嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜

𝓝𝓞𝓐

文字の大きさ
26 / 45
私、帝国領で暴れます!

私、胃の痛みを知ります……

しおりを挟む
 現在私は、勘違いで凍て付かせてしまった皆さんの事を、回復効果を持った暖かな光の波動で癒しながら、炎まで出して温めている最中です。

 私の早とちりが招いてしまった結果なので、全力です。炎など出す必要は無いですですが、出しておきます。今の私は全力なのです。

「そ、その……本当にごめんなさい……」

 風で作ったベッドの上に弟子を寝かせながら、平身低頭。とにかく頭を下げ続け、謝罪をします。

「「「「「……」」」」」

 お相手さんは、皆さんがずっと無言です。殺されかけたとあっては、容易く許すことなど出来はしないでしょう。本当に申し訳ないと思っています。だから私は、許してもらえるまで頭を下げ続けます。

「……なぜ、あの様な勘違いを……?」

 私の頭に、硬い声で疑問が降ってきました。残念ボーー銀髪さんの声です。その顔は怒りに満ちているに違いありません。声が怒っています。冷たいです。

「ま、前に、そういう事を十回くらい……? 別々の方から言われた事があって……。今回も、それと同じかなって……、思ったんです……」

 そうです。私は王国の貴族たちに、何度か「愛妾になれ」だの、「性奴隷にしてやる」だの、色々言われていたのです。

 …………王国の畜生どものせいじゃないですか!!!!!

 そう思ったら腹が立ってきました。私が勘違いで人を殺しそうになってしまったのも、今こうして怒られているのも、全部王国のハゲ豚どもが悪いのです!!! 特に傲慢なあのバーコード! 三回四回と誘いやがって! むっきー! この恨み、はらさでおくべきかッ!

「「「「「……ひっ」」」」」

 あっ……。魔力漏れちゃった……。

 怒られている立場なのに、魔力を漏らしてお相手さんを威嚇……威圧? していたら、私が逆ギレ最低女見たいじゃないですか!

 ま、マズイです! 私の沽券に関わります!

「あ、あのあの、今のは違くって……、その、違うんです! とにかくごめんなさい!」


 ~~三時間後~~


「ごめんなさぃぃぃぃぃ!!!」

 セレスティアさんは、未だに謝り倒していた。土下座しながら。

 なぜ未だに許しを得ていないのかと言うと、先程のお漏らしを、何度かやってしまっていたのだ。それも、相手が「そろそろ許してもいいかな……?」と思い始めるタイミングで。

「許しちゃう……?」→ガオー!→ぴえっ→ごめんなさい! →「許しちゃう……?」→ガオー! の無限ループである。

 王国の王族や貴族たちのことを考えると、途端に猛獣になってしまうセレスティアさんなのである。恨みは深いのだ! 断じてポンコツではな……くはない……かも?

 とにかく困ったら、全て王国のせい! 王国の連中が悪いのである。

 ガタンガタン

 それはもう見事な土下座を披露するセレスティアさんの耳に、馬車の揺れる音が響いてきた。それは今の彼女にとっては、神の救いのようにすら感じられた。

「商人さんっ! 助けてください!」

 助けてほしいのは勘違いで殺されかけた相手方であるのだが、今は黙っておこう。

 相手方も助けを求めて、後からやってきた商隊の方へと顔を向けている。セレスティアさんは飛び付いている。

「うぉっ!? ど、どうした嬢ちゃん……?」
「人を殺し掛けてしまったんです!!!」
「「「「「!!?!?!!!?」」」」」

 商人さんはもちろん、商隊の皆さんや冒険者の皆さんまで固まった。無理もない。

 少し想像していただきたいのだが、いきなり飛びつかれて、「私、未遂みすいやっちゃいました!」なんて言われたら、あなたはどう思う?

 きっと誰もが、「fa!?」となるに違いない。天の声さんはそうなる。そして、「またまた冗談を~笑笑」と笑い飛ばそうとするであろう。

 しかし相手が涙目だったら? そして、殺し掛けられた相手方が、こちらを睨んでいたら?

 そう、固まるしかないのである。

 気苦労が絶えない商人さんには、是非とも頑張ってほしい。ファイト!

「えー、あー? ……う?」

 商人さん  は  壊れてしまった!

「商人さん!? しっかりしてください!」

 バチン! ベチベチ! ベッチィィィン!!!

「ハッ……! 俺は一体……。ここは誰、私はどこ……」

 商人さん  は  壊れてしまった!

「しっかりしてくださいよ! 商人さん!」

 ベチベチバッチィィィン

「ハッ……! 俺は私……!?」

 商人さん  は  ry

「…………つばびつまりあべばあれか? びょうびゃぶば嬢ちゃんはがんびばはべ勘違いでこぼびぼほび殺しそうにばっばぼなったと?」
「えっと、何言ってるのか分からないですけど……、その、勘違いでっちまいそうになりました……」

 商人さんは、とても混乱しているようです。後、顔が腫れ上がり過ぎていて、何を言っているのか分からないです。回復してあげた方がいいかな……? 私がベチベチしちゃった結果ですし……。

 なんか、すごく痛そうです(他人事)。

 とりあえず、皆に回復魔法使っときましょう。えいやっと!

「……痛みを癒してくれたのはありがたいが、俺は未だに胃が痛いよ」
「え? 《回復ヒール》! ……どうですか?」
「そういう問題じゃぁ、ねぇんだ……」

 え? 胃が痛いって言ったのあなたですよ……? どゆこと?

 首を捻っていると、商人さんがあからさまにため息を吐きながら、まるで不出来な我が子に語りかけるが如く、私に言い聞かせます。

「いいかい嬢ちゃん。勘違いで人を殺しかけるなんて、有り得ない事なんだ」
「そりゃぁそうですよね。当たり前です」

 商人さんが当然の事を、さも、これが世の中の真理だ、という顔で言うので、私は頷きました。

 この人は、わざわざ何を言っているのでしょうか?

「…………。うんうん。……そうだな?」
「はい。そんな事をする人は最低です」

 なるほど! 今のはただの確認だった訳ですね。商人さんがオカシくなったのではなくて、良かったです。

 勘違いで人を殺そうとするやつなんて、人間じゃないですよ。人間失格です。
 そんな危険人物は社会不適合者確定なので、今すぐお家に引き篭ってもらいたいものですね。

「それが今の嬢ちゃんなんだよ……」
「…………そうでしたね」

 ですが、商人さんのその言葉で、私は凍りつきました。自分の仕出かした事を思い出した、と言ってもいいかもしれません。

 ……私は一体、何をやっているのでしょうか?

「…………どうだ嬢ちゃん。胃の痛みが分かったかい?」
「……はい」

 確かにこれは……、物理的な痛みじゃないですね。でも痛いです……。

════════════════
エール感謝3本目……!
( ^q^ )(死にかけ)
しおりを挟む
感想 25

あなたにおすすめの小説

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

【完結】人々に魔女と呼ばれていた私が実は聖女でした。聖女様治療して下さい?誰がんな事すっかバーカ!

隣のカキ
ファンタジー
私は魔法が使える。そのせいで故郷の村では魔女と迫害され、悲しい思いをたくさんした。でも、村を出てからは聖女となり活躍しています。私の唯一の味方であったお母さん。またすぐに会いに行きますからね。あと村人、テメぇらはブッ叩く。 ※三章からバトル多めです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

身代わりで呪いの公爵に嫁ぎましたが、聖女の力で浄化したら離縁どころか国一番の溺愛妻になりました〜実家が泣きついてももう遅い〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能は、死神の生贄にでもなっていろ」 魔力なしの無能と蔑まれ、家族に虐げられてきた伯爵令嬢レティシア。 彼女に命じられたのは、近づく者すべてを病ませるという『呪いの公爵』アレクシスへの身代わり結婚だった。 鉄格子の馬車で運ばれ、たどり着いたのは瘴気に満ちた死の城。 恐ろしい怪物のような男に殺される――。 そう覚悟していたレティシアだったが、目の前の光景に絶望よりも先に別の感情が湧き上がる。 (な、何これ……汚すぎるわ! 雑巾とブラシはどこ!?) 実は、彼女が「無能」と言われていたのは、その力が『洗浄』と『浄化』に特化した特殊な聖女の魔力だったから。 レティシアが掃除をすれば、呪いの瘴気は消え去り、枯れた大地には花が咲き、不気味だった公爵城はまたたく間にピカピカの聖域に塗り替えられていく。 さらには、呪いで苦しんでいたアレクシスの素顔は、見惚れるほどの美青年で――。 「レティシア、君は一体何者なんだ……? 体が、こんなに軽いのは初めてだ」 冷酷だったはずの公爵様から、まさかの執着と溺愛。 さらには、呪いが解けたことで領地は国一番の豊かさを取り戻していく。 一方で、レティシアを捨てた実家は、彼女の『浄化』を失ったことで災厄に見舞われ、今さら「戻ってきてくれ」と泣きついてくるが……。 「私は今、お城の掃除と旦那様のお世話で忙しいんです。お引き取りくださいませ」 これは、掃除を愛する薄幸令嬢が、その愛と魔力で死神公爵を救い、最高に幸せな居場所を手に入れるまでのお話。

修道女エンドの悪役令嬢が実は聖女だったわけですが今更助けてなんて言わないですよね

星井ゆの花(星里有乃)
恋愛
『お久しぶりですわ、バッカス王太子。ルイーゼの名は捨てて今は洗礼名のセシリアで暮らしております。そちらには聖女ミカエラさんがいるのだから、私がいなくても安心ね。ご機嫌よう……』 悪役令嬢ルイーゼは聖女ミカエラへの嫌がらせという濡れ衣を着せられて、辺境の修道院へ追放されてしまう。2年後、魔族の襲撃により王都はピンチに陥り、真の聖女はミカエラではなくルイーゼだったことが判明する。 地母神との誓いにより祖国の土地だけは踏めないルイーゼに、今更助けを求めることは不可能。さらに、ルイーゼには別の国の王子から求婚話が来ていて……? * この作品は、アルファポリスさんと小説家になろうさんに投稿しています。 * 2025年12月06日、番外編の投稿開始しました。

処理中です...