僕は冷徹な先輩に告白された

隻瞳

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1話 転校初日×発覚

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5月。
それは春のシーズンを迎えて新たな生活が始まってだいぶ馴れてきた頃だ。
そんな中途半端な時期に僕は地元の私立高校に進学して早々諸事情で故郷である大阪を出て、東京のとある区にあるこの高校に転校してきた。

「それでは転校生を紹介します。では、まず自己紹介から」

「ハイ、大阪から転校してきた山本賢人やまもとけんとです。みんなと仲良くできたら良いなと思っています」

「チビだね、顔は悪くないかも」

「結構可愛いんじゃない?」

「てか、男なんだ・・・」

あちこちから僕に対するいろんな声が飛んできたのがすぐに分かった。
正直ものすごく恥ずかしい。
特に可愛いと言われるのは。一応僕も男なので。

「えー山本くんのご両親は共働きで家を空ける事が多くて東京こっちに住んでいる叔母と二人の姉の家に引っ越す形で、単身上京してきたそうです。みんな、仲良くしてやってくれ。席は・・・そうだな、窓側の一番後ろの席を使ってくれ。桐谷、委員長だしお前がしばらく面倒を見てやってくれ」

「ハイ、わかりました。桐谷真依きりたにまいです。今日からよろしくね」

「こ、こちらこそよろしくお願いします」

少し茶色がかかったポニーテールに青く澄んだ瞳がとても綺麗な彼女は僕に笑顔を向けてきたので、思わずドキッとしてしまった。

「次の授業は数学だ。課題提出の準備をしておくように、では解散」

竹内 翔たけうち しょう先生の終わりの挨拶と同時に終わりのチャイムが聞こえてきた。
休憩時間に入ってので何とか緊張がほぐれたが、周りから良い(?)目線でジロジロ見られているのが分かった。はっきり言って全然落ち着けそうにない。

「転校初日からさっそく人気者だな、転校生!」

「!」

後ろから聞き覚えのない声がしたので、振り返ったら二人の男子生徒が立っていた。二人とも賢人より背が高く、賢人に話しかけてきた一人はワックスをしているのかやや逆立ったような髪型で、腕捲りをした両腕には黄色いリストバンドをはめていた。もう一人は眼鏡をかけていて一見すると真面目そうだが、よく見ると第一ボタンを開けていていた。

「あぁ、紹介が遅れたな。俺は池崎怜人いけざきれいと。こいつは親友の斎藤伸之さいとうのぶゆきだ」

「勝手に紹介してくれるな怜人。済まないね転校生、
皆からは〝斎藤さん〟って呼ばれてるけど、どうぞよろしく」

「何だよ斎藤さん、固ぇ事言うなぁ。ま、とりあえずクラスメートとして仲良くしようぜ!」

「あぁ、こちらこそ」

(良かった。この二人は少し変わったところはあるけれど、これから仲良くやっていけそうだ。前の高校の奴らなんかほんのちょっと絡むだけで面倒な事に巻き込まれる程だった。ま、それはそれで楽しかったけど)

「ところで賢人。ちょっと気になったんだけど、お前関西出身なんだろ?なのに関西弁で喋らないんだな」

「それは僕も同感したね」

「あーそれはね、僕は小さい頃から東京に馴染んでいたから、方言を直すのにそんなに時間は掛からなかったんだ」

「へぇー、それは意外だな~。俺てっきり関西から出てきた奴はみんな関西弁を使ってるって思ってた」

「まぁ誰でも言うと思うけど。ちなみに最後に東京こっち来たのが2年前で、東京で開催してムービーとか作った映像で競う大会に出て優勝したんだ」

「すげえなぁ、そんな大会で優勝するって・・・ん?」

さっきまであんなに喋っていた怜人が急に黙り込んだ。

「おい怜人、どうしたんだ?」

「な、なぁ賢人。もしかしてその大会って、大阪とか沖縄とか都道府県の代表が集まったりしてるのか?」

「え?あぁ、集まってたよ。なんたって日本一のクリエイターを決める年に一度開催される大会だからね。ちなみに僕はダントツで大阪代表になったけど」

「そうだ!思い出した!!2年前、『キング・オブ・クリエイト』を最年少でチャンピオンに輝いた山本賢人!!なんか聞いたことある名前だと思ってたらまさか本人だったなんて!」

「何!?あの大の大人でさえも出場は困難とされるっていう大会の事か!?こりゃすごい大物が転校してきたものだなぁ・・・」

『キング・オブ・クリエイト』。
それは日本一の映像クリエイターを決める年に一度開催される大会。将来ゲームクリエイター、ゲームデザイナーを目指す者にとっては最高峰、そして夢の舞台とされる場所でもある。過去に大物芸能人までもが出場した程である。本来学生の出場は認められていないが、2年に一度だけ小学生以上の学生での出場が特別に認められている。

「すげえなぁ!お前、優勝した時どんな気持ちだった?」

「まぁコンピューターが得意で好きだったし、元々は先輩達からの勧めもあったから何となく出てみたんだけど、ホントに優勝してみんなからお祝いされたから嬉しかったかなぁ?」

思い出してみたら、確かにあの時はただただムービーを作る事だけに集中していたから今思うと少し照れてしまう。

「おーい、みんな聞いてくれー!何と山本賢人くんはあのキング・オブ・クリエイトの優勝経験者だそうでーす!」

怜斗の一言でさっきまで騒がしかった教室が急に静まり返り、席に座っていた生徒まで立ち上がったと思いきやクラスメイト全員が一斉に三人に目掛けて押し寄せてきた。

「マジで!?山本くんすごい有名人だったんだ!」

「い、いやそんなに自慢出来る事じゃないよ・・・」

「ねぇねぇ優勝した後、テレビに呼ばれたりした!?」

「まぁあの頃はまだ13才だったけど、テレビには何回か出たかなぁ」

「やっぱり山本くんは可愛いだけの男じゃないね」

「か、かわ・・・」

またしても恥ずかしい言葉を出されたので顔を赤くしてしまった。

「も、もう!みんなそんな一斉に喋らんといてよ!僕は聖徳太子ちゃうんやから!!


賢人は恥ずかし過ぎて、思わず関西弁を出してしまった。
しかし皆はその様子を見て可愛いと笑い続けるだけだった。
こうして、賢人の新しい学園生活はものすごく恥ずかしい形でスタートとなった。
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