リア充するにもほどがある!? 生徒会から始まる、みずほ先輩の下僕ライフ365日

秋月 一成

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【第七話 みずほ先輩と美術部の不思議な絵】

【7-5】

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 その翌日のこと。

 手がかりを得られずにいた俺たちを尻目に、ふたたび事件が起きた。

 学校に着くやいなや、クラス内は噂話と憶測で持ちきりだった。

「また描き換えられたらしいよ。あの絵。今回は連日じゃん」
「絵の人物、まじやばいよ。悪霊の呪いじゃねえのか」

 ――まじかよ、今度はいったいどういうふうに?

 百聞は一見にしかずだ。直接見たくなり、足が勝手に美術室へと向かっていた。

 そして目にした絵は、昨日とはまるで違う姿をしていた。

 中央の村本先輩は健在だった。しかし、顔はふたたび空を向いていた。そして左の鮎川先輩は不在のままだが、右の結奈もまた、こつぜんと姿を消していた。

 多くの生徒が集まり、絵の写真を撮っていた。ここまで不可解だとほんとうに怪奇現象じゃないかと疑ってしまう。

「あっ、おはよう。かつき君も来たんだ」
「みずほ先輩、やっぱりかぎつけたんですね」

 みずほ先輩も絵の様子を見に来ていた。肩を並べてふたりで絵を眺める。

「両手の花がいなくなっちまいましたね。今度は結奈の絵ですか」
「そうだけど……以前の変化と比べると、今回はちょっと変よね」
「えっ、どこがですか」
「今回は色がくすんでいるし、塗り方が荒く見えるわ」
「そうっすか、俺にはあんまり区別がつかないですけど」

 絵に近づき、目を凝らして観察する。確かにみずほ先輩の言う通り、いままでの描き換えとは雰囲気が違うと感じる。

「あと、これ見てくれるかな」

 みずほ先輩は足元を指さす。そこには絵の具を拭き取った跡があった。

「書き換えの途中、絵の具をこぼしたんですね」
「そうだと思うけど……」

 毎回、この場所で描き換えをしているのだから、美術部員の仕業という可能性が濃厚だ。

 美術室には共用の絵の具セットがあったから、鍵を借りられる部員なら誰もいない時間を狙って描き換えることができるはずだ。

 ふと、結奈のことを思い出した。

「もしかすると、結奈は何か知ってるかもしれないっすね」

 この前はまるで事情を知らないようだったが、今回は結奈の絵が消されているのだ。だとすれば、関係がないわけではない。

「聞いてみようか。学校が終わったら声をかけてもらえるかな」
「了解っす!」

 俺は放課後、すぐさま結奈に声をかけた。

「よう、また話があるんだけど、これから付き合ってくれないか」

 ところが結奈は俺の顔を見るやいなや避けて通り過ぎようとした。

「ちょっと待てよ!」

 結奈の腕をつかんだ。振り向いた結奈は泣きそうな顔で俺を睨みつける。天真爛漫な彼女らしくない表情に俺は驚いた。

「どうしたんだよ、何があったんだよ」

 気を遣い声を鎮めて尋ねるが、彼女は押し黙ったままだ。

 そういえば結奈は珍しくジャージ姿で過ごしていた。振り返ると今日一日、避けられているような違和感があった。

 そのとき俺のスマホが鳴る。見るとみずほ先輩からだ。

 電話を受けると、意外なひとことが耳に飛び込んできた。

「絵を描き換えたひとが生徒会室に来たの!」
「えっ?」
「そのひとが結奈ちゃんを呼んで、って言ってるのよ!」
「どういうことっすか」
「とにかく結奈ちゃんを連れてきて!」

 俺はわけがわからないまま、結奈の表情をうかがう。結奈は口元を引き結んだまま微動だにしなかった。

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