リア充するにもほどがある!? 生徒会から始まる、みずほ先輩の下僕ライフ365日

秋月 一成

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【第六話 みずほ先輩と学園祭に輝く七つの星】

【6-10】

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 学園祭は滞りなく進行し、しだいに陽が傾いてきた。

 一番の見どころである、アンサンブル部の演奏が始まろうとしている。

 全国大会で名を馳せる城西高校のアンサンブル部は、毎年、コンクールのリハーサルとして学園祭で演奏することになっている。

 席に腰を据えた観客は、演奏を聴くのが目的のはず。けれど演奏の準備中に、手にしたメモ用紙を見ながら頭をひねっている。謎かけはだいぶ浸透していたようだ。

 けれど正解者はまだひとりもいない。

「誰も解けていなさそうですね」
「でも、きっとそろそろわかるはず。ヒントが見られるからね」

 太陽が地平線に潜り込み、オレンジ色の世界がしだいに青みを帯びてくる。

 光の消退とともに、校舎の教室に光が灯る。

「あっ! あれ見て!」

 中学生くらいのふたり組みの女の子のひとりが、校舎を指さして声をあげた。

 それから手にしたメモ用紙と校舎を互い違いに見て、急に立ち上がった。

「やっぱりそうだ、あのポスターの謎が、解けたよ!」

 その女の子は、生徒会の屋台に向かって走ってきた。うれしそうな顔をして「答えがわかった!」という。

 みずほ先輩は身をかがめて左耳を差し出した。女の子はみずほ先輩に耳打ちをする。

「ゴニョゴニョゴニョ……」
「――正解‼」

 みずほ先輩が声をあげ拍手をする。その子は確かに謎を解いたのだ。

「おおっ、ついに第一号が登場!」

 生徒会全員で拍手をすると、聞きつけた観客が色めき立った。

 皆、どういうことかと辺りを見回している。それから校舎を指さすひとが続出する。

「あれがヒントか!」
「なるほど、そういうことか!」

 いっせいに校舎が注目を浴び、参加者が次々と正解にたどり着いた。

 驚きと歓喜の声が会場にあふれる。

「みんな、七つの部活に込められた謎に気づいたみたいね」
「そうっすね。暗号も解けたみたいですし」

 俺たちは顔を見合わせて、安堵にも似た笑みのハーモニー。

 校舎を見上げると、イベントが行われていた教室だけには光が灯っている。

 その光は、見覚えのある形を示している。そう、星座の形を描いていたのだ。

 それはまさに、北斗七星の姿。

 陽が暮れると描かれる、謎解き最大のヒント。

 そして、俺たちはその星座に謎の意味を仕掛けたのだ。

 星の並びの順番に教室をつなげていくと、ルーム3A、2B、2C、3D、3F、3H、そして2Jとなる。

 それぞれの部屋に書かれたキャッチフレーズは――。

『とんでもない絵、大集合!』

『ジルバでゴー!』

『一矢報いろ!』

『パイオニアの底力!』

『ひき語りを、あなたの恋の幕引きに!』

『かえ歌カラオケ!』

『剣の道を極めろ!』

 という順番になる。

 さらに謎かけ予告のポスターには、デフォルメした俺とみずほ先輩の頭だけが描かれている。それもまたヒントなのだと、あらかじめ予告しておいた。

 そのヒントは「頭ふたつ」を意味している。

 ヒントのとおり、キャッチフレーズをひらがなに変換し、頭の文字ふたつをつなげていく。

 すると出来上がる言葉は――。


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