42 / 52
番外編
5話 桐谷真依の日常②
しおりを挟む
「山本賢人です。皆と仲良くできたら良いなと思っています」
山本賢人。私が思わず言葉を失ってしまう程に見とれてしまった彼は、そう名乗った。
私のこれまでの人生の中で、男性が目に写っても何の影響も無く、何も感じなかったが、
今に至っては、今まで感じたことが無い感覚と衝動に駆られている。
「席は、そうだな・・・
窓側の一番後ろの席を使ってくれ。桐谷、委員長だしお前が面倒を見てやってくれ」
(・・・!?いきなり私に話を回してこないでよ、先生!
私は今、彼のことで色々と頭がいっぱいになっている最中なのに!!)
そんな勝手な気持ちは置いといて、私は思っていたことを周りに悟られぬよう平常心を保ったまま、静かに席を立って委員長らしく挨拶した。
「はい、桐谷真依です。今日からよろしくね」
「・・・!こ、こちらこそよろしくお願いします」
(うわぁ、なんか綺麗な人だなぁ・・・)
(え!?嘘、マジ!?
もしかして私のこと見惚れちゃったりしている訳!?
乙女としてごっつい嬉しいねんけど!!)
独自の、あまりの嬉しさ(?)にもはや心の中の自分と、
今の自分との思考とギャップが釣り合わなくなってしまう程に錯乱してしまいそうだったが、それでも私は見ているクラスの皆に委員長としてあるまじき醜態(?)を見せる訳にもいかなく、思わず戸惑っている彼に笑顔を返すことで皆が抱く学級委員長の象徴、俗に呼ばれる「清楚」を貫き通した。
「転校生の紹介も終わったことだし、後は自習!
ただしチャイムが鳴るまでは教室に居ろよ!
次の授業は数学だ。授業で必要な物と課題を準備しておくように!」
◇◇◇◇
その日から、私たち1年B組の日常は一気に変わった。
何故なら・・・・・・
「賢人くん!LINEのID教えてー!」
「え?あぁ、良いよ」
「うちもお願ーい!」
「次は僕!」
「あたしらもよろしくー!」
「はいはい、分かった分かった!
順番でしてあげるから、そう慌てないで!」
午前中の授業が終わって昼休みに入った途端、男女を問わないクラスメイト達が連絡先とLINEを交換するよう山本くんに迫っていた。
それだけでなく、賢人くんの存在を嗅ぎ付けた学年を問わない生徒たちが1年B組に押し寄せていた。
こんなに人が集まって囲まれている賢人くんの姿はどこの人気アイドルグループのサイン会かつ握手会かと、軽い気持ちで思ってしまった。
何故賢人くんがこのような状況に晒されているかと言うと、無論一番最初に賢人くんと連絡先とLINEを交換した彼らのせいである。
「あーらら、あっという間に人気者になっちまってるよ」
「いや、それもこれもお前が大声で暴露したからだろ」
そう、そうやって賢人くんの姿を見て哀れんでいる(?)のを冷たい態度で反論しているという、夫婦漫才のような掛け合いをしている池崎くんと斎藤くんだ。
でも、そんな二人が山本くんをどうやってこのような状況に晒したのか言うと、賢人くんの挨拶も含めて自習になった1時間目が終わっめ休み時間に入ったあの後、
クラスメイト達よりも先に二人は山本くんに近づき早くも友達となると、知り合ったばかりの割には三人ともかなり盛り上がっていたかに見えた。
でも山本くんが何かを話した途端、池崎くんが大声で叫び、その話の内容を理解した普段は表情がほとんど変わらない斎藤くんも、少しだけ表情が変化して彼なりに驚いているのが窺えた。
そして三人が話を一通り終えたと思いきや、今度は池崎くんが私たちに向かってこう叫んだ。
「皆さん、注ー目ー!!
なんと賢人くんは、あのキング・オブ・クリエイトの最年少チャンピオンだそうでーす!!」
これを聞いた瞬間、様子を見ていた男女を問わないクラスメイト達が一斉に立ち上がり、山本くんに向かっていってあっという間に今見ている状況となった。
そのときは休み時間が少なく、一クラス分の人数だけで、チャイムが鳴ると皆はすぐに落ち着いて、いつも通りになるかに見えたけど、クラスメイトの誰かが情報を漏らしたのか、学校で一番休み時間が多い昼休みになった途端、他のクラスはおろか学年も違う先輩たちまでもが山本くん目当てで1年B組に集まってくる有り様だ。
ちなみにキング・オブ・クリエイトというのは、年に一度だけ開催される大会らしくうちのお母さんとお婆ちゃんがテレビで見るのを楽しみにしている程だ。
本当は大学生以上でないと出場は出来ないらしいが、二年に一度だけ、大学生以下の出場が認められている「特別枠」というものがあるらしい。
恐らく山本くんも、その枠を狙って出場したと皆思っていたけど、話を聞いてみたら実際には地元にいた頃、例の大会かつ大学生以下による出場の代表戦の開催日を偶然に知った部活の先輩から、山本くんになら是非にと勧められたとのこと。
当時、この話を聞かされて一番驚いたのは中学2年生にしてコンピュータ部のエースだった山本くん本人で最初は口うるさくて暑苦しい先輩に勧められる形での出場となったけど元々コンピュータが大好きで得意な山本くんにとっては紛れもなくもってこいの行事で過去の大会にも出場した名だたる(?)選手たちを出し抜き、見事優勝を勝ち取ったという。
そして『大会史上初の未成年での優勝』、『歴代最年少のチャンピオン』という称号も得た。
当時の私はお母さんとお婆ちゃんがいつも以上にテレビで盛り上がっていて「なんかまたテレビで生放送されているのを見ているんだな」という認識しか無かったけど目の前に居る山本くんこそが、そのときテレビに映っていたかの有名な人物だと思うと、思わず尊敬してしまう。
でも、私にとってそれだけではなく、彼を輝かせる(?)理由がもうひとつあった。
それはというと・・・・・
"彼はとてつもなく想像を絶する程に、可愛いかった"
山本賢人。私が思わず言葉を失ってしまう程に見とれてしまった彼は、そう名乗った。
私のこれまでの人生の中で、男性が目に写っても何の影響も無く、何も感じなかったが、
今に至っては、今まで感じたことが無い感覚と衝動に駆られている。
「席は、そうだな・・・
窓側の一番後ろの席を使ってくれ。桐谷、委員長だしお前が面倒を見てやってくれ」
(・・・!?いきなり私に話を回してこないでよ、先生!
私は今、彼のことで色々と頭がいっぱいになっている最中なのに!!)
そんな勝手な気持ちは置いといて、私は思っていたことを周りに悟られぬよう平常心を保ったまま、静かに席を立って委員長らしく挨拶した。
「はい、桐谷真依です。今日からよろしくね」
「・・・!こ、こちらこそよろしくお願いします」
(うわぁ、なんか綺麗な人だなぁ・・・)
(え!?嘘、マジ!?
もしかして私のこと見惚れちゃったりしている訳!?
乙女としてごっつい嬉しいねんけど!!)
独自の、あまりの嬉しさ(?)にもはや心の中の自分と、
今の自分との思考とギャップが釣り合わなくなってしまう程に錯乱してしまいそうだったが、それでも私は見ているクラスの皆に委員長としてあるまじき醜態(?)を見せる訳にもいかなく、思わず戸惑っている彼に笑顔を返すことで皆が抱く学級委員長の象徴、俗に呼ばれる「清楚」を貫き通した。
「転校生の紹介も終わったことだし、後は自習!
ただしチャイムが鳴るまでは教室に居ろよ!
次の授業は数学だ。授業で必要な物と課題を準備しておくように!」
◇◇◇◇
その日から、私たち1年B組の日常は一気に変わった。
何故なら・・・・・・
「賢人くん!LINEのID教えてー!」
「え?あぁ、良いよ」
「うちもお願ーい!」
「次は僕!」
「あたしらもよろしくー!」
「はいはい、分かった分かった!
順番でしてあげるから、そう慌てないで!」
午前中の授業が終わって昼休みに入った途端、男女を問わないクラスメイト達が連絡先とLINEを交換するよう山本くんに迫っていた。
それだけでなく、賢人くんの存在を嗅ぎ付けた学年を問わない生徒たちが1年B組に押し寄せていた。
こんなに人が集まって囲まれている賢人くんの姿はどこの人気アイドルグループのサイン会かつ握手会かと、軽い気持ちで思ってしまった。
何故賢人くんがこのような状況に晒されているかと言うと、無論一番最初に賢人くんと連絡先とLINEを交換した彼らのせいである。
「あーらら、あっという間に人気者になっちまってるよ」
「いや、それもこれもお前が大声で暴露したからだろ」
そう、そうやって賢人くんの姿を見て哀れんでいる(?)のを冷たい態度で反論しているという、夫婦漫才のような掛け合いをしている池崎くんと斎藤くんだ。
でも、そんな二人が山本くんをどうやってこのような状況に晒したのか言うと、賢人くんの挨拶も含めて自習になった1時間目が終わっめ休み時間に入ったあの後、
クラスメイト達よりも先に二人は山本くんに近づき早くも友達となると、知り合ったばかりの割には三人ともかなり盛り上がっていたかに見えた。
でも山本くんが何かを話した途端、池崎くんが大声で叫び、その話の内容を理解した普段は表情がほとんど変わらない斎藤くんも、少しだけ表情が変化して彼なりに驚いているのが窺えた。
そして三人が話を一通り終えたと思いきや、今度は池崎くんが私たちに向かってこう叫んだ。
「皆さん、注ー目ー!!
なんと賢人くんは、あのキング・オブ・クリエイトの最年少チャンピオンだそうでーす!!」
これを聞いた瞬間、様子を見ていた男女を問わないクラスメイト達が一斉に立ち上がり、山本くんに向かっていってあっという間に今見ている状況となった。
そのときは休み時間が少なく、一クラス分の人数だけで、チャイムが鳴ると皆はすぐに落ち着いて、いつも通りになるかに見えたけど、クラスメイトの誰かが情報を漏らしたのか、学校で一番休み時間が多い昼休みになった途端、他のクラスはおろか学年も違う先輩たちまでもが山本くん目当てで1年B組に集まってくる有り様だ。
ちなみにキング・オブ・クリエイトというのは、年に一度だけ開催される大会らしくうちのお母さんとお婆ちゃんがテレビで見るのを楽しみにしている程だ。
本当は大学生以上でないと出場は出来ないらしいが、二年に一度だけ、大学生以下の出場が認められている「特別枠」というものがあるらしい。
恐らく山本くんも、その枠を狙って出場したと皆思っていたけど、話を聞いてみたら実際には地元にいた頃、例の大会かつ大学生以下による出場の代表戦の開催日を偶然に知った部活の先輩から、山本くんになら是非にと勧められたとのこと。
当時、この話を聞かされて一番驚いたのは中学2年生にしてコンピュータ部のエースだった山本くん本人で最初は口うるさくて暑苦しい先輩に勧められる形での出場となったけど元々コンピュータが大好きで得意な山本くんにとっては紛れもなくもってこいの行事で過去の大会にも出場した名だたる(?)選手たちを出し抜き、見事優勝を勝ち取ったという。
そして『大会史上初の未成年での優勝』、『歴代最年少のチャンピオン』という称号も得た。
当時の私はお母さんとお婆ちゃんがいつも以上にテレビで盛り上がっていて「なんかまたテレビで生放送されているのを見ているんだな」という認識しか無かったけど目の前に居る山本くんこそが、そのときテレビに映っていたかの有名な人物だと思うと、思わず尊敬してしまう。
でも、私にとってそれだけではなく、彼を輝かせる(?)理由がもうひとつあった。
それはというと・・・・・
"彼はとてつもなく想像を絶する程に、可愛いかった"
0
お気に入りに追加
63
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
「南風の頃に」~ノダケンとその仲間達~
kitamitio
青春
合格するはずのなかった札幌の超難関高に入学してしまった野球少年の野田賢治は、野球部員たちの執拗な勧誘を逃れ陸上部に入部する。北海道の海沿いの田舎町で育った彼は仲間たちの優秀さに引け目を感じる生活を送っていたが、長年続けて来た野球との違いに戸惑いながらも陸上競技にのめりこんでいく。「自主自律」を校訓とする私服の学校に敢えて詰襟の学生服を着ていくことで自分自身の存在を主張しようとしていた野田賢治。それでも新しい仲間が広がっていく中で少しずつ変わっていくものがあった。そして、隠していた野田賢治自身の過去について少しずつ知らされていく……。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた
久野真一
青春
最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、
幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。
堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。
猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。
百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。
そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。
男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。
とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。
そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から
「修二は私と恋人になりたい?」
なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。
百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。
「なれたらいいと思ってる」
少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。
食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。
恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。
そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。
夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと
新婚生活も満喫中。
これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、
新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。
四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……?
どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、
「私と同棲してください!」
「要求が増えてますよ!」
意味のわからない同棲宣言をされてしまう。
とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。
中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。
無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる