リア充するにもほどがある!? 生徒会から始まる、みずほ先輩の下僕ライフ365日

秋月 一成

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【第七話 みずほ先輩と美術部の不思議な絵】

【7-4】

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 翌日の一限目が終わった休み時間。みずほ先輩はふいに俺のクラスを訪れた。

 まわりがざわめいていたから何事かと思ったけど、みずほ先輩の登場にクラス中が色めき立ったようだ。

「あの生徒会長がご降臨なされたぞ!」

 みずほ先輩に免疫のない一年生は、まるで女神を目撃したかのように驚嘆する。

 俺のクラスに何の用かと思ったけど、みずほ先輩は俺を見つけるやいなや、あわてた様子で話しかけてきた。

「ねえ、かつき君。あの絵、見た?」
「先日、一緒に見たじゃないっすか」
「そうじゃないのよ、一緒に来て!」

 腕を強引に引っ張られ、教室から連れ出された。

「いったいなんなんすか、みずほ先輩!」
「見てみればわかるから!」

 俺はこのひとの下僕だっていうことは、生徒会内の秘密にしておくつもりなのに。バレたらクラスメイトから茶化されそうだ。

 けれど美術部の壁の前に立った瞬間、そんなことは思考から吹っ飛んだ。

「まさか、そんなことって……」

 例の絵が、さらに描き換えられていたのだ。

 村本先輩の姿がすっかりもとに戻されていた。しかも顔が空ではなく右を向いていた。結奈のほうだ。

 そして今度は、鮎川先輩の姿が消滅していたのだ。背筋が凍りついたように冷たくなる。

「これ、やっぱり幽霊の仕業っすね」
「そんなわけないでしょ!」
「ところで、消えた本人たち、村本先輩と鮎川先輩はこの現象に心当たりあるんですかね」
「三年生の先輩方のことだから、わたしだって気安く訊けないわよ」

 接点のない先輩方に事情を尋ねるのは無理だろう。そこで俺は思いつく。

「そうだ、宇和野先輩に聞いてみたらどうっすか」
「そうね、それが近道かも」

 すぐさま宇和野先輩にスマホでメッセージを送る。

『あの絵がまた描き換えられてました』

 ふたりで画面を見ていると、すぐに返事がきた。

『おせーよ。それ皆知ってる』

 奇妙な現象の噂は瞬く間に校内を駆け巡ったようだ。

『すいません。ところで消えた絵の張本人、村本先輩と鮎川先輩って知ってます?』

『ああ、鮎川のほうはクラスメイトだけど』

 しめた、何らかの情報が手に入るかも。

『あのふたりって仲良かったみたいですけど、その後どうなったかわかります?』

『どこまで行ったかってことか?』

『そうじゃないっす! どこに行くかです、進路のことです!』

 宇和野先輩は人格者だがネジが微妙にずれている。それなのに受験は全勝だったらしい。世の中何が正義なのか俺にはさっぱりだ。

『ああ、鮎川は東京の国立大に受かったけど、村本のほうは知らないな。そっちのクラスの奴に聞いてみる』

『ありがとうございます』

『でもたぶん落ちてると思う』

 画面に表示されたその一文に、俺とみずほ先輩は顔を見合わせた。

『鮎川、やけに元気なかったからさ』

 そのメッセージを目にした俺は、それ以上何も返せないでいた。

 解散し家に帰る途中、俺は結奈に電話をかけた。連絡先は交換済みだった。

 数回コール音が鳴ったけど留守電になった。しかたなくメッセージを送る。

『あの絵がまた描き換えられていた件で、心当たりあるかな』

 しばらく待ったが返事はなかった。今日は美術部の活動がないはずだから、すぐに返事が来ると思ったのに。

 腑に落ちないでいると、かわりに宇和野先輩から折り返しの連絡があった。

『村本の受験の結果だけどな。実はな――』

 宇和野先輩が聞き込みをした結果は予想通りで、村本先輩は国立大学には不合格で、地元の私立大学に通うことになった、とのことだった。

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