僕は冷徹な先輩に告白された

隻瞳

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番外編

5話 桐谷真依の日常②

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山本賢人やまもとけんとです。皆と仲良くできたら良いなと思っています」

 山本賢人やまもとけんと。私が思わず言葉を失ってしまう程に見とれてしまった彼は、そう名乗った。
私のこれまでの人生の中で、男性が目に写っても何の影響も無く、何も感じなかったが、
今に至っては、今まで感じたことが無い感覚と衝動に駆られている。 

「席は、そうだな・・・
窓側の一番後ろの席を使ってくれ。桐谷、委員長だしお前が面倒を見てやってくれ」

(・・・!?いきなり私に話を回してこないでよ、先生!
私は今、のことで色々と頭がいっぱいになっている最中なのに!!)

そんな勝手な気持ちは置いといて、私は思っていたことを周りに悟られぬよう平常心を保ったまま、静かに席を立って委員長らしく挨拶した。

「はい、桐谷真依きりたにまいです。今日からよろしくね」

「・・・!こ、こちらこそよろしくお願いします」

(うわぁ、なんか綺麗な人だなぁ・・・)

(え!?嘘、マジ!?
もしかして私のこと見惚れちゃったりしている訳!?
乙女としてごっつい嬉しいねんけど!!)

 独自の、あまりの嬉しさ(?)にもはや心の中の自分と、
今の自分との思考とギャップが釣り合わなくなってしまう程に錯乱してしまいそうだったが、それでも私は見ているクラスの皆に委員長としてあるまじき醜態(?)を見せる訳にもいかなく、思わず戸惑っている彼に笑顔を返すことで皆が抱く学級委員長の象徴、俗に呼ばれる「清楚」を貫き通した。

「転校生の紹介も終わったことだし、後は自習!
ただしチャイムが鳴るまでは教室に居ろよ!
次の授業は数学だ。授業で必要な物と課題を準備しておくように!」


◇◇◇◇


その日から、私たち1年B組の日常は一気に変わった。
何故なら・・・・・・

「賢人くん!LINEのID教えてー!」

「え?あぁ、良いよ」

「うちもお願ーい!」

「次は僕!」

「あたしらもよろしくー!」

「はいはい、分かった分かった!
順番でしてあげるから、そう慌てないで!」

午前中の授業が終わって昼休みに入った途端、男女を問わないクラスメイト達が連絡先とLINEを交換するよう山本くんに迫っていた。
それだけでなく、賢人くんの存在を嗅ぎ付けた学年を問わない生徒たちが1年B組に押し寄せていた。
こんなに人が集まって囲まれている賢人くんの姿はどこの人気アイドルグループのサイン会かつ握手会かと、軽い気持ちで思ってしまった。

何故賢人くんがこのような状況に晒されているかと言うと、無論一番最初に賢人くんと連絡先とLINEを交換した彼ら・・のせいである。

「あーらら、あっという間に人気者になっちまってるよ」

「いや、それもこれもお前が大声で暴露したからだろ」

そう、そうやって賢人くんの姿を見て哀れんでいる(?)のを冷たい態度で反論しているという、夫婦漫才のような掛け合いをしている池崎くんと斎藤くんだ。

でも、そんな二人が山本くんをどうやってこのような状況に晒したのか言うと、賢人くんの挨拶も含めて自習になった1時間目が終わっめ休み時間に入ったあの後、
クラスメイト達よりも先に二人は山本くんに近づき早くも友達となると、知り合ったばかりの割には三人ともかなり盛り上がっていたかに見えた。
でも山本くんが何か・・を話した途端、池崎くんが大声で叫び、その話の内容を理解した普段は表情がほとんど変わらない斎藤くんも、少しだけ表情が変化して彼なりに驚いているのが窺えた。

 そして三人が話を一通り終えたと思いきや、今度は池崎くんが私たちに向かってこう叫んだ。

「皆さん、注ー目ー!!
なんと賢人くんは、あのキング・オブ・クリエイトの最年少チャンピオン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だそうでーす!!」

 これを聞いた瞬間、様子を見ていた男女を問わないクラスメイト達が一斉に立ち上がり、山本くんに向かっていってあっという間に今見ている状況となった。
そのときは休み時間が少なく、ひとクラス分の人数だけで、チャイムが鳴ると皆はすぐに落ち着いて、いつも通りになるかに見えたけど、クラスメイトの誰かが情報を漏らしたのか、学校で一番休み時間が多い昼休みになった途端、他のクラスはおろか学年も違う先輩たちまでもが山本くん目当てで1年B組に集まってくる有り様だ。

ちなみにキング・オブ・クリエイトというのは、年に一度だけ開催される大会らしくうちのお母さんとお婆ちゃんがテレビで見るのを楽しみにしている程だ。
本当は大学生以上でないと出場は出来ないらしいが、二年に一度だけ、大学生以下の出場が認められている「特別枠」というものがあるらしい。

恐らく山本くんも、その枠を狙って出場したと皆思っていたけど、話を聞いてみたら実際には地元大阪にいた頃、例の大会・・・・かつ大学生以下による出場の代表戦の開催日を偶然に知った部活の先輩から、山本くんになら是非にと勧められたとのこと。



当時、この話を聞かされて一番驚いたのは中学2年生にしてコンピュータ部のエースだった山本くん本人で最初は口うるさくて暑苦しい先輩に勧められる形での出場となったけど元々コンピュータが大好きで得意な山本くんにとっては紛れもなくもってこいの行事イベントで過去の大会にも出場した名だたる(?)選手たちを出し抜き、見事優勝を勝ち取ったという。
そして『大会史上初の未成年での優勝』、『歴代最年少のチャンピオン』という称号も得た。

当時の私はお母さんとお婆ちゃんがいつも以上にテレビで盛り上がっていて「なんかまたテレビで生放送されているのを見ているんだな」という認識しか無かったけど目の前に居る山本くんこそが、そのときテレビに映っていたかの有名な人物だと思うと、思わず尊敬してしまう。

でも、私にとってそれだけではなく、彼を輝かせる(?)理由がもうひとつあった。
それはというと・・・・・


















"彼はとてつもなく想像を絶する程に、可愛いかった"
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