上 下
43 / 69

ほんのおねえさん10

しおりを挟む
 ここは魔法NHKのスタジオ。
「良い子のみんな! ほんのおねえさんだぞ! 朝は、おはようございますだよ!」
 全世界の人々の心を鷲掴みしている、ほんのおねえさんの収録が始まった。
「久々の登場なので、夜空のお星さまは拡大版だよ! では、どうぞ。」
 本編が少し長いので、ほんのおねえさんはすかさずに朗読に入るのだった。
「「名前?」
 お星さまにお願い事をした通行人の女の子Bは、個性のあるキャラクターになれました。
「名前を決めないといけないな。」
 星の守り人のフェスは言った。
「それは、そうだろ? 個性あるキャラクターの名前が通行人の女の子Bでは話にならん。」
 フェスは通行人の女の子Bにキャラクター名を決めるように言った。
「名前が持てる~♪」
 通行人の女の子Bは笑顔で喜んだ。全てのアニメやゲームの名前の無い全てのキャラクターの憧れ「自分の名前を持ってみたい!」考えること自体がタブーである。
「ああ、幸せ~♪」
 自分の名前がもてる。こんなにうれしいことはない。通行人の女の子Bの長年の夢が叶うのである。
「名前は決まったか?」
 なかなか決めないので、フェスはイライラしてきた。
「モジモジ。」
 通行人の女の子Bは名前は決まっているみたいだが、自分の名前を言うのが恥ずかしくてモジモジしている。
「決めないなら、こちらで決めるぞ? おまえの名前は、ガジラだ。」
 通行人の女の子Bの頭に「ガオ~!」口から火を吹き、ビルを破壊している姿が思い描かれる。
「イヤです!」
 通行人の女の子Bは即座に拒否する。そして少し照れながら言う。
「エルメス・・・、エルメスがいいです。」
 通行人の女の子Bは自分の名前を初めて、自分の口から自分の声で言った。
「エルメス。」
 通行人の女の子Bは自分の名前を決めた。
「どうして、その名前がいいんだ?」
 フェスは聞いた。
「私が通行人の女の子Bとして町に立つている立ち位置の前に、オシャレなお店があるんです。店の外装は高級でゴージャスな感じで、店内にはピカピカっと光輝くバッグに、財布。お客様はファンタジー世界の、あのダイヤモンド姫を始め、各城のお姫様ばかり。ああ~♪ 一度でいいから、エルメスのスカーフを巻いてみたかった。きっと、あのスカーフさえ巻ければ、通行人の「エルメススカーフを巻いた女の子B」として、楽しく立っていられるはず!」
 通行人の女の子Bは、楽しく、優雅に、コミカルに、憧れの眼差しで踊りながら語り、最後は力強く締めた。
「・・・そんなことばかり、考えていたのか?」
 フェスは少し退き気味に質問する。
「はい!」
 通行人の女の子Bは真顔で即答する。
「やれやれ、その物欲の強さが銀河まで届いたということか?」
 フェスは負けたよ、という顔をする。
「分かった。」
 通行人の女の子Bは笑顔満開で、ピョンピョン飛び跳ねて喜ぶ。
「やった~♪ 今日から、私はエルメスだ! もう通行人の女の子Bじゃないんだ!」
 名も無い通行人の女の子Bの夢が叶った瞬間に思えたが・・・。
「だが、その名前は、認められない。」
 フェスが真顔で言った。
「え!?」
 通行人の女の子Bはフェスが何を言っているのか理解できなかった。時間が止まったかのように動けず固まってしまった。
「おまえの名前は、エロメスだ!」
 通行人の女の子Bは、自分の名前をエルメスと決めたのに、
「だが、その名前は、認められない。」
 星の守り人のフェスに認めてもらえなかった。
「どうしてですか?」
 通行人の女の子Bはフェスに必死に食って掛かる。フェスは理由を語り始める。
「他の作品でも、エルメスやヒルメスなどの使用実績はあるので権利問題は問題ないだろうから、私も、どうのこうの言うつもりはない。無名素人の作品に、苦情を言うような大人げないことはしないだろう。」
 フェスは権利問題ではないという。
「なら、どうして?」
  通行人の女の子Bは問う。
「おまえの夢は「個性のある」キャラクターになることだったはずだ! エルメスというキャラクター名には個性もなければ、オリジナリティーも無い、同じ名前のキャラクターが多すぎる。どこにでもいるようなキャラクターはすぐに消えるぞ!」
 ドンガラガッシャン!  通行人の女の子Bはフェスの厳しい言葉に雷に打たれた。
「個性が無い・・・オリジナリティーも無い・・・すぐに消える・・・。せっかくキャラクターに昇格したのに・・・。」
 通行人の女の子Bはショックを受けて地面に両手両膝をついている。
「私がおまえの意向をできるだけ取り入れた素敵な名前を考えてやろう。」
「ガジラは嫌ですよ。」
  通行人の女の子Bは前歴のあるフェスを牽制する。
「エルメス・・・エロ・・・エロメス! そうだ! エロメスにしよう! お前の名前は、エロメスだ! これならヒットは確実だ! ハハハハハッ!」
 フェスは自画自賛で笑顔で自分の才能に酔っていた。
「イヤです。」
 通行人の女の子Bはエロメスという名前になった。エロメスの声はフェスには届かなかった。
 つづく。」
 ほんのおねえさんは朗読を終えた。
「良い子のみんな! 楽しかったかな? うんうん、楽しかったね! 子供の名前を決める時は、キレキレネームはできるだけやめよう。学校で子供がいじめられちゃうぞ。それでは最後に、せ~の。本が大好き! 読書! 最高!」
 星に願いを~☆
 続く。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

光のもとで2

葉野りるは
青春
一年の療養を経て高校へ入学した翠葉は「高校一年」という濃厚な時間を過ごし、 新たな気持ちで新学期を迎える。 好きな人と両思いにはなれたけれど、だからといって順風満帆にいくわけではないみたい。 少し環境が変わっただけで会う機会は減ってしまったし、気持ちがすれ違うことも多々。 それでも、同じ時間を過ごし共に歩めることに感謝を……。 この世界には当たり前のことなどひとつもなく、あるのは光のような奇跡だけだから。 何か問題が起きたとしても、一つひとつ乗り越えて行きたい―― (10万文字を一冊として、文庫本10冊ほどの長さです)

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

女体化入浴剤

シソ
ファンタジー
康太は大学の帰りにドラッグストアに寄って、女体化入浴剤というものを見つけた。使ってみると最初は変化はなかったが…

男子中学生から女子校生になった僕

大衆娯楽
僕はある日突然、母と姉に強制的に女の子として育てられる事になった。 普通に男の子として過ごしていた主人公がJKで過ごした高校3年間のお話し。 強制女装、女性と性行為、男性と性行為、羞恥、屈辱などが好きな方は是非読んでみてください!

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

捨てられ子供は愛される

やらぎはら響
BL
奴隷のリッカはある日富豪のセルフィルトに出会い買われた。 リッカの愛され生活が始まる。 タイトルを【奴隷の子供は愛される】から改題しました。

異世界TS転生で新たな人生「俺が聖女になるなんて聞いてないよ!」

マロエ
ファンタジー
普通のサラリーマンだった三十歳の男性が、いつも通り残業をこなし帰宅途中に、異世界に転生してしまう。 目を覚ますと、何故か森の中に立っていて、身体も何か違うことに気づく。 近くの水面で姿を確認すると、男性の姿が20代前半~10代後半の美しい女性へと変わっていた。 さらに、異世界の住人たちから「聖女」と呼ばれる存在になってしまい、大混乱。 新たな人生に期待と不安が入り混じりながら、男性は女性として、しかも聖女として異世界を歩み始める。 ※表紙、挿絵はAIで作成したイラストを使用しています。 ※R15の章には☆マークを入れてます。

処理中です...