茶店の歌姫5 スーパー

渋谷かな

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エヘッ! 5

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「私の名前はおみっちゃん! 夢はお江戸で歌姫になることです!」
 おみっちゃんの夢は歌姫になること。ちなみに歌姫とはアイドルみたいなものである。
「いらっしゃいませ! 美味しい! 美味しい! お茶とお団子ですよ!」
 夢を叶えるために茶店で看板娘のアルバイトをして銭を貯めている。
「実は私、幽霊なんですけど。エヘッ!」
 おみっちゃんはエヘ幽霊である。

「信号を渡る時は青になってから渡ろう! ああ~良いことしたな!」
 おみっちゃんは純粋な心の持ち主。
「何言ってるんだい? あんた幽霊だから信号は関係ないだろうが。」
 茶店の女将さんがツッコム。
「そうでした。私が可愛いから許してください。エヘッ!」
 おみっちゃんは可愛い幽霊でした。

「茶店で働く新しい仲間が増えたので自己紹介でもしましょう。」
 おみっちゃんは新しく茶店で働くことになったチョウチョウと親睦を深めたい。
「私は幽霊のおみっちゃん。夢はお江戸で歌姫になることです。エヘッ!」
 歌姫になって煌びやかで輝く世界に行きたいエヘ幽霊。
(えっ!? おみっちゃんが江戸に行って歌ったら江戸が壊滅しちゃうよ!?)
 チョウチョウはおみっちゃんの夢に恐怖を覚えてガクガク・ブルブルした。
「これはガッキー。こっちはテンテン、カッカッ。詳細は省略。」
 自己紹介も簡略化された。
「酷い!? あんまりだ!? 略し過ぎだろう!?」
 仲間たちは文句を言う。
「文句は聞こえません。あわわわわ。」
 苦情はかき消された。
「私は提灯お化けのチョウチョウ。夢は・・・・・・平和に暮らすことです。できれば夜勤が多いので夜に温かい布団で眠りたいな。」
 提灯お化けの夢ってなんだろう。
「みんなで夢に向かってがんばろう!」
「エイエイオー!」
 気合を入れるおみっちゃんたち。
「そんなことはどうでもいいから仕事をしな! 5人いるんだから売り上げ5倍にならなかったら給料を減らすからね! イヒッ!」
 守銭奴な女将さん。

「ここが開店前に仕える自由スペースなんですが、みんなで何をしましょう?」
 茶店の休憩時間は手持無沙汰。
「みんなで悪者を倒す冒険にでも出かけますか?」
 悪役を決めないといけないし、各自のアイデンティティーも開発中で次期草々な冒険かな。
「こうしましょう。各自で4コマ漫画を作って個性を完成させていくの。そうすれば、もっと物語が面白くなるはずよ。」
 確かに各キャラクターは名前と必殺技と新作のお団子のアイデア以外は何も決まっていない。
「とりあえず自由に初めて、将来的には笑点の大喜利でも目指しますか。」
 方向性が見えてきたおみっちゃんたち。
「みんなでがんばるぞ! 夢は絶対に諦めない! いくぞ!」
「エイエイオー!」
 気合入れをして心を一つにする妖怪たちであった。

「エヘッ! エヘッ! エヘッ! 私ってカワイイ。エヘッ!」
 鏡を見て自分のことが1番可愛いエヘ幽霊。
「おみっちゃん、何をやっているんだい?」
 そこに女将さんが現れる。
「カワイイポーズの練習です。エヘッ!」
 可愛いに妥協が無いエヘ幽霊。
「あんた幽霊だから鏡に姿が映らないだろう。」
 おみっちゃんは幽霊なので鏡に姿が映らない。
「しまった!? 私は幽霊でした!? うっかりしていました。でも私が可愛いので許してください。エヘッ!」
 可愛く謝るエヘ幽霊。
「可哀そうに。遂に頭がおかしくなったんだな。」
 手を合わせておみっちゃんの成仏を祈る女将さん。

「どうすれば私の姿は鏡や写真に写るんだ?」
 おみっちゃんはない脳みそで考えた。
「そうか。擬人化すればいいんだ。エヘッ!」
 提灯お化けが擬人化するのを見て思いついたエヘ幽霊。
「変身! 擬人化! かわいくな~あれ!」
 おみっちゃんは擬人化した。
「ただ足が着いただけなんですけど?」
 元が幽霊なので大した変化はない。
「私が可愛いから許してください。エヘッ!」
 いつも明るく元気で笑顔なエヘ幽霊。

「どうすればお腹いっぱいになれるのかな?」
 餓鬼のガッキーはいつもお腹が減っている呪われた体質だった。
「お団子だけじゃ満腹にならないや。」
 茶店のお団子を盗み食いするだけではお腹は空いたままだった。
「そうだ。他の物も食べてみよう。」
 違うものを食べることにした。
「いただきます! 東京タワー! パクッとな。」
 ガッキーは東京タワーを食べ始めた。
「美味しい! りんご飴、ウエハース、飴細工みたいな味かな。今度、茶店で作って売ってみよう。」
 東京タワーを食べて満足なガッキー。

「おみっちゃんもガッキーもすごいな。私は何をすればいいのかしら?」
 天狗のテンテンはやることが決まっていなかった。
「太平洋に行って台風を作る?」
 テンテンは羽団扇で夏は台風を赤道付近で発生させることができる。
「それともアメリカに行って山火事を起こす?」
 火遁の術で山火事を起こすこともできる。
「やっぱり私は風と火を扱えるので肉まんの開発に尽力を尽くそう。」
 テンテンは平和を愛している。

「何をして時間を使おうか?」
 河童のカッカッも時間を持て余していた。
「川で泳ぐ? 魚を取って焼いて食べる? う~ん。何も変わらないわ。」
 どれもいまいち。
「そうだ。私も擬人化してみよう。えい!」
 カッカッは擬人化した。
「わ~い! お皿が消えて髪の毛が生えてきた! フサフサだ!」
 抜け毛に苦しんでいたカッカッであった。

「熱い。どうして私は提灯なんだろう?」
 提灯お化けのチョウチョウは悩んでいた。
「チョウチョウ。焼き芋あげる。」
 そこにおみっちゃんが現れる。
「ありがとう。おみっちゃん。」
 喜ぶチョウチョウ。
「はい。お口を開けて。」
 おみっちゃんは芋をチョウチョウの口に入れる。それから10分後。
「できました! ホクホクの焼き芋! 密がとろけていて美味しい!」
 衛生上の問題は気にしないで美味しく焼き芋を食べるおみっちゃん。
「酷い! おみっちゃん! 私を焼き芋製造機にするなんて! ウエ~ン!」
 提灯って、悲しいね。

「難しく考えないで4コマやオチだけを考えるのも面白いね。」
 手ごたえを感じるおみっちゃん。
「今度はテーマを決めてやるのもいいかもしれないね。」
 仲間たちも応援してくれている。
「がんばろう! みんなでやれば怖くない!」
「エイエイオー!」
 気合を入れるおみっちゃんたち。
「あんたたち。無駄口を叩いてないで仕事しな。じゃないと時給を下げるよ。」
 そこに女将さんが現れる。
「女将さんのイケズ。」
 悲しむおみっちゃん。
「いいのかい? おみっちゃん。文句を言っていると給料を減らすよ。夢が叶うのが遠のくよ。それでもいいのかい?」
 子供の弱みに付け込むパワハラ・オーナーの女将さん。
「それだけはご勘弁を! 私が悪うございました! お許しください! 神様! 仏様! 女将さん様!」
 時給を人質に取るオーナーに弱いアルバイトのおみっちゃん。
「分かればいいんだよ。真面目に働きな!」
 包容力のある女将さん。
「いらっしゃいませ! 美味しい! 美味しい! お団子ですよ!」
 てんぱりながらも働くおみっちゃん。
「やればできるじゃないかい! イヒッ!」
 温かい女将さん。
「ほめられちゃった。エヘッ!」
 エヘ幽霊はこういう奴である。

「私にもお茶とお団子を寄こせ! 私の名前は唐傘お化けだ!」
 妖怪が茶店に現れてお茶とお団子を要求してくる。
「商売の邪魔だね。おみっちゃん、退治しちゃいな。」
 女将さんはおみっちゃんに倒す様に言う。
「ええー!? また私ですか!? チョウチョウに言ってくださいよ!?」
 お友達を売る薄情なおみっちゃん。
「チョウチョウは大人しく茶店の入り口で提灯をやってるよ。」
 逃げたチョウチョウ。 
「ズルい!? 提灯になってサボるなんて!?」
 チョウチョウの方が一枚上手だった。
「分かりました。私が戦うから女将さん、少しは自給を上げて下さいね。エヘッ!」
 おねだりするエヘ幽霊。
「分かった。時給を1円上げてやろう。夢の叶う日が近づいてきたね。」
 女将さんは銭儲けに忙しいので戦いには興味が無かった。
「やります! やらせていただきます! 例え1円でも時給が上がるなら! 夢を叶えるために私は戦います!」
 時給アップと夢を叶えるために簡単に釣られるおみっちゃん。

「私の名前はおみっちゃん! 私がお相手致します!」
 おみっちゃんが妖怪に立ち塞がる。
「何を! 止めれるものなら止めてみろ!」
 妖怪はおみっちゃんに襲い掛かる。
「これでもくらえ! 必殺! 傘回し!」
 絡坂お化けは体を回転させておみっちゃんを攻撃する。
「ギャアアアアアアー!」
 妖怪の攻撃を食らったおみっちゃん。
「口ほどにもない。」
 渋い妖怪。
「誰が口ほどにもないんですか。エヘッ!」
 倒されたはずのおみっちゃんが笑って立っていた。
「なに!? 確かに倒したはず!? どうしておまえがそこにいる!?」
 妖怪には理解できなかった。
「私、幽霊なので攻撃を食らわないんです。エヘッ!」
 幽霊のスキルのスルーが自動発生し、妖怪の攻撃はおみっちゃんには当たらなかった。
「バカな!? そんなのありか!? イカサマだ!?」
 妖怪はクレームを言う。
「私が可愛いから許してください。エヘッ!」
 可愛い子ぶるエヘ幽霊。
「クソッ! こうなったら妖力を上げて攻撃してやる! 必殺! 傘の骨飛ばし!」
 妖怪は妖力を上げておみっちゃんを攻撃する。
「なんだか怖いのでステルス!」
 おみっちゃんは幽霊のスキルのステルスで透明になり姿を消した。
「どこに行った!? おみっちゃん!?」
 妖怪にはおみっちゃんの姿が見えないので攻撃を当てる術がない。
「おみっちゃん。茶店とお客様が燃えちゃうから降参しておきな。」
 女将さんがおみっちゃんに茶店とお客さんの安全が第一だと降参を命令する。
「参りました。私の負けです。」
 姿を現しておみっちゃんは妖怪に降参する。
「やったー! おみっちゃんに勝ったぞ! これでお茶とお団子は私のものだ! わ~い!」
 大喜びの妖怪。
「あの~お願いがあるのですが、私の夢はお江戸で歌姫になることなんですが、最後に歌を歌わせてもらっても良いでしょうか?」
 謙虚にお願いするおみっちゃん。
「まあ、いいだろう。歌ぐらい歌わせてやろう。ワッハッハー!」
 勝利して上機嫌な妖怪。
「ありがとうございます。それじゃあ、思いっきり歌わせてもらいますね。エヘッ!」
 歌が大好きなエヘ幽霊。
「耳栓用意!」
 女将さんは耳に耳栓をして衝撃に備える。
「1番! おみっちゃんが歌います! 曲は折り畳み傘! 聞いてください! どうぞ!」
 おみっちゃんが歌い始めた。
「ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ!」
 おみっちゃんは極度の音痴でデスボイスの持ち主であった。
「ギャアアアアアアー!? なんだ!? この歌声は!? 頭が砕けそうだ!?」
 妖怪はおみっちゃんの歌声に耐えられないで苦しんでいる。
「ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ!」
 更に気持ちよく歌を歌い続けるおみっちゃん。
「こうなったら私の風でおみっちゃんの歌を切り裂いてやる! おみっちゃんの夢を消し去ってやる! 必殺! 傘の回転乱舞!」
 提灯お化けはおみっちゃんの歌声に突風をぶつける。
「そんな!? 私の歌声が!?」
 おみっちゃんの歌声が火に燃やされていく。
「見たか! 私の回転乱舞を! どれだけ歌おうとも全て吹き飛ばしてやる! おまえの夢は叶わない! 歌姫になるのは諦めろ! この音痴!」
 音痴。それはおみっちゃんには言ってはいけないワードである。
(音痴・・・・・・・音痴・・・・・・音痴・・・・・・私は歌姫になりたいのに実は音痴・・・・・・。)

プチン!

 おみっちゃんの中で何かが弾ける。夢と現実の狭間で何かが覚醒する。
「誰が音痴だ! 音痴の何が悪い! 私は夢を諦めない! 夢は見る物じゃない! 夢は叶えるものなんだ! 私は絶対に歌姫になるんだー!!!」
 おみっちゃんは気合をいれてフルスロットルで歌を歌う。
「おみっちゃんの夢が強大に膨らんでいく!? どこにそんな力があるというのだ!?」
 思わず妖怪もたじろぐ。
「ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ!」
 もう誰にもおみっちゃんの歌は止められない。
「ギャアアアアアアー! 私の風をもってしてもおみっちゃんの歌を消しきれない!?」
 気圧される妖怪。
「分かるまい! 他人の夢をバカにするおまえには! 私の夢は誰にも奪われない! 夢を見るのは自由だ! 夢は努力で手に入れるものだ! 私の心が諦めない限り、私の夢は終わらない! 私は絶対に歌姫になるんだー! うおおおおおおおー!」
 おみっちゃんは絶対に歌姫になりたいという強い気持ちが自分を強くしてくれている。
「なんという執念だ!? これがおみっちゃんの夢を叶えたいという思い!? ・・・・・・参りました! 私の負けです! 何でも言うとおりにしますから、どうか命ばかりはお助け下さい! ギャアアアアアアー!」
 妖怪は無条件降伏した。
「ご清聴ありがとうございました! ああ~気持ち良かった! エヘッ!」
 歌を歌い終えてご満悦なエヘ幽霊。
「それではカラカラ。」
 おみっちゃんは唐傘お化けのことをカラカラと名付ける。
「カラカラ!? なんか安い名前だな?」
 唐傘お化けはカラカラと呼ばれることになった。
「カラカラ。早速お皿洗いから始めてもらうわよ。」
 おみっちゃんはカラカラに皿洗いを命じる。
「私、手が無いんだけど。」
 唐傘お化けは手が無いのでお皿が洗えなかった。
「大丈夫! その問題は解決済みよ! 擬人化すればいいのよ!」
 以前、提灯お化けでも同じことがあった。
「擬人化!? そんな手があったのか!?」
 意表を突かれたカラカラ。
「さあ! 新入りらしく皿洗いから始めてもらおうかしら。」
 おみっちゃんの新人イビリが始まる。
「あれ!? カラカラがいない!?」
 しかしカラカラは忽然と姿を消した。
「こらー! どこへ逃げた! 出てこい! カラカラ!」
 カラカラを探すおみっちゃん。

「あんた、皿洗いしなくていの? おみっちゃんは怖いわよ。」
 カラカラはチョウチョウと一緒に茶店の入り口にいた。
「いいのよ。皿洗いするより茶店のお客様用のご自由にお使いください傘になった方がマシヨ。」
 この傘は意志を持っているのでお客様の家から自動で帰ってくる最新式のカラカラ傘である。
「それもそうね。荒い物って手が痛むのよね。」
 チョウチョウも荒いものから逃げて茶店の入り口の提灯をやっている。
「保湿クリーム如きでは肌の再生が追いつかないのよ。」
 カラカラも荒い物が嫌いな性格だった。
「私たちは気が合いそうね。」
「これからもよろしく。」
 仲良くなったチョウチョウとカラカラである。
「そうだ。茶店の新人さんは新しいお団子を開発しないといけないんだけど、カラカラは何か良いアイデアはある?」
 茶店の掟である。
「そうね。お団子の横に小さな傘を置いて、お団子のお子様ランチなんてどうかしら? 全国のちびっ子たちが喜ぶわ。」
 団子の新商品というよりは団子の売り方を考えたカラカラの意見。
「いいわね。子供たちが喜ぶわ。」
 チョウチョウも満足のアイデアであった。
「見つけた! カラカラ!」
 そこにおみっちゃんが現れた。
「ゲゲゲッ!? おみっちゃん!?」
 おみっちゃんに恐怖するカラカラ。
「はい! 捕まえた! 洗い場にレッツゴー!」
 カラカラはおみっちゃんに捕まった。
「助けて! チョウチョウ!」
 カラカラはチョウチョウに助けを求める。
「ごめんなさい。私におみっちゃんを倒す力はないの。」
 カラカラを見捨てるチョウチョウ。
「これにて一件落着! エヘッ!」
 勝ち誇るおみっちゃん。
 つづく。
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