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番外編
4話 桐谷真依の日常
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「行ってきまーす」
「はーい行ってらっしゃい!」
朝7時に目を覚まし、朝ごはんを済ませた後歯磨きして寝癖だらけの髪を整えると、パジャマから学校指定の女子の制服に着替えた。
そして母に見送られるまま家を出た。
「さてと、今日も元気にいきましょうか!」
私の名前は桐谷真依、16歳。
ここ東京都で生まれ育ち母と祖母と暮らしている、いわゆる都会系のごく普通の女子高生。
父は海外に出張でおらず、祖父は一昨年に亡くなっている。
言わば幼稚園に入るまで私が育った環境の中には男性は少なく、小さい頃は男性との付き合い方や知識が疎い。
それでも二人はそれぞれの主人が居ない分私を一生懸命育ててくれたし、父もまた疎遠ながらも幼かった私に出来る限りの愛情を注いでくれた事もあって、決して家族全体が不仲という事は無かった。
お祖父ちゃんもきっと天国から優しく見守ってくれているに違いない。
「おはよう、真依!」
「おはよう」
私は地元の私立高校に通っていて、1年B組で学級委員長を務めている。
・・・とは言ったものの、当然ながら正確には学級委員長になって1ヶ月しか経っておらず、クラスメイトから頼られる事はあっても委員長としてやるべき仕事はまだ成し遂げてもいなければ、課せられてもいない。
いずれにしろ学級委員長として体育祭や文化祭など、毎年恒例の行事の打ち合わせや準備に携わる事になる。
それまでは普通にクラスメイトと一緒に学校生活を送ってもいいと思う。
「ねぇ、聞いた聞いた?今日うちのクラスに転校生が来るんだって!」
「あ!それ知ってる!」
へぇ、それは私にとっては初耳だ。
てか皆、なんで私には事前にこの話をしてくれなかった訳!?
・・・まぁその気持ちはさておき、私が聞いている事にも気づかない女子達は話を続けた。
「確か男子だったっけ?」
「「え~マジで~!?」」
「イケメンだったら良いなー」
「だよね~・・・」
男子、か・・・・・・
さっき言った通り、こう見えても私は育った環境では男性は少ない。
それ故に男性との付き合い方が分からず、コミュニケーションを取ることが苦手だ。
今ではクラスの男子から声を掛けられて、会話する程度のコミュニケーションは取れているけれど、それはあくまで話し掛けられたからそれ相応の対応をしているだけで、本当は私から見た男子達は無関心の対象に過ぎない。
悪く言えば好きでも嫌いでもなく、あまり興味が無いし湧かない。
ガラッ!
「はいはい皆、席に着け!授業を始めるぞー!」
教室のドアが勢いよく開いたと思いきや、我等が1年B組の担任、竹内 翔先生が入ってきた。
確か今日の1時間目は、国語で原西健児先生が来るはずだが一体どうしたのだろうか?
私も含めて1年B組の生徒全員が不思議そうな顔をして先生を見ていたが、そんな状況を打破するかのように一人の女子生徒が質問した。
「先生、1時間は国語でしょ?今日はどうしたの?」
「あーそのことなんだがな、原西先生は出張で急遽来られなくなってな・・・代わりに俺が授業することになった」
「「「えぇ~」」」
「先生、それは無いわ~」
「先生、僕は別に文句を言うつもりはありませんが、国語が無くなるのは全く持って納得いきません」
竹内先生が言い終わった瞬間、クラスメイトほぼ全員が心底嫌そうな顔をして声を揃えた。
更にクラスで一番仲が良い(?)コンビ、池崎くんと斎藤くんが追い打ちを掛けた。
しかし、そんな状況を打破するように、竹内先生は続けて言った。
「まぁまぁ、そんな嫌そうに受け止めるな。
今日はお前達、1年B組にとって良いニュースを持ってきたんだから」
「良いニュース?」
「えーなになにー?」
「先生、うちのクラスに転校生が来るんでしょー?」
「おやおや、もう情報が流れていたとは・・・
誰だ~先生の話を盗み聞きしてクラス全員に流したのは~?
・・・まぁいい、皆に説明することも無くなったし、挨拶と同時に歓迎しようとするか。
おーい、もう入ってきていいぞー!」
ガラッ!
前に竹内先生が呼ばれるまでは教室前の廊下で待っているようにと言われたのであろう廊下で待っていたと思われる転校生が、先生の呼ぶ声に反応して静かに教室のドアを開き、教室に入ってきた。
「・・・」
光に照らされる赤が入った茶色のサラサラとしたショートヘアー。
まるで色褪せないことが無いエメラルドのように光が宿った、碧色の大きな目。
艶があって、触り心地の良さそうな肌と頬。
男性的にごつごつとしておらず、むしろ女性的でしなやかな手。
その容姿や顔立ちから言えば『イケメン』と言うよりも『中性的』と言った方が相応しいと思える程、全てが整えられていた。
怜人や伸之、そして真依を含む1年B組の生徒全員から注目を浴び、
ある意味四方八方から晒される視線を全く気にせず、教壇に向かって歩くその姿はまるでステージの上を歩くモデルのようだった。
ただ、それらの利点はとりあえず置いておいて、クラス全員は彼の別の部分に目を奪われた。
((((小っさ!!))))
そう、彼等の目に映る彼はその外見とは裏腹に、今時の男子にしてはあまりにも身長が低く、パッと見で推定するなら160cmあるいはそれ以下に思える。
しかし驚きはしたものの、真依が目を奪われているのはそんなことではない。
「あ・・・あ・・・」
恐らく真依から見てみると、皆から注目を浴びている彼はクラスメイト達が想像している以上に輝かしい(?)ものに見えているらしい。
「はーい行ってらっしゃい!」
朝7時に目を覚まし、朝ごはんを済ませた後歯磨きして寝癖だらけの髪を整えると、パジャマから学校指定の女子の制服に着替えた。
そして母に見送られるまま家を出た。
「さてと、今日も元気にいきましょうか!」
私の名前は桐谷真依、16歳。
ここ東京都で生まれ育ち母と祖母と暮らしている、いわゆる都会系のごく普通の女子高生。
父は海外に出張でおらず、祖父は一昨年に亡くなっている。
言わば幼稚園に入るまで私が育った環境の中には男性は少なく、小さい頃は男性との付き合い方や知識が疎い。
それでも二人はそれぞれの主人が居ない分私を一生懸命育ててくれたし、父もまた疎遠ながらも幼かった私に出来る限りの愛情を注いでくれた事もあって、決して家族全体が不仲という事は無かった。
お祖父ちゃんもきっと天国から優しく見守ってくれているに違いない。
「おはよう、真依!」
「おはよう」
私は地元の私立高校に通っていて、1年B組で学級委員長を務めている。
・・・とは言ったものの、当然ながら正確には学級委員長になって1ヶ月しか経っておらず、クラスメイトから頼られる事はあっても委員長としてやるべき仕事はまだ成し遂げてもいなければ、課せられてもいない。
いずれにしろ学級委員長として体育祭や文化祭など、毎年恒例の行事の打ち合わせや準備に携わる事になる。
それまでは普通にクラスメイトと一緒に学校生活を送ってもいいと思う。
「ねぇ、聞いた聞いた?今日うちのクラスに転校生が来るんだって!」
「あ!それ知ってる!」
へぇ、それは私にとっては初耳だ。
てか皆、なんで私には事前にこの話をしてくれなかった訳!?
・・・まぁその気持ちはさておき、私が聞いている事にも気づかない女子達は話を続けた。
「確か男子だったっけ?」
「「え~マジで~!?」」
「イケメンだったら良いなー」
「だよね~・・・」
男子、か・・・・・・
さっき言った通り、こう見えても私は育った環境では男性は少ない。
それ故に男性との付き合い方が分からず、コミュニケーションを取ることが苦手だ。
今ではクラスの男子から声を掛けられて、会話する程度のコミュニケーションは取れているけれど、それはあくまで話し掛けられたからそれ相応の対応をしているだけで、本当は私から見た男子達は無関心の対象に過ぎない。
悪く言えば好きでも嫌いでもなく、あまり興味が無いし湧かない。
ガラッ!
「はいはい皆、席に着け!授業を始めるぞー!」
教室のドアが勢いよく開いたと思いきや、我等が1年B組の担任、竹内 翔先生が入ってきた。
確か今日の1時間目は、国語で原西健児先生が来るはずだが一体どうしたのだろうか?
私も含めて1年B組の生徒全員が不思議そうな顔をして先生を見ていたが、そんな状況を打破するかのように一人の女子生徒が質問した。
「先生、1時間は国語でしょ?今日はどうしたの?」
「あーそのことなんだがな、原西先生は出張で急遽来られなくなってな・・・代わりに俺が授業することになった」
「「「えぇ~」」」
「先生、それは無いわ~」
「先生、僕は別に文句を言うつもりはありませんが、国語が無くなるのは全く持って納得いきません」
竹内先生が言い終わった瞬間、クラスメイトほぼ全員が心底嫌そうな顔をして声を揃えた。
更にクラスで一番仲が良い(?)コンビ、池崎くんと斎藤くんが追い打ちを掛けた。
しかし、そんな状況を打破するように、竹内先生は続けて言った。
「まぁまぁ、そんな嫌そうに受け止めるな。
今日はお前達、1年B組にとって良いニュースを持ってきたんだから」
「良いニュース?」
「えーなになにー?」
「先生、うちのクラスに転校生が来るんでしょー?」
「おやおや、もう情報が流れていたとは・・・
誰だ~先生の話を盗み聞きしてクラス全員に流したのは~?
・・・まぁいい、皆に説明することも無くなったし、挨拶と同時に歓迎しようとするか。
おーい、もう入ってきていいぞー!」
ガラッ!
前に竹内先生が呼ばれるまでは教室前の廊下で待っているようにと言われたのであろう廊下で待っていたと思われる転校生が、先生の呼ぶ声に反応して静かに教室のドアを開き、教室に入ってきた。
「・・・」
光に照らされる赤が入った茶色のサラサラとしたショートヘアー。
まるで色褪せないことが無いエメラルドのように光が宿った、碧色の大きな目。
艶があって、触り心地の良さそうな肌と頬。
男性的にごつごつとしておらず、むしろ女性的でしなやかな手。
その容姿や顔立ちから言えば『イケメン』と言うよりも『中性的』と言った方が相応しいと思える程、全てが整えられていた。
怜人や伸之、そして真依を含む1年B組の生徒全員から注目を浴び、
ある意味四方八方から晒される視線を全く気にせず、教壇に向かって歩くその姿はまるでステージの上を歩くモデルのようだった。
ただ、それらの利点はとりあえず置いておいて、クラス全員は彼の別の部分に目を奪われた。
((((小っさ!!))))
そう、彼等の目に映る彼はその外見とは裏腹に、今時の男子にしてはあまりにも身長が低く、パッと見で推定するなら160cmあるいはそれ以下に思える。
しかし驚きはしたものの、真依が目を奪われているのはそんなことではない。
「あ・・・あ・・・」
恐らく真依から見てみると、皆から注目を浴びている彼はクラスメイト達が想像している以上に輝かしい(?)ものに見えているらしい。
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