僕は冷徹な先輩に告白された

隻瞳

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番外編

11話 山本 碧のデート②

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「うーん、他の教科も勉強しておいた方がいいかもね」

「はい・・・」

まずは実力を知りたいと、抜き打ちとばかりに裕貴が赤本を基に作ってきた練習問題をひと通りやったあとの採点数を見て落ち込む碧。
それを見て裕貴は積極的に取り組もうと励ます。

二人がやって来たのは、待ち合わせした駅から徒歩で15分で着く場所にある大きな図書館。
中は茶色のツリーハウスの中のような見栄えで裕貴が言うには最近出来たばかりでありながら一番人気のある図書館らしく、広いだけでなく貸し出しされている本は子供向けの絵本から歴史や学文の参考書まで品揃えも忠実している。
休憩スペースやカフェまであり、子供にとっても大人にとってもくつろぐにはもってこいだった。
今も周りを見ると子供から大人まで幅広い世代の人たちが本を読んだり、カフェをひとときの安らぎを満喫していた。

そんな中、碧と裕貴は1階の入り口から少し進んだところにある自習スペースの二つのブースに座って授業で出された課題も兼ねて勉強をしていた。
他のお客さんがたくさんいたメインフロアとは違って利用する人は少ないと聞くが、珍しく碧と裕貴以外に自習スペースにいる人はいなかった。

(はぁどうしよう、なんで今日に限ってだれもいないなのかなー!?)

図書館というのは普通本を読んだり、読みたい本を借りに来る人の他に学校の授業の課題の取り組みや自習をするために来る人もいる。
そんな人たちの為に設けられているのが、このような自習スペースだ。
近年になってそのような処置がされている図書館も少なくない。なのに自分たち以外に誰もいないだなんて、この日に限っていくらなんでも都合が良すぎるというか準備・・が整い過ぎたこの状況に碧は頭がおかしくなりそうだった。

「・・・やっぱあたしってダメだわー」

碧は情緒不安定になりながらも、練習問題の点数に落ち込んだ態度を保つ。

「そんなことないよ、全部じゃなくとも少しずつ覚えていけば大丈夫だよ」

「うん、そりゃどうも・・・」

そんな碧を裕貴は尚も優しくフォローする。
碧はこんな自分にここまで優しくしてくれる彼に、またドキドキするのを我慢してあいも変わらない態度で返事をした。

「・・・ん?どうしたの山本?顔が赤いけど、熱でもあるの?」

「えっ?いや、その、なんでもないよ・・・?」

裕貴が指摘する通り、とうとう我慢できなかったのか碧の顔は徐々に赤かった。
更に熱すぎて碧の周りを湯気がもわもわと吹き出る。
碧は裕貴と二人っきりでの状況にドキドキしてるのがバレたら死ぬ気持ちだった。

「どれ、ちょっと失礼」

裕貴は心配して立ち上がって碧の元に駆け寄った。

「えっ、ちょ、桜井くん何を・・・」

「じっとした」

裕貴は戸惑う碧に静かにそう言うと、碧の前髪をかきあげて出てきたおでこを自身のおでこをくっつけた。
アニメや漫画でカップルが互いに愛し合ってる者同士としてする行動の一つだ。
まだ付き合ってもいないというのに、まさかこんな場所でされるとは思いもしなかった。

「うーん、汗もかいていないけど少し熱っぽいかも」

(~~~~~‼︎‼︎)

もう死んでしまいそう。
自分のせいで碧がこんな状態になってしまっているとは知らずに裕貴はおでこをくっつけ続ける。
だが、もうドキドキが止まらなくてどうしたらいいのか分からなくなっているのは、どうやら碧だけではないらしい。

(ど、どうしよう!テレビで見たからやり方は知ってたとはいえ、心配でついやっちゃったよ!)

勢いだったとはいえ、恋人同士がする行動の一つを実行してしまったことに裕貴はすごく恥ずかしかった。
しかし裕貴にはその行動によって生まれたもう一つ別の問題があった。


ーーーたゆん。


(見ちゃダメだ!見ちゃダメだ!見ちゃダメだ!)

裕貴は思わず目に入ってしまった碧の二つの大きな果実に必死に目を逸らすようにした。
おでことおでこをくっつけたことで、碧と裕貴の顔の距離はちょっとした拍子で唇が合わさってしまうぐらい近かった。
熱があるのを感じて目を開けた瞬間、目に入ってきたのは碧の二つの大きな胸の膨らみだ。

大学では素朴だったり、男が着るような服装ばかり着ているからスタイルはあまり気にならなかったのだが、今日の碧は胸やスタイルを強調された服装で来たので思わず目を疑ってしまった。

誘ったのは僕の方だけど、たかが勉強会でこんなに普段の第一印象を一蹴させるような服装で来るなんて、これじゃまるでデートじゃないか。
そもそも僕みたいなバスケやってるのに全然体力がない奴が碧みたいに綺麗でカッコいい女の子と釣り合うわけがない。
だから決してデートなんかではない。

あらゆる面で優れているのに、自分に自信がない裕貴は心の何処かでそう正当化するのだった。

さて、そういった気持ちは置いておいて、続いてどうしたらいいだろうこの状況。
・・・とりあえず席を外そう。
適当に口実を作って、離れた場所で一旦気持ちを落ち着かせることにしよう。

まずくっつけている碧のおでこから自身のおでこを離した。

「ご、ごめんね?心配でつい・・・」

「ううん、全然大丈夫だし」

お互いに恥ずかしさを押し切った上で、会話を成立させた。
お互いに同じような気持ちになっているとは知らずに。

「この辺で少し休憩にしよう。
借りたい本を探してくるからちょっと休んでて」

「うん・・・」

裕貴は碧にそう言うと、そのまま自習スペースを出ていった。
ポツンと一人残され、裕貴が本当に出ていったのかを確認すると、デスクに戻って今度はぐったりと座り込んだ。

「・・・めっちゃ見られてた」

碧は右胸をそっと撫で下ろしながらそう呟いた。
そう、おでこにおでこをくっつけてきたことにはもちろん驚いた。
だがそれよりも裕貴の視線が自身の胸にいっていることに気づなかいわけがなかった。


****

『どうしたの?桜井くんも顔赤いけど・・・』

『えっ、いや・・・その・・・』

『あっ、あたしのおっぱい見て興奮しちゃった?』

『なっ・・・!?』

『もう、桜井くんのえっち♡』

『そ、それは・・・山本がそんなセクシーな格好で来るから・・・って、あ!』

『ふーん、あたしのことそうやって見てたんだー?
でもそういうところが・・・・・・す、き♡』

****


「・・・ってなに考えんてんだ、あたしー‼︎」

いつの間にか妄想してて、しかもその内容がとんでもない展開になっていた妄想から、ちゃぶ台をひっくり返すかの如く現実世界に舞い戻ってきた。
そしてあまりに壮絶だったのか、気づけば少し息切れをしていた。
そして呼吸を整えつつ碧はデスクではなく、今度は固まっていた両足を伸ばしながら座っている椅子にもたれながら、再び胸を触りながら呟く。

「あたしの胸で・・・♡
・・・って、またなに言っちゃってんだよあたし!
大体こんな格好して可愛いどころか変態だと思われてるかもしれないのに」

折角親友が応援してくれて、しかも服までコーディネートしてくれたというのに、碧は顔から耳元まで真っ赤にしながら今の自分がはしたなく見えると、心の何処かで自虐するのであった。
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