嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜

𝓝𝓞𝓐

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聖女さん、帝国へ行く

私、帝国領に入ります!

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 ガタゴトガタゴトこんにちは。私の名前はセレスティア! 超絶美少女な十八歳です。

 私が今何をしているのかと言うと、何もしていません! 強いて言うなら、ボーッとしている事をしている、というのでしょうか? よく分かりませんので、まあいいです。

 馬車の上で寝転がって、お日様に当たりながらボーッとしているのはすごく気持ちがいいです。眠くなってきます。

「ふわぁぁぁ~」

 おっといけない。気が緩むと、すぐにあくびが出てしまいます。最近は気を張り続けている必要がなくなったせいか、なーんか、ぽやぽやとしてしまうんですよね。それが悪い事だとは思いませんから、直す気もまーったく無いですけど。

「「「グルォォォォォォ!!!」」」「「「ガァァァァァ!!!」」」「「「キャァァァァァ!!!!!」」」

 遠く後ろの方から、魔物たちがガオガオ吠えている声と、甲高い悲鳴が聞こえます。今日も平和ですね。

「お、おい嬢ちゃん、アレ放置してきて……、本当に良かったのか……?」

 そんな事を思っていると、私のいる馬車の上を目掛けて、商人さんが話しかけてきました。アレ、と言うのは、きっと現在進行形で魔物に襲われている街の事でしょう。
 さっきの、「トカゲの死体をよこせ!」と言ってきたサルどもがいる街ですね。

「別にいいと思います。私たちが助けてあげる義理はありませんし、助けた所で、もっと何か寄越せ! みたいに言われそうですからね。それに、私自身が嫌です。
 私はもう、自分の心に、とーっても正直に生きると決めたので助けません。勝手に死んでくださいね! ばいばーい! って感じです」
「お、おぉう。そうか……。そうだよな」

 何だかショックを受けている……? 商人さんは、本当に優しい人なんですね。

 でも、そんな甘さはこのフール王国では通用しませんよ。被搾取者の大先輩たる私が教えてあげましょう! この腐った王国では、『助けられるのは当たり前』『施されるのは当たり前』『かしずかれるのは当たり前』と言う考えの人が、一般的なのです。生ゴミを漁っている孤児の方が、よっぽど人間らしいですよ。
 全く嫌な国ですね。

 ちなみにですが、先程のあの街が襲われているのは、私が原因では無いです。原因だとしても、半分くらいです。

 端的に言うと、トカゲの頭をぽーん! した時に戦って遊んでいた魔物たちの、生き残りです。数は大体30くらいかな。なんか、私に着いてきていたみたいで、私が馬車を全ての浮かして街をスルーしたら、200メールくらい離れたところでワイワイし始めてました。

 白い旗と黄色い旗で、こちらに向かって全力の救援要請をしてましたけど、そんなもの知ったこっちゃないので、中指を突き立てて、言ってやりましたよ。「勝手に死んでろwwww ざまぁwwwww」って。《音届おとどけ》の魔法までわざわざ使ってね!

 聞こえてくる恨み辛みといった怨嗟の声は、最高に面白かったです。少しだけではありますけど、今まで味わってきた苦しみが和らぎました。

 こんな時、ビールがあったら美味しく飲めるんですかね? キンッキンに冷えてやがる! 悪魔的だぁ! なんて言ったりして。

 もう600メールの位置まできて、街の様子もあまり見えなくなってきました。黒い煙だけは見えますけれども、それだけですね。こんな事なら、あのトカゲを殺さなきゃ良かったです。

「嬢ちゃん。後ちょっとで帝国領だぜ」

 そんなちょっとした後悔を感じていたら、もうそろそろで帝国領だという知らせが。

 うおおおぉぉぉ!!! 初めての国! 王国からの開放!
 どんなものがあるのか、どんな人がいるのか、すっごく楽しみです! んふー! 

 ここからは、私も一緒に歩きましょう! なんと言っても、初めて国を出るんですからね! 記念日ですからね!

「ほいっ、と」

 ぴょんと地面に飛び降りて、そのまま歩き始めます。あ、ちなみにですけど、荷台を引いていても時速20ケームくらいはあるので、馬車から飛び降りるなんてしちゃダメですよ? すごく危険なので。
 私はほら、例外ってやつです。走った方がスピード出せるくらいなので、全然危なくないのです。

「おー? 嬢ちゃん、歩くのか?」
「はい! 初めて国を出るので! せっかくなら自分の足で歩きたいじゃないですか」
「分かるぜ嬢ちゃん! 俺も行商を始めた最初の頃は、わざわざ直近で馬車から降りてなぁ……。懐かしいぜ」

 おっ。どうやら、この商人さんも私と同じクチだったようです。やっぱり初めての経験は、それが何であっても自分の身で経験したいですよね!

 そんな風に上機嫌で歩いていると、ついに国境というものを超えました! これで私は晴れて、王国から脱出出来たことになります! わー……い……?

『シル! 君は下がれ!』
『今は危急時だ! 戦力は一人でも多い方がいいだろう!』
『『『『『フゴフゴフゴォォォ!!!!』』』』』

 喜んでいると、大分遠くから、魔物に襲われているであろう声が聞こえてきました。気が逸って、《音届》の魔法を前方に飛ばしていたんですよね。そしたら、引っかかった、的な。

 ブヒブヒ、フゴフゴといている声を聞くと、ブタさんが多いのかなぁ? と思います。ブタさんって結構美味しいんですよね。

 それはともかくとし、です。んー。助けるべきでしょうか? 非常に悩ましいですね。また絡まれたらメンドくさいですし。

「商人さん、商人さん」
「ん? どうした嬢ちゃん」
「はい。実は、この先数ケーム先でブタさんに襲われている人がいるみたいなんですけど、どうしますか?」
「……助けられるのか?」
「助けようと思えば、余裕かと」
「……なら、頼む」

 こうして私は、ブタさん討伐をすることに決めました。あ、その前に、

 バシン! ベチン! バチィーンッッッ!!!

「弟子。起きなさい。弟子。ほら弟子、起きろ」

 バッチーッン!!!

 私の平手が、炸裂した。


 ……気絶させられ、かと思えば平手で打たれる。本当に不憫で仕方がない。
 だが、彼女の名誉の為に念の為述べておくが、セレスティアさんは、弟子をイジメている訳では無い。これでも優しくしている方である。

 何分、彼女の基準というのは、王国のゲス畜生による奴隷調教最速れべるあっぷ術!にあるのだ。……失禁不可避のポーションを、無理やりがぶ飲みさせられる、というヤツである。

 ……優しい方なのである。
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