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<シーディス>ルート
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―― 借金返済計画書って、どうやって書けば良いんだろうか
歩きながらふと気になった事を考える。借金を返す返すとは言ってるが、そもそも返すなら返すで月にどれくらいでどんな計画で返しますって書面に残すべきなんじゃないだろうか。
シーディスさんは無理をしなくて良い、いつでも良いと言ってくれてるけれど借りた側がそれに甘えるのもどうなのか。
借金したことないから知らないけれど、普通なら返済計画って借りる前に立てそうな気がする。俺の場合は、状況が特殊だから事前には無理だったけれど、せめて返済についてはきちんと記した方がいいはずだ。
「いってえ!」
肩に何かが、ぶつかった。考え事に集中しすぎていたせいだ。声が聞こえたから謝ろうと、視線を向けるとザッチンピラって風貌の男が大げさにしゃがみ込んで腕を押さえて喚いている。ものすごくうるさい。
「おう兄ちゃんよ、俺の連れに何してくれてんだ。治療費、払ってもらおうか」
チンピラ1の少し後ろから、チンピラ2が近づいてくるのが見える。
―― こんなベタな展開あるんだな
どう見てもカツアゲする気で、ぶつかったとしか思えない。モブだから簡単に金を、盗れると思ったのだろう。だが俺は硬貨一枚も渡す気はない。シーディスさんに借金を返すために、頑張って稼いだお金である。なんでこんな奴に、くれてやらなければならないのか。
「兄ちゃん、綺麗な顔してるな。なんなら相手してくれれば……」
「断る」
目が、腐ってるのだろうか。いやこの場合は正常に認識してないのだから、脳に問題があるのかもしれない。それともあれかモブ目モブ科モブ属の中では、顔が良いという意味だろうか。
―― どっちでもいいか
少し酒臭いから、顔もろくに見えてないのだろ。酒のせいで脳が萎縮して、幻覚を見てるのかもしれない。
相手をするのも面倒だからチンピラ2の足を、地面ごと凍らせて動きを止める。念のためチンピラ1も、同じようにして動けないようにした。
全身氷漬けにしたわけじゃないから、騒ぎ出してとてもうるさい。相手をしたくないから、背を向けて立ち去ることにした。数分すれば溶けるようにしてあるから、少しその場で反省していれば良い。
―― あれ?
ここ、どこだ。
うるさい声が聞こえなくなってから、辺りを見渡すとまったく知らないところにいることに気づいた。そういえばさっき絡まれたところも、見たことがないところのような気がする。
―― なんか全体的に、治安が悪い
崩れたままになっている建物に、見るからに柄の悪い通行人
来てはいけないところに、来てしまった気がする。
ここはライトなBLファンタジーの世界だけれど、貧富の差というのは存在する。俺の家がある場所は、ザッ平民が多く住んでいる庶民シティだ。ジルベールはお金持ちが多く住んでる一角に家がある。来たのは初めてだけれど、ここは貧しい人達が住んでいるところなんだろう。
―― あれは、先生?
向けられる視線すら治安が悪い。来た方向に戻ろうとしたとき、かなり遠目にだけれど見知った姿が見えた気がした。
―― なんで、こんなところに
住んでる人には失礼な物言いだが、どこからみても治安が悪い。歩いている人でさえ穏やかな雰囲気とはほど遠い。
―― 追いかけた方が、いいだろうか
先生は美人だから、変なのに絡まれかねない。それにここはBLの世界だから、色んな意味で危険な気がする。強い人だから自分でどうにか出来そうな気もするけれど、万が一があったら大変だ。何か用事があるのかもしれないけれど、一人だと危険な気がする。
―― よし、追いかけよう
先生は怖いけれど恩人で、たくさんお世話になった。もし万が一危険なことに巻き込まれた嫌だし、後悔してもしきれない。何もなかったら無かったで先生にウザがられるかも知れないし、それはそれで怖いけれど何かがあるよりはずっと良い。
心の中で色々と言い訳を考えながら、先生の後を追いかけるために駆けだした。
歩きながらふと気になった事を考える。借金を返す返すとは言ってるが、そもそも返すなら返すで月にどれくらいでどんな計画で返しますって書面に残すべきなんじゃないだろうか。
シーディスさんは無理をしなくて良い、いつでも良いと言ってくれてるけれど借りた側がそれに甘えるのもどうなのか。
借金したことないから知らないけれど、普通なら返済計画って借りる前に立てそうな気がする。俺の場合は、状況が特殊だから事前には無理だったけれど、せめて返済についてはきちんと記した方がいいはずだ。
「いってえ!」
肩に何かが、ぶつかった。考え事に集中しすぎていたせいだ。声が聞こえたから謝ろうと、視線を向けるとザッチンピラって風貌の男が大げさにしゃがみ込んで腕を押さえて喚いている。ものすごくうるさい。
「おう兄ちゃんよ、俺の連れに何してくれてんだ。治療費、払ってもらおうか」
チンピラ1の少し後ろから、チンピラ2が近づいてくるのが見える。
―― こんなベタな展開あるんだな
どう見てもカツアゲする気で、ぶつかったとしか思えない。モブだから簡単に金を、盗れると思ったのだろう。だが俺は硬貨一枚も渡す気はない。シーディスさんに借金を返すために、頑張って稼いだお金である。なんでこんな奴に、くれてやらなければならないのか。
「兄ちゃん、綺麗な顔してるな。なんなら相手してくれれば……」
「断る」
目が、腐ってるのだろうか。いやこの場合は正常に認識してないのだから、脳に問題があるのかもしれない。それともあれかモブ目モブ科モブ属の中では、顔が良いという意味だろうか。
―― どっちでもいいか
少し酒臭いから、顔もろくに見えてないのだろ。酒のせいで脳が萎縮して、幻覚を見てるのかもしれない。
相手をするのも面倒だからチンピラ2の足を、地面ごと凍らせて動きを止める。念のためチンピラ1も、同じようにして動けないようにした。
全身氷漬けにしたわけじゃないから、騒ぎ出してとてもうるさい。相手をしたくないから、背を向けて立ち去ることにした。数分すれば溶けるようにしてあるから、少しその場で反省していれば良い。
―― あれ?
ここ、どこだ。
うるさい声が聞こえなくなってから、辺りを見渡すとまったく知らないところにいることに気づいた。そういえばさっき絡まれたところも、見たことがないところのような気がする。
―― なんか全体的に、治安が悪い
崩れたままになっている建物に、見るからに柄の悪い通行人
来てはいけないところに、来てしまった気がする。
ここはライトなBLファンタジーの世界だけれど、貧富の差というのは存在する。俺の家がある場所は、ザッ平民が多く住んでいる庶民シティだ。ジルベールはお金持ちが多く住んでる一角に家がある。来たのは初めてだけれど、ここは貧しい人達が住んでいるところなんだろう。
―― あれは、先生?
向けられる視線すら治安が悪い。来た方向に戻ろうとしたとき、かなり遠目にだけれど見知った姿が見えた気がした。
―― なんで、こんなところに
住んでる人には失礼な物言いだが、どこからみても治安が悪い。歩いている人でさえ穏やかな雰囲気とはほど遠い。
―― 追いかけた方が、いいだろうか
先生は美人だから、変なのに絡まれかねない。それにここはBLの世界だから、色んな意味で危険な気がする。強い人だから自分でどうにか出来そうな気もするけれど、万が一があったら大変だ。何か用事があるのかもしれないけれど、一人だと危険な気がする。
―― よし、追いかけよう
先生は怖いけれど恩人で、たくさんお世話になった。もし万が一危険なことに巻き込まれた嫌だし、後悔してもしきれない。何もなかったら無かったで先生にウザがられるかも知れないし、それはそれで怖いけれど何かがあるよりはずっと良い。
心の中で色々と言い訳を考えながら、先生の後を追いかけるために駆けだした。
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