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「行ってくる」
「気をつけてな」
玄関まで見送りに出てくれたヴァルに、一言告げて扉を開ける。
あれから何日か、頭が重い日が続いた。
そのせいで心配したヴァルが、泊まり込んで世話をしてくれた。
他に症状もなかったし、心配するような状態でもない。ここまでする必要ないと一度は伝えたのだが、眉を下げて悲しげな顔をされてしまい強くいえずに結局は面倒をかけてしまった。
そんなわけで久しぶりにたっぷりと睡眠をとる生活を送り、やっと症状が治まったから今日から学園にいくことにした。
頭痛の原因は、きっと睡眠不足だ。借金返済のために氷の置物を、夜中につくり続けていたからその影響がでたのだろう。
「具合が悪くなったら、無理はするなよ。なにかあったらジルベール君に……」
「ヴァル、ジルベールは俺の保護者じゃないからな。そんなに心配しなくても、無理はしない。体調が悪くなったら、ちゃんと休む」
もう大丈夫だと、伝えたのだがヴァルの不安は払拭できないらしい。なぜがジルベールの名を出してきた。
あの日から一度も会ってはいないが、訪ねてきていたことは聞いている。
『誰か来たのか?』
『ああ、ジルベール君がお見舞いにきてくれてたんだ。あがっていくかって尋ねたんだが、体調が悪いときに負担をかけたくないって帰ってしまった。これ預かったよ』
そんなことが、何度かあった。誰かきたと思ったら、戻ってきたヴァルが菓子や茶葉を手に戻ってくる。
―― 礼はどうするべきか……
別の問題で、頭痛がした。
ありがたいとは思う。思うんだがジルベールが、持ってきた見舞いの品が問題だ。そこらで買えるお手軽なものなら、そこまで気にしない。礼を言って、なにかおごるくらいで済ますと思う。
だがジルベールが、送ってきた茶葉と菓子が問題だ。俺でも知っているマークの入った包み、知ってはいるが高くて近づきもしない店のものだ。
金持ちだというのは、家に行ったから知っている。けど物には限度があるんだ。そんなポンポン気軽に持ってくる物じゃない。
どうもジルベールと俺の間では、埋まりようのない金銭感覚が存在しているようだ。
―― しょうがないか
あいつはどう見ても、金持ちだから庶民の俺の感覚を理解しろと言っても無理がある。俺には高くても、あいつにとってはお手軽な商品なのかもしれない。育った環境が違うし、金銭感覚のずれについてはわかり合えないだろう。
―― けどあれは、嬉しかったな
一つだけ高級感が、皆無なシンプルな包みがあった。俺のお気に入りの店で、店長が無愛想すぎて料理は美味いのに客の少ない店―― そこで店長が、気まぐれに作る菓子が中に入っていた。繊細な作りの菓子だ。店長であるおっさんが作ったと言われても、100人中99人は信じないであろう見た目をしている。
いつ作るかが、完全に気まぐれだからなかなか食べることが出来ない。値段もそこそこするし、頻繁に買うこともできない。
けどとても好きな菓子だから、それは純粋に嬉しかった。
―― 直接聞くのが一番か
ここで俺が礼を何に、すべきか頭を悩ませても時間だけが経過するだけだ。本人に何がいいか、確認するのが一番外れがないだろう。
「どうした? やっぱりまだ……」
「違う。ジルベールへの礼をどうしようかと考えてただけだ。いってきます」
考え込んでしまったせいで、具合いが悪いのかと心配してきたヴァルに否定を返す。
ここで笑顔の一つでも浮かべられればいいんだが、相変わらず表情筋は仕事をしてくれない。ただ付き合いが長いからか、ヴァルは俺の無愛想面に不快を示してくることもない。
穏やかな笑みを浮かべて見送ってくれるヴァルに、少しくらいは報いようとして努力してみたが表情筋は平常運転でやはり答えてくれない。
笑顔を作るのは諦めて、せめて態度は柔らかくするために手を振ってから学園に向かった。
「気をつけてな」
玄関まで見送りに出てくれたヴァルに、一言告げて扉を開ける。
あれから何日か、頭が重い日が続いた。
そのせいで心配したヴァルが、泊まり込んで世話をしてくれた。
他に症状もなかったし、心配するような状態でもない。ここまでする必要ないと一度は伝えたのだが、眉を下げて悲しげな顔をされてしまい強くいえずに結局は面倒をかけてしまった。
そんなわけで久しぶりにたっぷりと睡眠をとる生活を送り、やっと症状が治まったから今日から学園にいくことにした。
頭痛の原因は、きっと睡眠不足だ。借金返済のために氷の置物を、夜中につくり続けていたからその影響がでたのだろう。
「具合が悪くなったら、無理はするなよ。なにかあったらジルベール君に……」
「ヴァル、ジルベールは俺の保護者じゃないからな。そんなに心配しなくても、無理はしない。体調が悪くなったら、ちゃんと休む」
もう大丈夫だと、伝えたのだがヴァルの不安は払拭できないらしい。なぜがジルベールの名を出してきた。
あの日から一度も会ってはいないが、訪ねてきていたことは聞いている。
『誰か来たのか?』
『ああ、ジルベール君がお見舞いにきてくれてたんだ。あがっていくかって尋ねたんだが、体調が悪いときに負担をかけたくないって帰ってしまった。これ預かったよ』
そんなことが、何度かあった。誰かきたと思ったら、戻ってきたヴァルが菓子や茶葉を手に戻ってくる。
―― 礼はどうするべきか……
別の問題で、頭痛がした。
ありがたいとは思う。思うんだがジルベールが、持ってきた見舞いの品が問題だ。そこらで買えるお手軽なものなら、そこまで気にしない。礼を言って、なにかおごるくらいで済ますと思う。
だがジルベールが、送ってきた茶葉と菓子が問題だ。俺でも知っているマークの入った包み、知ってはいるが高くて近づきもしない店のものだ。
金持ちだというのは、家に行ったから知っている。けど物には限度があるんだ。そんなポンポン気軽に持ってくる物じゃない。
どうもジルベールと俺の間では、埋まりようのない金銭感覚が存在しているようだ。
―― しょうがないか
あいつはどう見ても、金持ちだから庶民の俺の感覚を理解しろと言っても無理がある。俺には高くても、あいつにとってはお手軽な商品なのかもしれない。育った環境が違うし、金銭感覚のずれについてはわかり合えないだろう。
―― けどあれは、嬉しかったな
一つだけ高級感が、皆無なシンプルな包みがあった。俺のお気に入りの店で、店長が無愛想すぎて料理は美味いのに客の少ない店―― そこで店長が、気まぐれに作る菓子が中に入っていた。繊細な作りの菓子だ。店長であるおっさんが作ったと言われても、100人中99人は信じないであろう見た目をしている。
いつ作るかが、完全に気まぐれだからなかなか食べることが出来ない。値段もそこそこするし、頻繁に買うこともできない。
けどとても好きな菓子だから、それは純粋に嬉しかった。
―― 直接聞くのが一番か
ここで俺が礼を何に、すべきか頭を悩ませても時間だけが経過するだけだ。本人に何がいいか、確認するのが一番外れがないだろう。
「どうした? やっぱりまだ……」
「違う。ジルベールへの礼をどうしようかと考えてただけだ。いってきます」
考え込んでしまったせいで、具合いが悪いのかと心配してきたヴァルに否定を返す。
ここで笑顔の一つでも浮かべられればいいんだが、相変わらず表情筋は仕事をしてくれない。ただ付き合いが長いからか、ヴァルは俺の無愛想面に不快を示してくることもない。
穏やかな笑みを浮かべて見送ってくれるヴァルに、少しくらいは報いようとして努力してみたが表情筋は平常運転でやはり答えてくれない。
笑顔を作るのは諦めて、せめて態度は柔らかくするために手を振ってから学園に向かった。
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