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12話 報告②×呼び方×発覚③
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「なるほどねぇ、賢人くんにやたらと接しているクラスメートがいる、かぁ・・・」
「そう!生徒会で良く見るんだけど・・・
なんか変なのよ、莉央もそう思わない?」
2時間目が終わった休憩時間。今朝賢人の様子を見ていた里奈は莉央に報告を聞かせていた。
流石の莉央もこの話を聞いて、不思議に思った。
「う~ん、言われてみれば変な気がするねぇ・・・」
「でしょでしょ!?分かってくれて嬉しい!」
「はははっ・・・」
(そこは彼女としては少し怒るところだよ!)
「でもそんなことがありつつ、きょとんとした賢人くんこっそり撮ってきちゃった~~~・・・」
「へぇ・・・・・・」
「あとこれ!昨日賢人くんのクラスの時間割表、手に入れたの!」
「いやどうやって・・・?」
賢人のクラスの時間割だの賢人の写真が入ったスマホだの顔を赤くして嬉しそうにしてはしゃぐ里奈に莉央はドン引きして後、少々呆れるようにして言った。
「あのさ里奈、これだけは言わせてくれる?」
「・・・何?」
里奈を見る莉央の目はいつの間にか細くて冷たくなっており、言い方からして呆れだけでなく、少々退いているようにも見えた。
「今更言うのもなんだけど・・・里奈ってさ、変に積極的だよね?」
「へ、変!?」
まるで自身の行動がおかしいとはサラサラ感じていないような発言に、更に莉央は続けて言う。
「いや変だよ、やってることもストーカーみたいだし、バレたら捕まるぞ・・・?
それにいつも会ってるんだからそんなことしなくとも・・・」
「う・・・っ!そ、それは薄々自覚していたけれど、でも・・・
学年も違うし、私とお友達に見せる時の表情が少し違うから・・・・・・・」
莉央に痛い所を厳しく指摘された里奈は、少々気が落ちた様子で口を動かした。
それを見て莉央は少しため息をつき、哀れむようにして言った。
「・・・まぁ、その気持ちは分からなくもないと思うけど・・・・・・」
「うん、だから・・・・・・」
「?」
「携帯でおさめた彼を見つめることで、本人と直接まともに会話が出来る様に予行練習しようと思って!もう20枚以上も撮ってあるけど、見る!?
「うわぁ~なんか台無しだわ~・・・」
ようかく乙女らしい雰囲気になったかと思いきや里奈の顔は赤くなって可愛らしかったもののら変態あるまじき発言によって、話を聞いていた莉央も更にドン引きして表情もよりシラケていた。
◇◇◇◇
「ーーー改めて屋上に来てみると、やっぱり落ち着くもんだなぁ・・・」
昼休み。
賢人は里奈に呼ばれてきた場所であるこの屋上でミルクココアを飲みながら、丁度グラウンドの見晴らしが良い方にある手摺の下に座り込む形で寄りかかっていた。
何故屋上にやって来たのかと言うとあの後すぐに真依との関係について、男女問わずクラスメート達ほぼ全員から問い詰めれたので逃れようしたことと、少しだけ一人になりたくてこの屋上にやってきた。
「ミルクココアを飲んで温かい風に当たりながら、一人でゆったりできるなんて・・・
これほど落ち着ける場所なんて無いやこりゃ」
紙パックに刺したストローを通じて、ミルクココアを飲みながら、賢人はあまりの心地良さに眠気が差してきて、ここで寝まいとばかりにこの学校に転校してきてからの出来事を振り返ることにした。
しかし、記憶を辿る中で賢人の脳裏にどうしても引っ掛かってしまう疑問が二つあった。
「やっぱり、蘭子さんと真依ちゃんが気になるなぁ」
そう、今賢人を悩ませている二つの悩みの種とは里奈の友人の蘭子と自身と同じクラスメートにして委員長を務める真依のことだ。
蘭子はついこの前であるからともかく、真依はこの頃に限って自身との距離を縮めてくる。
”君の事、けっこう気に入ってるんだもん♡„
「っ!!」
蘭子のこと考えた途端、迫って言ってきた蘭子の言葉と頬を舐められたその時の感触を思い出し、頬を赤らめる。
(なんでや!?なんで蘭子さんのことを思い出したんや!?
あかんあかん!別のことや、別のことを考えろ!!)
とんでもない事を思い出し、胸がドキドキして変な妄想をしそうになった賢人は自己暗示を繰り返した挙句、とっさに『Love♡ColorS』の歌のリズム感を思い浮かべた。
すると、賢人の頭の中はオタクかつ小学生時代にファンとして熱狂していた頃を思い出してゆき段々落ち着きを取り戻していった。
「なーにやってるの?」
「うわっ!里奈先輩!?」
聞き慣れた声で名前を呼ばれたと思って目を開けると、一生懸命考え込み過ぎていたせいで気付かなかったのか目の前には里奈が座高の低い賢人の顔をしゃがみ込む形で、ニヤニヤしながら見つめていた。
「い、いつからそこに・・・!?」
「うーん丁度賢人くんが寝そうになっていたところ、かな?」
「ほぼ最初っからじゃないですか!」
「なんか考え込んでいる賢人くんを見てたら、可愛く見えちゃって・・・」
「・・・っ!い、居たのならちゃんと声をかけて下さい・・・!」
照れている事を誤魔化す為にわざと話を反らした。
(ぐぬぬ~、このまま寝顔を撮ろうとずっと窺ってたのに・・・残念!)
里奈の表情は恥ずかしさを誤魔化そうとする賢人に愛嬌を感じ、少しだけ笑みを浮かべているが、心では賢人の寝顔を撮れなかったことに対してめちゃくちゃ悔しがっていた。
「ねぇ、賢人くん」
「なんですか?里奈先輩」
里奈はからかう様子から一転して、急にもじもじとした様子で賢人に話し掛けた。
「あのさ・・・その・・・えっと・・・・・・」
「?」
「わ、私のこと『先輩』を付けずに呼んでほしいの!」
「・・・・・・え?」
里奈の口から出た思いもよらない発言に賢人はポカンとした。
しかし自分より年上、または先輩や上司に対して『先輩』、あるいは『さん』を付けるのは当たり前だ。
だから賢人は里奈に対しても、常に『先輩』付けで呼んでいる。
それなのに、『先輩』を付けずに呼んでいるほしいとはどういう事なのだろうか?
「で、でも先輩に対して名前で呼ぶなんて、そんな・・」
「たとえ相手が先輩や年上だとしても、普通に名前で呼ぶのはカップル同士では当たり前らしいの!」
「そ、そうなんですか?」
言われてみればかつて愛読していた漫画では度々里奈が言うようなシチュエーションがあって憧れてはいたが、まさか現実でこんな形で自身に起こるとは想像すらしていなかった。
「・・・じゃあ一度で良いから呼んでみて!もしそれで違和感が無かったら・・・たまに呼んでほしい・・・♡」
(か、可愛い・・・)
それほどまでに『先輩』を付けずに名前で呼ばれるのが恥ずかしいのか里奈は頬だけでなく、耳元まで赤く染まっていた。
賢人もまた里奈のその様子があまりにも可愛く見えて頬を赤くした。
「じゃあ・・・・・・り・・・り・・・里奈」
「~~~~~っ!!」
あまりの恥ずかしさに里奈の顔全体が真っ赤に染め上がった。
賢人も真依の時と同じように女子を名前で呼ぶのは中学生の時以来で、今冷静になってみるとものすごく恥ずかしかった。
しかも今回は同級生ではなく一つ年上で先輩であった為、年上に対してタメ口を使ってしまった様な気がして罪悪感も含め全て自身の口から出た事だと思うとさっきよりも恥ずかしさが更に増した。
「・・・も、もう一つだけお願い聞いていいかな?」
「な、なんですか・・・?」
「わ、私も・・・その・・・『賢ちゃん』って呼んでいい?」
「・・・え?」
「賢人!こんな所に居たのか!随分探したぞ!」
賢人と里奈によって熱くて和やかなになった屋上雰の囲気をかき消す、いや叩き割るの方が正しいというべきか屋上の入り口から怜人が駆け込んできた。
二人はとっさに怜人に見られたのかもと思いながら、と互いに距離を取り、何事も無かった様に振る舞った。
「ったく、あちこち探しても居なかったから・・・ってあれ?なんで里奈先輩まで屋上にいるんすか?」
怜人が言う通り怜人が聞いてもおかしくない状況だった。
何故うちのクラスの賢人と、2年生にして学校一の美人かつ恐れられている里奈が二人で屋上にいるのだろうか?その質問に対し、二人は怜人に違和感を感じさせないようにしてとっさに答えた。
「あぁ、僕が一人で屋上で休んでたら、たまたま里奈先輩と鉢合わせになっちゃって・・・」
「そうそうそう!一休みしてたら偶然この子と会っちゃったのよー」
「・・・ていうか怜人、お前さっきの話何も聞いてなかった?」
念のため、賢人は恐る恐る怜人に里奈との会話を聞いていなかったか、恐る恐る質問した。
「話って何だよ?なんか二人で喋ってたのか?」
「あっ、聞いてなかったら大丈夫だよ!」
「そんな大した話じゃなかったもんね?」
「はい、そうですね!」
変な感じで会話する賢人と里奈に怜人は不思議そうにしながら不思議そうにして言った。
「何言ってんだよ?里奈先輩まで一緒にして・・・・・」
そう言って怜人は二人に背を向け、屋上の奥のスペースに向かって数歩ぐらい歩きながら再び口を開いた。
「いやでもなぁ、まさか二人が付き合ってたとはねぇ」
怜人は急に立ち止まり、振り返りながらして言った。
その言葉に賢人と里奈は口から心臓が飛び出す程の勢いで驚いた。
怜人の表情はいつの間にか、まるで人をイジる時にしそうな程、にやついていた。
「「聞いていたんかい(たの)!!」
偶然にも賢人と里奈の考えていたことが重なり、言葉も被った。
「ドアが開けっ放しだったから、そこまで聞こえてたぞ?」
「あ、ごめん!私、閉め忘れてた!」
「何やってるんですか、里奈先輩!・・・そんなことより怜人、ドアが開けっ放しだったとはいえ、盗み聞きしてたなんて酷いじゃないか!!」
賢人は少々怒った様子で怜人に怒鳴りつけ里奈もまたその表情から怒っているというより、困っている方に近かった。
しかし怜人はそんなことでは怯えず、悪気が無かったようにして言った。
「盗み聞き!?そんな人聞きが悪いこと言わないでくれよ!賢人を探しに屋上までの階段を登ってドア目前まで来たら、たまたま聞こえてきただけなんだよ!」
それを聞いて賢人と里奈は、怜人が盗み聞きつもりは無かったと知り、表情を緩くした。
「・・・聞こえてきたって、どのぐらいから?」
「えっと確か・・・・・・里奈先輩が『なーにやってるの?』って言って、賢人が『うわっ!?里奈先輩!』って言ったところから?」
「「・・・ほぼ最初っからじゃないか(の)!!」」
またしても賢人と里奈の考えていた事が重なり言葉も被った。
それに構わずにして怜人は続けて言った。
「なんだよ!?カップル同士だから先輩を付けずに呼んでほしいって・・・お前は一体どんなことして里奈先輩をたぶらかしたんだよ?」
「怜人くんだったっけ?賢人くんは何も悪いことはしていないわ!私の方から関係を迫ったの!」
「え?マジかよ・・・?」
怜人の賢人を軽く侮辱(?)する様な発言に里奈は真実を告げた。
それを聞いた怜人は驚きのあまり、黄金色の目を野球ボール状に丸くした。
「と、とにかく!里奈先輩がどうやって賢人に惚れたのかは知らないが、この事実は学校にとって新聞記事で一面は取れるぐらいの大スクープ中の大スクープだぞ!?」
「そんなのは分かってる。でも僕は里奈先輩と真剣に愛を育みたい。ただそれだけだ」
「賢人くん・・・」
背は自身よりも低いものの賢人が自分の事を真面目に見てくれている、そして何よりも自身と真剣に交際したいと言ってくれたのが何よりも嬉しかった。
怜人の言う通り、今ここで二人の秘密を知ったのが賢人の友人である怜人だからまだ良かったものの、もし怜人ではなく別の生徒だったらすぐさま他の生徒から生徒へと伝えられていき、あっという間にこの話題は学校中に広まって、学校で普通に生活出来なくなると想像すると賢人と里奈は背筋がゾクッとした。
「分かっているかもしれないけど、このことは誰にも話さないでくれるかな?」
「私からもお願い!」
「大丈夫だよ!こう見えて俺は口は堅いタイプだから!」
「本当かよ?僕も里奈先輩も信じてるからな!」
「任せとけって!疑い深いなぁ・・・」
本当に喋らないか賢人と里奈は目を細くしながら怜人をジーっと見つめるが、怜人は自慢気に胸を叩いた。
「あっいたいた!探したぞ二人共!もう授業始まるぞ!」
賢人と怜人を探しに来たのか、伸之が現れた。
「あっ、斎藤さん・・・!」
「賢人と里奈先輩が付き合ってるってさ!」
「え!?」
「「すぐ言ったじゃん!!」」
怜人の口から思いもよらない発言に伸之は眼鏡越しでもわかる黒い目を丸くして驚く一方で、賢人と里奈はすぐに口を滑らした怜人に対して大きな突っ込みを入れるのだった。
「そう!生徒会で良く見るんだけど・・・
なんか変なのよ、莉央もそう思わない?」
2時間目が終わった休憩時間。今朝賢人の様子を見ていた里奈は莉央に報告を聞かせていた。
流石の莉央もこの話を聞いて、不思議に思った。
「う~ん、言われてみれば変な気がするねぇ・・・」
「でしょでしょ!?分かってくれて嬉しい!」
「はははっ・・・」
(そこは彼女としては少し怒るところだよ!)
「でもそんなことがありつつ、きょとんとした賢人くんこっそり撮ってきちゃった~~~・・・」
「へぇ・・・・・・」
「あとこれ!昨日賢人くんのクラスの時間割表、手に入れたの!」
「いやどうやって・・・?」
賢人のクラスの時間割だの賢人の写真が入ったスマホだの顔を赤くして嬉しそうにしてはしゃぐ里奈に莉央はドン引きして後、少々呆れるようにして言った。
「あのさ里奈、これだけは言わせてくれる?」
「・・・何?」
里奈を見る莉央の目はいつの間にか細くて冷たくなっており、言い方からして呆れだけでなく、少々退いているようにも見えた。
「今更言うのもなんだけど・・・里奈ってさ、変に積極的だよね?」
「へ、変!?」
まるで自身の行動がおかしいとはサラサラ感じていないような発言に、更に莉央は続けて言う。
「いや変だよ、やってることもストーカーみたいだし、バレたら捕まるぞ・・・?
それにいつも会ってるんだからそんなことしなくとも・・・」
「う・・・っ!そ、それは薄々自覚していたけれど、でも・・・
学年も違うし、私とお友達に見せる時の表情が少し違うから・・・・・・・」
莉央に痛い所を厳しく指摘された里奈は、少々気が落ちた様子で口を動かした。
それを見て莉央は少しため息をつき、哀れむようにして言った。
「・・・まぁ、その気持ちは分からなくもないと思うけど・・・・・・」
「うん、だから・・・・・・」
「?」
「携帯でおさめた彼を見つめることで、本人と直接まともに会話が出来る様に予行練習しようと思って!もう20枚以上も撮ってあるけど、見る!?
「うわぁ~なんか台無しだわ~・・・」
ようかく乙女らしい雰囲気になったかと思いきや里奈の顔は赤くなって可愛らしかったもののら変態あるまじき発言によって、話を聞いていた莉央も更にドン引きして表情もよりシラケていた。
◇◇◇◇
「ーーー改めて屋上に来てみると、やっぱり落ち着くもんだなぁ・・・」
昼休み。
賢人は里奈に呼ばれてきた場所であるこの屋上でミルクココアを飲みながら、丁度グラウンドの見晴らしが良い方にある手摺の下に座り込む形で寄りかかっていた。
何故屋上にやって来たのかと言うとあの後すぐに真依との関係について、男女問わずクラスメート達ほぼ全員から問い詰めれたので逃れようしたことと、少しだけ一人になりたくてこの屋上にやってきた。
「ミルクココアを飲んで温かい風に当たりながら、一人でゆったりできるなんて・・・
これほど落ち着ける場所なんて無いやこりゃ」
紙パックに刺したストローを通じて、ミルクココアを飲みながら、賢人はあまりの心地良さに眠気が差してきて、ここで寝まいとばかりにこの学校に転校してきてからの出来事を振り返ることにした。
しかし、記憶を辿る中で賢人の脳裏にどうしても引っ掛かってしまう疑問が二つあった。
「やっぱり、蘭子さんと真依ちゃんが気になるなぁ」
そう、今賢人を悩ませている二つの悩みの種とは里奈の友人の蘭子と自身と同じクラスメートにして委員長を務める真依のことだ。
蘭子はついこの前であるからともかく、真依はこの頃に限って自身との距離を縮めてくる。
”君の事、けっこう気に入ってるんだもん♡„
「っ!!」
蘭子のこと考えた途端、迫って言ってきた蘭子の言葉と頬を舐められたその時の感触を思い出し、頬を赤らめる。
(なんでや!?なんで蘭子さんのことを思い出したんや!?
あかんあかん!別のことや、別のことを考えろ!!)
とんでもない事を思い出し、胸がドキドキして変な妄想をしそうになった賢人は自己暗示を繰り返した挙句、とっさに『Love♡ColorS』の歌のリズム感を思い浮かべた。
すると、賢人の頭の中はオタクかつ小学生時代にファンとして熱狂していた頃を思い出してゆき段々落ち着きを取り戻していった。
「なーにやってるの?」
「うわっ!里奈先輩!?」
聞き慣れた声で名前を呼ばれたと思って目を開けると、一生懸命考え込み過ぎていたせいで気付かなかったのか目の前には里奈が座高の低い賢人の顔をしゃがみ込む形で、ニヤニヤしながら見つめていた。
「い、いつからそこに・・・!?」
「うーん丁度賢人くんが寝そうになっていたところ、かな?」
「ほぼ最初っからじゃないですか!」
「なんか考え込んでいる賢人くんを見てたら、可愛く見えちゃって・・・」
「・・・っ!い、居たのならちゃんと声をかけて下さい・・・!」
照れている事を誤魔化す為にわざと話を反らした。
(ぐぬぬ~、このまま寝顔を撮ろうとずっと窺ってたのに・・・残念!)
里奈の表情は恥ずかしさを誤魔化そうとする賢人に愛嬌を感じ、少しだけ笑みを浮かべているが、心では賢人の寝顔を撮れなかったことに対してめちゃくちゃ悔しがっていた。
「ねぇ、賢人くん」
「なんですか?里奈先輩」
里奈はからかう様子から一転して、急にもじもじとした様子で賢人に話し掛けた。
「あのさ・・・その・・・えっと・・・・・・」
「?」
「わ、私のこと『先輩』を付けずに呼んでほしいの!」
「・・・・・・え?」
里奈の口から出た思いもよらない発言に賢人はポカンとした。
しかし自分より年上、または先輩や上司に対して『先輩』、あるいは『さん』を付けるのは当たり前だ。
だから賢人は里奈に対しても、常に『先輩』付けで呼んでいる。
それなのに、『先輩』を付けずに呼んでいるほしいとはどういう事なのだろうか?
「で、でも先輩に対して名前で呼ぶなんて、そんな・・」
「たとえ相手が先輩や年上だとしても、普通に名前で呼ぶのはカップル同士では当たり前らしいの!」
「そ、そうなんですか?」
言われてみればかつて愛読していた漫画では度々里奈が言うようなシチュエーションがあって憧れてはいたが、まさか現実でこんな形で自身に起こるとは想像すらしていなかった。
「・・・じゃあ一度で良いから呼んでみて!もしそれで違和感が無かったら・・・たまに呼んでほしい・・・♡」
(か、可愛い・・・)
それほどまでに『先輩』を付けずに名前で呼ばれるのが恥ずかしいのか里奈は頬だけでなく、耳元まで赤く染まっていた。
賢人もまた里奈のその様子があまりにも可愛く見えて頬を赤くした。
「じゃあ・・・・・・り・・・り・・・里奈」
「~~~~~っ!!」
あまりの恥ずかしさに里奈の顔全体が真っ赤に染め上がった。
賢人も真依の時と同じように女子を名前で呼ぶのは中学生の時以来で、今冷静になってみるとものすごく恥ずかしかった。
しかも今回は同級生ではなく一つ年上で先輩であった為、年上に対してタメ口を使ってしまった様な気がして罪悪感も含め全て自身の口から出た事だと思うとさっきよりも恥ずかしさが更に増した。
「・・・も、もう一つだけお願い聞いていいかな?」
「な、なんですか・・・?」
「わ、私も・・・その・・・『賢ちゃん』って呼んでいい?」
「・・・え?」
「賢人!こんな所に居たのか!随分探したぞ!」
賢人と里奈によって熱くて和やかなになった屋上雰の囲気をかき消す、いや叩き割るの方が正しいというべきか屋上の入り口から怜人が駆け込んできた。
二人はとっさに怜人に見られたのかもと思いながら、と互いに距離を取り、何事も無かった様に振る舞った。
「ったく、あちこち探しても居なかったから・・・ってあれ?なんで里奈先輩まで屋上にいるんすか?」
怜人が言う通り怜人が聞いてもおかしくない状況だった。
何故うちのクラスの賢人と、2年生にして学校一の美人かつ恐れられている里奈が二人で屋上にいるのだろうか?その質問に対し、二人は怜人に違和感を感じさせないようにしてとっさに答えた。
「あぁ、僕が一人で屋上で休んでたら、たまたま里奈先輩と鉢合わせになっちゃって・・・」
「そうそうそう!一休みしてたら偶然この子と会っちゃったのよー」
「・・・ていうか怜人、お前さっきの話何も聞いてなかった?」
念のため、賢人は恐る恐る怜人に里奈との会話を聞いていなかったか、恐る恐る質問した。
「話って何だよ?なんか二人で喋ってたのか?」
「あっ、聞いてなかったら大丈夫だよ!」
「そんな大した話じゃなかったもんね?」
「はい、そうですね!」
変な感じで会話する賢人と里奈に怜人は不思議そうにしながら不思議そうにして言った。
「何言ってんだよ?里奈先輩まで一緒にして・・・・・」
そう言って怜人は二人に背を向け、屋上の奥のスペースに向かって数歩ぐらい歩きながら再び口を開いた。
「いやでもなぁ、まさか二人が付き合ってたとはねぇ」
怜人は急に立ち止まり、振り返りながらして言った。
その言葉に賢人と里奈は口から心臓が飛び出す程の勢いで驚いた。
怜人の表情はいつの間にか、まるで人をイジる時にしそうな程、にやついていた。
「「聞いていたんかい(たの)!!」
偶然にも賢人と里奈の考えていたことが重なり、言葉も被った。
「ドアが開けっ放しだったから、そこまで聞こえてたぞ?」
「あ、ごめん!私、閉め忘れてた!」
「何やってるんですか、里奈先輩!・・・そんなことより怜人、ドアが開けっ放しだったとはいえ、盗み聞きしてたなんて酷いじゃないか!!」
賢人は少々怒った様子で怜人に怒鳴りつけ里奈もまたその表情から怒っているというより、困っている方に近かった。
しかし怜人はそんなことでは怯えず、悪気が無かったようにして言った。
「盗み聞き!?そんな人聞きが悪いこと言わないでくれよ!賢人を探しに屋上までの階段を登ってドア目前まで来たら、たまたま聞こえてきただけなんだよ!」
それを聞いて賢人と里奈は、怜人が盗み聞きつもりは無かったと知り、表情を緩くした。
「・・・聞こえてきたって、どのぐらいから?」
「えっと確か・・・・・・里奈先輩が『なーにやってるの?』って言って、賢人が『うわっ!?里奈先輩!』って言ったところから?」
「「・・・ほぼ最初っからじゃないか(の)!!」」
またしても賢人と里奈の考えていた事が重なり言葉も被った。
それに構わずにして怜人は続けて言った。
「なんだよ!?カップル同士だから先輩を付けずに呼んでほしいって・・・お前は一体どんなことして里奈先輩をたぶらかしたんだよ?」
「怜人くんだったっけ?賢人くんは何も悪いことはしていないわ!私の方から関係を迫ったの!」
「え?マジかよ・・・?」
怜人の賢人を軽く侮辱(?)する様な発言に里奈は真実を告げた。
それを聞いた怜人は驚きのあまり、黄金色の目を野球ボール状に丸くした。
「と、とにかく!里奈先輩がどうやって賢人に惚れたのかは知らないが、この事実は学校にとって新聞記事で一面は取れるぐらいの大スクープ中の大スクープだぞ!?」
「そんなのは分かってる。でも僕は里奈先輩と真剣に愛を育みたい。ただそれだけだ」
「賢人くん・・・」
背は自身よりも低いものの賢人が自分の事を真面目に見てくれている、そして何よりも自身と真剣に交際したいと言ってくれたのが何よりも嬉しかった。
怜人の言う通り、今ここで二人の秘密を知ったのが賢人の友人である怜人だからまだ良かったものの、もし怜人ではなく別の生徒だったらすぐさま他の生徒から生徒へと伝えられていき、あっという間にこの話題は学校中に広まって、学校で普通に生活出来なくなると想像すると賢人と里奈は背筋がゾクッとした。
「分かっているかもしれないけど、このことは誰にも話さないでくれるかな?」
「私からもお願い!」
「大丈夫だよ!こう見えて俺は口は堅いタイプだから!」
「本当かよ?僕も里奈先輩も信じてるからな!」
「任せとけって!疑い深いなぁ・・・」
本当に喋らないか賢人と里奈は目を細くしながら怜人をジーっと見つめるが、怜人は自慢気に胸を叩いた。
「あっいたいた!探したぞ二人共!もう授業始まるぞ!」
賢人と怜人を探しに来たのか、伸之が現れた。
「あっ、斎藤さん・・・!」
「賢人と里奈先輩が付き合ってるってさ!」
「え!?」
「「すぐ言ったじゃん!!」」
怜人の口から思いもよらない発言に伸之は眼鏡越しでもわかる黒い目を丸くして驚く一方で、賢人と里奈はすぐに口を滑らした怜人に対して大きな突っ込みを入れるのだった。
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百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。
「なれたらいいと思ってる」
少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。
食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。
恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。
そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。
夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと
新婚生活も満喫中。
これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、
新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。
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