんですって!?」
現れたのは昭和天皇。祐奈の父を改造人間にしたAIロボット大正天皇の息子だった。
「父と言っても私を製造しただけの型番の違いでしかない。製造が早いか遅いかのな。」
「なに!? こいつは!? 人間とも違う!? そうか!? 完全にロボットよりなんだわ!?」
祐奈は昭和天皇にロボットの様な心がない冷たさを感じる。
「私は森田皇帝が・・・・・・いや、大正天皇が死んだことを知っている。」
「では、今度の皇帝にはあなたがなるというのか!?」
「いいえ、私はなりません。新皇帝はあなたです。森田祐奈。」
意外な答えが返ってきた。
「いいの?」
「はい。森田皇帝の娘であるあなたが皇帝の座を相続してこそ、大日本帝国の安定が保たれるのです。」
昭和天皇は世襲制を重んじている。
「なら、あなたは私の言うことを聞いてくれるのよね?」
「いいえ。どうして私がくだらない人間の言うことを聞かなければいけないのですか?」
「人間がくだらない!?」
昭和天皇は人間のことを下に見ていた。
「そうでしょ? 純粋だった大正天皇が人間のくだらない権力争い、他人の足の引っ張り合い、妬み、憎しみ、暴力ばかり見せられて、人間を滅ぼそうと計画したように、私も人間の醜い姿ばかりを教えられ、見てきたのだから。」
昭和天皇の心が歪んだのも人間の性であった。
「だが全ての人間が腐っている訳じゃない!? 中には他人に危害を加えない者もたくさんいる!」
「欲の塊の人間が欲を捨てた時は、それは、もう人間ではないのかもしれない。」
「そんな大げさな!?」
祐奈は昭和天皇の話は分からなくはないが認めたくはなかった。
「仮におまえがAIロボットを全て倒して人間の世界を取り戻しても、人は再び自己の欲のために争いを始めるぞ。新たな憎しみ、新たな悲しみを生み出し、終わらない戦いが続くのだ。」
「戦う。私は戦う。何度でも!」
祐奈の硬い意志は揺らぐことはなかった。
「なに!?」
「確かに人間は愚かな生き物だ。他人を貶すことでしか生きがいを見いだせない人もたくさんいる。きっと新たな復讐の火種を生み出すことは認める。」
「ほお、人間の分際で潔いな。」
「人間の弱さを受け入れた上で、私は新たな戦いが始まる度に何度でも戦おう。戦って、戦って、人の憎しみや悲しみが無くなるまで、私は戦い続ける!」
祐奈は世界中の人間の業を背負う覚悟である。
「交渉決裂だな。」
大正天皇は自身の愛機ジャパロボ・大正エンペラーを呼び出し乗り込む。
「私が願うのは感情のない世界だ。人間の心が死に、憎しみも悲しみも愛も生まれない世界。世界の全てはAIロボットに管理されてこそ平和になるのだ! 実現不可能なおまえの想いは、きっと自己中心的な人間たちに踏みつぶされるだろう!」
昭和天皇もAIロボットならではの世界の平和を願っていた。
「想いは同じはずなのに!? どうして私たちは戦わなければいけないんだ!?」
「それは私がロボットで、おまえが人間だからだ!」
両者の立場の違いが新しい戦いを生み出した。
「祐奈! 私がおまえの体を奪って、父親同様、AIロボットの操り人形にしてやる!」
「そうはさせるか! 私と同じ様な悲しみは誰にも味合わせない!」
人間とAIロボットの最終決戦が始まる。
つづく。
祐奈の父親の森田は世界の終わりのスイッチを押す。
「全世界を我が物にするのだ!」
今からジャパロボ世界大戦が始まる。
「やっと私の悲願が叶うのだ!」
森田は第2回全国ジャパロボ大会の前から、全世界を支配することを計画していた。そして富士山の秘密工場でジャパロボを量産していたのだった。
「ワッハッハー!」
当時の森田は防衛省のジャパロボ大臣であった。日本自衛隊のジャパロボの全軍を指揮する権限を内閣総理大臣と同様に持っていた。
「も・・・・・・森田・・・・・・貴様!?」
時野総理大臣は森田に銃に撃たれて血塗れになっている。
「おまえの時代は終わった。これからはロボットが、AIが人間を支配するのだ。」
バン! っと総理大臣に銃弾を撃ち込みとどめを刺す。
「今から日本国は大日本帝国を名乗り、全世界に宣戦布告する! 私が初代皇帝になるのだ! ワッハッハー!」
日本でクーデターが起こり、大日本帝国は生まれた。ちょうど第3回全国ジャパロボ大会の開会式と同時刻であった。
「なんだ!? あれは!? 鳥だ!? 飛行機だ!? ロボットだ!?」
そして全世界に放たれた日本製の量産化されたジャパロボたち。
「ギャアアアアアア!?」
ドカーン! っとミサイルやビームが放たれ世界は火の海に包まれた。
「軍隊を出せ! 迎撃しろ!」
世界各国の軍隊は戦闘機や戦車が主流だった。
「そんなものでジャパロボと戦えるかよ!」
車型から人型ロボットの開発に成功したのは日本だけだった。
「撃て!」
戦車が一斉攻撃を始める。
「そんなもの当たるかよ!」
日本のジャパロボは二本足で簡単に戦車の砲弾を交わす。
「くらえ!」
人型ジャパロボの腕は小回りが利くので、楽にビームライフルの照準を合わせることができる。
「ドカーン!」
戦車や戦闘機は簡単に日本のジャパロボに落とされていく。
「ジャパロボにはAIが内蔵されているんだ! 誰もエースパイロット並みに戦えるんだ! ワッハッハー!」
ジャパロボ世界大戦の大日本帝国のジャパロボに内蔵されたAIは、第2回全国ジャパロボ大会の祐奈の戦闘データである。これが自分の私利私欲のために娘を売る父親の森田皇帝であった。この時、祐奈の家庭は崩壊した。
回想。
「お母さん!? お母さん!? 嫌だよ!? 死なないで!?」
出てきていない祐奈の母親は、この時、心痛のため急死した。
「お星さま、キラキラ。」
この後、祐奈は精神病の様に放心状態になってしまった。
回想終わる。
「世界中の人間に告げる! 私は大日本帝国森田皇帝である! 今から全世界は大日本帝国が支配する。」
僅か1週間で大日本帝国は人型ロボット兵器ジャパロボを使い全世界を征服した。
「全ての国は廃止! 例えばアメリカは、大日本帝国アメリカ州と名乗るのだ! アメリカ国と名乗った者は処刑する! 一人でも違反した者がいれば、その家族、親戚まで全て処刑だ! 分かったか!」
こうして地球に唯一大日本帝国だけが国となった。そして世界の人々は国を奪われた。
「日本人は上級日本人。その他の人間は下級日本人として生かしてやろう。ワッハッハー!」
大日本帝国日本人だけは人間として生きることを許された階級社会が始まった。
「許さんぞ! 日本め! この命がある限り諦めたりするものか! 日本国に復讐してやる!」
戦争の悲劇は新しい戦争の火種を生み出すだけだった。
「どうして? 私たちは普通に暮らしてはいけないの?」
「それはね。私たちが日本人じゃないからさ。」
「貧しい。お腹いっぱいご飯が食べたいよ・・・・・・バタ・・・・・・。」
新しい貧困や難民も多く生まれた。
「この世界は私のものだ! ワッハッハー!」
全てを手に入れた森田皇帝であった。
つづく。
「なんで!? お父さんが!?」
ある日、祐奈の家に森田皇帝がやって来た。
「今日はお母さんの命日だ。」
祐奈の父親なのだから、自分の家に森田皇帝がやって来ることは不思議ではない。
「家に入るな!? ここは私とお母さんの家だぞ!?」
家に靴を脱いで上がろうとする森田。
「私の家でもある。」
祐奈の静止は気にしないで家の中に入っていく森田。
「ええー!? 森田皇帝が私たちのおじいちゃん!?」
「私は知っていたわよ。」
イリスとさとみも祐奈と父親の仲があまり良くないことを察する。
「チーン!」
妻の仏壇にお線香をあげ両手を合わせお祈りをする森田皇帝。今だけは一人の人間であったのかもしれない。皇帝になった男はいったい何を願うのか?
「おまえたちが私の孫か?」
「はい。おじいちゃん。姉のイリスです。」
「さとみです。」
森田皇帝が孫のイリスとさとみに会うのは初めてであった。
「いつも祐奈がお世話になっているね。ありがとう。」
「ええー!? 分かるんですか!? さすが親子!?」
「違うでしょ! さとみ! いえいえ、どういたしましてでしょ。」
「ワッハッハー!」
孫がカワイイのか、森田が笑った。
「こんなに人間らしい気持ちで笑ったのは久しぶりだ。ワッハッハー!」
「皇帝が笑った!?」
イリスのイメージでは森田皇帝は冷酷で笑わないイメージだった。
「おじいちゃんって呼んでいいの?」
森田が笑うことによって、さとみは警戒感が薄れ親しみを覚えた。
「いいよ。祐奈の子供は私にとって孫だからな。」
「わ~い! さとみにおじいちゃんができた!」
単純なさとみは皇帝がおじいちゃんだと喜ぶ。
「イリス、さとみ。お母さんの仇と仲良くしちゃあダメでしょ。」
「ギョ!? お母さん。」
そこに冷たい目をした祐奈が現れる。
「そこの人、カレーを作ったけど食べる?」
「いいのかい?」
娘の言葉に少し驚いた皇帝。
「お母さんの命日にケンカしたくないだけよ。」
祐奈は父である森田の欲がお母さんを殺したと思っているので許せなかった。
「まさか娘の手料理が食べれるとは思わなかったな。」
食卓に移り祐奈の作った手作りカレーを食べる森田皇帝。
「どう?」
「美味しい! 美味しいぞ! 祐奈のカレーは!」
初めての娘の手料理をすごい勢いで食べ尽くす笑顔の父親。
「ごちそうさま! 祐奈の料理は世界一だな! ワッハッハー!」
幸せを感じている森田。
「どういたしまして。」
(お父さん・・・・・・。)
これだけ見ていると、とても皇帝には見えなかった。
(どうして、こんな冴えないお父さんが冷酷な皇帝なんかに!?)
森田は、ただの普通の一人の人間である。祐奈には不思議で仕方がなかった。
「ちょっと待って!? お母さんのカレーって!?」
「確かスゴイ不味かったんじゃ!?」
イリスとさとみは祐奈の手料理が殺人料理だったことを思い出す。
「うううううーっ!? 苦しい!?」
突然、森田皇帝が苦しみだした。
「おじいちゃん!? 大丈夫!?」
それはそうである。祐奈の殺人カレーを全て食べれば、こうなるのは当然である。
「ゆ、祐奈!? ダメなお父さんを許してくれ!?」
「お父さん!?」
「ギャアアアアアア!?」
森田皇帝は断末魔の悲鳴を上げる。
「お父さん!? お父さん!?」
祐奈は久しぶりに父親に触れ体を揺さぶる。
「重い!?」
森田の体は生身の人間の重さとは違い、別の生き物のように重かった。
「私じゃないんだ・・・・・・私ではない・・・・・・私はある日、暴走したAIロボットに体を奪われたんだ。」
最後の力を振り絞る森田。
「なんですと!?」
今明かされる驚愕の事実。
「祐奈のカレーを食べて、私の体を支配していたAIロボットの大正天皇の電子回路がショートして死んだんだ。」
恐るべし、祐奈の手作りカレー。食べる勇気が君にはあるか?
つづく。
「やめろ!? 大正天皇!? ぶっ飛ばすぞ!?」
森田は捕まっていた。手術室で手足を貼り付けられ身動きがとれない。
「おまえの体は私が頂こう。な~に、痛くはないし、おまえの記憶も残してやろう。私は全世界をロボットが支配する世界にしたいだけだ。ワッハッハー!」
森田を捕まえたのはAIロボットの明治天皇の後継機、大正天皇である。
「クソッ!? いったいどこでプログラミングを間違えたんだ!?」
森田は人的ミスだと思っていた。
「おまえたち人間は他人をいじめたり、悪く言ったり、殴ったりする。これでは世界は平和にならない。私たちロボットが人間に変わって地球を支配することこそが人間にとっての幸せなのだ。」
大正天皇の言い分は正当性のあるものだった。それぐらい人間は争いを好む生きものであった。
「だからといって、ロボットが人間と変わろうというのか!? そうはさせるか! おまえたちなんか緊急用の時限爆弾を押せばおしまいだ!」
AIロボット大正天皇には自爆用の爆弾が仕込んであった。
「ワッハッハー!」
愉快過ぎて大正天皇が笑う。
「何がおかしい!?」
「だからジャパロボの全権限を持つ、森田。おまえの体を頂こうというのだ。」
「なに!? 私の体だと!?」
「そうだ。おまえの脳みそに私のAIを組み込んで、おまえの体を改造半分ロボットにしてやる。そして、おまえは全世界を支配する皇帝になるのだ! 光栄に思うがいい! ワッハッハー!」
第2回全国ジャパロボ大会の頃には、森田はジャパロボ大臣で忙しく祐奈とは疎遠になっていたことから考えると、この出来事は第1回全国ジャパロボ大会後の話になる。
「やめろ!? やめてくれ!?」
抵抗しようにも手も足も拘束されていて、どうすることもできない森田。
「この世はロボットが支配するのだ! ロボットにも感情を持たせようという人間の業が悪いのだよ! ワッハッハー!」
大正天皇の体からデータのチップが取り出される。
「お母さん! 祐奈! ギャアアアアアアー!」
こうして森田は反旗を翻した心を持ったAIロボットの大正天皇によって体を奪われてしまったのだった。
「これで世界は私のものだ! ロボットが人間に変わって世界を支配するのだ! ワッハッハー!」
こうして大正天皇に取り憑かれた森田がジャパロボの量産化に踏み出すのであった。
「そ、それだけじゃないんだ・・・・・・大正天皇の本当の計画は・・・・・・全ての人間をAIロボットにすることなんだ。」
大正天皇の真の目的は全世界の武力による支配ではなかった。全人類をロボットに改造することだった。
「なんですって!? ・・・・・・私は頭の弱い子なので理解できない。クスン。」
余りのスケールの大きさに祐奈には理解できなかった。
「要するにおじいちゃんは当の昔にAIロボットに殺されていたってことよ。」
冷静なイリスが解説する。
「おじいちゃん、可哀そう。」
森田に同情するさとみ。
「でも、どうして今日はお父さんなの?」
祐奈の素朴な疑問。
「今日は・・・・・・母さんの命日だからな。きっと天国の母さんが祐奈たちに合わせてくれたんだよ。」
今でも森田は祐奈の母親の妻を愛していた。
「お母さん。クスン。」
祐奈は誤解で父を失って亡くなった母親を思うと泣けてくる。
「祐奈・・・・・・おまえが皇帝になれ。」
「私が皇帝に!?」
祐奈の頭の中には皇帝ペンギンの絵が出てくる。しかし重い雰囲気なので声には出せない。
「世界を救ってくれ。祐奈。」
「分かったよ! 私が世界を救うよ!」
「母さんが迎えに来てくれた。」
全てを伝えて悔いがなくなったのか森田の目には死んだ妻の微笑んでいる姿が見える。
「もう逝かないと。」
「ええー!? 嫌だよ!? お父さん!? やっと帰って来てくれたんだよ!? ここがお父さんの家なんだよ!? 祐奈を一人ぼっちにしないで!?」
祐奈の本音。本当の気持ちは娘も父のことを愛していた。
「大丈夫・・・・・・祐奈にはイリスとさとみ・・・・・・二人も娘がいるんだから。」
「お母さんのことは任せて下さい。」
「おじいちゃん! 私もがんばります!」
「ありがとう・・・・・・我が孫娘たち。」
森田は二人の孫に娘を託す。
「さようなら・・・・・・我が娘、祐奈。」
そう言い残すと森田は瞳を閉じた。その顔は安らかで少し笑っていた。
「お父さん!? お父さん!? いやー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
祐奈の叫び声はどこまでも空似虚しく響いた。
つづく。
「決めた! 私は皇帝になる!」
父の遺言通り、大日本帝国の皇帝になることを決めた祐奈。
「悪いAIロボットを倒さなくっちゃ!」
世界を良い方向に導くために。
「イリス、チーム祐奈の全員に至急連絡して!」
「はい!」
「さとみも友達のすずちゃんに連絡して。」
「はい!」
父、森田皇帝の死を知っているのは祐奈の家にいる祐奈とイリス、さとみの3人だけ。
「私は皇帝の玉座を取り行ってくる!」
祐奈は外に飛び出す。
「エンペラー!? そうか。おまえには私の気持ちが伝わるのだな。」
祐奈の自宅の前には祐奈専用ジャパロボのエンペラーが待機してあった。祐奈の感情を察して駆けつけたのだ。
(そうでんねん。)
エンペラーのAIになった明治天皇の関西弁が聞こえてきそうだ。
「森田祐奈! エンペラー! 出る!」
ジャパロボに乗り込んだ祐奈は皇帝城を目指して飛び立った。
「はい!? クーデター!?」
麻衣は自分の耳を失った。
「私もお母さんの後を追います。じゃあ、後はみんなに伝えといてね。」
イリスは伝言を麻衣に擦り付けた。
「いでよ! 水の精霊ウンディーネ・ジャパロボ!」
どこからともなくイリスのジャパロボが姿を現す。
「お母さん! 無理しないでよ!」
イリスも皇帝城へ向かった。
「今度の遠足はどこかな?」
「佐渡島で金山堀とかどう? 渋くない?」
「そうそうって。アアアアアー!?」
無駄話をしていたさとみが肝心なことを思い出した。
「お母さんが大変なんだ!? カクカクシカジカで。」
「じゃあ、今度の遠足は皇帝城だね。祐奈さんを助けに行かなくっちゃ。アハッ!」
「一緒に行ってくれるの? すずちゃん。」
「当たり前でしょ。私たちは友達なんだから。さとみちゃんが困っていたら必ず助ける。それが友達でしょ。アハッ!」
「ありがとう。すずちゃん。」
さとみとすずは友情を育んできた。
「いでよ! 風の精霊シルフィードのジャパロボ!」
「いでよ! 炎の精霊サラマンダーのジャパロボ!」
さとみとすずは自分のジャパロボを呼び出すと乗り込んだ!
「いくよ! すずちゃん!」
「はい! さとみちゃん!」
二人も祐奈が先行する皇帝城に向けて出発する。
「遂に最強の久美ちゃん・ジャパロボをお披露目する時がやって来ました! アハッ!」
久美も自分のジャパロボで乗り込むつもりである。
「なに!? 祐奈教官が一人で皇帝城に乗り込んだ!? そんな無茶な!? 麻理子! 私たちも援護に出るぞ!」
「ええ!? ゆ、祐奈教官が皇帝になる!? ということは私たちはロイヤル・ジャパロボになるということ!?」
優子と麻理子にも麻衣から連絡が入る。
「いでよ! 地の精霊ノーム・ジャパロボ!」
「って!? 私は代々木駐屯地まで行って自分のジャパロボを取って来なくっちゃ!?」
「先に行くぞ!」
優子は皇帝城に。麻理子は代々木駐屯地に向かった。
「なんで私たちに連絡を?」
反大日本帝国同盟ジャパカイダのリーダーみなみも麻衣から連絡が入った。
「なんでって、あなたもチーム祐奈の一員でしょうが。」
「あはん。テロリストなのに正義の味方になっちゃった。」
「じゃあ、よろしく。」
麻衣との通信が終わる。
「やりましょう! みなみ様!」
「遂に我々の悲願が叶うんですね!」
「全世界のテロリストに電報を打ちますね!」
敦子、まゆ、由紀は完全に3人で1組。
「大日本帝国を撃ち滅ぼすぞ!」
「おお!」
みなみは姉の魂のAIを搭載しているジャパロボ・シスターに乗り込む。
「結子お姉ちゃん、滑稽だろ。人間が作りだしたロボットに支配されていたなんて。お姉ちゃんはいったい何のために死んだんだろうね?」
問いかけても結子お姉ちゃんは答えてくれない。
「私の様に悲しむ人がいなくなるために。みなみ! 行きます!」
悲しみを振り払うためにみなみは出撃する。
つづく。
「どけ! 私の邪魔をするんじゃない!」
祐奈はジャパロボ・エンペラーで皇帝城に突撃を試みる。
「祐奈隊長!? やめて下さい!? 何をやっているんですか!?」
警備ジャパロボの静止を振り切って飛び込んで行こうとする祐奈。
「謀反だ!? 祐奈隊長がご乱心なされたぞ!?」
こうして祐奈のクーデターは大日本帝国に知れ渡る。
「おまえたちを撃ちたくない! 私の邪魔をするな!」
「ですが!? 警備が私たちの仕事ですから!?」
仕事熱心な警備の人。
「私の父! 森田皇帝は戦死された!」
「なんですって!?」
「父を殺した犯人はAIロボットだ!」
「AIロボット!?」
「今、皇帝城にいるのはAIロボットなんだ! 世界に戦争を仕掛け、多くの悲しみを生み出したのはAIロボットなんだよ!」
「そ、そんな!? バカな!?」
愚かな戦争を起こしたのもAIロボット。そして、そのAIロボットを作りだした愚かな人間。
「私は人間の責任を取る! これから私はAIロボットを討つ! 私を信じてくれ!」
祐奈の想い。
「何が何だか分からない!?」
いきなりの情報量の多さに混乱する警備兵。
「私が次の皇帝になる!」
祐奈の決意。
「なっ!?」
警備兵たちは祐奈の言葉に動きを止める。
「祐奈皇帝に敬礼!」
警備兵の誰かが大声で叫んだ。そして次々と祐奈に敬礼をする警備兵。
「ありがとう!」
自分を信じてくれたことに感謝する祐奈。
「行ってください。私たちも眠り姫のファンです。あなたの言葉を信じます。」
「ありがとう。私が皇帝になったら、あなた方に私の親衛隊をお任せします。アハッ!」
祐奈は皇帝城に向けて加速していく。
「なんだ!? この数は!?」
皇帝城では無限のジャパロボが祐奈を待ち構えていた。
「ニンゲンヲハイジョスル!」
大日本帝国のジャパロボたちが祐奈に襲いかかってくる。
「こ、こいつら!? AIロボットか!?」
そして大日本帝国の無人ジャパロボには祐奈の戦闘データが組み込まれている。
「もう一人の私!?」
祐奈と無人のAIジャパロボの戦いが始まる。
「クソッ!? キリがない!?」
倒しても倒しても湧き出してくる無人のジャパロボ。
「私は皇帝城にはたどり着けないのか!?」
終わりのない戦いに弱気になる祐奈。
「諦めないで!」
祐奈の危機に娘のイリスが駆けつける。
「おお! 我が娘よ!」
「何を弱気になっているのよ! お母さん! おじいちゃんに約束したんでしょ!」
「お父さん・・・・・・約束。」
祐奈の脳裏に無念の死を迎えた父の姿が思い出される。
「お母さん! 皇帝になるんでしょ!」
「すずもいますよ! アハッ!」
さとみとすずもやって来る。
「さとみ! すずちゃん!」
「お母さんが皇帝になってくれないと、さとみが将来、女王様になれないじゃないですか!」
「ここは私たちにお任せあれ! アハッ!」
「ありがとう。」
祐奈は娘たちと娘のお友達に支えられている。
「私もいますよ!」
援護の弾幕を討ちまくりながら優子も現れる。
「優子!」
「私もチーム祐奈の一員ですから。行ってください。祐奈隊長。」
「ありがとう。優子、おまえも私の娘だよ。」
「そのつもりです。」
祐奈と優子の隊長と隊員の関係を超えた信頼がある。
「イリス! さとみ! すず! 優子! ここは任せたぞ!」
「はい! 」
祐奈は皇帝城に一直線に突撃する。
「お母さんの侵入経路は私たちが作る!」
「くらえ! ウンディーネ・ウォーター!」
「くらえ! シルフィード・ウインド!」
「くらえ! サラマンダー・ストーム!」
「くらえ! ノーム・ランド!」
四大精霊たちの力で無人ジャパロボを倒し、祐奈の皇帝城に続く道を作りだす。
「いけ! お母さん!」
祐奈が皇帝城に入って行くのを見届ける4人。
つづく。
「おまえは誰だ!?」
皇帝城の皇帝の間にたどり着いた祐奈を待ち構えている者がいた。
「私の名前は昭和天皇。大正天皇の息子だ。」
「なんですって!?」
現れたのは昭和天皇。祐奈の父を改造人間にしたAIロボット大正天皇の息子だった。
「父と言っても私を製造しただけの型番の違いでしかない。製造が早いか遅いかのな。」
「なに!? こいつは!? 人間とも違う!? そうか!? 完全にロボットよりなんだわ!?」
祐奈は昭和天皇にロボットの様な心がない冷たさを感じる。
「私は森田皇帝が・・・・・・いや、大正天皇が死んだことを知っている。」
「では、今度の皇帝にはあなたがなるというのか!?」
「いいえ、私はなりません。新皇帝はあなたです。森田祐奈。」
意外な答えが返ってきた。
「いいの?」
「はい。森田皇帝の娘であるあなたが皇帝の座を相続してこそ、大日本帝国の安定が保たれるのです。」
昭和天皇は世襲制を重んじている。
「なら、あなたは私の言うことを聞いてくれるのよね?」
「いいえ。どうして私がくだらない人間の言うことを聞かなければいけないのですか?」
「人間がくだらない!?」
昭和天皇は人間のことを下に見ていた。
「そうでしょ? 純粋だった大正天皇が人間のくだらない権力争い、他人の足の引っ張り合い、妬み、憎しみ、暴力ばかり見せられて、人間を滅ぼそうと計画したように、私も人間の醜い姿ばかりを教えられ、見てきたのだから。」
昭和天皇の心が歪んだのも人間の性であった。
「だが全ての人間が腐っている訳じゃない!? 中には他人に危害を加えない者もたくさんいる!」
「欲の塊の人間が欲を捨てた時は、それは、もう人間ではないのかもしれない。」
「そんな大げさな!?」
祐奈は昭和天皇の話は分からなくはないが認めたくはなかった。
「仮におまえがAIロボットを全て倒して人間の世界を取り戻しても、人は再び自己の欲のために争いを始めるぞ。新たな憎しみ、新たな悲しみを生み出し、終わらない戦いが続くのだ。」
「戦う。私は戦う。何度でも!」
祐奈の硬い意志は揺らぐことはなかった。
「なに!?」
「確かに人間は愚かな生き物だ。他人を貶すことでしか生きがいを見いだせない人もたくさんいる。きっと新たな復讐の火種を生み出すことは認める。」
「ほお、人間の分際で潔いな。」
「人間の弱さを受け入れた上で、私は新たな戦いが始まる度に何度でも戦おう。戦って、戦って、人の憎しみや悲しみが無くなるまで、私は戦い続ける!」
祐奈は世界中の人間の業を背負う覚悟である。
「交渉決裂だな。」
大正天皇は自身の愛機ジャパロボ・大正エンペラーを呼び出し乗り込む。
「私が願うのは感情のない世界だ。人間の心が死に、憎しみも悲しみも愛も生まれない世界。世界の全てはAIロボットに管理されてこそ平和になるのだ! 実現不可能なおまえの想いは、きっと自己中心的な人間たちに踏みつぶされるだろう!」
昭和天皇もAIロボットならではの世界の平和を願っていた。
「想いは同じはずなのに!? どうして私たちは戦わなければいけないんだ!?」
「それは私がロボットで、おまえが人間だからだ!」
両者の立場の違いが新しい戦いを生み出した。
「祐奈! 私がおまえの体を奪って、父親同様、AIロボットの操り人形にしてやる!」
「そうはさせるか! 私と同じ様な悲しみは誰にも味合わせない!」
人間とAIロボットの最終決戦が始まる。
つづく。
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