僕は冷徹な先輩に告白された

隻瞳

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13話 親交×衣替え

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時は変わって放課後。
 
 賢人と里奈は、ひょんなことから二人の秘密を知った賢人のクラスメートにして友人の怜人と伸之、
そして昼休みの後、自分以外にこの事実を知った者が現れたことを
里奈から聞いた風紀委員長の莉央の三人を合わせて、
合計5人で中央の中庭で集まっていた。

「成る程なぁ、賢人と里奈先輩が恋人同士だったなんてなぁ・・・」

「そうなんだよ、俺も初めて聞いた時には、驚き過ぎて腰抜けちまうかと思ったよ」


「「大げさだよ(ぞ)!!」」


「いやいや、これが驚かずにいられるかよ?
なんたって、この学校で男子からも女子からもモテていてる、
そして大の男嫌い有名な『冷徹姫』こと石見里奈先輩と・・・」

 怜人が言っている事はある意味、正論に近かった。
更に怜人から会話のバトンタッチを受けて、今度は伸之が口を動かし、
怜人が言っていた真実・・を続けて言った。

「高校に進学して僅か1ヶ月でうちのクラス転向してきたかと思えば、
あのキング・オブ・クリエイトを歴代最年少で優勝を勝ち取った山本賢人の二人が知らないところで、
まさかのカップル成立してたとはなぁ・・・」

 いつもは冷静な伸之も怜人に続く形で、感心かつ僅かな動揺が籠った気持ちで言った。
まるで練習していたかの様に息の合った行動に、それを見ていた後の3人は感心と呆れといった、
二つの気持ちがない交ぜになった顔をしていた。

「・・・第一、たまたま聞いちまったことだから仕方無かったものの、
自分に彼女が出来たんでよろしく、ってなんで早く俺たちに言ってくれなかったんだよ?」

「そうだぞ賢人、俺たちのことを信用してくれてたんじゃなかったのか?」

 怜人と伸之は、まるで報告しておくのが当たり前であるような言い方で、
何故自身たちには報告してくれなかったのか、賢人に聞いた。

すると賢人は、呆れた様子でこう答えた。

「二人のことは信用はしているけれど、僕は自分の都合が悪くなることが嫌いだし、
大体二人に話したところですぐに皆にバラすと思ったから!」

「だから俺は口は堅い方・・・・・だって言ったじゃねぇか!」

開き直った(?)かと思いきや自慢そうにして喋る怜人に、賢人は更に強い突っ込みを入れながら、正論付けた。

「そう言っておいて、すぐに斎藤さんに話したじゃん!!」

「いやぁ、距離が近い友人にはつい話しちまうだよなぁ・・・」


「「それじゃあ口が固いとは言わないじゃないか(の)!!」」


「まあまあとりあえず、その話題はおいといて、3人は自己紹介がまだだったね?
私は綾波莉央。この学校の風紀委員長で、里奈とは入学式の時からの仲だよ!
その背の低い子が賢人くんだよね?里奈がお世話になってます」

「あぁはい、どうも・・・」

 黒髪のロングヘアーに黒い眼鏡をかけていることからクールな印象の里奈とは対称的に、
同じ黒髪でもポニーテールに纏め、赤い眼鏡をかけた莉央に笑顔で身長のことを言われて少しムッとなったが、
賢人は彼女の友達から挨拶されて照れているのか、わざと引っ込み思案な態度で答えた。

「どうも初めまして、俺は池崎怜人。
賢人とは同じクラスメートで、いつも仲良くさせてもらってます!」

「同じくクラスメートの斎藤伸之です。皆からは斎藤さんって呼ばれてます」

 二人は普段から風紀委員長であろう人物と関わることがないため、
笑顔で挨拶されるのに戸惑いが感じられたが、
怜人は元気よく、伸之はいつも通り冷静かつ礼儀正しく、それぞれいつも通りの態度で挨拶を返した。

「いやぁ、風紀委員長をしている人が友達だなんて・・・
やっぱりすごいっすね、里奈先輩!」

「まぁ・・・生徒副会長だし、入学式の時から同じクラスですぐ仲良くなったこともあったから・・・」

「里奈とはあんまり離れたくなかったしね~!
追い掛ける形で、風紀委員入っちゃった☆」


 里奈だけでなく莉央まで褒めちぎる怜人に大げさだと思って、
呆れながらも伸之は疑問を持った様子で里奈に質問した。

「いやしかし、今更ながら言うと思いますが、
2年生で生徒副会長やってるということは俺が知る限り、異例だと思いますが・・・?」

「う~ん、厳密に言うと次期・・生徒副会長ってところね」


「「「次期・・・・・?」」」


里奈の意外な発言に賢人、怜人、伸之の三人は口を揃えてそう言った。

「そうなの、1年生の時にあった選挙で既に副会長になったことは決まっているんだけど、
今はあくまで現副会長の代理をしているぐらいなの」

賢人達が思っていたことよりも全然釣り合わないイメージと仕事筋を自慢気(?)に語った里奈に、
怜人が先に口を挟んだ。

「あっそうなんですか!俺はてっきり2年生から即位したかと・・・(笑)」

「いや、言い方を考えろよ。
言葉の表現下手くそか、怜人」

「なんだよ斎藤さん、そのキツめの毒が入った突っ込み~・・・」

「いつものことだろ?どれだけの付き合いだと思ってんだよ?俺たち」

 普段から他人を冷静に突っ込む際にはさらっと言ってしまう厳しい発言が目立つ伸之に、
怜人は深く(?)様子でわざとらしく寄り添い、その行動に伸之は少々引く感じで、軽くあしらうだけだった。

すると莉央が、何か思い出したようで突然声を上げた。

「あっ!そうだった!大切なこと忘れてた!!」


「「「「えっ?」」」」


◇◇◇◇


ーーー翌日。
今日は里奈にとって、どんなに待ちわびいても・・・・・・・・足りない程、楽しみにしていた日がやってきた。
他者からすればいつも通り家から出て学校に登校するだけに思えるが、里奈にとっては例外・・でもなんでも無かった。
なぜなら・・・・・・

(今日からうちの学校は衣替え!!)

 里奈たちが通う高校では毎年7月に入ると、夏の季節に備えて衣替えをすることになっている。
すなわち、普段から学校指定のカッターシャツの上に着ている学ランやカーディガンを脱いでも良い時期になる。
 ちなみに、学ランの色は男子なら青の入った明るい緑色、女子な水色に近い紺色と分かれていて、
カーディガンの色は青、赤紫、灰色の三色があり、入学手続きの際に、自分の好きな色を選べるのだ。
とはいえ、そんな衣替えの時期で里奈が楽しみにしている、または期待しているのはそんなこと・・・・・ではない。

(衣替えになるということは・・・・・・
賢人くんのお肌もより見やすくなる!!)

 賢人が好き過ぎる里奈にとっては、この時期に衣替えがあることを非常にありがたく思えるだろうが、
他者からすれば、単なる『変態』にしか見えないだろう。
 ちなみに里奈もまた衣替えとして、
いつも着てきているカーディガンを着ずに、下着の上にカッターシャツという、
今どきのJKというスタイルで来ている。


 里奈はいつも学校で見せている冷淡な表情で一人で通学路を歩いていたが、
心の中では衣替えしてくる賢人ののとドキドキしながら、考えていた。
おそらくそんな無表情な顔をしながら賢人のことで頭がいっぱいである里奈の心の底を、
見破ることは不可能だろう。

「里奈先輩ー!」

「!!」

 まさに噂をすればというタイミングで、お目当てとなる人物に後ろから声をかけられ、
元気よく後ろを振り向くと、そこには・・・

「おはようございます!」


(ふおぉぉぉぉおぉぉ~~~~~・・・・・・)


里奈は心の奥底で嬉しさと喜びが籠った叫び声を上げた。

男にしては細くて艶がなめらかに光り、しなやかに伸びた手。
学ランを脱いだことによってより見えるようにぬった僅かな汗が吹き出している首筋。

今の賢人は里奈にとって、何から何まで最高に思えた。

「一緒に学校行きましょう?・・・・・・校門前まで」

「・・・はい、喜んで」

 里奈が差し出した右手を賢人が左手で優しく手に取った。その様子は、
舞踏会でダンスを申し込むお姫様と優しく手に取ることで返事を返す王子様のようだった。

(衣替え、最高です!!)

 照れた感情が若干混じった笑顔を作りながら、里奈は賢人と手を繋いで学校に向かって歩いている裏で、
心の中では思いっきりガッツポーズを決めていた。

 しかしその一方で、数メートル先に離れた位置にある電柱の物陰から
二人の様子をじっと見つめる一人の女子の姿があった。

「たまたま、だよね?
たまたま会っただけだよね?賢人くん・・・・・・」

 賢人の名を口にするその女子は、里奈と同じ女子専用のカッターシャツを着ており、
まさしく賢人と里奈の同じ高校に所属する女子生徒であるしるしだった。

 そんな女子生徒から自分たちの様子を見られていることを、二人は知る由も無かった。



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