茶店の歌姫 3 

渋谷かな

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エヘッ! 20

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「私の名前はテスラー総統! 全宇宙の支配者だ! 私は地球を支配するべくカミラス星からやって来たのだ! ワッハッハー!」
 現れたのはテスラー総統。
「テスラー総統!? カンタムがやられました!?」
 子分が報告を入れる。
「なんだと!? 忌々しい地球の支配者おみっちゃんめ!」
 激怒するテスラー総統。
「よし! 早速、茶店に次の刺客を送り込め!」
「はい!」
 こうしてテスラー総統の手下が茶店に送られるのであった。

「いらっしゃいませ! 美味しい! 美味しい! お茶とお団子ですよ!」
 おみっちゃんは茶店の看板娘として真面目に働いている。
「毎日行列! ガッポリだね! イヒッ!」
 茶店の女将さんは笑いが止まらない。
「私の名前はおみっちゃん! 夢は江戸で歌姫になることです! エヘッ!」
 いつも明るく笑顔で元気に前向きなエヘ幽霊。
「おみっちゃん、お客さんだよ。」
 女将さんがおみちゃんを呼ぶ。
「は~い・・・・・・え!?」
 返事をして振り向き驚くおみっちゃん。

「私の名前はカンタム・ユニコーン! 全宇宙の支配者テスラー総統の配下である! 地球を支配しにやって来た!」
 現れた宇宙からの侵略者。
「おみっちゃん、知り合いかい?」
 女将さんは尋ねてみた。
「宇宙人にお友達はいません。」
 否定するおみっちゃん。
「地球の支配者である茶店の歌姫のおみっちゃんを倒して我々が地球をいただくのだ!」
 宇宙からの侵略者は地球を支配しに来た。
「おみっちゃん、あんたいつから地球の支配者になったんだい?」
 女将さんは尋ねてみた。
「知りませんよ。地球の支配者になったつもりはありません。」
 否定するおみっちゃん。
「おみっちゃん! 私と勝負だ!」
 地球の支配者の戦いを挑む宇宙からの侵略者。
「仕方がありません。女将さん、少し遊んできます。」
 おみっちゃんは相手をすることにした。
「行っといで。おみっちゃん。サボった分は給料から引くからね。」
 守銭奴な女将さん。
「そんな!? 殺生な!?」
 ショックを受けるおみっちゃん。

「かかって来なさい! 宇宙人!」
 おみっちゃんは侵略者を迎え撃つ。
「くらえ! ユニコーン・ビーム!」
 侵略者はビームをぶっ放す。
「ギャアアアアアアー!」
 おみっちゃんは倒された。
「やったー! 倒したぞ! これで地球は私のものだ! ワッハッハー!」
 勝ち誇る侵略者。
「それはどうかな?」
 そこに死んだはずのおみっちゃんが現れる。
「なに!? バカな!? おまえは確かに死んだはず!? なぜ生きている!?」
 戸惑う侵略者。
「いいえ。生きてませんよ。私は既に死んでいる。だって私、幽霊ですから。エヘッ!」
 おみっちゃんはエヘ幽霊だった。
「幽霊!? そんなのありか!?」
 侵略者に幽霊という概念はなかった。
「愚かな宇宙人よ! 地球の支配者の恐ろしさを教えてやる!」
 遂に地球の支配者を認めたおみっちゃん。
「私の歌を聞かせてやろう! これがおまえへのレクイエムだ!」
 おみっちゃんは歌を歌うつもりである。
「歌? 戦闘中にふざけているのか?」
 侵略者は戸惑う。
「1番! おみっちゃんが歌います! 曲は燃え上がれ・マンダム! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ!」
 おみっちゃんは極度の音痴でゴットボイスの持ち主であった。
「み、耳が潰れる!? なんだ!? これが歌声なのか!? 騒音だ!?」
 おみっちゃんの歌声に苦しむ侵略者。
「ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ!」
 更におみっちゃんは気持ち良く歌を歌い続ける。
「頭が割れる!? テスラー総統! 万歳! ギャアアアアアアー!」
 侵略者の他人に危害を加えようという邪神がおみっちゃんの歌で追い払われた。
「ご清聴ありがとうございました! ああ~気持ち良かった! エヘッ!」
 ご満悦なエヘ幽霊。
「ここはどこ? 私はだあれ?」
 侵略者は良い子になった。
「ユニコーン。美味しいお茶とお団子を食べたくない?」
 おみっちゃんの悪魔の囁き。
「食べたい!」
 釣られる侵略者。
「じゃあ、茶店に一緒に行こうね。エヘッ!」
 新しい茶店のアルバイトを手に入れたエヘ幽霊。
「わ~い! お茶とお団子が楽しみ!」 
 改心した侵略者は茶店に連れていかれる。
「地球の平和は私が守る! エヘッ!」
 地球の支配者のエヘ幽霊。

「は~い! エヘ幽霊と宇宙からの侵略者の戦いが生で見れる茶店はここだけですよ! おっと!? お客さん! 特等席は1万円ですよ! サイン付きの席は5000円アップです! 残念ですが地球の支配者との握手会は安全上の注意のために行っておりません! イヒッ!」
 ちゃっかりおみっちゃんの給料は減らしているのに、茶店の看板娘と宇宙からの侵略者のショーを茶店のお客に見せてお金を儲けている女将さんであった。
「私の一人勝ちだね。イヒッ!」
 この物語のオチである。
 つづく。

「zzz。」
 おみっちゃんは幽霊なのに夜に温かい布団で寝ます。
「・・・・・・人間界、魔界、天界、地球、宇宙。全てを支配した私。いつになったら歌姫になれるやら。うおうお・・・・・・。」
 夢の中でうなされるおみっちゃん。
「二毛作で小説家でも始めるか?」
 夢の歌姫になれなかった時のために保険で創作活動も始めるおみっちゃん。
「夢の中の小説家。」
 新しいエヘ作家の誕生である。

「今日は何を考えようかな? エヘッ!」
 エヘ作家。
「同じことの繰り返しにならない小説を書きたいな。」
 結局、戦ったり、ピンチを努力して克服するみたいなお話ばっかりなのよね。
「チコッと変えてもウルトラマンもセーラームーンもガンダムも全部同じ展開なのよね。同じ展開を期待されるような作品ならいいのか? ドクターX? 古畑任三郎? 水戸黄門?」
 結局、全作品、オチだけが盛り上がり、戦闘中シーンだけが盛り上がり、他のプチストーリーは要らないのよね。要らないというのは見ても見なくても構わないっと。ガンダムが戦い、セーラームーンが必殺技を派手に使いまくる。盛り上がるのはそこだけ。
「それで人気作品になるのだから、作家業なんて楽な商売だ。」
 必殺技やオチだけ考えればいいのだから。
「決めゼリフ、大岡裁き、印籠などのリーサルウェポンが期待される展開・・・・・・それはピンチや絶体絶命の危機ということ。または必殺技のように最後のオチってこと。そんな物語だよね。」
 おみっちゃんのデスボイスは一世風靡できると思うんだけどな。まあ、デスボイスより相手を改心させるゴットボイスの方がPTAウケが良いことは言うまでもない。
「その路線の変更はした。ゴットボイスを思いついてから、皆殺しのデスボイスはオチに使ってないからな。」
 正義貫徹。正義が勝つ。これ世界共通で一番、一般大衆にウケる。
「なんかないのかな? 面白い題材。」
 人間の人生は何もない。朝起きて寝るだけである。何かあっても、それが楽しいことより嫌なことの方が多い。それが人間の人生。他の人間に接してもストレス。良い性格の人間よりも悪い性格の人間の方が多い。悲しいね。
「だから悪い人間を倒す物語が弱者や性善説の人間にはウケる。」
 そういう物語を書こう。

「結局は何でもかんでもピンチの連続。それを克服する。それが物語?」
 子分がピンチで頑張って、最後の最後でおみっちゃんが歌って悪を倒す。こんな感じか。
「ピンチって何がある?」
 強敵が現れる。アイテムがない。敵に囲まれる。一騎打ちに負ける。兵士数で圧倒的に負けるとかかな?
「一から、また勇者を組み立てるか? おみっちゃん一からは最初からデスボイスを習得しているので最強だしな。」
 修行中の過去は北斗の拳やるろうに剣心みたいに回想で十分だもんな。ドラゴンボール、ワンピース、聖闘士星矢の成長型も、要するに新しい敵を出してくればいいだけだもんな。いや~困った。困った。
「それでいくと茶店の歌姫3宇宙編なんか、これの繰り返しで次々と新しい敵を出しておけば何ら問題がない。ノープロブレム! エヘッ!」
 敵が出る、毎回、誰かが死んで事件が起こる、不幸さえ起こればいい。後はそれを克服するのが物語だというエヘ作家。
「三国志、信長の野望、どちらも都市名? 土地の名前さえ変えて侵略していけば同じことの繰り返しで全国を統一する所まで物語ができる。」
 ああ~本当に楽な商売だ。
「一兵卒の勇気で試してみよう。」

「ああ~戦争なんかしたくないな。就職先がないから生きていくため、お金のためには兵士になるしかない。」
 ジャニュアリーは平凡な兵士でした。
「そうだな。俺もどうでもいいわ。戦争に行って死んだら嫌だもんね。」
 マーチも戦う気はありませんでした。
「バカ野郎! 俺は戦争で手柄を立てて家を建てるんだ!」
 ジャニュアリーは戦争に意欲的だった。
「はいはい。」
「頑張ってくれや。」
 ジャニュアリーとマーチは呆れていた。
「集合!」
 そこにエイプリル隊長がやって来る。
「これより我々はトレントからハルを攻める! いくぞ!」
「おお!」
 エイプリル隊は出動した。

「エイプリル隊! 突撃!」
「おお!」
 エイプリル隊がハルの兵士に戦いを挑む。
「ガオー!」
「ギャアアアアアアー!」
 戦いの初心者のエイプリル隊よりハルの兵士たちの方がレベルが高く戦上手だった。
「こうなったら全軍! 死んだふり!」
「・・・・・・。」
 エイプリル隊は地面に寝転がり春の兵士が去って行くことを待った。
(マジか!? こんなことで生き残れるのかよ!? 何もしなければ死ぬのを待っているだけだ!)
 ジャニュアリーはエイプリル隊長の戦術を疑った。
「聖剣エクスカリバーよ! 俺に力を貸してくれ!」
 ジャニュアリーは聖剣エクスカリバーを天にかざす。
「エクエク!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
 エクスカリバーは聖なる光を放ちまくる。
「ギャアアアアアアー!」
 ハルの兵士たちは倒された。
「ワッハッハー! 見たか! 敵の兵士どもは恐れをなして逃げて行ったぞ! ハルを占領したぞ! ワッハッハー!」
 生き返るエイプリル隊長はハルを占拠した。
「はあ・・・・・・死ぬかと思った。こんな隊長は嫌だな。」
 マーチはゲッソリしてダイエットに成功した。
「怖くないぞ! 怖くないぞ! 魔物なんか怖くないぞ! アハハハハー!」
 フェブラリーは狂喜乱舞した。
「まあ、生きてて良かったね。」
 ジャニュアリーはなんだか照れる。
(あなたが聖剣エクスカリバーを持っていることはない署にして下さいね。他人の妬みや嫉妬は怖いですからね。)
 ジャニュアリーの脳裏におみっちゃんの言葉が走る。
「そうだ。エクスカリバーは鞘に入れて隠しておかないと。」
 ジャニュアリーはエクスカリバーを鞘にしまった。
「ハルを手に入れたぞ!」
「おお!」
 これがエイプリル隊であった。
 つづく。

「こんなんでも話が繋がってしまった。私って罪ね。エヘッ!」
 エヘ作家は既に立派な作家レベルであった。
「困ったわ。これでは次回作に繋がるものが思い浮かばない。」
 次のコンテストのお題か、何か書きたいものができるまで休憩しよう。無理はしない方がいい。
 おしまい。
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