僕は冷徹な先輩に告白された

隻瞳

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25話 誤解×証明(*)

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「里奈先輩・・・」

「里奈、あんたどうしてここが・・・?」

ここに来るはずがないと思っていた人物が突然やってきたことに二人は驚きを隠せず里奈に質問した。
里奈は呼吸を整えた後、二人の質問に静かに答える。

「・・・賢人くんと公園にいたあの後、帰っている途中に池崎くんと斎藤くんがLINEで教えてくれたの。賢人くんが蘭子に連れられて地上のデパートに入っていくのを見たって。でも行ってみても見当たらなかったし、蘭子が他に行く当てがあるとしたらここだと思って・・・・・・」

(なんか里奈先輩すごいな・・・)

怜人と伸之が提供した、地上にあるデパートに入っていったという僅かな目撃証言。
そこから辿って地下街にあるこのカラオケ店に二人がいることに勘づいた里奈の洞察力に、賢人は驚かされた。
また蘭子が前に里奈とも来たことがあると言っていたことから、自身が過去に来ていたからこそ情報が早かったんだと納得もできた。

しかし同時に公園を出たあの後、何故怜人と伸之が近くにいて自身たちを目撃できたんだと疑問に思った。

(まさか後をつけられてたなんてね。地上のデパートに入るまでだったとはいえ、あたしと賢人くんの位置を探りやがって・・・)

賢人とは反対に蘭子は自分たちの居場所と時間を把握されたと知って、怜人と伸之に対して心の中で腹を立てた。

「り、里奈先輩!違うんですよ!!
これは僕の意思でやっている訳じゃなくて・・・」

「えぇー酷い~~~!あたしのおっぱい見ただけで顔を真っ赤にしてたし、綺麗で大きくて触り心地良さそう~って言ってたくせに~」

「なっ!!ってか、最後のは言った覚えないんですけど!?」

必死に弁解する賢人。
だが蘭子が出したデタラメに賢人は動揺して否定するが、それを聞いた里奈はより表情が重くなった。

(このままじゃまずい!でも一体どうしたらいいんだ!?)

落ち着きが取り戻せない賢人だったが、突然里奈が賢人の方に向かって近づいてきた。
まずい、 打たれる!と思った次の瞬間、里奈は何も言わずに手を掴んできた。

「里奈先輩・・・!?」

「・・・」

 里奈の思いも寄らない行動に賢人は先程以上に動揺が隠せなかった。
が、里奈は構わず手を掴んだまま賢人を立ち上がらせる。

「・・・蘭子、悪いけど賢人くんを借りていくから、今日は終わりよ」

と、優しくも冷たくも感じる感情が籠めた一言を言い残すと賢人を連れて部屋を出ていった。

「・・・」

その場に一人取り残されてしまった蘭子は、
里奈の行動に疑問に思いながらほぼ丸出し状態の下着を隠すために制服のボタンを閉めていった。
一人だけとはいえ、この格好・・・・ではそれはそれで恥ずかしいからだ。
しかし、賢人にじっと?見つめらたのと比べてみれば、大したことはないと蘭子は不思議と実感した。


◇◇◇◇


「「・・・」」


 賢人は未だに里奈に手を掴まれた状態でVIPルームから出た後、
会話もないままカラオケルームが並ぶ廊下を歩いていた。
何故、何も話してくれずただ手を掴んでVIPルームから連れ出したのか賢人は理解出来ず、
既に悪く思われてはいるが更に抵抗したら悪いと思い黙って里奈に連れていかれるがままとなることにした。

 だが、こうやって連れていかれる中で一つだけ分かったことがある。
VIPルームから連れ出す時に手を掴んでいた時の握力は力強くて少し痛かった。
廊下を進んでいく今は、先程とは違いまるで手を繋ぎたいのかとても優しい。

里奈が本当に怒っているのなら力強く握り続けるはずだが、今はそうだとは言い難い。
賢人が疑問に思いながら仮説を立てて考えていると、歩き続けていた里奈がいきなり立ち止まった。
そして掴んでいた賢人の手を離して後ろにいる賢人の方に振り向いた。

「!」

「・・・っ」

里奈の賢人を上から見つめるその表情。
頰を真っ赤に染め、目に涙を浮かべて今にも泣き出しそうなぐらいの勢いだった。

「け、賢人くん・・・」

余程泣くのを我慢していたのか、里奈は泣きたいのが分かるぐらいの悲しそうな声で賢人の名前を呼ぶ。
驚いた賢人は気遣うように里奈に声をかける。

「どうしたんですか急に!?
やっぱり僕が蘭子さんにされそうなのを見てショックだったんですか?」

「それもある・・・でもそれだけじゃない・・・」

「?」

 賢人がされそうになった・・・・・・・・側とはいえ紛れもない事実を認めた上で里奈に質問する。
だが、里奈は哀しみのあまり身震いするような声で賢人の質問に一部否認らしき言葉を発した。

それだけじゃない・・・・・・・・?一体どういうことですか?」

「・・・」

「・・・里奈先輩?」

 里奈の思いもよらない答えに賢人が聞き逃すわけもなく、加えて質問した。だが里奈は答えない。
それを見て賢人は、賢人を見ずに下を向いて俯いている里奈の顔を覗き込む。
すると、それを拍子に里奈が抱き締めてきた。

「っっっ!?」

「・・・っ」

突然抱き締められて、賢人は顔を赤くして声を出そうにもまた勢い余って思うように出せなかった。

「ちょっ、ホンマにどないしたんですか里奈先輩!?」

「・・・ら、蘭子がからかったつもりでちょっかい出してたのは分かってる。
かと言って私は二人とも嫌いになりたくはない。
でも・・・心配で見に来たら賢人くんが何の抵抗もせずにやられそうになっているし・・・
それに、からかうつもりでやってるはずなのにあんな本気そうな蘭子を見てたら、
本当に賢人くんが盗られちゃったと思って・・・・・・」

「里奈先輩・・・」

「でも、私が知ってる賢人くんは自分からするわけがないのも分かってる。
それでも・・・それでも・・・!!」

抱き締めた賢人を自身に寄せながら号泣するのを我慢した声で、本心を打ち明けながら泣き出す。

 里奈が泣いている理由は単なる「悲しみ」ではない。
友達の彼氏だからとからかってやったつもりなのは理解できる。
だがその様子を見ていたら、年下でまだ若い賢人ゆえに本当にその気になってしまう。
そう考えただけで悔しいし寂しくなってくる。

「・・・大丈夫ですよ。
まぁ一度は蘭子さんのせいでそうはなりかけましたけど・・・
僕は里奈先輩しか見てませんから!
あと・・・その・・・里奈先輩の方が魅力的ですから・・・・・・」

「え・・・」

 賢人は慰めようと里奈を抱き締め返して本心をはっきりと言った。
里奈はその言葉が嬉しいあまり言葉さえ出せなかった。
二人の周りは、賢人の部屋にいた時と同じくらいに他人を寄せ付けない熱い・・空間になっていた。
さっきまではこの廊下も含めて店内がひんやりとした感覚だったが、今の二人が感じているのは互いの温もりだけだ。

「ごめん賢人くん、なんか早とちりなんてしちゃって・・・
今私、賢人くんの言ってくれた言葉がすっごい嬉しいの♡」

「いいんですよ、そもそもからかってきた蘭子さん。
・・・あと里奈先輩に何も言わずにのこのこと連れていかれた僕が悪いんですから」

「・・・そうね」

 抱き合っているうちに里奈は泣き止んですっかりもとの里奈に戻り、誰もいない周りにハートを飛ばしまくる。
そして賢人のその言葉に何か思いついたような言い方で答えた。
もちろん賢人がそれに気づく余裕もなかったが、この機会・・にと里奈が行動に出る。

「・・・ところでさ、賢人くん。いきなりこんなこと聞くのもなんだけど・・・」

「・・・?なんですか?」

 自分ばかり質問していて、こっちの話は聞いてくれないのかと言わんばかりに里奈から質問される。
それに対して賢人は何の疑いもなく何の違和感も感じず受け答えする。

「その・・・さっき私しか女として見てない言ってくれたよね?」

「・・・っ。はい、言いました!」

賢人が言っていたことを自分の口からそのまま言っただけのこと。
なのにその一言を言うのが里奈自身にとってすごく恥ずかしいのか、もじもじしながら意外と小さな声で喋る。
それでは自身が言ったことをそのまま返される形で質問されているこっちまで恥ずかしくなってくる。
あと、そこまで情熱的で極端に言っていない気がする。

「賢人くんが言ってくれたこと。すごく・・・う、嬉しいけど、
やっぱり蘭子との行為に及びかけたのを思い出したらなんか信じがたくなるなーって」

 まだ恥ずかしいのが窺える口調で、わざとらしくそう言った。
賢人は里奈がまだそのことについて引っ張っているかと思い込んで言葉を返す。
里奈の言葉の意味・・・・・も知らずに。

「だからそれは悪かったってi・・・」

「私のことをそんなに見てくれているっていうなら、それなりの行動で証明してくれるかしら?」

「証明って・・・今の僕に出来ることならなんでもします!」

確かに未遂・・で済んだとはいえ、彼氏としては都合が良すぎる。
賢人は自分の出来る限りのことをして理解してもらおうと覚悟を決めてそう言った。

「分かった。それじゃあ・・・・・・」

「・・・って、え!?」

賢人のその意思を理解した里奈は、なんと自分の胸を両手で寄せ合わせして賢人に見せつけてきた。

「なななっ、なにしてんすか里奈先輩!?」

「・・・胸、揉んで?」

「ふぁっ!?」

里奈の思いも寄らない行動と発言に、賢人は思わず今までで一番高い声を出して驚く。
すると里奈はムッとした顔で言う。

なんでもする・・・・・・って言ってくれたでしょ?」

「えっ・・・」

嵌められた。賢人は里奈の一言を聞いた瞬間そう悟った。
そうか、里奈は最初からこうなることを仕組んだ上で言わせたのかと、賢人は今更になって気がついた。
よく見てみると里奈は僅かに過呼吸になっており、距離も近いから息が当たっている。

「なによ?蘭子の時は触りそうになる・・・・・・ぐらい大きくて触り心地良さそうなのに、
私の場合はそうじゃないって言うの?」

「だ、だからあれは僕じゃなくて蘭子さんが勝手に言ったことで・・・!」

「そう、なら・・・触って?」

「~~~っ!!」

 賢人が蘭子のデタラメを否定すると、里奈は赤い顔で妖艶に笑ってそう言った。
里奈自身、賢人に胸を寄せ合わせして見せつけるだけで気絶するぐらい恥ずかしいはずなのに。
だが、その様子から蘭子に負けて賢人を取られたくないという嫉妬と想いが伝わってくる。

 賢人は一度、目を逸らしてもう一度里奈の方を見た。
すると里奈の両手で圧縮されより膨らんで見える胸が目に飛び込んでくる。
それはもう見ているだけで、アニメならボヨンといかにも大きな音を立てそうなぐらいだ。

しばらく深呼吸と思い詰めをして賢人はついに覚悟を決めて、ゴクリを音を立てて唾を飲み込んだ。

「じ、じゃあ・・・失礼して」

「うん・・・」

 賢人がそう言うと、里奈は拒否することなく答える。
だがすぐに触れる勇気がない。それに間違えて乱暴にしたら悪いと思い、
無意識に荒くなっていた呼吸を我慢しながらそーっと手を伸ばして確実に距離を縮めていく。
そして・・・・・・




ーーーもにゅん。




「んっ・・・」

「!!」

 賢人が触れた途端、その感触が賢人の手から脳までの神経を伝って電気ショックのように流れ込む。
それはもう気を抜けば失神はあり得るぐらいの感覚だ。

「やんっ・・・」

「!」

 対して里奈は触れられた途端、普段の声とは全く程遠い矯声を上げた。
触っているのが好きな男であっても、触られれると忘れかけていた女性特有の秘められた・・・・・快楽が身体中に走る。
 普通の女性なら、この程度である意味満足して終わらせるはず。
だが、賢人に対する想いが強い里奈はそれだけでは終わりたくないと感じ、
羞恥心と快楽感を我慢しながら口を動かす。

「ハァ、ハァ、ハァ・・・片方だけで、良いの?」

「!!・・・じ、じゃあ」


ーーーもにゅん。


「!!」

「やぁんっ・・・」

 里奈に促されるがまま、ポジションが残っているもう片方を触れた途端、今度は感覚が2倍になって身体を貫いた。
それはもはや「脳」という回路がショートを起こすぐらいの勢いだ。
ところが次の瞬間・・・・・・

「これ・・・気持ちいい・・・♡」

「・・・っ!?」

 衝撃的な感覚で軽い麻痺を身体に覚えている賢人に追い討ちのように、里奈は胸を触れられた快楽と好きな男に触れられているという幸福感のあまり、ついにその心の声を無意識に出した。
更にその感覚をより求めるように自身の胸を揉んでいる賢人の両手の手首を掴んで、グッとより胸を触らせようとする。
里奈の連続の行動に賢人は驚く。が、その拍子にまだ初心うぶな性格と精神面に来る衝動と感触に耐え切れなくなり、
鼻血を噴水のように飛ばしてそのまま後ろに倒れ込んでしまった。

「け、賢人くん・・・!?」

「あうぅぅぅ~~~・・・」

 里奈は快楽と幸福感で天に昇りそうになっていたが、賢人が倒れて床に身体を打った音を聞いてふと我に帰る。
駆け寄って声をかけてみるが、賢人は顔を真っ赤に染めて鼻血を流して愛くるしい声を上げるだけだった。
この時、里奈は思った。



ヤバい、やり過ぎた!!と・・・・・・



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