上 下
30 / 69

第11魔法少女、楽子

しおりを挟む
 ここは魔法渋谷高校剣道部の稽古場。渋谷高校剣道部とドキ子軍団の練習試合が行われていた。
「ギャアアア!?」
 前回までのあらすじ。中堅戦でドキ子との楽子の直接対決。しかし、ドキドキ魔法で人間洗濯機を出現させたドキ子は、楽子を激しい水流のうごめく洗濯機の水の中に沈めるのであった。
「私はここで死ぬの?」
 楽子は洗濯機の水の中で目を瞑り自分に問いかけた。
「それとも、もう死んでいるの?」
 大量の水を飲んだと思われる楽子の体は意識の無い水の様に、水の中を漂っている。
「相手の魔法がどんなものか分からなかったとはいえ、油断した。」
 楽子は相手が、カワイイだけのドキ子だから大したことはないと高を括ってしまったのだ。
「悔しい。ドキ子なんかにやられるなんて。私が勝って、みんなに勇気を与えないといけないのに。」
 楽子は不甲斐ない自分の性でチームメイトに迷惑をかけることに責任を感じる。
「ごめん、みんな。」
 楽子は戦いを諦めて負けを認めようとした。
「諦めないで!」
 その時、楽子の心に誰かが声をかける。
「こ、声? 幻聴が聞こえる。きっと私は死んだのね?」
「違うよ! 楽子は死んでないよ!」
 今度は楽子に、はっきりと声が聞こえた。
「あなたは誰? いったい誰なの?」
「僕は、楽子の心だよ。」
「私の心?」
 ピンチの楽子に声をかけたのは、楽子の心だった。
「そう、僕は楽子の心だよ。楽子の本当は負けたくないという強い気持ちが僕を生み出したんだ。」
「そんな、アホな!? これが自問自答ってやつ!?」
 楽子の心が意志を持って、楽子に話しかけてくる。
「自分に負けないで、楽子。」
「でも、もう私はドキ子の魔法で洗濯機の水の中で溺れて死にかけているのよ?」
 確かに楽子は絶体絶命のピンチであった。
「大丈夫だよ。楽子には仲間がいるから。楽子の勝利を信じている友達がいるから!」
 楽子の心に、谷子たちの声が聞こえてくる。
「試合を止めた方がいいのかな? 私、審判なんてしたことないから分からない。」
「練習試合が終わったら、みんなで原宿に行って、クレープを食べましょうよ。特別ゲストの泪さん、結さん。」
「竹下通りが込んでたら、私のM6重戦車で道を開いてやるよ!」
「やめなさい! クレープを焼く人まで非難しちゃうだろ! 私が通りごと買い占めてやるわよ。オッホッホー!」
「見た! 見た! ドキ子の勝利よ! 魔法渋谷高校剣道部の主将は、今から、かわいいドキ子よ! ドキ子主将と呼びなさい! ドキ。」
 渋谷高校剣道部の部員たちは、好き勝手なことを言っていた。
「え?」
 誰も自分の心配をしていないことに、思わず立ち尽くす楽子。
「さ、さあ! 楽子! こんな部員たちを野放しにはできないぞ! 立ち上がるんだ!」
 楽子の心の声も、友情青春路線から復讐劇路線に変わる。
「そうね。誰がクレープなんか食べに行かせるもんですか。こいつらを鍛えに鍛えて全国制覇してやる!」
 楽子の心から、諦めの気持ちが消えた。心の底から勝ちたいという闘志が湧き上がってくる。楽子は竹刀を構える。
「心頭滅却すれば、魔法も斬れる!」
 楽子の気合が、ただの竹刀を光り輝かせる。
「魔法斬り!」
 楽子は竹刀を振り下ろす。
「谷子ちゃん! ドキ子の勝ちを宣言しなさい!」
「審判するのが初めてだから、どうやって勝ち名乗りすればいいのか分からないよ。」
 その頃、洗濯機の外の世界ではドキ子が審判の谷子に詰め寄っていた。
「あ!? 洗濯機が!?」
 バキーンと洗濯機が真っ二つになり、大量の水が排水された。
「今から乾燥の時間よ!」
 洗濯機の中から、ビショビショに濡れた楽子が姿を現わした。楽子の竹刀は、魔法洗濯機を切り裂いた。

 つづく。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

甘い誘惑

さつらぎ結雛
恋愛
幼馴染だった3人がある日突然イケナイ関係に… どんどん深まっていく。 こんなにも身近に甘い罠があったなんて あの日まで思いもしなかった。 3人の関係にライバルも続出。 どんどん甘い誘惑の罠にハマっていく胡桃。 一体この罠から抜け出せる事は出来るのか。 ※だいぶ性描写、R18、R15要素入ります。 自己責任でお願い致します。

◆妻が好きすぎてガマンできないっ★

青海
大衆娯楽
 R 18バージョンからノーマルバージョンに変更しました。  妻が好きすぎて仕方ない透と泉の結婚生活編です。  https://novel18.syosetu.com/n6601ia/ 『大好きなあの人を一生囲って外に出したくない!』 こちらのサイトでエッチな小説を連載してます。 水野泉視点でのお話です。 よろしくどうぞ★

俺がカノジョに寝取られた理由

下城米雪
ライト文芸
その夜、知らない男の上に半裸で跨る幼馴染の姿を見た俺は…… ※完結。予約投稿済。最終話は6月27日公開

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?

すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。 病院で診てくれた医師は幼馴染みだった! 「こんなにかわいくなって・・・。」 10年ぶりに再会した私たち。 お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。 かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」 幼馴染『千秋』。 通称『ちーちゃん』。 きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。 千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」 自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。 ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」 かざねは悩む。 かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?) ※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。 想像の中だけでお楽しみください。 ※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。 すずなり。

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

処理中です...