僕は冷徹な先輩に告白された

隻瞳

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11話 誘惑②×鈍感

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「なになにー?彼女でもない女子アタシに胸がときめいちゃってる訳ー?」

「いや・・・これは・・・その、ですね・・・・・・」

「えー?違うのー?」

今や賢人は里奈の小学生からの友達の一人である重盛蘭子に女性を象徴させる二つの大きなモノ・・が当たっている程の距離で問い詰められている状態だ。
 
その状況に対して賢人は興奮するわけでもなければ、欲情しないといった普通の男性ならば襲って行為に至りそうな状態であるにも関わらず、激しく鳴り響く心臓の音と目の前にいる色気に溢れた女性に迫られている緊張感を少しでも押さえつける為に出来るだけ頭を冷静クリアにしていた。

「聞くけどさー、里奈っちとはもうキス・・とかしちゃった訳?」

「なっ!?」

蘭子の口から出た予想外の発言に賢人は目を丸くして驚き、更に耳元まで赤くなった。

「な、なに言ってはるんですか急に!?まだ付き合って数日ぐらいやのに・・・」

「キャハ♡思った通りのリアクションだったからマジウケるー♡」

まるで下心の全く無い子供のように弄ばれていることに賢人はもう何を答えたら良いのか、そして何を考えたら良いのか益々分からなくなってきた。

「・・・その反応だと、まだしちゃってない感じー?」

「!?」

蘭子は賢人との距離を更に縮め、もはや蘭子の魅力を強調させる二つのモノ・・の感触と温もりをより伝わってくる。

「アタシだったら、速攻でヤるんだけどねー♡」

「あっ、えっと、それはどういう・・・・・・」

「なんだったらー、ここで一発ヤっていく?」

「えっ、ちょっ・・・待って・・・!」

(ヤバい!意識と理性がどっか行きそう・・・
でも駄目だ、こんなところで純潔を晒す訳にはいかない・・・!!)

「からかわないで下さい!!」

「!?

賢人は既に遠のきかけていた理性を即座に連れ戻し、拒否するように蘭子を勢い良く押し倒した。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・」

ようやく緊張の糸が解けたのか賢人は息を切らしていた。
急に押されたことによって、倒れ込んだ蘭子はすぐに立ち上がり手に付いた砂を払い落とした。
そこから一気に怒り出して罵倒を浴びせてくる、あるいは煽らせた・・・・だけでより迫ってくるかと思いきや、むしろ残念そうにしつつも笑顔を絶やさなかった。

「まぁ初対面でこんなことされたら流石に無理もないか・・・
分かった!それに免じて今日は帰るわ」


(・・・良かった!神様、神様ありがとう!)


流石の蘭子も賢人が押し返してくるとは思っていなかったらしく、その気迫に押されたせいか少し反省した様子で、今日は身を引こうと言い出したことによって賢人は少しほっとした。
蘭子はそのまま公園の外に出ようと何歩か歩いた後、急に立ち止まり賢人の方へと振り向いた。

「ごめんね?里奈の彼氏だからって、からかい過ぎて・・・」

「良いんですよ別に・・・ところで、さっきはなんであんな質問・・してきたんですか?」

「なんでかって?それはと言うと・・・・・・」

そう言って蘭子は賢人に近づき、また賢人の顔が蘭子の二つのモノ・・・・・が当たる程度で優しく抱き着いてきた。
そして蘭子は賢人の耳元で囁く様にしてこう言った。


「アタシね、君のことを結構気に入っちゃんだもん♡」


ーーーペロッ


蘭子は色っぽく妖艶の入ったその声で囁くと、賢人にその言葉に驚く隙を与えず賢人の艶の入っていてプクッとした頬を優しく舐めた。

「・・・!!?」

「じゃあまたねー☆」

「えっ?ちょっ・・・」

蘭子は即座に賢人から離れて何事も無かったかのように賢人の呼びかけも聞かずに、そのまま夕日の光が落ちていき暗くなりつつある公園を走って出ていった。

その場に一人、取り残された賢人はいろんな事が頭の中でごっちゃになってしまってどう対処したら良いのか分からず、混乱状態だった。

「あ・・・あ・・・・・」

賢人は顔を真っ赤にして、蘭子が舐めた頬の部分を何度も撫で続けた。
その部分は蘭子が去った今でも蘭子が舌で付けた生温かい感触と唾が残っていた。

「ホンマかいな・・・?ありえへん・・・・・・」


◇◇◇◇


「あぁ~~~~~・・・・・・」

「・・・?なんだよ賢人、そんなにグッタリして・・・」

「・・・見たところ、以前よりも疲労感がかなり増しているな」

朝の教室で自分の席でグッタリしている賢人に怜人と伸之は心配になって声をかけていた。
賢人の目の下にはよく見ないと分からないが明らかにクマが出来ており、明らかに寝不足である事を物語っていた。

「すげぇだるそうだけど・・・この土日の間で何かあったのか?」

「あぁ、ちょっと色々あってね・・・・・・」

ある意味怜人に図星を突かれた賢人は昨日起こった出来事を話せる訳も無く、気だるいこともあって手間を掛けたくないと思い適当に答えた。

「最近のお前は良く疲れているなぁ・・・・・・」

「怜人の言う通りだ、あんまり無理するんじゃないぞ?」

「うん・・・二人とも、ありがとう・・・・・・」

「賢人くーん!!」

「きr・・・真依ちゃん?」

その様子を見ていたのか他のクラスメートと会話していた真依が駆け寄ってきた。
その表情からは心配のあまりかなり取り乱しているのが分かった。
クラスの委員長がクラス一の人気者に駆け寄っているその光景に、怜人や伸之だけでなく、クラス全体が目を丸くして見ていた。

「元気無さそうだけど・・・大丈夫?」

「あ、いやいや大丈夫だよ、これくらい乗り切れる」

「そんなこと言ってると、後で酷くなるからダメー!」

「あっ、その・・・ごめん」

「どれどれ?ちょっと見てみるわね・・・」

「!?

そう言い終わった刹那、真依は自分のと賢人の前髪を託し上げ、自身の額と賢人の額をくっつけた。
その光景はまさしく互いにおでこを寄せ合って熱を測るという漫画やアニメで良くあるアレだった。

「う~ん、熱はあんまり無いみたいだけど・・・」

「あ、うん・・・・・・」

本人はあまり気にしていない様子だったが、怜人と伸之の二人を除くクラスの男子ほぼ全員からは驚きはともかく嫉妬が宿った視線を浴びているのを感じた。

「あ、あの・・・真依さん・・・・・・?」

流石の賢人も最近自身にやたら(?)接してきて委員長を務める女の子にこんなこと・・・・・をされているこの状況に頭の中が今にもオーバーヒートしそうだった。

「うん、熱はあまり無いみたいだから、風邪じゃないかも」

「・・・なぁ桐谷?お前この頃、賢人と随分楽しそう・・・・にしてねえか・・・?」

「あぁ、桐谷がそんなに男に絡むところを見たのは初めてだな」


「「えっ!?」」


流石に空気を読んだのか、怜人が驚きととからかいの二つの意味のこもった言葉を掛けた。
怜人が言っていること、そして自分が一体どれほど恥ずかしいことをしているのかようやく気づき、思わず赤面した。

「いや・・・あの・・・これは、その・・・・・・違うの~~~!!」

戸惑いも窺える真依はもじもじとした後、クラスメート全員の目にも止まらぬ速さで、教室を出ていった。
クラス全体は驚き、怜人と伸之は唖然とし、そして最後に賢人は何故こうなったのか分からず、顔を真っ赤にしながらポカンとしていた。

「・・・?」

「・・・!桐谷の奴、もしかして・・・?」

「・・・お前もそう思うか?」

「・・・??」

意味深な言葉を発する怜人に伸之も共感し二人は賢人を見つめた。

「・・・え、何?二人ともどうしたの?」

「何がって・・・お前女の子にあんなことされておいて、何も気づかないのか?」

「・・・だから何が!?」

「・・・全く、乙女心が分からない鈍感とはこのことだ」

「ホントそれだぜ!」

二人が何を言っているのかさっぱり分からない賢人は、休憩時間が始まって次の授業が始まるまでの間、ずっと不思議そうな顔をして首を傾げるのだった。
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