茶店の歌姫 3 

渋谷かな

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エヘッ! 2

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「やって来ました! 魔女の国!」
 おみっちゃんたちは魔女の国にいる。
「魔界の人々が平和に暮らせるように、私たちで魔界を統一しよう!」
「おお!」
 魔女の国で出会ったメグ、サリー、アッコと魔女の義勇軍を結成する。
「おら! お茶とお団子ができたよ! さっさと運びな! お客様を待たせるんじゃないよ!」
 お茶とお団子の茶店のオーナーの女将さんはいつもお金儲けのことだけを考えている。
「はい!? ただいま!?」
 なぜか魔女っ子たちは茶店でアルバイトをさせられている。
「どうして私たちが茶店でアルバイトをしないといけないの?」
 魔女っ子たちの素朴な疑問である。
「当然だろ! おまえたちはおみっちゃんのおかげで命拾いしたんだから、おみっちゃんのアルバイトを手伝うのが命の恩人に対する恩返しだろ! 一生懸命に働け!」
 一見すると女将さんの言い分は正しくも聞こえるので恐ろしい。
「はい!」
 納得はしていないが茶店で働かされる魔女っ子たち。
(ラッキー! おみっちゃんに加え、カワイイ魔女っ子が3人も茶店の看板娘としてタダ働きさせられる! これでお金がガッチリ稼げるっていうもんだよ! イヒッ!)
 恐ろしい女将さんの本音。
「確かに。おみっちゃんはお友達だもんね。友達同士助け合わなくっちゃ!」
「ありがとう! 私もお友達ができてうれしいよ! エヘッ!」
 おみっちゃんと魔女っ子たちは仲良しになっていた。
「頑張ろう! これも魔界を統一して平和にするためだ!」
「おお!」 
 茶店のアルバイトで魔界が平和になるみたいだ。
「前回の魔物との戦いが良い宣伝になったみたいね。茶店の行列が伸びているもの。」
 茶店にはどこまでもつづくお客さんの行列ができていた。
「それにお客さんの中には「私も義勇軍に参加したい!」という魔女っ子たちが志願してくれているわ!」
 魔女の義勇軍は茶店の売り上げと共に義勇兵の数が増えていくシステムのようだ。
「義勇兵が増えて体制が整えば、他国に戦いを挑んで魔界を統一よ!」
 正にストラテジーの制圧ゲーム的要素である。
「生きてるって実感するね。エヘッ!」
 いつも明るく笑顔で元気に前向きなエヘ幽霊。
「あんたたち! 無駄口を叩いでないでテーブルを片付けな! お客さんを待たせるんじゃないよ!」
 仕事をサボっていると女将さんの怒鳴り声が飛んでくる。
「はい! ただいま!」
 それでも友達4人で一緒に働けば辛い茶店のアルバイトも楽しいのだ。

「なに? うちの生徒が魔女の義勇軍を結成しただと?」
 ここは魔女っ子たちが通う魔女の学校の校長室。
「どうなっているんだい? サマンサ先生。」
 魔女っ子たちの担任の魔女のサマンサ先生。
「ええー!? 私も始めてきたばかりなんですけど!? ユババ校長。」
 魔女学校のユババ校長。
「それから生徒が怪しい茶店でアルバイトをしているっていうじゃないか? うちの学校はアルバイトは禁止だよ! 立派な魔女を育成するための学校なんだからね! 生徒はバイトなんかしている暇はないんだよ!」
 ユババ校長は学校の風紀の乱れを気にしていた。
「はい! 直ぐに行って生徒にアルバイトをやめさせます!」
 サマンサ先生も決して弱くはないがユババ校長の迫力のあるパワハラには下の人間として勝てなかった。

「義勇軍の参加者も100人を超えてきたし、どこの他国に攻め込もうかな?」
 おみっちゃんと魔女っ子たちは茶店でアルバイトをしながら作戦会議をしていた。
「いきなりドラゴンなんてどう?」
「ステーキかよ!?」
 軽いギャグとツッコミを交えながら楽しく進めていた。
「いきなり遠くの国は攻めることはできないから、近くの国よね。」
「更に近くに強い国があると詰んじゃうから、近所は弱い国で決まりかしら?」
「やっぱりスライム国?」
 異世界ファンタジーの基本といえば基本である。
「別に私はドラゴンでも、海竜でも不死鳥でもいいよ。エヘッ!」
 全て空気を読めないエヘ幽霊の友達がいる国である。
「あなたたち! 何をやっているんですか!?」
 茶店にサマンサ先生がほうきに乗ってやって来た。
「サマンサ先生!?」
「どうしよう!? どうしよう!?」
 魔女っ子たちは先生に働いているのがバレてパニック。
「あなたたち魔女学校は校則でアルバイトは禁止です! 即刻辞めないと退学ですよ!」
 生徒には強いサマンサ先生。
「退学!?」
「それだけはお許しください!?」
 魔女っ子たちは教師の権力に屈して泣きながらすがる。
「ちょっと待ちな!」
 ここで女将さんのちょっと待ったコール。
「あなたはなんですか?」
 サマンサ先生は尋ねてみた。
「私は茶店の女将だよ。」
 自己紹介する女将さん。
「この子たちはアルバイトはしていないよ。」
「嘘! 働いているじゃないですか?」
 対決姿勢のサマンサ先生。
「これはボランティア活動の一環だよ。」
「ボランティア活動!?」
 女将さんは魔女っ子たちはアルバイトではなくボランティア活動をしていると言う。
「だって私は魔女っ子たちにお金は一円もはらっていないもの。イヒッ!」
 悪い笑い方をする女将さん。
「そうなの? あなたた?」
 サマンサ先生は魔女っ子たちに尋ねてみた。
「はい! 私たちは内申点を少しでも高めるためにボランティア活動をしています!」
「そうです! 学校の進学率がアップするためのボランティアです!」
「これも全て魔女魔法学校の名声を世に知らしめるためのボランティア活動なんです!」
 魔女っ子たちは頭の回転が早かった。
「そうなの。じゃあ、仕方がないわね。だってボランティア活動ですものね。」
 納得するサマンサ先生。
(ちょろい。)
(あんた先生だろ!? これいいのかよ!?)
(これでいいのだ。)
 魔女っ子たちの心の声。
「これで問題解決ですね! エヘッ!」
 細かいことは分からないエヘ幽霊。
「分かりました・・・・・・私が顧問になってあげましょう!」
 サマンサ先生はボランティア活動の顧問になるという。
「ええー!? どうして先生が!?」
「できればもっとマシな先生がいい!」
「そもそもボランティア活動に顧問の先生はいるの?」
 魔女っ子たちの素直な意見。
「あなたたち、言いたいことはそれだけですか?」
 多少ムカついているサマンサ先生。
「まあまあ。先生がいればアルバイトと勘違いされないでいいんだからいいじゃないかい。」
 空気を読んだ女将さんがフォローに入る。
「女将さんが言うなら。」
「女将さんに従います!」
「私たちはどこまでも女将さんについていきます!」
 魔女っ子たちは茶店のオーナーである女将さんに忠誠を誓っていた。
「なんなの!? この扱われ方の違いは!? 悔しい!」
 サマンサ先生は自分と女将さんの魔女っ子たちの忠誠度の違いに嫉妬する。
「良かったらお茶とお団子を味わってください。エヘッ!」
 空気を読めないおみっちゃんがサマンサ先生にお茶とお団子を出す。
「なぜ!? 今!? お茶とお団子が出てくるの!? ・・・・・・ありがとう。パクッ。」
 サマンサ先生は断らずに食べた。
(食べた。)
 魔女っ子たちはサマンサ先生に呆れる。
「美味しい! こんなに美味しい食べ物があったのね!」
 サマンサ先生はお茶とお団子の美味しさに魅了された。
「私も女将さんについていきます! アハッ!」
 そしてサマンサ先生も女将さんに忠誠を誓った。
「看板娘は無理だから、おばさんには皿洗いしかないよ。」
 サマンサ先生はダイアナと同じ扱いになった。
「どうして私が皿洗い!? まだまだピチピチでイケているのに!?」
 納得がいかないサマンサ先生。
「そうだわ! うちの生徒たちに社会奉仕活動の一環として茶店で働かせばいいのよ! 新人には皿洗いから始めてもらいます! ああ~! 教師をやっていて良かったー!
 サマンサ先生は教師の権限で生徒を自由に扱おうとする。
「これで皿洗いは回避です! エッヘン!」
 自画自賛するサマンサ先生。
「なんていう教師だ!? 最低だな。」
「最低だ。なんていう酷い教師だ。」
「教育委員会に訴えてやる。」
 魔女っ子たちはサマンサ先生を軽蔑した。
「ということで、茶店に貢献したので私は茶店の副店長を名乗らせてもらいます!」
 サマンサ先生は茶店の副店長の座を獲得した。
「あんた、本当に先生かよ!?」
 女将さんも型破りなサマンサ先生に困惑する。
「店長!」
 サマンサ先生は女将さんのことを店長と呼ぶ。
「誰が店長だよ? 誰が?」
 優しい女将さんはツッコんでくれる。
「この茶店は移動式の基地です! この茶店を本拠地にして他国を攻め滅ぼしましょう!」
 サマンサ先生は自由を手に入れてノリノリである。
「勝手に人の茶店を前線基地にすな!」
 さすがの女将さんも怒る。
「店長、色々な国で茶店の商売をすればガッポリ儲かりますよ?」
 サマンサ先生の悪魔の囁き。
「行こう! バスティーユ! 他国で茶店を出店してガッポリ儲けるぞ! イヒッ!」
 女将さんは銭のためなら悪魔に魂を売り渡す。
「なんなんだ? この人達は。」
「私たちは魔界を平和にするという大義名分があるのに。」
「困っている一般魔界人を助けたいだけ。」
 困惑する魔女っ子たち。
「女将さんはこういう人です。エヘッ!」
 慣れっこのエヘ幽霊。
「頼もう!」
 そこに何者かが現れる。
「おまえたちは!? チュートリアルの魔物たち!?」
 現れたのは前回倒された魔物たちとそっくりであった。
「先鋒隊はおまえたちに倒されたと聞いてな。敵討ちにやって来たぜ!」
 前回の魔物たちは魔女っ子たちの前に敗れ去った。
「前回の魔物さんたちのお仲間ってことね。」
「あんたたちなんかじゃ、私たちには勝てないわよ!」
「また倒してやる!」
 魔女見習いの魔女っ子たちは戦う気満々である。
「そうかい、そうかい。なら相手してくれよ!」
 いきなり魔物たちが口からビームを吐く。
「ギャアアアアアアー!」
 おみっちゃんにビームが炸裂し、おみっちゃんが消えてしまう。
「おみっちゃん!?」
「そんな!? おみっちゃんが!?」
「イヤー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
 その光景に魔女っ子たちは悲しんだ。
「お友達が死んだからって悲しまなくていいぜ。次はおまえたちの番だからな! ワッハッハー!」
 魔物さんたちはターゲットを魔女っ子たちに絞った。
「こうなったらおみっちゃんの敵討ちだ!」
「おお!」
 一致団結する魔女っ子たち。
「なんてったって今回は私たちにはサマンサ先生がいるんだから!」
「そうよ! 学校で先生をするぐらいだから強いに決まっている!」
「おまえたちなんか、一瞬で倒してくれるんだからね!」
 魔女っ子たちの期待はサマンサ先生であった。
「え? ええー!? 私ですか!?」
 意表を突かれたサマンサ先生はビックリ。
「お願いします! サマンサ先生!」
「あんな雑魚モンスターたち、秒殺しちゃってください!」
「極大魔法をぶちかまして!」
 魔女っ子たちの大いなる期待。
「あ、あの・・・・・・魔王様が勇者に倒されるまで魔界は平和だったので、私、戦闘の経験がないんですよね。アハッ!」
 今回が初めての戦闘だと公表して笑って誤魔化すサマンサ先生。
「・・・・・・!?」
 魔女っ子たちは言葉を失いフリーズする。
「なんですと!?」
「騙したな! この似非教師!」
「私たちはこんな奴を教師と崇めていたのか!?」
 魔女っ子たちの意識が回復して裏切られた期待が口から溢れてきた。
「ごめんなさい! 実は教師にも親のコネで慣れたんです!」
 次々とカミングアウトを繰り広げるサマンサ先生。
「ダメだ。他人に頼るのはやめよう。」
「ああ。そうだな。」
「私たちであいつらを倒すんだ!」
 魔女っ子たちは気持ちを切り替え、自分たちで魔物を倒すことを考えた。
「いいぞ。かかってこい。遊んでやろう。ワッハッハー!」
 魔物たちは余裕だった。
「なめるな! 火の魔法! ファイア!」
「凍てつかせよ! 氷の魔法! アイス!」
「唸れ! 雷鳴! 雷の魔法! サンダー!」
 魔女っ子たちは各々の得意魔法で攻撃する。
「ギャアアアアアアー!」
 魔物たちに魔法が命中する。
「やったー!」
「私たちが魔物を倒した!」
「やればできる子です! アハッ!」
 魔物を倒したと喜ぶ魔女っ子たち。
「なんちゃって。」
 しかし魔物たちはピンピンしていた。
「なんですって!?」
 その光景に魔女っ子たちは絶句した。
「魔女見習いの魔法なんか魔界の魔物の俺たちに効くかよ。くらえ! 口からビーム!」
 魔物たちが口からビームを出して攻撃してくる。
「キャアアアアアアー!」
 ビームの直撃に吹き飛ばされる魔女っ子たち。
「だ、ダメだ。」
「私たちでは魔物に勝てないの?」
「ここで死ぬのね。短い人生だったわ・・・・・・。」
 魔女っ子たちは死を覚悟した。
「くらえ! とどめだ!」
 魔物たちがダメージを受けて動けない魔女っ子たちに口からビーム攻撃を仕掛ける。
「・・・・・・。」
 迫りくるビームに魔女っ子たちは諦め目を閉じた。
ドカーン!
 ビームが何かに当って爆発する。
「い、生きてる?」
「何があったの!?」
「あれはサマンサ先生!?」
 魔女っ子たちの前にサマンサ先生が防御魔法のバリアを張って生徒たちを守っていた。
「やめなさい! 私の可愛い生徒には手を出させません!」
 そこに臆病なサマンサ先生が立ち塞がる。
「サマンサ先生!?」
「先生が生徒を守らないでどうするのよ。みんな私の可愛い生徒なんだから。死ぬ時は一緒です!」
 サマンサ先生は教師の気概を持っていた。
「サマンサ先生。」
 魔女っ子たちはサマンサ先生に感動した。
「クソッ!? 邪魔しやがって! 今度こそ真っ黒こげにしてやる! これで最後だ!」
 魔物たちが極大の口からビームを吐きだそうとする。
「あなたたちもね。」
 そこに倒されたはずのおみっちゃんが現れる。
「何!? おまえは倒したはず!? なぜ生きている!?」
 魔物たちは驚く。
「いいえ。私は既に死んでいますよ。だって私は幽霊ですもの。エヘッ!」
 おみっちゃんは幽霊であった。
「なんだと!? 幽霊!?」
 さすがの魔物たちも驚いた。
「それでは魔物さんたちの健闘を称えて私から歌を贈りたいと思います。」
 おみっちゃんの夢は江戸で歌姫になることです。
「え? 歌ってくれるの? すまんな。」
 魔物たちは攻撃をやめておみっちゃんの歌を聞くことにした。
「はい。サマンサ先生。」
 女将さんがサマンサ先生に何かを手渡す。
「え? 耳栓?」
 それは耳栓だった。
「耳の穴に入れるんだよ。」
 女将さんが耳栓の使い方を教えてくれる。
「それぐらいは知ってます!」
 サマンサ先生は耳栓を手に入れた。
「1番! おみっちゃん歌います! 曲は贈る言葉!」
 おみっちゃんが歌を歌おうとする。
「耳栓用意!」
 女将さん、サマンサ先生、メグ、サリー、アッコは耳栓をする。
「ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ!」
 おみっちゃんは極度の音痴でデスボイスの持ち主であった。
「ギャアアアアアアー!? なんだこれは!? スゴイ音痴!?」
 魔物たちは苦しみだした。
「ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ! ガガガガガガガガッガガガガガアッガガガガガガガガガガガガガッガガガガガガ!」
 更に気持ち良く歌を歌い続けるおみっちゃん。
「まさか!? 先鋒隊を倒したのは!? 歌だったのか!? ギャアアアアアアー!」
「アベシ!」
「ヒデブ!」
「グワア!」
「ギャバ!」
「ブシュ!」
 爽快に魔物たちがおみっちゃんの歌に耐え切れずに体内爆発を起こしていく。
「ご清聴ありがとうございました! ああ~気持ち良かった! エヘッ!」
 歌を歌い終えたおみっちゃん。
「あれ? 誰もいない? みんなトイレかな?」
 そして魔物たちはいなくなった。
「あれが歌なの!? 信じられない!? 本人に教えて歌を歌うのをやめさせなければ!」
 初めておみっちゃんの歌を聞いたサマンサ先生は地獄を見た。
「ダメ! サマンサ先生!」
「そうだよ! おみっちゃんの夢は歌姫になることなんだから!」
「もし本人が自分の歌がデスボイスだって知ったら狂喜乱舞で怨霊になって世界を滅ぼしちゃうよ!」
 魔女っ子たちはサマンサ先生を止める。
「・・・・・・夢は大切よね。夢は。」
 サマンサ先生はおみっちゃんに真実を告げることを止めた。
「歌っていいな~。絶対に江戸で歌姫になるんだ! エヘッ!」
 いつも明るく笑顔で元気に前向きなエヘ幽霊。
 つづく。
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