僕は冷徹な先輩に告白された

隻瞳

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26話 休日×買い物

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ーーー気づけば一日が経っていた。
あの後のことについて、賢人は自身の記憶が曖昧になっている。

 はっきり覚えているとしたら、里奈がより快楽を求めんと胸をより揉ませた時の感触だった。
話を聞くと、賢人をおんぶして地上に出て帰ったという。
また地下に来てから見かけた不良達はその際に二人に絡んでこなかったとか。

 だがその時、蘭子が以前と里奈と他の友人を連れてあの店に行ったことがあると言っていたのを思い出した。
不良たちのその行動から里奈は不良の間でもその名を馳せているのかと思い、その瞬間寒気が走った。
この前のデートの時も学校での彼女とは思えない派手な格好で来た。
そんなことからその仮説が間違いではないのが伺えた。

 たった一日だけでいろんなこと・・・・・・があったせいで忘れていたが、二日後にはすぐに期末テストが始まる。
それに気づいたのはちょうど今朝のことで、身体は重くて精神的に疲れてしまっている。
その影響かいつもは早く起きるが、今朝は遅かった。
期末テストがあったと思い出すなり慌てたがまだ二日もあるからとすぐに落ち着いた。
朝ご飯を食べて歯を磨いた後、そのままテスト勉強を始めるのだった。


◇◇◇◇


「あー疲れた。ってもうこんな時間か・・・」
 
ーーーお昼。
時間が過ぎるのを忘れて勉強に励んでいたが、疲労と空腹を覚えたことから一旦休憩することにした。
今日もまた結衣姉たちは午前中から出かけていて、家にいるのは僕一人だけだ。
ご飯はもう炊いているからおかずだけ買いに行こうと部屋着から外出用の私服に着替えると、財布を持って家を出た。

・・・もちろん家の鍵を閉めるのを忘れずにちゃんと掛けてから行く。

「えーっと、何食べようかなー・・・」

 住宅街を歩いて暫くして、東京に引っ越してきてからよく来ている近所のスーパーに着いた。
自動ドアがある入り口から入ってからすぐにあるコーナーに並べられた果物の香りが鼻の穴を通るのを感じながら通過すると、お目当てのおかずとお惣菜が並べらているコーナーに着いた。

「う~ん・・・」

賢人は右手にチーズハンバーグ、左手にチキン南蛮を持つと険しい顔をして両方をじっと見つめた。

「やっぱこういうお店のおかずで美味しいと言えばこの二つなんだけど・・・
チーズハンバーグって言ってもハンバーグは二週間前に食べたし、
チキン南蛮は最近食べてないけど値段がチーズハンバーグよりたかいからなぁ・・・・・・」

 しばらく悩んだ末、最終的に賢人はチキン南蛮を選んだ。
今のおかず以外でもお目当ての品があったとしても買って食べたいものが二つ以上になった時は貼られたラベルに書いてあるカロリーや値段を比べてみて、いずれかが偏り過ぎない方を選ぶ。
 今回選んだチキン南蛮の場合は、チーズハンバーグの方が値段が安くてカロリーも意外と低めだった。
だが、つい最近食べたばかりということもあって、敢えてチキン南蛮の方を選んだ。こういった都合から、
時には違う嗜好で選んで買うパターンもしばしばある。

 レジでお会計を済ませ、チキン南蛮を持ってきたエコバッグに入れると、
もう用は無いとまっすぐ家に帰ることにした。しかし、スーパーを出てから団地へと続くこの辺りでは一番長くて有名な斜面に差し掛かったところで、賢人は突然ハッとした。

「・・・洗剤と歯磨き粉切らしてたんだった」

 お風呂用と食器洗い用の両方を昨日の夜を最後に使い切ってしまっていた。
歯磨き粉の方は、今朝に四人全員がギリギリで使い切ってしまい、叔母さんから買っておいてほしいと頼まれていた。
せっかくスーパーに買い物しにきたというのに、おかずのことしか考えず忘れていた自分が恥ずかしい。
 どうしよう、このままスーパーまで買いに戻ろうにも距離があり過ぎる。
一旦家に帰ってからまた買いに戻ろうか、いやそれではより時間が掛かってしまう。
賢人が頭を悩ませていると・・・・・・

「⁉︎」

「!」

 それに気づいた時にはもう遅かった。
一旦家に帰るか、スーパーに戻るか悩むあまり足音すら聞こえてこなかった。
今僕の目に映っているのは、目の前の斜面を上からすごい速さで駆け下りてくる。
だが僕の存在に気づいて数メートルまでの距離に近づくと、
そこから僕を障害物に見立てたのか避けるように勢いよく大ジャンプしてきた一人の女の子だった。

 突然の出来事に僕は言葉を失い、動けなかった。いや、動けないというよりは避けるという選択肢も浮かんだが、
下手に動けば女の子と衝突してしまうと身体が自然に察知してくれたからかもしれない。
中学生ぐらいで黒と黄色を基調としたジャージを着たその女の子は、上の斜面から走ってきたことによるスピードによってジャンプした際、ただでさえ背の低い賢人の頭上を軽々と飛び越えていった。飛び越えていき、
そこから着地するにはあまりにも危険過ぎる高さと距離に見えたが、見事に着地した。
普通高いところから飛び降りたりジャンプして着地する時には、両足にそれだけの衝撃が走って動きが止まるはずだが、彼女はそのまま止まることなく走り去っていった。

「今の子って・・・」

 あまりの衝撃的な瞬間に話せる気がしなかったが、ようやく話せるようになってそう言った。
パッと外見を見ただけでは流石にピンと来ないが、飛び越えていく瞬間彼女と目が合った時、何故か懐かしい気がした。恐らくそう感じたのは僕だけじゃない気がする。それは何故かというと、飛び越えていく時に下の僕を目で追っているように見えたからだ。

 彼女は何処かで会ったことがある人物、というのは間違いないがどうも思い出せない。
中学生までは大会の件を除けばこれといった女子との交流はあまり無い。
高校生になってから女子との交流といえば、同じクラスの真依や恋人の里奈、里奈の友人の蘭子しか思い当たらない。


〝あたしのおっぱい揉んで気持ちよくしてくれたら、身を引いてあげてよいいよ?〟

〝・・・胸、揉んで?〟


「・・・っ‼︎」

 里奈と蘭子を思い浮かべた途端、思わず昨日の二人の言葉を思い出して顔を真っ赤にした。
何故この後に及んでいきなり思い出したんだろうか?
今まで女の子と関わることさえ少なかった童貞にとって忘れなれない出来事になったからなのか?
あるいは・・・・・・

「あぁもう‼︎何を考えているんだ、僕って奴は!
・・・仕方ない。このまま買いに戻ろう!」

 さっきの女の子のことも気になるが、いきなり昨日のことを思い出してしまったことでそれどころじゃなくなった。
結局家に帰ってからではなくおかずを持ったままスーパーに買いに戻り、なんとか洗剤と歯磨き粉を買うことができた。
そのまま家に帰ってきてようやくお昼ご飯にしようとした時には、時計は1時を指していた。
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