神男(ゴットマン)

渋谷かな

文字の大きさ
上 下
22 / 25

姫の憂鬱

しおりを挟む
「明日も補習だ。」
「ええー!? 補修!? せっかくの日曜日なのに!?」
 アリスとイリスは孤児院に帰ってきた。
「情けない! ヒールすら使えなかっただと!? アリス!」
「だからアリスって呼ぶな!」
「黙れ。男女。」
「ガーン!? 酷い!? イリスまで!?」
 ウリア神父がアリスが回復魔法が使えないと聞いて激怒していた。
(当然といえば当然。アリスが自分の本当の名前じゃないんだから、魔法が使えないのは当たり前だ。許せ! アリス!)
 やはりアリスが魔法が使えないのは、本当の名前ではないからであった。訳ありかもしれないが悪いのはウリア神父だった。
「さすがイリス。一回目で回復魔法が使えるとは素晴らしい。」
「ありがとうございます。神父様。」
 褒められて嬉しいイリス。
「どこかの出来損ないとは違うな。」
「出来損ないで悪かったな!?」
「認めるのか? 誰もおまえのことだとは言ってないぞ。」
「ガーン!」
 神に仕える神父に詐欺にあったアリス。
「クソッ!? 明日こそは回復魔法を使えるようになってみせる!」
 魔法の習得に闘志を燃やすアリスであった。
「ヒールが使えるようになったら、大好きなイリスとデートするんだ!」
「しません。」
「ガーン!」
 きれいにガーン! の三段オチを決めるアリスであった。

「なんですか?」
 その頃、エリスの元に来客があった。
「あなたは白魔法使いの先生のエリスさんですか?」
 来客は人の姿はしていたが、どこか黒かった。
「そうですか。なら、死んでください。」
 来客はいきなりエリスに襲い掛かる。来客の黒い爪が伸びて刃物の様になる。
「ギャアアアア!?」
 エリスは咄嗟にかわすが腕を斬られてしまう。斬られた腕からは血が流れる。
「一撃で終わらせるつもりだったんですが、良くかわしましたね。さすが先生といったところですかね。」
 来客は人を傷つけることを楽しんでいる。
「いきなり切りつけて危ないでしょ!?」
(何なの!? この危ない人は!? 本当にあの子たちが帰った後で良かった。)
 エリスは教師なのでアリスたち教え子の心配をした。
「ああ!? さてはあなたが教師連続殺人犯ね!」
「ご名答。」
 パチパチパチっと拍手する来客。
「死んでもらいますよ!」
 客人が突撃してくる。
(ああ~私、死んじゃうんだわ。でも、でもアリスたちを守らなければ!)
 エリスは客人の方が強いのが肌で感じ取ったので自分は死ぬと確信した。そして教師の使命感が発動する。
「ゲッホ!?」
 グサッと客人の伸びた爪がエリスを突き刺す。
「でも! 諦めない!」
 しかし突き刺されて死を待つだけに思えたエリスは諦めていなかった。
「知ってる? アンデットには回復魔法は毒だって。」
「なに!?」
「くらえ! この死神め! 白魔法使いエリスが命じる! 私の命と引き換えに禁術回復魔法を使わせたまえ! ヒール・イン・エクスチェンジ・フォ・ライフ!」
「こいつ!? 死ぬ気か!?」
 エリスは自分の命と引き換えに自分の実力以上の行為の回復魔法を放つ。エリスの命の輝きが極大の聖なる光を放つ。
「やった・・・・・・教師として・・・・・・教え子たちは守ったわ。」
 光が消えると客人の姿はなかった。
「良かった。」
 そう言うとバタっと倒れてエリスは命を落とした。その表情には最後まで教師としての使命を達成した充実感で微笑んでいた。
「もういいかな。安らかに眠らしてやろう。僕は紳士なんでね。」
 そこに姿を隠していた客人が現れる。
「まさか自分の命をかけるとは、人間という生き物は分からない。全く理解できない。」
 客人は人間ではないようだった。
「でも無駄死にだな。残念。僕は死神でもアンデットでもない・・・・・・悪魔なんでね。致命傷にはならない。」
 客人の正体は悪魔だった。
「さあ、次の教師を狩りに行こうか。新しい勇者を育て上げられては困るのでね。」
 悪魔の爪を持つ悪魔は暗闇に消えていった。
 つづく。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

妻がヌードモデルになる日

矢木羽研
大衆娯楽
男性画家のヌードモデルになりたい。妻にそう切り出された夫の動揺と受容を書いてみました。

隣の人妻としているいけないこと

ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。 そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。 しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。 彼女の夫がしかけたものと思われ…

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

結構な性欲で

ヘロディア
恋愛
美人の二十代の人妻である会社の先輩の一晩を独占することになった主人公。 執拗に責めまくるのであった。 彼女の喘ぎ声は官能的で…

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

性転換マッサージ2

廣瀬純一
ファンタジー
性転換マッサージに通う夫婦の話

処理中です...