ニートの引きこもり、大好きなストッキングを重ね穿き!三週間風呂に入ってません!~異世界転生したら最強3K冒険者ストッKINGになりました~

けろけろ

文字の大きさ
上 下
2 / 4

2.覚醒のスメルズゼット

しおりを挟む
「まけぇ……まけぇ……」
 先ほどから剣先はコレしか言わない。なにが「まけぇ」なのか全然伝わってこないので、俺はスメルズゼットを突っつく。
「まけぇ、だけじゃ何も判らないぞ。もうちょっと人間に優しくしてくれ」
 するとスメルズゼットは少し黙り、それから元気よくカチカチと剣先を鳴らした。
「儂にストッキングを巻けぇ~! と言いたかったのだ! これで通じるかの!?」
「通じる! お前もストッキングが欲しいのか!?」
「新品は要らん! 熟れて臭ければ臭いほど、儂が強くなるぞ~! がっはっは!」
「ホントかよ……? でもまぁ、クサル神からの品だしなぁ……」
 俺はTシャツをめくってハーフパンツを脱ぐ。チャンカナが「キャー!」と叫んだ。
「すまん、これもスメルズゼットのためだ! 俺はこのストッキングの最下層をコイツに捧げてみる!」
「は、はい! その長い穿き物がストッキングですね!?」
「そうだ! 蒸れ蒸れだぞ! お前は臭くないのか!?」
「年がら年中、鼻詰まりなんですよ~」
「なるほど、神の人選は悪くないな!」
 俺は少々ねっとりし掛けているストッキングを一枚一枚脱いでいく。最下層を剣に渡したら、第四層をいちばん内側にせねば。なので伝線などに気を付け、緊張感を持ちながらの作業だ。
 やがて。
「来たぞ最下層! 我ながら臭い!」
「それこそ儂の見込んだ男よ! はやくそのストッキングをグリップ部分に巻くのだ!」
「ちょっと待て、先に俺が穿かせてもらう!」
 先ほどの第四層を一番内側に。そして楽しみにしていた新品の白を外側に。
「ほほう……白……色艶ともに申し分ない」
 これでハーフパンツを穿けば、チャンカナも視線に困らないであろう。 
 俺の心遣いの一方で、スメルズゼットは焦れていた。
「この臭い! 早く儂に寄越せぇぇ!」
「解った解った……どう巻けばいいんだ?」
「起動スイッチに二つの爪先部分を差し込んで、あとはカバーするように巻いてくれぇぇ!」
 先ほどチャンカナが披露してくれた起動スイッチの知識。俺はそれを使い、熟成されたストッキングの爪先を入れた。どこかからカチッと小さな音がする。そこで、スメルズゼットが蒼く輝き始めた。
「うおおーん、蒸れしストッキングが来た~!! そのまま早く巻いてくれぇ!」
 さっきから巻け巻けうるさいので、お望み通り起動装置を包むように巻いてやった。すると輝きが最高潮という感じになる。
「ぷはーっ、儂は天にも昇る気分じゃー! そなた抜きでは生きていけん!」
「そうか、喜んでくれて嬉しいぞ! おいチャンカナ、スメルズゼットの起動に成功したようだが――」
 見ればチャンカナは、這いつくばるように何かを書いていた。視線はスメルズゼットに釘付け。たぶん研究の資料でも作っているのだろう。
 そのスメルズゼットは、かなりの饒舌だった。千年の鬱憤が溜まっていたのか、愚痴だらけだ。剣先がカタカタと止まらない。つまり剣先が人間でいう口なのだ。だとすると、スメルズゼットの口臭は上の中だった。俺のストッキングが極上だとすればの話だけれど。
 スメルズゼットはいつまでも喋っていたそうだったが、キリがないので二分割された鞘に納めた。あまりに大きい剣だから、鞘が一つではおちおち仕舞えもしないのだろう。
 そうしたら、いきなり静かになる。だというのに、チャンカナは資料を作りまくっていた。
「えへへ、えへへへへ……! いきなり情報の大収穫に涎が止まりません……!」
「よ、よかったなチャンカナ」
「まさか臭いストッキングを用意したら喋るなんて……! ストッキングはこの世界に無いから、神様とゼンのお陰ですね!」
「この世界にも、やがてストッキングが発明されるだろう――ストッキングは、最高の穿き物だからな。まぁとにかく起動は成功だ」
「えへへへ……」
 その剣も鞘に仕舞ったし、チャンカナはこんな感じだしで、俺はどうすればいいのか。退屈だったので、置いてあった靴の履き心地を確かめ、皮袋の中身も見た。
「十万円か……微妙な金額だな。二人で泊まったりメシを食うと思えば、あっという間だ……」
「全然足りませんねぇ。クサル神様はきっと、修行せよという意味を籠められたのだと思います」
「うおっ! いきなり会話に参加するな! ビビるだろ!」
「ごめんなさい! やっと資料作りが一段落ついたんです……そしたら十万円という金額が聞こえてきまして」
 この世界の事はチャンカナが詳しいだろう。尋ねる事は一つだけ。
「三食付きで引きこもって、魔王だけ倒したいんだが……どうしたらいい? 魔王を倒せば悠々自適な生活が待ってる、とクサル神が言っていた」
「引きこもるなら野垂れ死ぬしか……魔王もどこに居るのか判りませんし、この世界はそんなに甘くないですよ!」
 当然のようにチャンカナが言う。つまり生活保護なんかは無いと思われた。引きこもれないのかと俯いてしまう俺に、チャンカナがこんな提案をしてくる。
「せっかく伝説の兵器スメルズゼットも覚醒した事ですし、どうせなら冒険者になりませんか? 比較的、自由ですよ」
「冒険者……ロールプレイングゲームみたいな物か。武器が強いなら、まぁまぁ楽しそうだな」
「私が登録しているギルドがあるので、そこに行きましょう!」
「ああ……しかし、どうやってこの空間から出るんだ?」
 俺が少し困ったら、急に視界が開ける。真っ暗だった空間から、いきなり燦々と輝く夏みたいな太陽の下――と思ったら太陽じゃなかった。この世界には恒星が三つあるらしい。もともと引きこもりのニートだし、さっきまで暗い空間に居たしで、まぁとにかく眩しかった俺は、スメルズゼットを即席の日除けにした。すると、剣を振りかぶったと勘違いしたのか、ごろつきに絡まれてしまう。とても怖くて視線を外したがお構いなしだ。
「ようよう兄ちゃん、俺たちに喧嘩でも吹っ掛けようってのか?」
「いい度胸じゃねぇか、ぶっ殺してやる!」
「って、臭っ!! なんだこいつ、めっちゃくせぇ!!」
「うわっマジだ!」
 その結果、ごろつきがサーッと蜘蛛の子を散らしたように逃げていく。
「……ふう、戦わずして勝ったな。異世界での初戦は完封勝ちだ。敗因は俺の風下に立ったこと……」
「よっぽど臭いんですね。残念だなぁ、あのごろつき『殺してもいいリスト』に入っていましたよ。せっかく斬れ味が試せたのに!」
「そ、そんな物騒なリストがあるのか!」
「あ、それはギルドで発行される冒険者カードが語りかけて来まして……」
「そうか、ギルドに入らないと冒険は始まらないようだな。案内してくれ」
「はい! こちらです!」
 俺はチャンカナの後を追う。そのついでに周囲を見れば、異世界と言うだけあって、日本とは全然違った。自動車ではなく馬車が走っており、町並みはヨーロッパ風に近い。窓にはガラスが嵌まっていなくて、カーテンらしきものがパタパタと風に揺れていた。通行人の服装も地味な感じだ。よくよく見ればチャンカナも、ラフな感じの緑のシャツと裾をまくった薄いズボン。この世界は暑いので丁度いいだろう。俺のグレーのTシャツとハーフパンツも馴染んでいるが、テカテカの五枚重ねな白いストッキングは目立つかもしれない。
「……だが、俺は絶対に脱がん! たとえ伝線しようと穿き続ける!!」
「わぁ! ビックリした!」
「す、すまんチャンカナ」
「大丈夫、着きましたよ~って声を掛けようと思ってた所です!」
 俺の眼前に『冒険者ギルドすみれ、ガチ勢です素人お断り』という看板が立っている。
「……俺は素人なんだが?」
「大丈夫です! スメルズゼットを操る人間は、ガチギルドでも通用します!」
「え~? そうかぁ~?」
「まぁとりあえず、入った入った!」
 俺はチャンカナに背を押され、ギルドの玄関をくぐった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

世界中にダンジョンが出来た。何故か俺の部屋にも出来た。

阿吽
ファンタジー
 クリスマスの夜……それは突然出現した。世界中あらゆる観光地に『扉』が現れる。それは荘厳で魅惑的で威圧的で……様々な恩恵を齎したそれは、かのファンタジー要素に欠かせない【ダンジョン】であった! ※カクヨムにて先行投稿中

ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~

むらくも航
ファンタジー
Fランク探索者の『彦根ホシ』は、幼馴染のダンジョン配信に助っ人として参加する。 配信は順調に進むが、二人はトラップによって誰も討伐したことのないSランク魔物がいる階層へ飛ばされてしまう。 誰もが生還を諦めたその時、Fランク探索者のはずのホシが立ち上がり、撮れ高を気にしながら余裕でSランク魔物をボコボコにしてしまう。 そんなホシは、ぼそっと一言。 「うちのペット達の方が手応えあるかな」 それからホシが配信を始めると、彼の自宅に映る最強の魔物たち・超希少アイテムに世間はひっくり返り、バズりにバズっていく──。 ☆10/25からは、毎日18時に更新予定!

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

処理中です...