あなたの月 ８月

悪って、何？

「えっと、えっと、干支の敵って、何？　悪って、何？」
　葉月は第７要素の転換に直面する。
「コケッ」
　モンスターだと異世界ファンタジーで剣と魔法になっちゃうし、妖怪だと和モノファンタジーになっちゃう。
「そうよね。チキンとはテレパシーで話ができるようになったけど、私が倒すべき敵は誰？　悪は何？」
「コケッ。」
　今回は人間にしよう。人間にも悪い奴はたくさんいる。昔話で例えると、悪代官とか桔梗屋だな。おまえは水戸のご老公様になるのだ。
「黄門はいや～。だって、汚いもん。」
「コケッ！？」
　それは違う肛門だ。
「コケッ。」
　後は名探偵ではなく、事件を解決しろ。それが定番で簡単だ。
「試練ってやつね。」
　第８要素の試練である。
「ここでより強力な悪い人間や凶悪な事件が起こるっと。」
「コケッ。」
　それは台風でも、津波でも、ロナ・ウイルスでも何でもいい。
「バカ野郎！？　・・・・・・じゃなかった！？　この鳥野郎！？　そんな危険な自然現象と戦えるか！？」
　チキンは人間ではなくニワトリ野郎である。これが第９要素の危機。
「コケッ！」
　これを何とかするのが干支守の仕事だ！　喜んで死ねとチキンは言っている。
「マジか！？　私はなんと恐ろしいニワトリと出会ってしまったんだ！？」
　葉月はチキンとの出会いを後悔した。
「やっぱり焼き鳥にして食べよう！」
　そしてチキンを食べることにした。
「コケッ！？」
　私を食べてもおいしくないぞ！？　やめろ！？　やめてくる！？　食うな！？　私を食うんじゃない！？　と命乞いするチキン。
「コケッ。」
　仕方がない。少しだけ干支守の力の使い方を教えてやろうっと食料扱いから話を逸らすチキン。
「さすが、チキン師匠！」
　ニワトリを師に持つ葉月であった。これが第１０の要素、糸口だ。
「これで私も一人前の酉の干支守だ！」
　葉月は修行をカットしてレベルアップした。第１１の要素の対決。
「私がロナ・ウイルスを世界から根絶してやる！　くらえ！　酉インフルエンザ！」
　葉月はロナ・ウイルスを鳥ウイルスで上書きするというものであった。
「やったー！　ロナ・ウイルスを世界から絶滅することに成功したぞ！」
　第１２要素、排除。これでラスボスは倒したようなものだ。
「これで縁側でお茶を飲んでほっこりできますな。」
　第１３要素の満足である。ハッピー・エンディングを成し遂げた。
「めでたし、めでたしだな。」
「コケッ。」
　縁側でお茶を飲んでほっこりする一人と一匹。
「タイトルも「あなたの月」から「えっと、えっと、干支」に変えなくっちゃ。」
「コケッ！？」
　オヤジギャグでいいのか！？　心配するチキン。
「あ！？　そうだ！　他の１１か月分の干支守と干支にも登場してもらわなくっちゃ。」
　でも、今月の主役は８月の葉月である。
「コケッ。」
　これでも大先生の１３要素を繰り返していれば大作になるのだろうっと、遠くを見つめるチキンであった。
「あ！？　流れ星！」
　縁側から見る空には星も流れるのであった。
　つづく。