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<ジルベール>恋愛ルート
16<ラージヴァル>視点
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「見てみろこれ、結構な術だぞ。凍らせてはいるが、内側を魔力で包んで凍らせている内部には影響がないようにしてある」
「呆れた。それを見せるために、そのままにして帰ってきたの?」
帰ってきた兄さんの手首から下が、凍り付いていた。一体どうしたのかと問えば、ジルベールの好きな子の術だと言う。どういう状況で、そんなことになったのか。頭痛がしたけれど兄さんは、悪びれもなく手を高く上げて見せてくる。
「ところで相手の――レイザードというんだが、男はナシらしい。俺で慣れさせればと思ったが、ジルベールが邪魔してな。どうすれば上手くいったと思う?」
「とりあえず兄さんは、何もしない方が一番上手くいく可能性があると思うよ」
ソファに座って大仰に、肩をすくめてる。
わかってる。本気で言っていないのは、よく分かっている。それと同時にこういう態度が、ジルベールを苛つかせているのも知っていた。
当の本人もそれを分かってやっているのだから、質が悪いと思う。
「ねえ兄さん、ジルベールが心配で行ったのは分かるけど、方法を選ばないとますます嫌われるよ」
「なんて酷い言い草だ。兄は酷く傷ついたぞ」
眉根を少し寄せて、目を伏せる。多分外で同じ仕草をしたら、ほとんどの人が騙される。本気で心を痛めているって、勘違いする。
「あからさまな嘘は、つかなくていいよ」
「しょうがないだろ。あいつは世間知らずで、周りを拒絶してきた。他人と関わる事を、自ら避けてきたんだ。それが他国に送りだしたら、好きな人ができたと力になってほしいだのと頼んできたんだぞ。この俺に。その段階で相当入れ込んでるのが分かるだろ。相手に問題がないのなら良いが、あればあいつは酷く傷を負う」
演技を止めて、真面目な表情に変化する。
―― それも知ってる
兄さんが兄さんなりにジルベールのことを、案じていたことは分かってる。沈んだ表情するジルベールの背中を押したのも兄さんだ。
この国は適性だの術だのに、重きを置く。だから違う国ならば、変われるんじゃないかって忙しい合間縫って色々と調べていたのも知ってる。叔父さんと叔母さんを説得して、送りだした。
「……」
「他者を避けていたあいつが、初めて心を寄せた他人だ。それに裏切られたり傷つけられでもしたら、また殻の中に戻るかも知れない。やっと開かれた道が閉ざされる」
そんな相手じゃなかったのは、帰ってきたときの表情で気づく。違って良かったと思う。出なければ身内と、あの人にだけ優しい人が何をするか分からなかった。
「だからね、方法が色々と問題なんだよ。大切ならそのまま言葉に態度に出せば良いだけだろ。それをわざわざ挑発して怒らせて、そういうところが嫌われるんだよ」
「ジルベールは根底ではお人好しだから、俺の事を心底嫌えないさ」
確かに心の底から嫌ってるわけじゃないとは思う。憎んでるなんてひどくもない。けど好かれているかと言ったら、絶対に首を横に振る。
そもそもいくら心配していようが、自分を揶揄ってくる相手に良い感情なんて持ちにくい。兄さんはそれが分かっていて、態度を変えないから質が悪い。
「ジルベールに同情するよ。それで大丈夫だったの?」
「ああ問題なさそうだ。それに俺の誘いにも乗らなかった」
問題ないのは分かっていたけれど、ジルベールの好きな人に興味があったから話を向ける。
一体どんな人なんだろう。他人を拒絶してきたジルベールが、好きになった相手だ。きっと優しい人に違いない。
―― 会うことがあったら、お礼を言いたいな
そこまで考えて好きになったからと、従兄が礼を言うのも変な気がして止めた。だいたい何て、言えばいいんだ。
「万が一、外面に騙されて、その子が兄さんの事を好きになってたらどうするつもりだったの」
「問題ない。あの子の目が俺には心底興味が無いと、そう言っていたからな」
返ってきた言葉を聞いて、心底ほっとした。兄さんは異性も同性も、引きつける。自然にと言うより兄さんが、意図して振る舞っている結果だ。その振る舞いに色んな人が、騙される。
だからジルベールの好きな人が、引っかからなくて良かったと心の底から安心した。
「そう良かった。大体が兄さんの外用の顔に騙されるから……ちゃんと見る目のある人で、本当に良かったよ」
「可愛い弟は、反抗期なのか? さっきからお前の言葉の刃で、俺の繊細な心が傷ついているぞ」
また大仰に首を振って、目を伏せる。
―― 繊細か
なんて兄さんに、似つかわしくない単語だろうか。一つの目的のために、ただ一人の為だけに、偽りの笑みを浮かべて大勢を欺いて過ごす。そんなことは本当に繊細なら、出来ない。
「やだなあ兄さん、繊細の意味間違って覚えてる?」
「……たくましく育ってくれて、嬉しいよ」
―― そりゃ逞しくもなるよ
貴方の弟だからね。
誰よりも身内を大事にする人だ。けどたった一人のために、他の大切を切り捨てる覚悟をした人でもある。その秘密を共有されたんだ、図太くならないと生きていけない。
「ありがとう。……上手くいくと良いね」
「こればかりは相手次第だろう。まだお友達の認識のようだからな。先は長そうだ」
ジルベールは兄さんの秘密を知らない。これから知ることもないだろう。けどその方がジルベールは、巻き込まれずに過ごせる。
だからこのままずっと、平穏であれば良い。そう願いながら、ジルベールのいるであろう方角を向いた。
「呆れた。それを見せるために、そのままにして帰ってきたの?」
帰ってきた兄さんの手首から下が、凍り付いていた。一体どうしたのかと問えば、ジルベールの好きな子の術だと言う。どういう状況で、そんなことになったのか。頭痛がしたけれど兄さんは、悪びれもなく手を高く上げて見せてくる。
「ところで相手の――レイザードというんだが、男はナシらしい。俺で慣れさせればと思ったが、ジルベールが邪魔してな。どうすれば上手くいったと思う?」
「とりあえず兄さんは、何もしない方が一番上手くいく可能性があると思うよ」
ソファに座って大仰に、肩をすくめてる。
わかってる。本気で言っていないのは、よく分かっている。それと同時にこういう態度が、ジルベールを苛つかせているのも知っていた。
当の本人もそれを分かってやっているのだから、質が悪いと思う。
「ねえ兄さん、ジルベールが心配で行ったのは分かるけど、方法を選ばないとますます嫌われるよ」
「なんて酷い言い草だ。兄は酷く傷ついたぞ」
眉根を少し寄せて、目を伏せる。多分外で同じ仕草をしたら、ほとんどの人が騙される。本気で心を痛めているって、勘違いする。
「あからさまな嘘は、つかなくていいよ」
「しょうがないだろ。あいつは世間知らずで、周りを拒絶してきた。他人と関わる事を、自ら避けてきたんだ。それが他国に送りだしたら、好きな人ができたと力になってほしいだのと頼んできたんだぞ。この俺に。その段階で相当入れ込んでるのが分かるだろ。相手に問題がないのなら良いが、あればあいつは酷く傷を負う」
演技を止めて、真面目な表情に変化する。
―― それも知ってる
兄さんが兄さんなりにジルベールのことを、案じていたことは分かってる。沈んだ表情するジルベールの背中を押したのも兄さんだ。
この国は適性だの術だのに、重きを置く。だから違う国ならば、変われるんじゃないかって忙しい合間縫って色々と調べていたのも知ってる。叔父さんと叔母さんを説得して、送りだした。
「……」
「他者を避けていたあいつが、初めて心を寄せた他人だ。それに裏切られたり傷つけられでもしたら、また殻の中に戻るかも知れない。やっと開かれた道が閉ざされる」
そんな相手じゃなかったのは、帰ってきたときの表情で気づく。違って良かったと思う。出なければ身内と、あの人にだけ優しい人が何をするか分からなかった。
「だからね、方法が色々と問題なんだよ。大切ならそのまま言葉に態度に出せば良いだけだろ。それをわざわざ挑発して怒らせて、そういうところが嫌われるんだよ」
「ジルベールは根底ではお人好しだから、俺の事を心底嫌えないさ」
確かに心の底から嫌ってるわけじゃないとは思う。憎んでるなんてひどくもない。けど好かれているかと言ったら、絶対に首を横に振る。
そもそもいくら心配していようが、自分を揶揄ってくる相手に良い感情なんて持ちにくい。兄さんはそれが分かっていて、態度を変えないから質が悪い。
「ジルベールに同情するよ。それで大丈夫だったの?」
「ああ問題なさそうだ。それに俺の誘いにも乗らなかった」
問題ないのは分かっていたけれど、ジルベールの好きな人に興味があったから話を向ける。
一体どんな人なんだろう。他人を拒絶してきたジルベールが、好きになった相手だ。きっと優しい人に違いない。
―― 会うことがあったら、お礼を言いたいな
そこまで考えて好きになったからと、従兄が礼を言うのも変な気がして止めた。だいたい何て、言えばいいんだ。
「万が一、外面に騙されて、その子が兄さんの事を好きになってたらどうするつもりだったの」
「問題ない。あの子の目が俺には心底興味が無いと、そう言っていたからな」
返ってきた言葉を聞いて、心底ほっとした。兄さんは異性も同性も、引きつける。自然にと言うより兄さんが、意図して振る舞っている結果だ。その振る舞いに色んな人が、騙される。
だからジルベールの好きな人が、引っかからなくて良かったと心の底から安心した。
「そう良かった。大体が兄さんの外用の顔に騙されるから……ちゃんと見る目のある人で、本当に良かったよ」
「可愛い弟は、反抗期なのか? さっきからお前の言葉の刃で、俺の繊細な心が傷ついているぞ」
また大仰に首を振って、目を伏せる。
―― 繊細か
なんて兄さんに、似つかわしくない単語だろうか。一つの目的のために、ただ一人の為だけに、偽りの笑みを浮かべて大勢を欺いて過ごす。そんなことは本当に繊細なら、出来ない。
「やだなあ兄さん、繊細の意味間違って覚えてる?」
「……たくましく育ってくれて、嬉しいよ」
―― そりゃ逞しくもなるよ
貴方の弟だからね。
誰よりも身内を大事にする人だ。けどたった一人のために、他の大切を切り捨てる覚悟をした人でもある。その秘密を共有されたんだ、図太くならないと生きていけない。
「ありがとう。……上手くいくと良いね」
「こればかりは相手次第だろう。まだお友達の認識のようだからな。先は長そうだ」
ジルベールは兄さんの秘密を知らない。これから知ることもないだろう。けどその方がジルベールは、巻き込まれずに過ごせる。
だからこのままずっと、平穏であれば良い。そう願いながら、ジルベールのいるであろう方角を向いた。
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