11 / 45
聖女さん、帝国へ行く
私、弟子をとります!
しおりを挟む全ての人の準備が終わり、積み荷も全て馬車に載せ終えました。
早速出発です!
今の私は、冒険者の方々と一緒に歩いています。馬車に揺られるのもいいですが、今は少年が寝ているので、私は歩きです。
ちなみに、服装はもう変えました。冒険者っぽい服はしまって、今は村娘のような格好をしています。
もう慣れてしまった門での検査を終え、街を出ました。
帝国領までは、最短距離を進んでも街二つ分あるそうです。森を突っ切れば四日くらいは短縮出来ますが、安定しませんし、何より危ないとのことで普通の道を行くことになりました。
本当は私がいるから問題ないんですけどね。まあ私も、ガタガタと揺れる道より、揺れの少ない道の方が楽でいいんですけどね。
ここから次の街までは、五時間くらい掛かるそうです。休憩も三十分程度で、着く頃には夜ですね。
ただこれはすんなりと進めた場合の話で、魔物が出てきたらその分遅れます。どうしても足を停めざるを得ないですからね。
今の王国では魔物の動きが活発化しているので、十分に有り得そうです。ただ、私は魔物と戦うのなんてメンドくさいことはしたくないので、事前に次の街までの道を作っておきました。結界を二つ並べて、壁みたいにしちゃう形です。これで無視できます。
私たちが無視した魔物は、王国の人たちが何とかしてくれるでしょう。押し付けたとか言われても困ります。本来は国のお仕事ですし、人望のない自分たちを恨んでくれ! としか言えません。ざまぁwwww
そんな訳で、私たちは今、のんびりのんびりと街道を歩いています。魔物に囲まれながら。
「ひっ……こっ、これ、マジで大丈夫かよ……」
「……ワタシハダイジョウブ……ダイジョウブ……」
魔物の顔って凶悪で怖いですもんね。しかもガオガオ言ってますし。結界も見えないようにしていますから、皆さんからしたら不安で仕方がないのかもしれませんね。
「あの、何度も言ってますけど、結界があるので大丈夫ですよ? 私たちが襲われることはないので」
そうやって教えてあげても、
「いやいやいや!? 結界があるとかないとかの問題じゃないんだよ!? ねえ分かる!? コレ! すっごい怖いの! 嬢ちゃんは大丈夫でも、俺たちはこんな魔物の大群に囲まれたことも、こんなに近くで見たこともないの!!!」
と、すごい剣幕で言い募ります。早口です。
「そう興奮しないでください」
「興奮もするわ!!! こんな状況で落ち着いていられるのは嬢ちゃんくらいなんだよ!」
真っ青だった顔が、今度は赤くなっています。顔色がお忙しいですね。
そうやって騒いでいると、馬車の荷台から呻き声が聞こえてきました。
「うぅ……ん……」
「目が覚めましたか?」
先程の少年は、まだ眠たいのか目を擦っています。頭も回っていないのでしょう。目を閉じかけながら、辺りを見回そうとしています。
「ここ……ぁ?」
「馬車の中ですよ」
「んぁ~?」
寝起き故に間延びのした声が、なんとも可愛らしいです。私に弟はいませんが、いたらきっと、こんな感じなのでしょう。
少年は、やっと私の方を見ました。その瞬間に目を見開いて、徐々に顔が赤くなっていきます。
きっと、寝顔を見られたのが恥ずかしかったのでしょう。孤児だったのに、変わった子ですね。まあ、変わっているから他人を助ける、なんて無茶をした訳ですしね。
「おはようございます。よく眠れましたか?」
「へぁっ、ぁっ……えと、あぅ……」
「そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ? 私は君のことを食べたりしませんから」
孤児にとっては、寝て起きたら目の前に知らない人が! という状況は思いつく限りでは最悪ですもんね。殴られる可能性もありますし。思わず身を硬くしてしまうのも分かります。
そこから何十分とかけて、ゆっくりゆっくり話していたら、ようやく私は安全な人だと理解してもらえたようです。
そして聞いてみると、やはりこの子も孤児だったようです。ただこの子は、捨てられたとか両親を亡くしたとかではなく、攫われたそうです。
運ばれている最中に、誘拐犯たちは魔物に食い殺され、逃げ延びたこの子は孤児になった、との事です。
ですがこの子の中では、もう整理が付いているようで、ちゃんと前を向いていました。
「今は、隣の街に向かって進んでいます。最後の目的地は帝国領です」
「そう、ですか……。分かりました。それで僕はどうなるでしょうか?」
「君が望むなら、私が育ててもいいですよ。君のご両親を探しながらの旅、って言うのも悪くないです」
どうせ私は、世界中を旅して回る予定でしたし、目的が一つ二つと増えるくらいは大した事じゃないのです。むしろ、目的が増えた方が楽しそうでいいです。
人数だって、一人より二人の方が楽しいでしょう。喋る相手は偉大です。
少年は何か考えた素振りを見せてから、私が強いかどうか訊ねて来ました。魔物に襲われたことがあると言っていましたから、きっと怖いのでしょう。
「安心してください。私はとても強いですからね!」
そうするとやはりホッと息を吐いて、胸をなで下ろしていました。
それから、
「あの、僕を弟子にしてください!」
そう言ってきました。
力は、少しでもあった方が有利になります。暴力というのは、強力な武器です。孤児ならば、それを嫌という程知っている。
「いいですよ。君のご両親が見つかるまで、私がお師匠様になってあげます」
「ありがとうございます!」
こうして私に、初めての弟子が出来ました。
ところで、弟子って何を教えれば良いのでしょうか? 実践……?
とりあえず、魔物の群れに突っ込ませてみますか。
今後の算段を付けながら、私は少年を眺めました。
57
あなたにおすすめの小説
勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?
猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」
「え?なんて?」
私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。
彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。
私が聖女であることが、どれほど重要なことか。
聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。
―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。
前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
聖女を怒らせたら・・・
朝山みどり
ファンタジー
ある国が聖樹を浄化して貰うために聖女を召喚した。仕事を終わらせれば帰れるならと聖女は浄化の旅に出た。浄化の旅は辛く、聖樹の浄化も大変だったが聖女は頑張った。聖女のそばでは王子も励ました。やがて二人はお互いに心惹かれるようになったが・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる