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50<ロイ視点>
しおりを挟むジルベール先輩は、わかりやすい。レイザード先輩に関しては、と前置きをつける必要があるけれど。
そうレイザード先輩のことが、好きだって事はすぐに気づく。商人ギルドのギルド長だって、初めて会ったときに気づいていた。
多分、大概の人は気づいていると思う。なんせジルベール先輩に、隠す気が全くないからだ。
ものすごくとてつもなく分かりやすく、態度に出してレイザード先輩に接している。
なのになぜか当の本人に、気づいてもらえていない。
あまりの伝わらなさぶりに、応援したくなって協力をしているのだけれど目ぼしい成果がなかった。
けど数日前に、いい知らせが届く。
『レイザードが、俺のことをかっこいいと言ってくれたんだ』
照れてしまって、格好悪いところを見せてしまったけれど。そういいながら、ジルベール先輩が本当に嬉しそうに報告してくれた。
これまでの手応えのなさを、知っているから僕のほうも嬉しくなって笑顔になる。
やっとジルベール先輩の想いが、通じたんだ。
そう思っていたのだけれど、どうやらまだ道のりは厳しいらしい。
「ジルベール先輩に、かこいいと言ってほしいですか?」
「ああ」
なぜだがレイザード先輩が、僕にジルベール先輩を褒めるように促してくる。
意味が分からなくて、数秒ほおけてしまう。考えてもレイザード先輩の意図が、理解できない。
できなかったから素直に、先輩がかっこいいと言ったほうが喜ぶと伝えてみた。
けれど返ってきたのは、否定の言葉だ。
この時、気づきたくないけれど気づいてしまう。ジルベール先輩の想いは、全く通じていないということを。
―― どうしよう。伝えたほうがいいのかな
脳裏に目を細めて、微笑むジルベール先輩の姿が浮かぶ。伝えづらい。ものすごく伝えづらい。
伝えたときのジルベール先輩の、反応を想像して気が重くなった。
レイザード先輩は、鈍い人じゃない。頭がよくて、賢い人だ。なのになぜか自分に、向けられる好意に対して異常に鈍感だ。
きっとお見舞いに行ったとき、ジルベール先輩とギルド長が先輩をめぐって火花を散らしていたことも気づいていない。あのとき二人から向けられる好意にも、様子を変えることがなかったのはそのせいだと思う。
―― なんでだろう
なぜ自分に向けられる好意だけ、気づかないのか。人の感情に、鈍感な人じゃない。だからそれが酷く、不自然に感じる。
―― 無意識なのかな
もしかして昔に、何かあったのかもしれない。酷い失恋をしたとか、自分に好意を向けてくれる人に何かあったとか。辛いことがあって、心を守るために無意識に向けられる好意に鈍くなってるのかも……考えすぎだろうか。
「どうした言いたいことがあるなら、遠慮なく言え」
おもわずジルベール先輩の気持ちを、言ってしまいそうになり止めた。いくら先輩が気づいていないからと言って、この状況で僕が口にするのは違う。
僕に今できるのは、ジルベール先輩の好いところを伝えることぐらいだ。
それくらいしかできないけれど、頑張ってみよう。これがどれだけ効果があるかわからないけれど、何もしないよりはいいだろう。
―― よし頑張ろう
心の中で自分に気合を入れて、こぶしを握る。
そんな僕の様子を、小首をかしげて見ている先輩と視線が合った。
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第11回BL小説大賞にエントリーするために修正と加筆を加え、作者のつぶやきは削除しました。(23'10'20)
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