茶店の歌姫 3 

渋谷かな

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エヘッ! 3

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「やって来ました! 魔界の魔女の国! エヘッ!」
 おみっちゃんは魔界の魔女の国にやって来た。
「長い! 長いよ!」
 女将さんがクレーマーになっている。
「そんな!? 長くないですよ! 私は幽霊だから長クソなんてしませんよ!」
 おみっちゃんは女将さんの苦情はトイレの長さだと思った。
「違うよ。1話が長いんだよ。」
 女将さんの苦情は1話の文字数の長さだった。
「なんだ。トイレの話じゃなかったのか。エヘッ!」
 一安心するレディーなエヘ幽霊。
「誰があんたのトイレシーンを長くするんだい? 三枚のお札でもあるまいに。」
 主人公がトイレに入っていて1話が終わる。正に神回。
「恥ずかしい。エヘッ!」
 恥じらいを捨てきれないエヘ幽霊。
「あんた幽霊だろ。」
 女将さんは優しくフォロする。
「そうでした! 私に怖いものはない! エヘッ!」
 いつも明るく笑顔で元気に前向きなエヘ幽霊。
「私はあんたが怖いよ。」
 呆れる女将さん。
「こういう無駄話をしているから話が長くなるんだよ。」
 その通り。
「意外と戦闘シーンの構成ができているから、今回は最短で2500字位で魔物たちに登場してもらおう。」
 お馴染みのチュートリアルな魔物たち。
「そろそろ魔物たちさんにもお名前を付けてあげますか?」
 優しいおみっちゃん。
「まだだね。つけるとしたら魔女の国から他の国を攻めに行くときに、ペットとして服従するなら連れていこう。」
 女将さんは魔物たちも茶店でこき使うつもりである。
「さすが女将さん! 心が広いですね! エヘッ!」
 どこか頭のネジが抜けているのか、洗脳されているエヘ幽霊。

「なに? アルバイトではなく社会奉仕活動だって?」
 サマンサ先生はユババ校長に生徒たちの高速破りのアルバイト活動の調査報告をしている。
「はい。ですからうちの魔女っ子たちには問題はありません。ですが・・・・・・。」
 一言多いサマンサ先生。
「ですが? なんだい?」
 揚げ足を聞き逃さない地獄耳のユババ校長。
「生徒たちがボランティア活動をしている茶店のアルバイトでおみっちゃんという看板娘がいるのですが・・・・・・。」
 言葉を詰まらせるサマンサ先生。
「じれったいね! さっさとお言い!」
 短気なユババ校長。
「おみっちゃんは歌を歌うのが好きなんですが音痴なんです。おみっちゃんの歌を聞いた魔物は歌声に耐え切れずに体内爆発してしまうほどの音痴なのです!」
 おみっちゃんの秘密を喋るサマンサ先生。
「なんだって!? バカをおっしゃい! そんなすさまじい音痴がいる訳がない!」
 サマンサ先生の話を信じられないユババ校長。
「本当ですってば!?」
 信じてもらえなくて困るサマンサ先生。
「んん? 待てよ。」
 何かを思い出したユババ校長。
「そういえば魔界の古い伝説に歌を歌って魔界を統一して平和をもたらした歌姫がいた様な?」
 魔界の古い言い伝えである。
「私が直接見に行ってやろうじゃないかい。」
 ユババ校長はおみっちゃんに会いに行くことにした。

「いらっしゃいませ! こちらの席へどうぞ!」
 おみっちゃんは真面目に茶店でホールで働いていた。
「女将さん! お茶とお団子をお願いします!」
「あいよ! お茶とお団子! 喜んで!」
 いつもながら茶店は大繁盛で、行列は三途の川まで繋がっていた。
「やっぱりスライムよ!」
「いいえ! ゴブリンよ!」
「三つ目の雑魚って何かな? ザクでいいのかな?」
 魔女見習いの魔女っ子たちのメグ、サリー、アッコはどの国を攻めるかで盛り上がっていた。ちなみにザクはキラーマシン系の雑魚になるだろう。
「おお! 異世界ファンタジーのロボット化でいいんじゃない?」
「いいね! バハムートなら竜でなく、バハムート・ロボットにすればいいんだ!」
「最終的には機動戦士マンダムと対決ね! スーパーロボット大戦にも出場できるわ!」
 若い魔女っ子たちの夢と希望は膨らむ。
「私は茶店ロボですか? エヘッ!」
 ちゃっかり話に加わるエヘ幽霊。
「どこだい!? 私の学校の生徒たちは! 社会奉仕活動だと!? 嘘をついていたらただじゃ置かないよ!」
 茶店にユババ校長がやって来た。
「待ってください!? 校長先生!?」
 サマンサ先生もおまけにやって来た。
「ゲッ!? あれは化け物!?」
「きっとサマンサ先生が口を滑らせたんだ!? 口が軽いから!?」
「隠れろ!? 殺されるぞ!?」
 魔女っ子たちは裏で皿洗いをすることにした。
「いらっしゃいませ! お二人様ですね? どうぞ!」
 おみっちゃんは愛想よくユババ校長とサマンサ先生を席に通す。
「う~ん。悪くないね。」
 おみっちゃんの接客サービスに好感触のユババ校長。
「この店は何が美味しいんだい?」
 メニューを聞くユババ校長。
「お茶とお団子です。それしかありませんから。エヘッ!」
 いつも明るく笑顔で元気に前向きなエヘ幽霊。
「じゃあ、お茶とお団子を頂こうかね。」
 お茶とお団子を注文するユババ校長。
「私もね。」
 サマンサ先生もちゃっかり注文する。
「ああ! 副店長!」
 おみっちゃんはサマンサ先生にやっと気づく。
「今月のお給料が振り込まれてないんですけど!? いつになったらお金をくれるんですか!? このままでは今月の家賃が払えません!? もう魔女っ子キャバクラで裸で働くしかないです!? お給料を払ってください!?」
 おみっちゃんの切実な懐ぐわい。
「ええー!? 私は知りませんよ!?」
 サマンサ先生にはまったく心当たりがない話であった。
「酷い!? 副店長のくせにアルバイトにお金を払うのを渋るんですか!? 労働基準監督署に訴えますよ!?」
 弱者のおみっちゃんの叫び声であった。
「おい。サマンサ先生。これはどういうことだい? 話が違うんじゃないかい?」
 ユババ校長がサマンサ先生を睨む。
「ええー!? これは何かの手違いですよ!? 私には分かりません!?」
 無実を主張するサマンサ先生。
「なんだい? なんだい? 騒がしい。他のお客さんに迷惑だろ。」
 そこに茶店の女将さんがやって来る。
(こいつ!? できる!?)
 ユババ校長は女将さんが只者ではないことを感じとる。
(なんて顔のデカイおばはんだ!? 他のお客さんが席に座れない!? このままでは売り上げが下がってしまう!?)
 女将さんもユババ校長から何かを感じ取った。
「どうしたんだい? おみっちゃん。」
 状況が分からないので女将さんはおみっちゃんに尋ねてみた。
「実は私のお給料が無くなったんです! それをサマンサ副店長に尋ねたら知らないってしらばっくれるんですよ! 酷い話ですよね!」
 同意を求めるおみっちゃん。
「・・・・・・。」
 冷たい目線でおみっちゃんを見つめる女将さん。
「そりゃあそうだろう。あんたがもらったお給料を歌姫のステージで歌うための衣装代とかマイク代に使ってしまって全財産をなくしたんだから。あんたの手元にお金が残っている訳がないよ。」
 おみっちゃんは金遣いが荒かった。
「あっ! そうでした! エヘッ!」
 笑って誤魔化すエヘ幽霊。
「笑っても許さないぞ! 私は犯人だと疑われたんだからな!」
 サマンサ先生は抗議する。
「それにおみっちゃんは家賃は関係ないだろう。そこら辺で寝てるんだから。」
 おみっちゃんは家の賃貸契約はしていない。
「どういうこと?」
 サマンサ先生は尋ねてみた。
「私、幽霊なんで家を借りる必要がないんです。エヘッ!」
 自分を幽霊だと思い出したエヘ幽霊。
「ズコッ!?」
 ズッコケるサマンサ先生。
「そちらは誰だい?」
 女将さんがサマンサ先生に尋ねる。
「うちの魔女っ子学校のユババ校長です。」
 サマンサ先生はユババ校長を女将さんに紹介する。
「どうも。うちの生徒が可愛がってもらっているそうで。」
 探りを入れるユババ校長。
「ユババ校長は生徒たちが校則違反のアルバイトをしているんじゃないかと疑っているんです。」
 なぜやって来たのかサマンサ先生が女将さんに説明する。
「ああ~そういうことかい。安心しな。うちで働いている魔女っ子たちにはお金は一切払ってないからね! 彼女たちは善意でうちの茶店で働いてくれているのさ! イヒッ!」
 女将さんは魔女っ子たちをかばう。
「本当かい?」
 まだ疑うユババ校長。
「本当ですよ。ケチで有名な女将さんが人件費を出してまで魔女っ子たちを雇うことはありません! 私が保証します! エヘッ!」
 守銭奴な女将さんを良く知るエヘ幽霊。
「そう言うんなら社会奉仕でお手伝いしているんだろうよ。」
 ユババ校長もおみっちゃんの説明を聞いて納得した。
「ふう~良かった。」
 身の潔白が証明されて力が抜けるサマンサ先生。
「ダメだね。2500字で戦闘に突入のはずが、既に3300字。また長くなるね。編集さんに怒られる。」
 女将さんの独り言。
「待たせたな!」
 その時、魔物たちが現れる。
「いつもスタンバイさせて悪いね。これお茶とお団子だよ。食べていっておくれ。」
 女将さんは魔物たちにお茶とお団子を振る舞う。
「すいませんね。いつも気を使ってもらって。ずっと座って待っていると腰に悪くてね。ゴホゴホ。」
 魔物たちは腰痛と風邪気味だった。
「仲良しこよしだったのか!? さすが女将さんだ。」
 おみっちゃんはいつもながら敵と談合している女将さんに驚く。
「敵にも情けがあるからね。胃袋を掴んでおけば茶店は潰さないでくれるからね。イヒッ!」
 ただでは転ばない女将さん。
「待たせたな!」
 今度こそ魔物たちがおみっちゃんに襲い掛かる。
「出たな! 魔物たち!」
 おみっちゃんが迎え撃つ。
「おまえたちの相手は私たちよ!」
 魔女っ子たちが現れる。
「ふん。おまえたち学生如きに何ができる? 軽くひねりつぶしてやるわ! くらえ! ロケット・パンチ!」
 魔物たちは手を飛ばして攻撃してくる。
「ギャアアアアアアー!」
 おみっちゃんに命中して倒す。
「おみっちゃん!?」
 魔女っ子たちはおみっちゃんが倒されて驚く。
「次はおまえたちの番だ! 覚悟しろ!」
 魔物たちは魔女っ子たちに狙いを定める。
「そうはいくか! 今度はこっちの番だ! 焼き尽くせ! 火の魔法! ファイア!」
「凍てつけ! 氷の魔法アイス!」
「轟け! 雷鳴! 雷の魔法! サンダー!」
 魔女っ子たちは魔法で攻撃する。
「そんなもの効くか! くらえ! ロケット・パンチ!」
 魔物たちの放つロケット・パンチは魔法をかき消していく。
「キャアアアアアアー!」
 そして魔女っ子たちにロケット・パンチが命中して吹き飛ばす。
「どうだ! 見たか! 俺たちの実力を! ワッハッハー!」
 魔物たちは魔女っ子たちを倒した。
「ワッハッハー! 見たか! 私の実力を! エヘッ!」
 魔物たちと一緒におみっちゃんが笑っている。
「どうしておまえが!? 確かにロケット・パンチを食らわせたはずだ!?」
 魔物たちはビックリ。
「私、幽霊なのでロケット・パンチも透き通っちゃうんです。エヘッ!」
 いつも明るく笑顔で元気に前向きなエヘ幽霊。
「ふざけるな! 今度こそ確実に殺してやる!」
 魔物たちがおみっちゃんを攻撃する。
「まあまあ。せっかく茶店に来てくれたので私の歌を聞かせてあげましょう。無料ですよ。」
 おみっちゃんの夢は江戸で歌姫になることです。
「タダ! それなら聞かせてもらおうか。」
 魔物たちは歌を聞くことにした。
「1番! おみっちゃん歌います! 曲は越後湯沢!」
 おみっちゃんが歌を歌おうとする。
「はい。あんたも耳栓付けな。」
 女将さんがユババ校長に耳栓をつけてあげる。
「なぜに耳栓?」
 ユババ校長は咄嗟のことで何が何だか分からなかった。
「全員! 耳栓用意!」
「おお!」
 女将さんの号令で魔女っ子たち、サマンサ先生も耳栓をつける。
「ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ!」
 おみっちゃんは極度の音痴でデスボイスの持ち主であった。
「ギャアアアアアアー! 耳が潰れる!」
 魔物たちはおみっちゃんの美声に酔いしれる。
「なんだい!? これは!? まさか!? これは伝説の最終兵器!?」
 ユババ校長はおみっちゃんを伝説の歌姫と錯覚する。
「ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ!」
 更におみっちゃんは気持ち良く歌を歌い続ける。
「まさか!? 歌で人が殺せるなんて!? ギャアアアアアアー!」
「アベシ!」
「ヒデブ!」
「ベチャ!」
「ブシュ!」
「チョチュネ!」
 爽快に魔物たちは体内爆発を起こしていく。
「ご清聴ありがとうございました! ああ~気持ち良かった! エヘッ!」
 自分の歌が他人を傷つけていると知らないエヘ幽霊。
「あれ? 魔物さんたちがいない。家の鍵を閉めるのを忘れたかもしれないから確認しに帰ったのかな? エヘッ!」
 いつも明るく笑顔で元気に前向きなエヘ幽霊。
「ブラボー! おまえは伝説の歌姫だね!」
 ユババ校長はおみっちゃんを偉く気に入った。
「伝説の歌姫? 私はまだ歌姫デビュー前です。ちょっと路上ライブならぬ、茶店ライブしているだけです。エヘッ!」
 デビュー前の苦労をしているエヘ幽霊。
「おまえがいれば魔界を統一できるよ! そうなったら私が魔王になれるんだ! ワッハッハー!」
 ユババ校長は野心家であった。
「ええー!? 魔界を統一できるんですか? そしたら私は江戸に連れて行ってくれますか? 私、歌姫になりたいんです!」
 あくまでもおみっちゃんの夢は江戸で歌姫になることです。
「いいだろう。交渉成立だ。おまえは魔界を統一する救世主伝説の歌姫になるんだよ!」
 ユババ校長はおみっちゃんを伝説の歌姫に仕立て上げる。
「はい! 私にかかれば魔界統一なんてイチコロです! エヘッ!」
 どこからその自信が湧いてくるのか分からないエヘ幽霊。
 つづく。
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