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私、帝国領で暴れます!

私、弟子を抱きしめます!

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 引っこ抜か~れて、あなただけに、ついて~いく~♪

 はい。どうもこんにちは。生き恥を晒したセレスティアさんですよッッッ!!!!!

 地面に埋まった状態から開放される時、弟子がすごく頑張ってくれました。
 なんとこの弟子、私への配慮がカンストしていたのです。何をしてくれたかって?

 はい。土の中からでもゴウゴウと聞こえてくるくらいに魔力を唸らせて、「テメェら、師匠を覗いたら殺すぞ……」と、周りの人たちを威嚇……脅し? て、近付けないようにしてくれていました。まだ声が変わる前で、声帯の音域は高目なのに、それでも限界まで低く、重く、冷たくして、すごくカッコよかったです。

 ……私がこんな姿じゃなかったら、もっと喜べたんですけどね……。はは……。

 まあでも、弟子の成長気遣いが感じられたので、今回はそれでヨシとします。
 ああ、そうですそうです。ご褒美をあげないと。

「弟子。こっちへ来なさい」

 未だに赤い顔をして、ぷるぷると震えている弟子を、私の方へと呼びます。

「は、はぃ……」

 やっぱり怒っているのでしょう。怒りで染まった顔はもちろんの事、襲いかかってしまわないように、強く強く拳を握りしめているせいで、体が震えています。それに、私と目を合わせようとすらしてくれません。

 でも、それって当然の事ですよね。私だって、師匠のポカで自分の初陣がスルーされてしまったら、きっと怒るはずです。「バーカバーカ!」って、罵倒します。

 でも、無視はされていないようなので、いい子いい子したら機嫌を治してくれるかな……?

 そう思って、弟子を胸に抱きしめます。そして、頭をいい子いい子しようとして、突き飛ばされーー

「なッ、ななななっ、なな!?」

 もにゅっ

「~~~ッッッ!!!!?!!? ~~~ッッ!!!」

 ーーそうになりました。

 私が唐突に抱きしめた事に怒り狂ってしまったのか、私を押し返そうとした弟子の手は、私の胸に吸い込まれました。ええ、それは見事なまでに。

 んでんで、首元まで真っ赤にしちゃったんですね。今は手の甲で、口元と目元を隠しています。

 こりゃぁ、相当怒ってますね。

 きっと弟子は、私が弟子の事を、『抱きしめる程度で許してくれる様な、チョロいヤツ』だと思っていると感じたのでしょう。そして、師匠と弟子という関係なのに、を使って許してもらおうとした、と考えたのかもしれません。

 それはちょっと誤解というか、事故なんですけど、そう思っても不思議では無いですよね。

 そして、私を見れる状態で、なおかつ口が自由になっていると、酷い暴言を吐いてしまう! と思ったから、慌ててその両方を塞いでいるのでしょう。

 本当に、優しい子です。

 でも、喋れないのは困ると言うか、寂しいんですよね。今はそっとしておいた方がいいのかもしれませんけど。

「あの、いいだろうか……?」

 そこで、横の方から声が掛かりました。

 ??? ……あー! そう言えば、ブタさんたちに襲われそうに食料にされそうになっていた人たちがいましたね! 弟子の怒りに気が向いていて、ちっとも意識してませんでした。

 反省です。

「……チッ。……なんですか?」

 ……ん? なんか弟子が今、舌打ちしたように聞こえたのですが……。気のせい……ですよね?

「いや、ぁ、えと、助かった! 礼を言うッ!」

 ダラダラと冷や汗を流しながら、銀髪銀目の男の子は、慌ててそう言いました。

 何故こんなにも慌てているのか、と言えばそれは、

「弟子。警戒するのはいい事ですけど、大丈夫ですよ? 私がいる時なら、どんな至近距離から襲われようともしますからね。
 だからあなたは、もう少し肩の力を抜きましょうね」
「はい。"師匠"」

 弟子が警戒をするあまり、劇的に強度も、そして量も増した魔力を全開放出していたのです。トゲトゲ成分多めで。
 だから一般人である銀くん(命名)は、弟子の魔力に脅えてしまったわけですね。

 可哀想に。

 じゃあ無事に片付いた事ですし、このまま戻りましょうか。報酬とかも別に要りませんしね。
 あ、その前に。弟子の事はちゃんと褒めておきませんとね。

「弟子」
「は、はい」
「初陣、見事でした。途中の様子までは見られませんでしたが、結果を見れば、あなたが魔法をきちんと用いて戦った、という事は分かります。だから、見事でした」

 私がそう言うと、弟子は澄んだ水のように綺麗な瞳を潤ませて、涙をホロリと流しました。
 今度こそ、ギュッと抱きしめてあげます。

「よしよし。偉いぞ偉いぞ。よく頑張ったね」
「ひっぐ……。ぇっぐ……。」

 小さな嗚咽を漏らしながら、顔をうずめています。
 抱きしめることで改めて感じるのは、異常なまでのその細さです。

 孤児だったのだから、栄養など摂れなくて当たり前。腹を満たせる事など、奇跡のようでいて、ただの幻想。夢物語です。

 だから自然と、身体は細く、小さくなる。

 以前見ていたはずなのに、身をもって体験していたはずなのに、イキナリ初陣を経験させるなんて、と少しだけ後悔しました。
 ……なんだか最近、私は後悔してばかりですね。

 これからはもっと、大切に大切に、責任を持って育てましょう。
 師匠たる私が、この子の母親も同時に務めてあげるのです。

 母親なんていなかったから、どんな事をするのかは分かりませんけど。今みたいに抱きしめてあげたりは、私にも出来ますしね。
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