僕は冷徹な先輩に告白された

隻瞳

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6話 説教×取材×告白

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「どう里奈?賢人くんのことは大体分かった?」

「あ、うん・・・な、何とかね・・・」

2年A組の教室で莉央は自身の机で右手で肘を付けて、ボーっとしている里奈にこの2週間の調査の報告を聞いていた。

「ふむふむ、1年B組、出席番号35番。山本賢人。あだ名は〝賢ちゃん〟。席は窓側の一番後ろ。休み時間と昼休み、そして放課後には必ずミルクココアを買う、か。てかあんたこの短期間で良くここまで調べられたね・・・?」

「う、うん・・・まあね・・・」

(いや、そこは照れる所じゃねぇよ!まあ、私もクラスぐらいは調べたけれど・・・)

この2週間の間に撮ったと思われる賢人の写真を携帯で見せながら一人でデレデレする里奈に風紀委員長である莉央もまさかここまでやるとは思ってなかった為、里奈は恥ずかしがっていたがらこの行動に流石の莉央も少しドン引きで、心の中で突っ込んだ。

「賢ちゃんかー、意外と可愛いじゃん、あだ名」

「でしょでしょ!?それも可愛いんだけど、仕草と笑顔がもう最高で最高で・・・!」

「・・・・・・」

まるで子供のようにはしゃぎ回る里奈の様子を周りから変な目(?)で見られていることを感じた莉央は、急に立ち上がって里奈に冷静になって言った。

「・・・あのさ、里奈。ちょっとついてきて?」

「なになに?どうかしたの?」

里奈は莉央に手を掴まれて、半場強引に教室から連れ出され、冷徹姫と風紀委員長のコンビが歩いている珍しい光景を見ている周りからいろんな意味の視線を向けられる中、廊下をしばらく歩いた先にある誰もいない下の階へと続く階段まで連れていった。

「なになに?どうしたの?私の顔に何か付いてる?」

「里奈、これだけは言わせてくれる?」

「・・・?」

莉央は一度深く息を吸うと、叫ぶ程の声で言った。

「あんたこの学校でどれだけ有名だと思ってるの!?
男嫌いで有名なあんたが転校した来た男の子に付きまとう程に好きって、このことを全校生徒が知ったらどうなるか少しは自覚を持って行動すること!!分かった!?」

「え、あ・・・うん・・・」

普段は里奈に対してはギャル(?)に近い態度で接している莉央だが、この時は真面目で礼儀正しい風紀委員長らしい女の子に見えた。
それほどまでに自分の初恋を応援かつ心配してくれているんだと里奈は確信した。

「ご、ごめんね、莉央?なんか賢人くんのことでつい勝手に盛り上がっちゃって・・・?」

「・・・分かってくれたんならそれで良いよ?私の方こそごめんね、ちょっと言い過ぎたわ」

「莉央、ありがとね。おかげで心の準備・・・・が出来たわ」

心の準備・・・・?どういうことそれ?」

「私、決めたわ!」

「だから何を?」

「私、明日の放課後、賢人くんに告白してくる!!」

「えぇ・・・!?」

里奈の突然の宣言に莉央は驚くしか出来なかったのだった。


◇◇◇◇


ーーー翌日の昼休み。


「山本くん、自宅では普段は何をしていらっしゃるんですか?」

「そうですね・・・読者と勉強、たまに音楽とか聴いています。あ、最近では作詞作曲とかやってますよ」

「キング・オブ・クリエイトを最年少で優勝した当時の感想をお願い致します」

「技術科が大好きで得意だったし、先輩からの誘いオファーをあって出てみたら友達や家族も喜んでくれたからとても嬉しかったです」

「好きな異性とかいるんですか?もし、いるとしたらどんなタイプが好みですか?」

「え!?いや、今はいませんけど・・・。まぁ、真面目で互いを想い合えるような人が良いですね。例えて言うなら、女性タレントの岡田佳乃おかだよしのさんみたいな人ですかね?」


「「「成る程成る程・・・・・・」」」


「・・・って、さっきから黙って聞いていれば、
誰ですかいきなり!?」

今や賢人は自分の席に座っているものの、目の前にいる女子三人に囲まれながら様々な質問をされてそれに答えている状態だった。


「申し遅れました、新聞部でD組の石原 楓いしはら かえでと言います」

「同じくE組の大谷 茜おおたにあかねと・・・」

「C組の白崎涼風しらさきすずかです!」

「石原さんに、大谷さんと白嵜さん・・・」

「実は私たち・・・・・・」


「「「山本くんのファンなんです!」」」


「えーーー!?それはまた嬉しいなぁ・・・」

「はいそうなんです!その証拠として今やこの学校ではこんなもの・・・・・まで・・・」

「えっ!?そ、それ・・って・・・!?

楓がポケットから取り出したのは、おそらくこの数週間の間で作られたと思われる賢人の写真付きの会員カードだった。しかも良く見てみると、名刺感覚で『山本賢人ファンクラブ 会員No.134 石原 楓』と名前と番号が刻まれていた。
他の二人も同じく『No.135 大谷 茜』、『No.136 白崎涼風』と、それぞれ自分の名前と異なった番号が刻まれた会員カードを取り出した。
しかし、三人それぞれが持つ会員カードの番号を確認する限り楓、茜、涼風の順番で三人仲良く会員登録したことが窺えた。

現在いまこの状況で、この学校で確認された自身のファンは、目の前にいる三人や先日発覚した長谷川先生など、全校生徒や教師を含めて全体の8割以上はいることが窺える。
賢人自身でもこんなにもたくさんいるとは思ってもみなかった上、転校してきてたった数日でファンクラブが出来ていることには流石の本人も圧巻だった。

「私たち新聞部はですね、この学校の中で起きた様々な話題を新聞に取り上げる活動をしています」

「そこでですね、山本くんあなたのようなこの学校で注目の的となっている人物を直撃して、新聞に取り上げるんです」

「しかも、山本くんあなたのファンであったからこそ、こうやって私たちが取材に出向いて新聞に取り上げることによって新聞部、そしてこの学校の宣伝する事が出来る上、直接あなたに会うことが出来る!
まさに一石二鳥というわけです!」

「成る程ねぇ・・・」

突然ではあったものの彼女たちの新聞部、そして自身への思いを聞いて賢人はある程度納得できた。

「・・・!も、もしかして迷惑でしたか・・・?こんな風に取材されるのは・・・?」

楓の発した言葉を聞いて、他の二人も楓と同じく迷惑だと感じて突然しょんぼりとした。


「いや、迷惑ってわけじゃないんだよ?・・・まぁ、僕は過去の事で追求されるのはあんまり好きじゃないんだ。でも・・・ファンとして接してくれるのは嬉しいんだけど、なんかこっちが気を使わせちゃうみたいでさ・・・なんか・・・ごめんね・・・?」


(((!!)))


賢人のまるで全身が包み込まれるような笑顔と言葉に、三人は思わずあと一歩のとこれで鼻血を出してしまいそうだった。


「「「いやいやそんな・・・全く問題無いですよ・・・?
私達はこれで失礼致します!」」」


三人は赤くなった顔を必死に隠しながら、賢人の目にも止まらぬ速さで教室を出ていった。

「・・・???」

何故、急に教室を出ていってしまったのか、賢人には全く理解できずポカンとするだけだった。


◇◇◇◇


ーーー放課後。

「じゃあ賢人、俺たち先に帰るからな」

「あとはよろしく!また明日な、賢人!」

「あぁ、また明日!」

怜人と伸之は賢人を一人残して、鞄やリュックサックといった自分たちの荷物を持って教室を出ていった。
本当は賢人も一緒に帰るはずだったが、今日に限って賢人が日直当番であった為、教室に一人残ることになった。

(ハァー、真依ちゃんは委員会の集まりで居ないし、
もう一人の日直の田中たなかさんも途中で早退したし、ツイてないなー・・・)


賢人は一人そっと溜め息をついたもののこのまま落ち込んでいても何も始まらない。サボる訳にもいかずにと一人ボチボチと机の整理や黒板の掃除などを始めた。



「ーーーふぅ、やっと終わった。さてと、日直表を職員室に持っていってさっさと帰ろう」

賢人は箒や塵取りを掃除用具専用のロッカーに片付けた後、自身のリュックサックを背負って日直表を手に持って、廊下に出てすぐに教室の鍵をしっかり閉める
と、夕焼けの光に照らされる廊下を歩いていった。

廊下の窓から見る夕日の光が差し込み、それが眩しくて見えなかった。そしてA棟の1階にあり、下駄箱のすぐそばにある職員室で竹内先生に日直表を渡した。

「・・・よし、もう帰っていいぞ。悪いな山本、こんな時間まで一人で居残りで日直をやらせて」

「いや良いんですよ先生。それじゃあ先生さよなら!」

「あぁ、気をつけて帰るんだぞ」


日直表に誤字脱字が無いかチェックした竹内先生から問題無しと判断されて帰る許可をもらった賢人は帰りの挨拶を言って、職員室を出ていった。

(まずいなぁ、もう5時になるか・・・それにしても放課後になった校内ってものすごく静かだなー・・・って、ん?)

賢人はあまりの静寂に包まれた校舎を不気味に思いながら自分の下駄箱から靴を取り出そうと開けると、
靴の上に何か乗っているのが分かった。
不思議と思って取り出してみると、それは赤いハートマークで開け口を留められた一枚の手紙だった。

(・・・なんだこれ?またファンレターかな?)

賢人はまたファンからかと思ってドキドキしながら手紙の中身を取り出した。
そこには差出人の名前は書かれておらず、一枚の白紙に小さく短いけれども、とても丁寧に書いたと思われる文章でこう書かれていた。



“山本賢人くん、あなたに話したいことがあります。体育館裏で待っています。”



「・・・っ!?」

賢人は書かれていたこの文字が信じられないという気持ちでいっぱいになり、顔は真っ赤になっていた。
そして周りに誰か居ないか、見られていないか焦りながら何度も確認した。

(・・・・・・行ってみようかな。わざわざ手紙これをくれた人を無視するわけにはいかないし・・・)


◇◇◇◇


(この裏か・・・)

普段なら体育の授業で来ている為体育館には慣れているはずだが、それ以外の目的で体育館ここに一人で来るのは初めてた。

(落ち着け、落ち着くんだ賢人!)

緊張する賢人だったが、緊張をほぐそうと大きく深刻急をして頰をパンパンと軽く叩き、忍び足でゆっくりと自身と体育館裏の距離を縮め、曲がればすぐ体育館裏になる物陰からゆっくりと覗き込んだ。
しかしそこには誰もおらず、夕焼けの光が体育館によって完全に覆われて日陰になっており、あるのはひっそりとたたずむ用具入れの倉庫と生い茂った草木だった。

(・・・イタズラだったのかなぁ?)

賢人はここまで呼び出したのにも関わらず、誰もいない。つまり自身の時間を無駄にされたことに少し腹を立てたがすぐに立ち直り、その場から立ち去ろうとしたその時・・・


「あの、山本くん!」

「!」

すぐ後ろから何処かで聞いたことのある女の子の声がした。賢人はまさかと思いつつも、勇気を振り絞って後ろを振り返った。

「あっ・・・」

そこにいたのは、賢人がどんなに想像したとしても、決してここに来るはずが無い人物。
薄紫色に光るロングヘアー、黒渕眼鏡を通して見える瞳、近くで見てもやはり高く見える身長、学校指定の制服の上から見ても分かるぐらいにたわわに実った胸、リップを塗っていなくとも綺麗に見える唇など、これらの理想的な特徴を踏まえて断定出来る人物は一人しかいない。

そこいた人物、すわなち賢人をこの場所に来るよう手紙を送った人物はどこからどう見てもこの学校のマドンナ的存在にして全学年の男子生徒たちから恐れられている『冷徹姫』こと、石見里奈その人だった。

「り、里奈先輩・・・?」

「えっと、その・・・き、急に呼び出しちゃってゴメンね・・・?私なんかが呼び出したりして流石に驚いたでしょ・・・?」

(え?どういうこと??聞いてたっていうか、昨日の朝だった時の雰囲気が全然違うんだけど・・・?)

昨日の朝は告白してきた伊達智則に対してまるで本当に叩き潰すかのような勢いで怒りに任せて罵倒する、
まさに冷徹姫異名の由来となる本質を露わにして圧倒的な威圧感を植え付けられた。
だが今、賢人の目の前にいる本人は先日の『冷徹姫』としての威勢から一変、賢人に対してもじもじしていて、あまり上手に言いたいことを伝えられない人見知りそうな女の子そのものだった。

先日の彼女とは程遠いともいえる程、優しくて可愛らしい声で喋るといったこの数週間で一体何があったの?と突っ込みたくなってしまうような彼女のあまりの変貌ぶり驚きながらも、賢人は彼女に不快な思いにさせまいと適切に対応した。

「あ、あの良いんですよ、別に迷惑じゃなかったですから。・・・で、この手紙に書いてあった話ってのは・・・?」

「うん・・・じ、実はね・・・えっと・・・わ、私ね・・・普段こんなこと言わないんだけどね・・・」

「う・・・うん」

「山本くんのことが好きです!付き合って下さい!!」
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