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<ジルベール>恋愛ルート

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「すまない」
「えっ、どうしたんだい?」
 お茶を持ってきてくれたジルベールに、まず謝る。ただ何についての謝罪か前置きをしなかったから、不思議そうに返された。

「閉じ込められていたから、来られなかったんだろう。あいつが一人で来た時に、確認すれば良かった」
「確かに閉じ込められたけど、君は何も悪く無いよ。だから謝らないで」
 ジルベールの言うとおり全面的に悪いのは、従兄の奴ではある。普通はこんなものを作って、閉じ込めたりしない。俺もまさかそんなことになっているなんて、想像もしなかった。
 けど従兄と話しながら歩いているときに、こんなものに閉じ込められていたと思うと何というか気分が沈む。

「本当に気にしないで」
「分かった」
 これ以上何か言うと、逆に気を遣わせるかもしれないから言われたとおりにすることにした。

「さっき言った通りユージスの事を話すよ。何か聞きたいことある?」
「……」
 そういえば、そんなことを言っていた。強固な術を施せるという印象が、従兄を閉じ込める変態に変わってしまったせいで関心が消えてしまっていた。
 でもあれだな、話題を発展させる努力は、したほうがいいのかもしれない。頑張るか。

「これはどれくらいで、構築したんだ?」
「気づいたらあっという間に……凄いだろユージスは」
 はっきりとした答えは返ってこないが、ほんの数秒で術を構築したということだろうか。見た目は華奢で、だが強靱な氷だ。これを作れるのなら確かに凄い。俺では足下にも及ばないのは分かる。
 凄いとは思う。間違いなく凄い。けど従兄の実力云々より、ジルベールの様子の方が気になった。従兄を褒めたとき、なんというか自虐的な表情をしたんだ。気のせいかも知れないけれど、なんというか従兄が来てから何時もと違う表情ばかりしている。
 あいつが嫌いなだけなら、別にそれでいいのだが。なんか引っかかる。

「俺と五歳しか違わないんだけど、国立の研究機関で二番目に偉くて異例の出世だって言われてる」
「そうか」
 聞いてもいないのに従兄のことを、話し始める。どんな立場にいるのか。どれだけ術に関して優れているか。内容だけ聞いていれば、従兄の自慢をしているように見えるが表情からは明るさが見えない。
 なんと返すのが、良いのだろうか。コミュ力が低いから、こういうとき直ぐに適切な対応が思い浮かばない。

 ―― あいつに、コンプレックスでもあるのか?
 ふと思い浮かんだ考えに、自分が最悪の返しをしたかもしれないことに気づく。もしジルベールが、従兄に劣等感を持っているなら興味があるかの問いに肯定したのは不味かったのではないか。

 ―― いや、もう少し話を聞くか
 コミュ力ゼロの俺が、早々に決めつけたら大火傷に発展しかねない。
 今分かっているのは、ジルベールが何時もと様子が違うことだ。原因をこれだと決めて間違ったら、傷つけることになりかねない。

 俺にもう少しというか人並みのコミュ力があれば、良かったのにな……そうすればジルベールが、何を思っているのか分かったかも知れない。
 ただそう思ったところで、俺のコミュ力が一気にあがったりはしない。そんな都合の良いことは、モブには起きないものだ。
 今、俺に出来るのは、ジルベールの話を聞いて俺なりに考えることくらいだ。しょうがない、モブはモブらしく欲張らないにしないとな。

 ―― よし、ちゃんと話を聞くぞ
 なんと言っても、友達だからな。
 言葉にせずに決意して、ジルベールの話に耳を傾けた。
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