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18話 親友の戯れ×追跡
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「ふぅ、今日は暑いな~・・・」
「怜人、そのセリフは今日を含めて何度目だ?」
「しょうがねえだろ!暑いもんは暑いんだからさ!」
まるでどこかのお笑いコンビのような掛け合いをしながら、通学路を歩いているのは、一年B組で仲良し(?)コンビでお馴染みの池崎怜人と斎藤信之だ。
怜人の言う通りこの頃は本格的に夏になったのか、日中の気温は30℃は余裕で超えている。
当然ながらここ最近、長袖又は分厚い服で外を出歩いている人は一人も見かけなくなった。
今日はテスト期間に入った為、先週とは違って昼過ぎで学校が終わることになっているので今はその帰り道の途中だ。
本当なら賢人も一緒に帰るつもりだったが、生憎今日は日直だった為、二人で帰っているという訳だ。
「あーあ、期末テストまであと一週間か~・・・」
「そうだな、今のうちに出来るだけテスト範囲を復習しておかないとな」
「うわ、ダルいわー・・・」
「お前ならそう言うと思っていたぞ、怜人」
伸之がテスト期間ギリギリになってでも、テスト勉強に励もうと言っているのに怜人は相変わらずめちゃくちゃ嫌そうな顔をして、弱音を吐いた。
そんな怜人を憐れむ、そして情けなく思うような言葉でツッコミを入れた。
怜人がその場の空気とは全く関係ない天然または空気を乱すような不謹慎な発言をして、その直後に伸之が毒舌の如く冷たい言葉と同時にツッコミを入れる。
この掛け合いが同級生の間で良く知られている『漫才』とも言っていいぐらいの、皆から見た二人の普段の触れ合いだ。
「そんな厳しい発言しないでくれよ、斎藤さん」
「フン、俺はただお前にふさわしい言葉をかけてやっただけだ」
「それが厳しい発言だって言ってんだよ!」
「・・・それはそうと、この頃の賢人と里奈先輩のことなんだが・・・」
「あぁ、あの二人か?・・・って俺の話は無視!?」
色々言われたい放題で傷付いた、という意味を込めたツッコミを入れる怜人だったが、それをあっさりあしらうかのように伸之は突然話の方向を切り替えた。
流石の怜人も完全に話を無視されている事に落ち込みながらも、伸之が切り出した賢人と里奈についての話についていく事にした。
「それで?賢人と里奈先輩がどうかしたのかよ?」
「あぁ、そのことなんだがな・・・少し気になることがあってな」
「気になること?」
「あぁ、ここ最近あの二人・・・前より比べて距離が縮まっている気がするんだ」
「・・・・・・はぁ?」
伸之の思いも寄らない発言に怜人はしばらく沈黙してしまい、この後伸之にどう返事したら良いのか分からず思わずポカンとした表情と言葉で返してしまった。
しかし、伸之はそんな事気にせず話を続けた。
「この前の勉強会が終わって以来、二人が一緒にいる時間を増えている」
「そういえば、賢人と一緒に教室に居る時、電話してることが多くなった気が・・・
しかも会話からして、やけに電話の相手と仲が良さそうだったし・・・ていうかお前、良くそんなことに気づいたな」
「毎日一緒に過ごしながら様子を見てみれば、すぐ分かることさ」
「そういうもんなのかねぇ?」
「ま、能天気なお前とは違って、俺は普段から周りを良くみているからな」
「なっ!能天気ってお前n・・・」
「!」
「おい、どこ行くんだ!?
「良いからついてこい!」
またしても伸之が怜人に毒づき、続いて怜人が反論しようとしたが、伸之は何かに気づき突然走り出した。
怜人が質問しても伸之はそれどころではないと言いたいのか聞いてくれず、仕方なく怜人は後を追う事にした。
◇◇◇◇
「ハァ、ハァ、ハァ・・・・・・」
「ハァ、ハァ・・・斎藤さん、どうしたんだよ急に走り出して・・・」
怜人が伸之の後を追い掛けて、二人は元に居た場所から走って、
ちょうど広い公園の中心にある噴水の手前にできた茂みの中に身を潜め、ようやく話を聞ける状況になったところで、怜人は息切れしながら質問した。
「あぁ・・・あれを見てみろ」
「?」
言われるまま怜人は伸之が指差す先を見てみると、身長差がやや激しい二人の男女が噴水前のベンチに座っているのが目に入った。
互いの距離が近くて仲良く会話するその姿はなんとも微笑ましかった。
一見すると姉弟だと思いがちだが、姉弟にしては距離が近過ぎる上、今どきどこぞのエロ漫画やアダルトアニメで見る、秘密の関係を持った姉弟という訳は無く、ただ身長差があるだけのカップルと二人は言いたいところだったが・・・
「なぁ、あの二人ってもしかして・・・」
「あぁ、間違いない。賢人と里奈先輩だ」
「二人の話をしてたら、ちょうど本人たちがそこに現れるなんて・・・」
「タイミングが良過ぎるというか、偶然過ぎるというか、何というか・・・」
怜人と伸之が再び独自の余談(?)を出し合って会話しながら、
二人の友人に見られているのにも関わらず、仲良く会話している賢人と里奈の様子をなおも茂みの中から窺っていると・・・
「こんなところで何しているの?二人とも」
「「!?」」
突然後ろから聞き慣れた声で呼ばれた二人は驚くあまり、思わず腰が抜けそうになったが、なんとか立て直して改めて声の主が居る後方に振り向くと、そこにいたは・・・
「「き、桐谷!?なんでお前(君)が!?」」
そう、そこには我らが1年B組の学級委員長の桐谷真依が両手を組んで不思議そうなのと同時に、少々ご機嫌斜めな表情で二人を見下ろす形で立っていた。
「怜人、そのセリフは今日を含めて何度目だ?」
「しょうがねえだろ!暑いもんは暑いんだからさ!」
まるでどこかのお笑いコンビのような掛け合いをしながら、通学路を歩いているのは、一年B組で仲良し(?)コンビでお馴染みの池崎怜人と斎藤信之だ。
怜人の言う通りこの頃は本格的に夏になったのか、日中の気温は30℃は余裕で超えている。
当然ながらここ最近、長袖又は分厚い服で外を出歩いている人は一人も見かけなくなった。
今日はテスト期間に入った為、先週とは違って昼過ぎで学校が終わることになっているので今はその帰り道の途中だ。
本当なら賢人も一緒に帰るつもりだったが、生憎今日は日直だった為、二人で帰っているという訳だ。
「あーあ、期末テストまであと一週間か~・・・」
「そうだな、今のうちに出来るだけテスト範囲を復習しておかないとな」
「うわ、ダルいわー・・・」
「お前ならそう言うと思っていたぞ、怜人」
伸之がテスト期間ギリギリになってでも、テスト勉強に励もうと言っているのに怜人は相変わらずめちゃくちゃ嫌そうな顔をして、弱音を吐いた。
そんな怜人を憐れむ、そして情けなく思うような言葉でツッコミを入れた。
怜人がその場の空気とは全く関係ない天然または空気を乱すような不謹慎な発言をして、その直後に伸之が毒舌の如く冷たい言葉と同時にツッコミを入れる。
この掛け合いが同級生の間で良く知られている『漫才』とも言っていいぐらいの、皆から見た二人の普段の触れ合いだ。
「そんな厳しい発言しないでくれよ、斎藤さん」
「フン、俺はただお前にふさわしい言葉をかけてやっただけだ」
「それが厳しい発言だって言ってんだよ!」
「・・・それはそうと、この頃の賢人と里奈先輩のことなんだが・・・」
「あぁ、あの二人か?・・・って俺の話は無視!?」
色々言われたい放題で傷付いた、という意味を込めたツッコミを入れる怜人だったが、それをあっさりあしらうかのように伸之は突然話の方向を切り替えた。
流石の怜人も完全に話を無視されている事に落ち込みながらも、伸之が切り出した賢人と里奈についての話についていく事にした。
「それで?賢人と里奈先輩がどうかしたのかよ?」
「あぁ、そのことなんだがな・・・少し気になることがあってな」
「気になること?」
「あぁ、ここ最近あの二人・・・前より比べて距離が縮まっている気がするんだ」
「・・・・・・はぁ?」
伸之の思いも寄らない発言に怜人はしばらく沈黙してしまい、この後伸之にどう返事したら良いのか分からず思わずポカンとした表情と言葉で返してしまった。
しかし、伸之はそんな事気にせず話を続けた。
「この前の勉強会が終わって以来、二人が一緒にいる時間を増えている」
「そういえば、賢人と一緒に教室に居る時、電話してることが多くなった気が・・・
しかも会話からして、やけに電話の相手と仲が良さそうだったし・・・ていうかお前、良くそんなことに気づいたな」
「毎日一緒に過ごしながら様子を見てみれば、すぐ分かることさ」
「そういうもんなのかねぇ?」
「ま、能天気なお前とは違って、俺は普段から周りを良くみているからな」
「なっ!能天気ってお前n・・・」
「!」
「おい、どこ行くんだ!?
「良いからついてこい!」
またしても伸之が怜人に毒づき、続いて怜人が反論しようとしたが、伸之は何かに気づき突然走り出した。
怜人が質問しても伸之はそれどころではないと言いたいのか聞いてくれず、仕方なく怜人は後を追う事にした。
◇◇◇◇
「ハァ、ハァ、ハァ・・・・・・」
「ハァ、ハァ・・・斎藤さん、どうしたんだよ急に走り出して・・・」
怜人が伸之の後を追い掛けて、二人は元に居た場所から走って、
ちょうど広い公園の中心にある噴水の手前にできた茂みの中に身を潜め、ようやく話を聞ける状況になったところで、怜人は息切れしながら質問した。
「あぁ・・・あれを見てみろ」
「?」
言われるまま怜人は伸之が指差す先を見てみると、身長差がやや激しい二人の男女が噴水前のベンチに座っているのが目に入った。
互いの距離が近くて仲良く会話するその姿はなんとも微笑ましかった。
一見すると姉弟だと思いがちだが、姉弟にしては距離が近過ぎる上、今どきどこぞのエロ漫画やアダルトアニメで見る、秘密の関係を持った姉弟という訳は無く、ただ身長差があるだけのカップルと二人は言いたいところだったが・・・
「なぁ、あの二人ってもしかして・・・」
「あぁ、間違いない。賢人と里奈先輩だ」
「二人の話をしてたら、ちょうど本人たちがそこに現れるなんて・・・」
「タイミングが良過ぎるというか、偶然過ぎるというか、何というか・・・」
怜人と伸之が再び独自の余談(?)を出し合って会話しながら、
二人の友人に見られているのにも関わらず、仲良く会話している賢人と里奈の様子をなおも茂みの中から窺っていると・・・
「こんなところで何しているの?二人とも」
「「!?」」
突然後ろから聞き慣れた声で呼ばれた二人は驚くあまり、思わず腰が抜けそうになったが、なんとか立て直して改めて声の主が居る後方に振り向くと、そこにいたは・・・
「「き、桐谷!?なんでお前(君)が!?」」
そう、そこには我らが1年B組の学級委員長の桐谷真依が両手を組んで不思議そうなのと同時に、少々ご機嫌斜めな表情で二人を見下ろす形で立っていた。
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