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ポーちゃんママとゲーム開始

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「行ってらっしゃい。」
 何事もないように普段通りポーちゃんたちを家から送り出すポーちゃんママ。
「家事も終了っと。」
 朝食、皿洗い、掃除、洗濯干しを終えたポーちゃんママ。
「それではそろそろ準備しますか。アハッ!」
 楽しそうにゲーム専用のパソコンの電源を入れるポーちゃんママ。
「サービス開始までお待ちください。サービス開始は午前10時を予定しております。」
「チッ。少し早かったか。今の間にトイレでも行っとくか。それとランチのポテトの宅配とスーパーに晩御飯のオーダーしとかないと。お手伝いさんが欲しいな。」
 現在の時刻は9時30分。準備万全のポーちゃんままであった。

「エクレア様くるぞ!」
 その頃、ネットの掲示板はポーちゃんママの話題で持ちきりだった。
「ポッポッポのゲームには必ずエクレア様がインされるぞ!」
「エクレア神降臨!」
「これでゴットカードも神ゲーの仲間入りだ。」
 ネット民の間では世界大会30連覇中のポーちゃんママは神扱いされていた。正に世界に誇る日本の誇りであった。例えるならイチロー、ゴジラ、エクレアなのである。

「後1分。この緊張感がたまらん!」
 現在の時刻は9時59分。遂に一分をきった。
「3、2、1。戦闘開始だ!」
 これが2児の子供を持つゲーマーの母親の生活であった。

「アカウント名はエクレア。年齢は永遠の17才っと。」
 次々とゲームの初期設定を入力していく。
「普通の女子高生でいいわね。アハッ!」
 ゲームのアバターなので誰にも若作りしているとは言われないのである。
「ほい! きた! ゲームの世界!」
 やっと初期設定が終わりパソコンの画面がゲームの画面にきた。
「スキップ! この差が大きいのよね。」
 ポーちゃんママはチュートリアルをスキップした。チュートリアルは説明に時間がかかるのでスキップすると他のプレイヤーと約5分以上の差が生まれる。世界大会クラスになると、この差が命取りである。
「まずは無料ガチャを回そうっと! 記念すべき第1号は何が出るかな?」
 ポーちゃんママはガチャを回す。
「弓兵か。まあ、無料ガチャだから期待してないけどね。」
 無料ガチャはどのゲームでも詐欺みたいなものである。
「やあ! ここから本気を出すか!」
 アカウント・エクレアが遂に目覚める。
「今の期間はイベントで竜の探求をやっているから、ガチャの目玉は伝説の勇者トロよ魔王ドラゴン・キングか。」

勇者トロ
レベル80
全ステータス160
・ブレーブ・スラッシュー!

魔王ドラゴン・キング
レベル80
全ステータス160
・DKF(ドラゴン・キング・ファイアー!)


「なになに? シークレット・キャラクター多数ご用意してあります? まったく、うちの旦那はふざけてるんだから!」
 プンプンに怒るポーちゃんママ。
「良い子のみんなは親のクレジットカードで真似しないでね! 課金開始!」
 ポポーちゃんママが有料ガチャに課金を始める。一般的に有料ガチャに課金する人は一般大衆ではなく、ゲーム関係者の人の方が多い。いわゆるヒットしているという自作自演である。ゲーマーのポーちゃんママもその一人である。
「ガチャ! ガチャ! ガチャ! ガチャ! ガチャ! ガチャ! ガチャ! ガチャ! ガチャ! ガチャ!」
 怒涛のガチャ回しが始まる。

ピーンポーン!

 その時、玄関のベルが鳴った。
「は~い。」
 ポーちゃんママが玄関を開ける。
「マクドナルです。ポテトの宅配です。」
「ありがとう。」
 さっき注文したポテトが届いた。
「美味しい。よし! 燃料補給だ! 続けてガチャを回すぞ! ガチャ! ガチャ! ガチャ! ガチャ!」
 そして再びガチャを回し始めたポーちゃんママ。

ピーンポーン!

 再びベルが鳴る。
「は~い。」 
「スーパーです。商品をお届けに来ました。」
「ありがとう。」
 さっき注文したネットスーパーの商品が届いた。
「これで晩御飯も大丈夫! 後はポーちゃんが帰って来るまで私を邪魔する者はいない! 本当に家政婦さんが欲しいわ。でも、雇ってしまうとお母さんじゃなくなっちゃうしな~。困っちゃう。」
 手抜き専業主婦も辛いのである。
「それでは再びガチャでも回すか。ガチャ! ガチャ! ガチャ! ガチャ! ガチャ! ガチャ! ガチャ!」
 あくまでもお金持ちのポーちゃんママはガチャに課金しまくるのであった。

「1時間で1億円か。まあ、これぐらいでいいだろう。」
 やっとポーちゃんママはガチャを回すのをやめた。
「それではどれだけレアが手に入ったか見て見よう。」
 これもお金持ちの特権である。
「勇者トロが17枚。魔王ドラゴン・キングが11枚っと。辛うじてカンストしたな。」
 初期の設定で1枚被れば0.1のステータスがかけられる。つまり10枚被ればステータスが2倍になるということだ。2倍までが現在のゴットカードの限界値なのでポーちゃんママは1時間1億の課金で何とか達成した。
「だが問題なのがシークレットだ。うちの旦那は変なモノを仕込みやがったな。」
 詳細はポーちゃんママも知らない。
「マウス・ナイト? カウ・ナイト? タイガー・ナイト? チキン・ナイトって干支ばっかりじゃん!? 干支戦記ってなんだ!? 12星座と戦わす気かよ!? くだらねえ!?」
 ポーちゃんママは旦那の悪口を言うのが大好きだ。
「でも、さすがシークレットだ。ダブらなかったな。」

マウス・ナイト等のシークレットたち
レベル90
全ステータス180

「こうなると2倍まで被らせた勇者トロと魔王ドラゴン・キングの方が強いな。」

勇者トロ、魔王ドラゴン・キング(2倍)
レベル80
全ステータス320

「どう見ても魔王ドラゴン・キングの方が全体攻撃が使えそうで強そうだ。第一形態は人型だし、魔王ドラゴン・キングでプレイしよう。」
 ポーちゃんママは自分がプレイするキャラクターを選んだ。お金持ちは最初から一般大衆や無料ガチャの弓兵など使う気はないのだ。
「残りは魔法使い系でいいのかな? 隠れ家と研究所の建設だ。これが一番将来的に差が出る。2週間もあれば禁呪か魔界の召喚獣くらいは手に入るだろう。守りは勇者トロと干支戦記部隊を配置していれば破壊されることもないだろう。」
 自由になんでも建設、育成できる。それがゴットカードの世界。
「後は世界全土に手に入れた雑魚キャラクターたちを派遣しよう。きっとお宝とか隠しダンジョンを見つけてくれるだろう。レベル上げとか合成とか面倒臭いから、オートで設定と。楽ちんだな。これなら放置しても物語が進むぞ。」
 今時のネットゲームは放置で強くならないと誰も遊んでくれない。
「よし! やってやるぞ! 今日中にクリアするぞ!」
 遂にポーちゃんママがイベント竜の探求を開始する。
「目指すわ! 2週間後の対戦モードの大会で優勝することだ!」
 ポーちゃんママは先を見据えていた。
 つづく。
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